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第21話 簀巻きにされて川に流されるぞ
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「疲れたよ…。お腹空いたよ…」
夜道を歩きながら、陸人はいつものごとく弱音を吐いていた。
オルガノ草原を発っておよそ10時間。
陸人、シメオン、オーガストの三人は次なる目的地アウロスの里を目指して北上し続けている。地図によると、この里に三つ目のデルタストーンが眠っているらしいのだ。
「はぁ…腹減ったなぁ…」
河童―――もといオーガストは木の枝をかじって空腹を紛わしている。
「これがチュロスだったらなぁ…」
「ねぇ、おじさんの転移魔法でアウロスまでひとっ飛びできないの?」
「今は空腹でそれどころではない…」
「じゃあ、町に寄って何か食べ物調達してこようよ。ねぇ、シメオン!」
陸人は先ほど月明りを浴びて羊化した彼を小突いた。しかし――――
「もう路銀が底をついてるんだ。そんな贅沢する余裕はない」
「ではちょろまかしてくるしかないな。シメオン、陸人、君達には見張りを頼もう」
「やめておけ。見つかったら簀巻きにされて川に流されるぞ」
「そうだよ、ちゃんとお金稼ごうよ!」
陸人は二匹に向かって意気盛んに呼びかけた。
「羊ショーとか河童ショーなんてどう?どっかのパブでステージ借りてさ」
「ぶん殴るぞ」
「ごめんごめん、冗談だよ」
「いや、良いアイデアではないか」
オーガストの方は乗り気だ。
「羊の火の輪くぐりショーなんてウケるんじゃないか?」
「うん!いいね!」
「よくねーよ!お前らだけでやってろ!」
「では火の輪はやめて、ただの輪くぐりショーにしよう。これならやってくれるだろう?」
「やんねーよ!」
「じゃあ、どんな輪ならくぐってくれるのさ?ドーナツとか?」
「やらねーって言ってるだろ」
「チョコドーナツならどうだ?」
「おい、いい加減にしろよ?」
と、シメオンが声を荒らげたその時だった。
突如白煙が発生し、煙の向こうから人影が近付いてきたのである。
「ま…魔物かな?」
陸人は慌ててシメオンとオーガストの背後に回った。
影はどんどんこちらに近付いてくる。
「こんばんは、みなさん!良い夜ですね!」
爽やかな声と共に、白装束を身に纏った坊主頭の少年が満面の笑みで姿を現した。
「えっと…誰…?」
「あっ、申し遅れました、僕はテディといいます。みなさんに会えてとても光栄です!」
「よろしく、テディ。っていうか君、今どこから現れたの?煙と一緒に突然現れたよね?」
「はい!みなさんに会えてとても光栄です!」
陸人達は眉を寄せ、互いに顔を見合わせた。
「おい、このガキちょっと頭おかしいぞ」
「ふむ、同感だ。この百鬼夜行を見てまったく驚かんとは…」
「そういう意味じゃねーよ。つーか化け物はお前だけだろ、河童」
「そうだよ。少なくとも僕は人間だし―――」
「あのぉ~、もしもーし?」
少年が笑顔で陸人の背中にすり寄ってくる。
「えっ…と――――何かな?」
「もしかして、みなさんお腹が空いてるんじゃないですか?」
少年は淀みのない口調でペラペラと喋り始めた。
「見たところ随分お疲れのようですね?最近はあまり美味しいものを食べていないんじゃないですか?もしよかったら今夜は僕の家に泊まりませんか?美味しいご飯をたくさんご馳走しますよ。ふわふわの甘ーいドーナツもありますよ~」
シメオンがギロリと少年を睨み付ける。
「てめぇ…どういう魂胆―――」
「「はい!是非お願いします!」」
シメオンを遮って陸人とオーガストは即答した。“ふわふわの甘ーいドーナツ”の誘惑にはどうしても勝てなかったのである。
