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第19話 おかしいのはあんたの面構えだ!
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陸人達一行は聖カメリアホームから少し離れた林の中に潜伏し、敵の到着を待った。
それらしき三人の影が近付いてくるを発見したのは、正午過ぎ。オーガストが呑気に昼寝をしている時だった。
「おい、起きろ、おっさん」
オーガストをつま先で突きながら、シメオンが腰の大剣を抜いて臨戦態勢を整える。
陸人も巻物を握りしめ、ジャン・ダッシュとコンタクトを取った。
――――いざという時は、またあのすごい剣に変形してほしいんだけど、いいかな?
『なんだ、“すごい剣”とは』
――――シメオンを羊にしたときの、あの狼の剣だよ。
『ああ、“究極必殺剣【狼牙の餌食】”か。それなら無理だ』
――――え?なんでだよ!
『前にも言ったがあれは月光の力を借りて発動させるものなのだ。今、空に月はあるか?いや、どう見てもないだろう。だが一撃必殺剣にならいつでも変形できるぞ』
――――はぁ…。わかった、それでいいよ…。
「おい、陸人。あのおっさん起きないぞ。死んでるんじゃないか?」
「そんな馬鹿な。僕たちに協力したくないから、狸寝入りしてるだけなんじゃない?」
「さっき顔の上にサソリを這わせてみたが、びくともしなかったぞ」
「そっか、それならガチ寝だね。とりあえず作戦は実行しよう。おじさんが出番までに起きてくれることを祈るしかないよ」
「チッ…。肝心な時に爆睡しやがって、あの野郎。仮に起きてきたとしても、寝起きの状態じゃ期待できないぞ」
「ま、いざとなったらおじさんを囮にして逃げればいいんだし、気楽にいこうよ」
「それもそうだな」
陸人達はオーガストを置いて丘を下り、それぞれ別々の方向からリザ達一行に近付いて行った。
まず最初に、陸人が正面に立ちはだかる。案の定、リザ達は鳩が豆鉄砲を食らったみたいに驚いている。
「陸人…!なんであんた、ここにいるのよ!」
「ゆ…幽霊っすよ親分…!幽霊だあぁぁ!」
手下の男達は腰を抜かしてその場に座り込んでしまった。
「シメオン!今だ!」
陸人の合図と共に大木の上からシメオンが舞い降りてくる。
だが予想よりも早くリザは平静を取り戻した。
「動くな!」
彼女は即座に陸人を人質に取り、シメオンに攻撃の隙を与えなかった。
「それ以上こっちに来たら、今すぐこいつを石に変えるわよ!」
「そんなことしたら、三つ目の石が手に入らなくなるよ?」
陸人の言葉に、リザの眉がピクリと動く。
「どういう意味よ?それ」
「三つ目の石、今僕が持ってるんだ。嘘じゃないよ、ほら」
陸人は右手の拳を開き、チラリと黄色い石を覗かせた。
とは言えこれは先ほど拾った石を着色しただけの偽物である。
だがリザは本物だと信じたらしい。
「あんた…いつの間に!」
「僕を今石に変えたら、手の中にあるこのデルタストーンが取れなくなっちゃうと思うけど、いいの?」
「ふん…。大人しく渡さないなら腕をへし折ってでも取るわ」
「そんなことしてみろ、お前の仲間も同じ目に遭うぞ!」
シメオンの声に、リザがハッとして顔を上げる。
腰を抜かした二人の手下は今や彼の人質になっていた。
「仲間を殺されたくなければさっさと奪ったデルタストーンを返すんだ!」
「汚いわよ、あんた達!主人公サイドがそんな卑劣な手を使っていいわけ?!」
「「いいんだよ!」」
怒りを露わにするリザを見て、陸人は少しホッとした。
もしリザが「そんな奴らが死んだって知るもんか」とあっさり仲間を見捨てる可能性だって多いにあったのだ。
―――リザは本当は良い子なんだ。不遇な環境のせいでつい非行に走ってしまっただけなんだ…。そう思うことにしよう。
「ね、リザ。ここは公平に、ジャンケンで決めよう」
「は?何言ってんの、あんた」
「手を使ってできる簡単な勝負だよ」
「知ってるわよ、それくらい!」
「じゃ、話は早いね。練習なしの一回勝負で、負けた方は持ってる石を相手に渡す。それじゃ準備はいい?」
「ふざけんじゃないわよ!そんな馬鹿げたゲーム、あたしはやらな――――」
「出っさなきゃ負けよー最初はグー!」
「えっ…ちょ…待っ――――!」
リザは陸人を解放し、とっさに臨戦態勢を整えた。
――――落ち着け、あたし!陸人は手に石を握ってるんだ…グーかチョキしか出せないはず。可能性として高いのはグーか…?いや、ちょっと無理してチョキを出すんじゃないか…?
