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♯26「噂にとらわれる者」
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[北唐野街・怪異現象相談室]
湯気立つインスタントコーヒーが四つ、机の上で常温へのカウントダウンを刻む。旭は正面のソファに座る依頼人に問いかけた。
「それじゃあ詳しく聞こうか。依頼とやらを」
「…っす」
依頼人—大川 奈津はやや緊張した面持ちで返事をした。そのすぐ隣では、同伴者として澁谷 美久が心配の目を向けている。同時に旭は紡を肘で軽く突き、「メモを取りな、助手くん」とでも言いたげに微笑んだ。
「…突然っすけど、お二人はドッペルゲンガーって知ってますか?」
「ド、ドッペルゲンガー?」
紡は弾けるように呟いた。無論存在は知っている。要は自分と同じ人間がもう一人いるっていう…一種の都市伝説だ。
「一年ぐらい前から、あたしの身の回りで変なことばっかり起こるんです。
借りてもないのに図書室から本の返却を催促するプリントが発行されたり。
持久走の授業の時、自分の順番が来る前に私のタイムが記録されていたり。
かけたはずのない友達のスマホに何故か私の番号から電話がかかってきたり…」
彼女はそっと口を噤んだ。これ以上はキリがない、といった表情を見せる。旭は口元を片手で挟むように覆い、何かを考えてから聞き尋ねた。
「話してくれてありがとう。まずは可能性から潰していこうか。
最初の本の件。それは図書室側のミスでは無いんだね?」
「ええ。私の友達——まあ美久なんですけど——曰く、貸し出しを記録する名簿にしっかり日付と私の名前が記載されていたそうです。私もこの目で確認しました。けどその日は図書室行ってないし…第一手元にもそんな本はありません」
どこか怯えているのか、奈津は扉を開けた時とはえらく違う真剣な身振りで説明した。同じ元気系でも初奈とは違って、感情の上下を上手くコントロール出来るタイプらしい。
「次、持久走の件。記録係か先生が書く欄を間違えた可能性は?」
「んー…一概にも否定しきれないっすけど、まあありえないと思います。記録は係じゃなくて走った後に自分で書くスタイルでしたし、字もあたしのものとそっくりでした。なんなら、実際に走った結果と全く同じ記録がされてたんすよ」
加えて彼女は、先に走り終わった誰かが奈津の記録を代筆したのではないか、という紡の一考を軽くいなした。前述した通り字が奈津のものだった事実と、自分が一番初めに走り終わったという運動音痴の紡では到底考え付かなかった真実のせいだ。
「ふむふむ。最後、電話の件。詳しくどうぞ」
「はい。ちょっと前にショッピングセンターで爆発事故が起きたじゃないですか。あの日、私は友達二人と一緒にそのショッピングセンターにいたんです」
紡は苦悶の表情を見せないよう顔を背けた。爆発に巻き込まれたとか怪我したという言葉は、その件を間近で観測した紡にとっては酷く突き刺さる。
「フードコートでお昼ご飯を済ませた頃…突然友達二人のスマホがけたたましく鳴り出しました。二人は電話に出たものの、聞こえてくるのは荒々しい砂嵐のみ。
通話画面には電話番号だけが書いてあって、見るとそれが私の電話番号だって事に気付きました」
奈津は震え出す腕をもう一方の手でギュッと握りしめた。
「い、急いで自分のスマホを確認しても、電話中のアイコンどころか通話記録すら残ってなくて…その日は怖くなって、みんな蜘蛛の子を散らしたように家に帰りました」
時間の観点から見て、どうやら爆発事故はその後に起こったらしい。奇妙な話ではあったが、ひとまずあのたい焼き纏の被害に遭っていなかっただけマシだと言えよう。
「なるほどねえ。それらを踏まえて、君は自分の生き写し…あるいはドッペルゲンガーの仕業だと思った訳だ」
旭は口籠る奈津の代わりに話を締めた。それで美久に相談したところ怪異現象相談室の存在を知り、友達同伴で相談しに来た…というのが大まかな経緯らしい。
まあ何となくは分かっていたが、あの日保健室で手渡した名刺がまさかこんな形で役に立つとは。
「ドッペルゲンガーじゃないとしたら、なんだと思う?」
旭の質問に、彼女はギョッと目を丸くする。考えてもみなかった事なのだろう。奈津は頭を冴えさせるため、「失礼します」と一言断ってから目の前のコーヒーをグイッと一息で飲み込んだ。
「ぶぐっ⁉︎」慣れない苦味に舌が悲鳴を上げる。
美久は嘔吐く彼女の背中を優しく摩ってあげた。よく知らないけど、それって吐く時にする動作じゃないのか?
というか、何の気なしに見ていたけど、本当に大丈夫なんだよなこのコーヒー…旭の事だし、何か入れててもおかしくないが。
「(あ、あの旭さん。このコーヒーって飲んでも体に支障きたさないですよね?)」
「(私を山姥か何かだと勘違いしてないかい?青年)」
耳打ちに耳打ちを返し、旭は立ち上がってキッチンへと向かう。持ってきたのはパックの牛乳だ。
「すまない。ブラックは口に合わなかったみたいだね。聞くのを忘れていたよ」
純白のミルクをコップに注ぎ、依頼人の手に握らせる。疑いは晴れないが、ただのブラックコーヒーだと言うのなら信じるしかあるまい。
「けほっ。ありがとうございます。それでえっと…ドッペルゲンガーじゃなかったら誰だと思うか、でしたっけ?」
奈津は目尻に涙を浮かべた。会話の内容が曖昧になるぐらい苦かったらしい。奈津は軽く考えてから答えた。
「んー。嫌がらせとしか考えられないっすけど…誰かまでは見当が付かないですね。あんま嫌われるような事はしてないと思うし」
メモ帳と睨めっこしながら話を耳に通す。見開き一ページに書ききれなくなり、紡は新しいページを開いた。
「澁谷 美久。君の見解は?」
「えっ、私ですか」
話が振られるとは思っていなかったのか、旭の方をばちくりする。美久は眼鏡の鼻当てを人差し指で押し上げた。
「なっちゃんは男女問わず好かれるし、苦労してまで虐めるような人はそうそういないと思います」
「ちょっ。やめーよ美久、恥ずいって!」
急な褒め言葉に頬が完熟トマト並みに赤く染まる。美久はフルスロットルで続けた。
「——いるとすれば《一派》みたいな無差別不良グループとか、或いはそれこそ…本物にすり替わりたいドッペルゲンガーとか」
美久は眼鏡の奥に悲哀の目を写した。友達がこんなに悩み、苦しんでいるのだから当然だ。
さて、彼女らの話からはいくつかの仮説を否定する根拠が見受けられた。旭も紡と同じような(もしくはより深い)事を考えていることだろう。ドッペルゲンガー…その正体は、否応無しに纏である可能性が高い。
「質問を変えよう。ここ最近急激に体温が高くなったり、体の内側から食い破られるような痛みを覚えたりしたかい?」
旭は質問を大きく切り替えた。纏が出現する合図として、その二つが当てはまるのはまず間違いなさそうだ。が、奈津はふるふるっと首を振った。
「いいえ、全く。あたしはいつも絶好調っすよ。ってそれなんの質問っすか?問診?」
彼女の素の笑顔を見る限り、きっと嘘はついていない。となれば、纏主は彼女じゃない……?
「ははっ。まあ医者みたいなもんだと思ってくれればいいよ。なあ助手くん」
「えっ、あはい?」
危うくメモに集中していて返事を逃す所だった。旭が医者、奈津が患者だとすれば、さしずめメモ帳は健康状態を記録する診療録って所か。
「ま、ともかく事情はよく分かった。あとはこっちで調査してみよう。何かあったら連絡をくれたまえ。すぐ駆けつけよう」
「はいっ、お願いします!」
奈津はソファからガバッと立ち上がり、振り子のように勢いよく頭を下げた。ワンテンポ遅れて美久も礼をする。
紡はそんな二人を見上げる旭の引き締まった横顔を見て、どういう訳だか勇気のようなものを感じ取った。
[北唐野街・怪異現象相談室]
紡は二人が扉を閉めたのを確認し、ふうっと息を吐いた。奈津も逼迫している様子だったが、こちらだって初の依頼なのだ。緊張しない筈もない。
「今回の依頼、どう見ますか?旭さん。纏絡みでしょうか」
旭は自分用のカップを手に取り、優雅にそれを口元へ運んだ。ビターな豆の風味が鼻を抜けていく。
「だろうね。話を聞く限り、もう一人の大川 奈津…即ちドッペルゲンガーを視認した事はないようだ。
そして—これはまだ推察でしかないが、纏の主は奈津ではない他の誰か。」
半分ほど飲んだブラックコーヒーを卓上のソーサーに起く。受け皿とカップがカチャンと陶器ならではの音を立てた。
「まずは聞き込みからだね。彼女の身辺を一度洗い出してみよう」
「えっ、そんな事出来るんですか?」
紡は少し引き気味に尋ねた。何らおかしいつもりもなく、旭は肩をすくめる。
「そりゃそうでしょ。君の家を訪ねた時だって、澁谷 美久の身辺調査のためだったんだから」
ああ、そういうことか。映画の見過ぎか、なんとなく情報屋とか諜報員から情報を買い取るのかと思っていた。