「わぁ、よかった!じゃあ、これに乗ってくれますか?」
テディは背中の後ろから大きな円盤状の物体を取り出して地面に置いた。
「これ、何?お掃除ロボット?」
「“転送盤”です。目的地の座標を設定して片足を乗せるだけで瞬間的にその場所へ移動することができます。これを使えばアウロスにある僕の家までひとっ飛びですよ」
「アウロス?ちょうどよかった!僕らアウロス目指して旅してたんだ。っていうか、そんな便利な道具あるんだね!転移魔法いらないじゃん!」
「おいおい陸人、転送盤は超高額商品だぞ」
オーガストがこっそり補足する。
「確か、5000万メルンは下らないはずだ。おまけに年間維持費も馬鹿にならない」
「っていうことは、君相当お金持ちの家の子なんだね!」
「いや~そんなことないですよ。お父さんがアウロスの里で里長やってるだけですから」
「えっ、充分すごいじゃん!っていうか、なんで僕達なんかを招待してくれるの?」
「まぁ、細かい話は置いといて、取り合えず転送盤に足乗せていただけませんか?」
さすがに陸人はちょっと怪しいと思い始めた。
しかしドーナツに目の眩んだオーガストは躊躇なく転送盤に足を乗せた。
「あっ、おじさん!」
オーガストは円盤に吸い込まれるようにして消えていった。
「さぁ、あなた達も早く!」
陸人はシメオンと視線を通わせた。
“やめておいた方がいい。これは罠だ”――――彼の瞳はそう言っていた。
「テディ、悪いけどやっぱり遠慮させてもらうよ」
「どうしてですか?もしかして、転送盤に乗るのが怖いんですか?」
「えっ?いや、そういうわけじゃなくて―――」
「勇気を出して!僕がお手伝いしてあげますよ。えいっ!」
テディは目にも止まらぬ速さで陸人達の背後へ回り、二つの背中を思いきり押した。
「「うわぁぁっ!」」
陸人とシメオンは強制的に転送盤に乗せられ、アウロスの里に飛ばされてしまったのであった。
夜道を歩きながら、陸人はいつものごとく弱音を吐いていた。
オルガノ草原を発っておよそ10時間。
陸人、シメオン、オーガストの三人は次なる目的地アウロスの里を目指して北上し続けている。地図によると、この里に三つ目のデルタストーンが眠っているらしいのだ。
「はぁ…腹減ったなぁ…」
河童―――もといオーガストは木の枝をかじって空腹を紛わしている。
「これがチュロスだったらなぁ…」
「ねぇ、おじさんの転移魔法でアウロスまでひとっ飛びできないの?」
「今は空腹でそれどころではない…」
「じゃあ、町に寄って何か食べ物調達してこようよ。ねぇ、シメオン!」
陸人は先ほど月明りを浴びて羊化した彼を小突いた。しかし――――
「もう路銀が底をついてるんだ。そんな贅沢する余裕はない」
「ではちょろまかしてくるしかないな。シメオン、陸人、君達には見張りを頼もう」
「やめておけ。見つかったら簀巻きにされて川に流されるぞ」
「そうだよ、ちゃんとお金稼ごうよ!」
陸人は二匹に向かって意気盛んに呼びかけた。
「羊ショーとか河童ショーなんてどう?どっかのパブでステージ借りてさ」
「ぶん殴るぞ」
「ごめんごめん、冗談だよ」
「いや、良いアイデアではないか」
オーガストの方は乗り気だ。
「羊の火の輪くぐりショーなんてウケるんじゃないか?」
「うん!いいね!」
「よくねーよ!お前らだけでやってろ!」
「では火の輪はやめて、ただの輪くぐりショーにしよう。これならやってくれるだろう?」
「やんねーよ!」
「じゃあ、どんな輪ならくぐってくれるのさ?ドーナツとか?」
「やらねーって言ってるだろ」
「チョコドーナツならどうだ?」
「おい、いい加減にしろよ?」
と、シメオンが声を荒らげたその時だった。