「ジャーンケーンポン!」
悩んだ末、リザが出したのはグーだった。チョキなら負ける可能性もあるが、グーなら悪くてもあいこ、少なくとも負けることだけはない。
ところが陸人が出したのはパーだった。広げた手から黄金色の石がコロリと地面に転がり落ちる。
「あっ…やば、落としちゃった」
リザは勝負のことも忘れ、すぐさま石に手を伸ばした。
「いただき!」
「ずるいよ、リザ!負けたのは君の方なのに!」
「悪いのはマヌケなあんたよ。バーカ」
「なんだとー!複雑な家庭環境で苦しんだ挙句、非行に走ってしまった可哀想な少女だと思って甘く見ていれば…。君は根っからの“悪漢”だ!」
「は?!誰が“漢”だ!てめぇ!」
リザは杖を思い切りスイングし、陸人の急所に強烈な一撃を食らわせた。
「痛っっっ…てぇぇぇぇ!!何するんだよ!年頃の女の子がこんなことしていいと思ってるのか!」
「いいのよ!!」
「おい!卑怯だぞ!」
シメオンが拘束している男達の首をグイと締め上げる。
「あんたの手下がどうなってもいいのか?」
「そんなこと、させないわ」
リザは杖を突きだし、その先端をシメオンに真っすぐ向けた。
「シメオン!逃げて!石にされ――――」
陸人が言い終わらないうちにドサリと人が崩れ落ちる音がした。
だが、地面に崩れ落ちたのはシメオンではなく、リザだった。
「危ないところだったなぁ」
気絶してるリザを見下ろしながら、オーガストが朗らかに笑っていた。
「おじさん…!リザに何したの?」
「ちょっと眠ってもらっただけさ」
オーガストはリザのそばに屈みこみ、おもむろに彼女のポケットをまさぐり始めた。
「ちょっと、何してるの、おじさん…」
「何って、俺の石を探してるんだよ――――ああ、あった、あった…」
二つの石を回収するなり、何事もなかったかのように立ち去ろうとするオーガスト。
「おい!待てよおっさん!」
勿論、シメオンも陸人もみすみす彼を逃がさなかった。
「何さりげなく石持って立ち去ろうとしてんだよ!」
「やれやれ…」
オーガストが気だるそうに振り返る。
「わかっていないようだな。君達をここへ連れてきたのは誰だ?他でもない、この俺だ。そしてマトン君、君は今、誰のおかげで石化を免れた?他でもない、この俺だ。三人の中で一番役に立ったのは誰だ?どう見てもこの俺だ。よって、石を手にする権利があるのはこの俺しかいないだろう?」
「ふざけるのも大概にしろよ。お前は魔法が使えるんだからそれくらいのことできて当たり前なんだよ。自分一人の手柄だと思ったら大間違いだ。あの女に不意討ちを食らわすことができたのは、俺達が犠牲を払って隙を作ったからだろ!それと、俺をマトンと呼ぶな!」
「そうだ、そうだ」と陸人も同調した。
「サソリを顔に乗せながら爆睡するような非人間的な奴にやる石はない!」
「は?!サソリ?!っていうか“非人間的”の使い方おかしくないか?」
「おかしいのはあんたの頭…いや、面構えだ!ほら、さっさと石を出してよ!」
「まぁ、そこまで言うのなら返してやってもいいが…」
「本当?!ありがとう」
「待て待て。その代わりこちらの提示する条件を飲んでもらう」
「条件って?」
「一億メルンだ」
「は?」
「一億メルン払うのなら、この二つの石を君達に返してやろう」
「は?!一億て…!100メルンの食パン1万斤も買えるじゃないか!」
「いや、100万斤だろ!」
シメオンは即座に突っ込み、キッとオーガストを睨みつけた。
「ざけんじゃねーよ、おっさん!払えるかよ、そんな大金!」
「では、石のことは諦めるんだな」
「このクソ野郎!」
ゴロゴロゴロ…。
陸人達の怒りを体現化するかのように雷鳴が轟いた。
ポツリポツリと雨が降り始める。