次回「遠くを見つめるもの」
湯気立つインスタントコーヒーが四つ、机の上で常温へのカウントダウンを刻む。旭は正面のソファに座る依頼人に問いかけた。
「それじゃあ詳しく聞こうか。依頼とやらを」
「…っす」
依頼人—大川 奈津はやや緊張した面持ちで返事をした。そのすぐ隣では、同伴者として澁谷 美久が心配の目を向けている。同時に旭は紡を肘で軽く突き、「メモを取りな、助手くん」とでも言いたげに微笑んだ。
「…突然っすけど、お二人はドッペルゲンガーって知ってますか?」
「ド、ドッペルゲンガー?」
紡は弾けるように呟いた。無論存在は知っている。要は自分と同じ人間がもう一人いるっていう…一種の都市伝説だ。
「一年ぐらい前から、あたしの身の回りで変なことばっかり起こるんです。
借りてもないのに図書室から本の返却を催促するプリントが発行されたり。
持久走の授業の時、自分の順番が来る前に私のタイムが記録されていたり。
かけたはずのない友達のスマホに何故か私の番号から電話がかかってきたり…」
彼女はそっと口を噤んだ。これ以上はキリがない、といった表情を見せる。旭は口元を片手で挟むように覆い、何かを考えてから聞き尋ねた。
「話してくれてありがとう。まずは可能性から潰していこうか。
最初の本の件。それは図書室側のミスでは無いんだね?」
「ええ。私の友達——まあ美久なんですけど——曰く、貸し出しを記録する名簿にしっかり日付と私の名前が記載されていたそうです。私もこの目で確認しました。けどその日は図書室行ってないし…第一手元にもそんな本はありません」
どこか怯えているのか、奈津は扉を開けた時とはえらく違う真剣な身振りで説明した。同じ元気系でも初奈とは違って、感情の上下を上手くコントロール出来るタイプらしい。
「次、持久走の件。記録係か先生が書く欄を間違えた可能性は?」
「んー…一概にも否定しきれないっすけど、まあありえないと思います。記録は係じゃなくて走った後に自分で書くスタイルでしたし、字もあたしのものとそっくりでした。なんなら、実際に走った結果と全く同じ記録がされてたんすよ」
加えて彼女は、先に走り終わった誰かが奈津の記録を代筆したのではないか、という紡の一考を軽くいなした。前述した通り字が奈津のものだった事実と、自分が一番初めに走り終わったという運動音痴の紡では到底考え付かなかった真実のせいだ。
「ふむふむ。最後、電話の件。詳しくどうぞ」
「はい。ちょっと前にショッピングセンターで爆発事故が起きたじゃないですか。あの日、私は友達二人と一緒にそのショッピングセンターにいたんです」
紡は苦悶の表情を見せないよう顔を背けた。爆発に巻き込まれたとか怪我したという言葉は、その件を間近で観測した紡にとっては酷く突き刺さる。
「フードコートでお昼ご飯を済ませた頃…突然友達二人のスマホがけたたましく鳴り出しました。二人は電話に出たものの、聞こえてくるのは荒々しい砂嵐のみ。
通話画面には電話番号だけが書いてあって、見るとそれが私の電話番号だって事に気付きました」
奈津は震え出す腕をもう一方の手でギュッと握りしめた。
「い、急いで自分のスマホを確認しても、電話中のアイコンどころか通話記録すら残ってなくて…その日は怖くなって、みんな蜘蛛の子を散らしたように家に帰りました」
時間の観点から見て、どうやら爆発事故はその後に起こったらしい。奇妙な話ではあったが、ひとまずあのたい焼き纏の被害に遭っていなかっただけマシだと言えよう。
「なるほどねえ。それらを踏まえて、君は自分の生き写し…あるいはドッペルゲンガーの仕業だと思った訳だ」
旭は口籠る奈津の代わりに話を締めた。それで美久に相談したところ怪異現象相談室の存在を知り、友達同伴で相談しに来た…というのが大まかな経緯らしい。
まあ何となくは分かっていたが、あの日保健室で手渡した名刺がまさかこんな形で役に立つとは。
「ドッペルゲンガーじゃないとしたら、なんだと思う?」
旭の質問に、彼女はギョッと目を丸くする。考えてもみなかった事なのだろう。奈津は頭を冴えさせるため、「失礼します」と一言断ってから目の前のコーヒーをグイッと一息で飲み込んだ。
「ぶぐっ⁉︎」慣れない苦味に舌が悲鳴を上げる。
美久は嘔吐く彼女の背中を優しく摩ってあげた。よく知らないけど、それって吐く時にする動作じゃないのか?
