8 / 20
第1章 鉱山都市ユヴァリー
第2話『VS赤鎧』
しおりを挟む「うわぁぁあああ! 来るな、来るなぁぁあ!」
「敵前逃亡は死罪って軍で習わなかった? 雷よ、槍となりて敵を穿て『雷槍』!」
「あばばばばばばばばばばば」
槍の形状に変化した雷が敵の胸部に突き刺さり、あっという間に黒焦げにして腐った焼き肉のような臭いが立ち込める。この魔法はFランク雷魔法の中では一番攻撃力が高いっぽいね。作った槍でそのまま近接戦闘も出来るかもしれない。
魔法の練習も兼ねて残っている兵士達とじっくり戦っていると、気付いた時には俺の周囲には誰もいなくなっていた。残すは奥の方でこちらを観戦している数名の兵士と赤鎧の騎士。あとは貴族服を着た本命らしき人物とその取り巻きっぽいネズミみたいな顔の男だけだ。
「よぉ・・・会いたかったぜクソ野郎!」
「そんな…もうここまで来るなんて!」
「き、貴様……おい貴様、どういうつもりだ貴様ぁぁぁ! 俺は次期ラヴェンダー領領主であるタカティン=フラーノ=ラヴェンダーだぞ! 貴様のような平民が貴族であるこの俺に逆らうのがどういう事か分かってるんだろうなぁ!!」
「知らんわそんなもん。おい豚貴族、お前にはあとで用があるからそこで大人しく待ってろよ? …先にお前だ」
メインディッシュは後にして、この豚貴族を守るように前に出てきた赤い全身鎧を身に纏った巨体の男に目を向ける。生き残っている兵士達は既に戦意を喪失している中、この赤鎧だけは俺の殺気を浴びても平然としていた。こいつなら少しは手応えがあるかもしれない。
「や、やってしまえハーミット軍事総長! このガキを殺せぇぇぇ!!」
「……御意」
赤鎧が手に持つ巨大な戦斧を構えると斧の刃が真っ赤に光り輝き、そこから炎が噴き出した。魔法武器ってやつかな?
「いいぞ。殺る気があるならかかって来い」クイクイッ
「……参る! うおおおおおおおっ!」
赤鎧は戦斧を振りかぶりながらダッシュで俺に向かってくる。全身鎧という重装備を着込んでるのにそこそこ速いのは素晴らしいが、俺に向けてくる殺気や体に纏っている気の練りなんかは全然温い。
「せぇぇりゃりゃりゃりゃりゃああああっ!!」
「甘い! って熱っつ!!」
赤鎧から連続で繰り出される戦斧を全て紙一重で躱しはしたが、斧に纏わせている炎が予想以上に熱い。地味に火傷したかもしれんな。
「・・・何故当たらぬ」
「俺がお前より強いからだ」
俺は気合と根性でその熱に耐えながら技の切れ目を突いて赤鎧の懐に入り込む。それに気付いた赤鎧が俺に殴り掛かろうとしてくるが、その判断は命取りだ。そこにいる俺は窪塚流『影贋』で作った残像であり、俺自身はもうお前の真後ろにいるんだからな。
「残像・・・後ろか!」
「遅いよ。窪塚流…『斬鋼』!」
「ぬううっ!?」
パキィイィィン!
「ちょ!?」
赤鎧が背後の俺に気付いた瞬間、俺の剣が赤鎧の胴を守る鎧ごと一息で体を分断した…かと思ったら、赤鎧に刃が触れた瞬間、俺の剣が粉々に砕けてしまった。どうやら奴の鎧の強度と俺の技の負荷に剣自体の耐久力が持たなかったっぽい。
「俺の…童貞喪失記念が…」
「…隙あり!」
赤鎧は背後にいる俺に向かって振り向く時の遠心力を利用して斧を横薙ぎに振り抜いてくる。だが俺はその攻撃をバク宙で華麗に避けながら後ろに飛んで距離を取った。記念品を失ったショックで少し反応が遅れたらしく、足をちょっと切られてしまったようだ。右脹脛が地味に痛い。
「…やるな。だが我が鎧は魔鋼を鍛えた秘宝級の業物。何人も斬る事など叶わぬ!」
「あぁそうかい……それじゃ鎧を斬るのは諦めるわ。別の手段でお前を潰す!」
まぁ武器がないから斬れないだけなんだけどね。素手でもやってやれない事はないけど、それよりも効率的な方法がある。
「赤鎧、宣言してやるよ。俺はここから真っ直ぐお前に突っ込んで攻撃する。迎撃出来るもんならやってみろ!」
「………来い」
さっきの俺の宣言には2つ理由がある。一つは俺の言葉に疑念を持たせて注意力を散らすこと。影贋を見たこいつは、実は正面から突っ込んでくる俺が偽物で、別の場所から攻めてくるかもしれないと思ってくれる・・・かもしれないからだ。
もう一つは・・・この世界での俺の強さを見極める為。この赤鎧はこの世界でも強い部類なんだろう。軍事総長とか呼ばれて魔法武器も持ってるし。こいつを普通に倒すことができるなら、俺は今の段階でもそこそこやれるって言うのが確認できる。
悪いが・・・実験台になってもらうぞ赤鎧。
俺はその場でクラウチングスタートの姿勢を取り、体内の氣を足に集中してその状態をキープする。筋肉を流体レベルにまで弛緩してから一気に緊張に転じると同時に低姿勢のまま足に集中した気を爆発させて赤鎧に突っ込んだ。力を借りるぜ板○先生!