「さて…雨も降ってきたことだし、そろそろ帰るか」
オーガストは陸人達の訴えを完全に無視し、けろりとした様子で転移魔法の準備を始めた。
「おい、おっさん!逃げるんじゃねーよ!石を返せ!」
シメオンが剣を振り上げる。
が、即座にオーガストは魔法で光のバリアを張った。
「ハハハ!羊であろうとなかろうと、君は俺には敵わんよ」
「んだと、クソじじい!!」
「悪態ついてる場合じゃないよ、シメオン。何か阻止する方法を考えないと!」
「その方法がねーから悪態ついてんだよ!」
「うーん…。何か良い方法は―――ああ、ダメだ。雨が顔に当たって集中できない!」
『それならとびきり良い方法があるぞ』
突然ジャン・ダッシュが陸人の心に語りかけてきた。
『このような雨天時にしか発動できない特別な技だ。その名も“強烈必殺剣【水神の零落】”』
――――いつものごとく技名の響きだけは強そうだね。じゃあ、取り合えずそれ発動してよ。
『御意』
瞬く間に巻物が透明な剣へと変形していく。
感触は柔らかく、こんにゃくのようにぶにゃぶにゃしていて気持ち悪い。
―――大丈夫かな?バリアに弾かれたりしない?
『あの即席のバリアは物理的な攻撃しか防げないものだ。強烈必殺剣は魔法の力を持つ魔法剣だから、問題ない』
――――そっか、それなら大丈夫だね。
陸人は油断しているオーガストに近付いて行き、その頭上目掛けて勢いよく剣を振り下ろした。
瞬間、地面から水柱が現れた。
水流は螺旋状に渦を巻きながらオーガストを包み込んでいく―――――
それらしき三人の影が近付いてくるを発見したのは、正午過ぎ。オーガストが呑気に昼寝をしている時だった。
「おい、起きろ、おっさん」
オーガストをつま先で突きながら、シメオンが腰の大剣を抜いて臨戦態勢を整える。
陸人も巻物を握りしめ、ジャン・ダッシュとコンタクトを取った。
――――いざという時は、またあのすごい剣に変形してほしいんだけど、いいかな?
『なんだ、“すごい剣”とは』
――――シメオンを羊にしたときの、あの狼の剣だよ。
『ああ、“究極必殺剣【狼牙の餌食】”か。それなら無理だ』
――――え?なんでだよ!
『前にも言ったがあれは月光の力を借りて発動させるものなのだ。今、空に月はあるか?いや、どう見てもないだろう。だが一撃必殺剣にならいつでも変形できるぞ』
――――はぁ…。わかった、それでいいよ…。
「おい、陸人。あのおっさん起きないぞ。死んでるんじゃないか?」
「そんな馬鹿な。僕たちに協力したくないから、狸寝入りしてるだけなんじゃない?」
「さっき顔の上にサソリを這わせてみたが、びくともしなかったぞ」
「そっか、それならガチ寝だね。とりあえず作戦は実行しよう。おじさんが出番までに起きてくれることを祈るしかないよ」
「チッ…。肝心な時に爆睡しやがって、あの野郎。仮に起きてきたとしても、寝起きの状態じゃ期待できないぞ」
「ま、いざとなったらおじさんを囮にして逃げればいいんだし、気楽にいこうよ」
「それもそうだな」
陸人達はオーガストを置いて丘を下り、それぞれ別々の方向からリザ達一行に近付いて行った。
まず最初に、陸人が正面に立ちはだかる。案の定、リザ達は鳩が豆鉄砲を食らったみたいに驚いている。
「陸人…!なんであんた、ここにいるのよ!」
「ゆ…幽霊っすよ親分…!幽霊だあぁぁ!」
手下の男達は腰を抜かしてその場に座り込んでしまった。
「シメオン!今だ!」
陸人の合図と共に大木の上からシメオンが舞い降りてくる。
だが予想よりも早くリザは平静を取り戻した。
「動くな!」
彼女は即座に陸人を人質に取り、シメオンに攻撃の隙を与えなかった。
「それ以上こっちに来たら、今すぐこいつを石に変えるわよ!」