というか、何の気なしに見ていたけど、本当に大丈夫なんだよなこのコーヒー…旭の事だし、何か入れててもおかしくないが。
「(あ、あの旭さん。このコーヒーって飲んでも体に支障きたさないですよね?)」
「(私を山姥か何かだと勘違いしてないかい?青年)」
耳打ちに耳打ちを返し、旭は立ち上がってキッチンへと向かう。持ってきたのはパックの牛乳だ。
「すまない。ブラックは口に合わなかったみたいだね。聞くのを忘れていたよ」
純白のミルクをコップに注ぎ、依頼人の手に握らせる。疑いは晴れないが、ただのブラックコーヒーだと言うのなら信じるしかあるまい。
「けほっ。ありがとうございます。それでえっと…ドッペルゲンガーじゃなかったら誰だと思うか、でしたっけ?」
奈津は目尻に涙を浮かべた。会話の内容が曖昧になるぐらい苦かったらしい。奈津は軽く考えてから答えた。
「んー。嫌がらせとしか考えられないっすけど…誰かまでは見当が付かないですね。あんま嫌われるような事はしてないと思うし」
メモ帳と睨めっこしながら話を耳に通す。見開き一ページに書ききれなくなり、紡は新しいページを開いた。
「澁谷 美久。君の見解は?」
「えっ、私ですか」
話が振られるとは思っていなかったのか、旭の方をばちくりする。美久は眼鏡の鼻当てを人差し指で押し上げた。
「なっちゃんは男女問わず好かれるし、苦労してまで虐めるような人はそうそういないと思います」
「ちょっ。やめーよ美久、恥ずいって!」
急な褒め言葉に頬が完熟トマト並みに赤く染まる。美久はフルスロットルで続けた。
「——いるとすれば《一派》みたいな無差別不良グループとか、或いはそれこそ…本物にすり替わりたいドッペルゲンガーとか」
美久は眼鏡の奥に悲哀の目を写した。友達がこんなに悩み、苦しんでいるのだから当然だ。
さて、彼女らの話からはいくつかの仮説を否定する根拠が見受けられた。旭も紡と同じような(もしくはより深い)事を考えていることだろう。ドッペルゲンガー…その正体は、否応無しに纏である可能性が高い。
「質問を変えよう。ここ最近急激に体温が高くなったり、体の内側から食い破られるような痛みを覚えたりしたかい?」
旭は質問を大きく切り替えた。纏が出現する合図として、その二つが当てはまるのはまず間違いなさそうだ。が、奈津はふるふるっと首を振った。
「いいえ、全く。あたしはいつも絶好調っすよ。ってそれなんの質問っすか?問診?」
彼女の素の笑顔を見る限り、きっと嘘はついていない。となれば、纏主は彼女じゃない……?
「ははっ。まあ医者みたいなもんだと思ってくれればいいよ。なあ助手くん」
「えっ、あはい?」
危うくメモに集中していて返事を逃す所だった。旭が医者、奈津が患者だとすれば、さしずめメモ帳は健康状態を記録する診療録って所か。
「ま、ともかく事情はよく分かった。あとはこっちで調査してみよう。何かあったら連絡をくれたまえ。すぐ駆けつけよう」
「はいっ、お願いします!」
奈津はソファからガバッと立ち上がり、振り子のように勢いよく頭を下げた。ワンテンポ遅れて美久も礼をする。
紡はそんな二人を見上げる旭の引き締まった横顔を見て、どういう訳だか勇気のようなものを感じ取った。
[北唐野街・怪異現象相談室]
紡は二人が扉を閉めたのを確認し、ふうっと息を吐いた。奈津も逼迫している様子だったが、こちらだって初の依頼なのだ。緊張しない筈もない。
「今回の依頼、どう見ますか?旭さん。纏絡みでしょうか」
旭は自分用のカップを手に取り、優雅にそれを口元へ運んだ。ビターな豆の風味が鼻を抜けていく。
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そして—これはまだ推察でしかないが、纏の主は奈津ではない他の誰か。」
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「えっ、そんな事出来るんですか?」
紡は少し引き気味に尋ねた。何らおかしいつもりもなく、旭は肩をすくめる。
「そりゃそうでしょ。君の家を訪ねた時だって、澁谷 美久の身辺調査のためだったんだから」
ああ、そういうことか。映画の見過ぎか、なんとなく情報屋とか諜報員から情報を買い取るのかと思っていた。
次回「遠くを見つめるもの」
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