突如白煙が発生し、煙の向こうから人影が近付いてきたのである。
「ま…魔物かな?」
陸人は慌ててシメオンとオーガストの背後に回った。
影はどんどんこちらに近付いてくる。
「こんばんは、みなさん!良い夜ですね!」
爽やかな声と共に、白装束を身に纏った坊主頭の少年が満面の笑みで姿を現した。
「えっと…誰…?」
「あっ、申し遅れました、僕はテディといいます。みなさんに会えてとても光栄です!」
「よろしく、テディ。っていうか君、今どこから現れたの?煙と一緒に突然現れたよね?」
「はい!みなさんに会えてとても光栄です!」
陸人達は眉を寄せ、互いに顔を見合わせた。
「おい、このガキちょっと頭おかしいぞ」
「ふむ、同感だ。この百鬼夜行を見てまったく驚かんとは…」
「そういう意味じゃねーよ。つーか化け物はお前だけだろ、河童」
「そうだよ。少なくとも僕は人間だし―――」
「あのぉ~、もしもーし?」
少年が笑顔で陸人の背中にすり寄ってくる。
「えっ…と――――何かな?」
「もしかして、みなさんお腹が空いてるんじゃないですか?」
少年は淀みのない口調でペラペラと喋り始めた。
「見たところ随分お疲れのようですね?最近はあまり美味しいものを食べていないんじゃないですか?もしよかったら今夜は僕の家に泊まりませんか?美味しいご飯をたくさんご馳走しますよ。ふわふわの甘ーいドーナツもありますよ~」
シメオンがギロリと少年を睨み付ける。
「てめぇ…どういう魂胆―――」
「「はい!是非お願いします!」」
シメオンを遮って陸人とオーガストは即答した。“ふわふわの甘ーいドーナツ”の誘惑にはどうしても勝てなかったのである。
「わぁ、よかった!じゃあ、これに乗ってくれますか?」
テディは背中の後ろから大きな円盤状の物体を取り出して地面に置いた。
「これ、何?お掃除ロボット?」
「“転送盤”です。目的地の座標を設定して片足を乗せるだけで瞬間的にその場所へ移動することができます。これを使えばアウロスにある僕の家までひとっ飛びですよ」
「アウロス?ちょうどよかった!僕らアウロス目指して旅してたんだ。っていうか、そんな便利な道具あるんだね!転移魔法いらないじゃん!」
「おいおい陸人、転送盤は超高額商品だぞ」
オーガストがこっそり補足する。
「確か、5000万メルンは下らないはずだ。おまけに年間維持費も馬鹿にならない」
「っていうことは、君相当お金持ちの家の子なんだね!」
「いや~そんなことないですよ。お父さんがアウロスの里で里長やってるだけですから」
「えっ、充分すごいじゃん!っていうか、なんで僕達なんかを招待してくれるの?」
「まぁ、細かい話は置いといて、取り合えず転送盤に足乗せていただけませんか?」
さすがに陸人はちょっと怪しいと思い始めた。
しかしドーナツに目の眩んだオーガストは躊躇なく転送盤に足を乗せた。
「あっ、おじさん!」
オーガストは円盤に吸い込まれるようにして消えていった。
「さぁ、あなた達も早く!」
陸人はシメオンと視線を通わせた。
“やめておいた方がいい。これは罠だ”――――彼の瞳はそう言っていた。
「テディ、悪いけどやっぱり遠慮させてもらうよ」
「どうしてですか?もしかして、転送盤に乗るのが怖いんですか?」
「えっ?いや、そういうわけじゃなくて―――」
「勇気を出して!僕がお手伝いしてあげますよ。えいっ!」
テディは目にも止まらぬ速さで陸人達の背後へ回り、二つの背中を思いきり押した。
「「うわぁぁっ!」」
陸人とシメオンは強制的に転送盤に乗せられ、アウロスの里に飛ばされてしまったのであった。
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