「そんなことしたら、三つ目の石が手に入らなくなるよ?」
陸人の言葉に、リザの眉がピクリと動く。
「どういう意味よ?それ」
「三つ目の石、今僕が持ってるんだ。嘘じゃないよ、ほら」
陸人は右手の拳を開き、チラリと黄色い石を覗かせた。
とは言えこれは先ほど拾った石を着色しただけの偽物である。
だがリザは本物だと信じたらしい。
「あんた…いつの間に!」
「僕を今石に変えたら、手の中にあるこのデルタストーンが取れなくなっちゃうと思うけど、いいの?」
「ふん…。大人しく渡さないなら腕をへし折ってでも取るわ」
「そんなことしてみろ、お前の仲間も同じ目に遭うぞ!」
シメオンの声に、リザがハッとして顔を上げる。
腰を抜かした二人の手下は今や彼の人質になっていた。
「仲間を殺されたくなければさっさと奪ったデルタストーンを返すんだ!」
「汚いわよ、あんた達!主人公サイドがそんな卑劣な手を使っていいわけ?!」
「「いいんだよ!」」
怒りを露わにするリザを見て、陸人は少しホッとした。
もしリザが「そんな奴らが死んだって知るもんか」とあっさり仲間を見捨てる可能性だって多いにあったのだ。
―――リザは本当は良い子なんだ。不遇な環境のせいでつい非行に走ってしまっただけなんだ…。そう思うことにしよう。
「ね、リザ。ここは公平に、ジャンケンで決めよう」
「は?何言ってんの、あんた」
「手を使ってできる簡単な勝負だよ」
「知ってるわよ、それくらい!」
「じゃ、話は早いね。練習なしの一回勝負で、負けた方は持ってる石を相手に渡す。それじゃ準備はいい?」
「ふざけんじゃないわよ!そんな馬鹿げたゲーム、あたしはやらな――――」
「出っさなきゃ負けよー最初はグー!」
「えっ…ちょ…待っ――――!」
リザは陸人を解放し、とっさに臨戦態勢を整えた。
――――落ち着け、あたし!陸人は手に石を握ってるんだ…グーかチョキしか出せないはず。可能性として高いのはグーか…?いや、ちょっと無理してチョキを出すんじゃないか…?
「ジャーンケーンポン!」
悩んだ末、リザが出したのはグーだった。チョキなら負ける可能性もあるが、グーなら悪くてもあいこ、少なくとも負けることだけはない。
ところが陸人が出したのはパーだった。広げた手から黄金色の石がコロリと地面に転がり落ちる。
「あっ…やば、落としちゃった」
リザは勝負のことも忘れ、すぐさま石に手を伸ばした。
「いただき!」
「ずるいよ、リザ!負けたのは君の方なのに!」
「悪いのはマヌケなあんたよ。バーカ」
「なんだとー!複雑な家庭環境で苦しんだ挙句、非行に走ってしまった可哀想な少女だと思って甘く見ていれば…。君は根っからの“悪漢”だ!」
「は?!誰が“漢”だ!てめぇ!」
リザは杖を思い切りスイングし、陸人の急所に強烈な一撃を食らわせた。
「痛っっっ…てぇぇぇぇ!!何するんだよ!年頃の女の子がこんなことしていいと思ってるのか!」
「いいのよ!!」
「おい!卑怯だぞ!」
シメオンが拘束している男達の首をグイと締め上げる。
「あんたの手下がどうなってもいいのか?」
「そんなこと、させないわ」
リザは杖を突きだし、その先端をシメオンに真っすぐ向けた。
「シメオン!逃げて!石にされ――――」
陸人が言い終わらないうちにドサリと人が崩れ落ちる音がした。
だが、地面に崩れ落ちたのはシメオンではなく、リザだった。
「危ないところだったなぁ」
気絶してるリザを見下ろしながら、オーガストが朗らかに笑っていた。
「おじさん…!リザに何したの?」
「ちょっと眠ってもらっただけさ」
オーガストはリザのそばに屈みこみ、おもむろに彼女のポケットをまさぐり始めた。
「ちょっと、何してるの、おじさん…」
「何って、俺の石を探してるんだよ――――ああ、あった、あった…」
二つの石を回収するなり、何事もなかったかのように立ち去ろうとするオーガスト。
「おい!待てよおっさん!」
勿論、シメオンも陸人もみすみす彼を逃がさなかった。
「何さりげなく石持って立ち去ろうとしてんだよ!」
「やれやれ…」
オーガストが気だるそうに振り返る。
「わかっていないようだな。君達をここへ連れてきたのは誰だ?他でもない、この俺だ。そしてマトン君、君は今、誰のおかげで石化を免れた?他でもない、この俺だ。三人の中で一番役に立ったのは誰だ?どう見てもこの俺だ。よって、石を手にする権利があるのはこの俺しかいないだろう?」
「ふざけるのも大概にしろよ。お前は魔法が使えるんだからそれくらいのことできて当たり前なんだよ。自分一人の手柄だと思ったら大間違いだ。あの女に不意討ちを食らわすことができたのは、俺達が犠牲を払って隙を作ったからだろ!それと、俺をマトンと呼ぶな!」
「そうだ、そうだ」と陸人も同調した。
「サソリを顔に乗せながら爆睡するような非人間的な奴にやる石はない!」
「は?!サソリ?!っていうか“非人間的”の使い方おかしくないか?」
「おかしいのはあんたの頭…いや、面構えだ!ほら、さっさと石を出してよ!」
「まぁ、そこまで言うのなら返してやってもいいが…」
「本当?!ありがとう」
「待て待て。その代わりこちらの提示する条件を飲んでもらう」
「条件って?」
「一億メルンだ」
「は?」
「一億メルン払うのなら、この二つの石を君達に返してやろう」
「は?!一億て…!100メルンの食パン1万斤も買えるじゃないか!」
「いや、100万斤だろ!」
シメオンは即座に突っ込み、キッとオーガストを睨みつけた。
「ざけんじゃねーよ、おっさん!払えるかよ、そんな大金!」
「では、石のことは諦めるんだな」
「このクソ野郎!」
ゴロゴロゴロ…。
陸人達の怒りを体現化するかのように雷鳴が轟いた。
ポツリポツリと雨が降り始める。
「さて…雨も降ってきたことだし、そろそろ帰るか」
オーガストは陸人達の訴えを完全に無視し、けろりとした様子で転移魔法の準備を始めた。
「おい、おっさん!逃げるんじゃねーよ!石を返せ!」
シメオンが剣を振り上げる。
が、即座にオーガストは魔法で光のバリアを張った。
「ハハハ!羊であろうとなかろうと、君は俺には敵わんよ」
「んだと、クソじじい!!」
「悪態ついてる場合じゃないよ、シメオン。何か阻止する方法を考えないと!」
「その方法がねーから悪態ついてんだよ!」
「うーん…。何か良い方法は―――ああ、ダメだ。雨が顔に当たって集中できない!」
『それならとびきり良い方法があるぞ』
突然ジャン・ダッシュが陸人の心に語りかけてきた。
『このような雨天時にしか発動できない特別な技だ。その名も“強烈必殺剣【水神の零落】”』
――――いつものごとく技名の響きだけは強そうだね。じゃあ、取り合えずそれ発動してよ。
『御意』
瞬く間に巻物が透明な剣へと変形していく。
感触は柔らかく、こんにゃくのようにぶにゃぶにゃしていて気持ち悪い。
―――大丈夫かな?バリアに弾かれたりしない?
『あの即席のバリアは物理的な攻撃しか防げないものだ。強烈必殺剣は魔法の力を持つ魔法剣だから、問題ない』
――――そっか、それなら大丈夫だね。
陸人は油断しているオーガストに近付いて行き、その頭上目掛けて勢いよく剣を振り下ろした。
瞬間、地面から水柱が現れた。
水流は螺旋状に渦を巻きながらオーガストを包み込んでいく―――――
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