「行くぜ赤鎧! 窪塚流『瞬光・改』!」
「!? ふんはぁぁぁあ!!」
赤鎧が俺の超速度に驚いたかのように斧を振り下ろすがもう遅い。斧が届く前に赤鎧に辿り着いた俺は、そのままの勢いで赤鎧の右足にレスリングタックルを喰らわせた。
「うおおおおっ!?」
体勢を崩してうつ伏せでその場に倒れる赤鎧。
「つっかまーえた♡」
「ぐっ・・・」
俺は捕らえた赤鎧の右足を両腕でしっかり抱き締めながら、足に気を全集中して赤鎧ごと上空にジャンプする。ちなみに俺の全力垂直跳びは20mを超える。
「貴様、一体何を・・・」
「すぐ分かる。だが・・・ちょっと痛いぞ? せぇぇりゃぁぁぁぁあ!」
上空でバランスを取りながら赤鎧の右足をがっちりホールドしつつ、それを軸に自分の全身を真横に高速回転させた。記念品を壊された恨みを込めながら何回も何回も何回も。
グルグルグルグルグルグルブチ、ブチブチブチィィィ!!
「ぐおおおおおおおっ!!!」
俺の高速横回転に耐えきれなくなった赤鎧の右足は、無残にも足の根元からエグい音と共に捻じ切れてしまった。これぞ窪塚流古流柔術『龍渦咆転』である。
失った右足の付根部分を痛そうに押さえながら地面に落下し、その場に蹲りながら呻き声をあげている赤鎧。着地してからその場に捻じ切った赤鎧の右足を捨てた俺は、近くに放置されていた赤鎧の戦斧を拝借してから彼の頭上で上段に構えた。
「…何か言い残すことがあるなら聞くけど?」
「……我の完敗だ。敵に命乞いをする気もない。・・・殺せ」
「そっか。お前…まぁまぁ強かったぜ」
赤鎧が覚悟を決めたように目を閉じたので、俺は迷わずその首に戦斧を振り下ろした。断ち切った赤鎧の頭から兜が落ちると、その顔は満足そうに口元を緩めている様に見えた。
偉大なる武人赤鎧(名前知らない)よ、実験に付き合ってくれてありがとう。おかげでそこそこ自身がついたよ。あと、お前の魂は俺がきっちり貰ってやるから安らかに眠ってくれ。
赤鎧の装備品を全て資産倉庫に仕舞ってから、本日のメインディッシュの元へと向かう。
「ば、馬鹿なッッ!! B級の魔物100匹を単独討伐したハーミット軍事総長があんなガキにぃい!?」
「たたたたたたタカティン様! 私は先に帰らせて頂ひぎゅっ!」
ネズミ男が俺に背中を見せて逃げようとしてたので、その背後に飛び込んで猪〇もビックリの速度で延髄斬りを喰らわせる。命中した瞬間、首を狙ったはずのネズミ男の頭が”パァンッ!”という破裂音を立てながら汚く弾け飛んでしまった。解せぬ。
豚貴族を守っていた兵士達は赤鎧を倒した時点で逃げちゃったみたいだし、これで残ったのは豚貴族ただ一人だ。
「コ、コウジュン!? コウジュンンンンンンッ!!」
「…さて、お前には少し用があるんだわ。ちょっと付き合ってもらうぞ?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる