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1部 おっかなびっくり放浪編
1 家族から見放されました
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舞踏会でヴィッセル王太子殿下の婚約者に選ばれなかった。
いまだその事実を受け入れられず、帰りの馬車の中で爪を噛んだ。
何が……何がいけなかったの?
「そんな……わたし……わたしが……ダンスどころか、殿下からお声掛けすらしてもらえなかっただなんて……お父様達が知ったら……」
妃教育の為に隣国から引き抜いた外国語教師や、特別な宮廷作法やダンスを身に付ける為にかけた時間。各国の礼儀作法を学ぶ為に莫大なお金もかけた。今年の春先から殿下と同じ王立貴族学園に入学する為、お父様から予算として与えられていた私の持参金も使い切った。
ここまでして選ばれなかった。いや、相手にすらされなかった──その舞踏会の帰り、あまりのショックに意識が途切れ掛けた瞬間、私は前世を思い出した。
「……くぁwせdrftgyふじこふじこ!!!」
頭の中に流れてくる膨大な情報。
それと同時に理解した。
ここは前世で散々プレイしたRPG型乙女ゲーム『恋と魔法のメリーゴーランド』の世界であると。
だってここは地球ではない架空のアルレント国──そして剣と魔法の世界──間違いない、私がハマってたゲームの世界だ。
『恋と魔法のメリーゴーランド』は、主人公であるマーガレット・パステルという激カワキャラで攻略対象者と恋をしながら、たまに即死級の罠を仕掛けてくる悪役令嬢アマリリス・ヒューテックをかわしつつ、魔法に特化したゲームを楽しむ、RPG型乙女ゲームだ。
恋と魔法……最後まで恋を頑張るか、途中で飽きて魔法を鍛え上げるか、どちらも乗り換えがきくのがこのゲームの醍醐味。
「……わたし……いや、私。異世界転生したの……よね?」
思考が遠いどこかへ漂流する。うぅ……これは誰の記憶だろう……流れ着いた先はアラフォー女の多忙な契約社員生活。あ、これわたし……私だ。肌荒れも気にせず睡眠時間を削ってゲーム三昧。たまの楽しみに居酒屋とカラオケ。あぁ……犬飼いたいけど今月の課金額がやばい。副業の内職増やさなきゃ──そこで意識が途切れ、階段から落ちたような気がす……現実の馬車の揺れに一瞬腰が浮き、ハッと我に返った。
チャラタャラーン♪
いま……頭の中にセーブデータがロードされる時のゲーム効果音がした。
それと同時に主人公のマーガレット・パステルがロード中に踊りながら発する「今日もがんばるぞー、えいえいおー!」という定例文も頭の中に入ってきた!
「これってまさか私っ……ステータス、オープン」
アマリリス・ヒューテック
15歳 公爵令嬢
HP 999520/999999
MP 999820/999890
【スキル】
生活魔法/火魔法/水魔法/鑑定
【未解放スキル】
雷魔法/毒魔法/氷魔法/身体強化/隠密/飛行/魔法強化/聖属性魔法/闇属性魔法/異空間魔法/転移魔法/聖霊術(土/植物/風/幻覚)
【取得可スキル】残957802354P
殺シリーズ……毒殺/失血/窒息/溺死/凍死/暗殺(各1000P)……▽クリック
「くぁwせdrftgyふじこふーじこちゃーん!」
現れた半透明パネル。
……流石だ。ほぼカンスト。
これが課金しまくったなれの果て。
前世のまんまですやん。
体は悪役令嬢アマリリス……なのに、中身の能力値は主人公のマーガレット・パステルとか……一体?
「お嬢様、どうかしましたか?」
再び奇声を発した私に、御者が面倒臭そうに小窓を開けてキチガイを見るような目を向けてきた。
……ふむ。
どうやらこのステータスは私にしか見えていないようね。好都合、好都合。
「なんでもありません」
「……そうですか………………フン、気でも違ったか」
うん。私、いまさっき王族の婚約者選びに敗退したからね。御者とはいえ、駒にもならなかった公爵令嬢相手にそんな態度になるのも当然か。
……あ、取得可スキル。クリック押したらまだ取得できそうなのが長々と出てきたわ。無詠唱、これ取得しておこう。
あと未解放スキルも。
物理障壁、魔法障壁、隠密、飛行、異空間魔法、転移魔法、聖霊術。
他にも地図、査定、直感、料理、洗浄、山歩き、水流使い、採取、探知、探索、威圧、夜目、ダメージ減とか作業高速化とか色々。
前世で戦いで使っていた殺シリーズも取得しているとヒューテック家の屋敷についた。
あ~ん。もっと吟味したかったのにぃ。
既に先触れが家族に渡っていたようで、待ち構えていたように施錠された門の内側に門兵と、その後ろに弟とお母様と、書状を持ったお父様が立っていた。
馬車が停止しても開門する気配がない。
降りて門の側までいくと、近付いてきた弟が「餞別だ」と言っていくつかの宝石を顔にぶん投げてきた。
「?」
宝石とはいえただの小石みたいものだ。
ノーダメージなので瞬きもせず黙っていたら弟に「ぷ」と笑われた。
……状況がわからない。
とりあえず無詠唱で鑑定と査定をする。
パールネックレス(銀貨7枚)
天然石(無価値)
鍍金チェーン(銀貨1枚)
え?
まさか餞別って……これ持って出てけってこと?
「姉上。今夜は殿下の婚約者に選ばれるから帰ってこれないって、出発前に家令に大口叩いてたよね? 僕も帰って来なくていいよって笑顔で送り出したけど、本当に帰ってきて欲しくなかった故の発言だからね。まぁ、いいや。実質、姉上は公爵家から追放ってこと、わかる?」
追放って……。
いや、前世を思い出した今だからこそノーダメージなんだけど、頭を探れば今世の記憶もある。弟とは仲良くもなく、悪くもなかった。お互いパーソナルスペースを守って何事も常識の範囲内で接してきたし、弟も接してきてた。だからこそ弟のその態度は人としてあかんのでは?と唖然とした。
「姉上って殿下の婚約者にならなかったら他に使い道ないよな。女だから跡取りにもなれないし、公爵令嬢ってだけで余所から婚約の打診がじゃんじゃんくる筈なのに、その顔と根暗な態度じゃ引き取り手もないよね」
弟……名前はヘンリー。黙ってれば金髪碧眼で大変見目麗しい。それが完全に上から目線で私を蔑み、舌打ちしてきた。
よし、こいつのステータスオープン!(鑑定)
ヘンリー・ヒューテック
14歳 公爵令息
HP 3009/3010
MP 2002/2111
【スキル】
火魔法/聞き耳
え……これだけ?
あ、でもゲーム初期値と比べたらまだマシか。鍛えてる村人とかでこれくらいだもんな。
話し掛けようと一歩近付くとお母様が扇子を閉じた。
「アマリリス、これまで時間と財力をかけて高度な教育を施してきたというのに、お前はヴィッセル殿下の婚約者に選ばれなかった──これがどれほど我がヒューテック公爵家に損害を与えたか、解っているの?」
お母様はもうお前はわたくしの娘じゃない、と汚いものを見るような目つきで吐き捨ててきた。
こちらも改めて見ると金髪碧眼ですっげー美人だな。んじゃ、鑑定してみようか。
ベゴニア・ヒューテック
39歳 公爵夫人
HP 1902/2088
MP 2907/2907
【スキル】
火魔法/治癒魔法/傲慢
ほぉー……治癒魔法。
そうだった。取得しておこう。
治癒魔法は魔力を多く使うから自動回復系がいいかな。
パネルで確認すると光神の加護(回復値100~100000)が出てきた。受けたダメージに対して自動で体力を補充してくれる優れものだ。元々は課金で手に入る能力だから既に持っていたみたいだ。P消費なく取得できた。
「アマリリス。全くッ……呆けよって。ヒューテック家の恥さらしが。お前は領地へ戻れ。明日には学園に休学届を出す。これで寮費くらいは払い戻しされるだろう。お前の使い道は後日報せる。それまでおとなしくしていろ」
アマリリスのお父様。いい声だ。舌打ちの発音も弟より格段に素晴らしい。外国にこんな俳優いそうだな。でも前世を思い出した今、金髪碧眼のオッサンに凄まれても現実味が無いなぁ。では鑑定。
ガルドラ・ヒューテック
41歳 公爵 元帥
HP 173220/180411
MP 20801/22005
【スキル】
火魔法/身体強化/弱体化/暗殺/指定追撃/マップ開拓/千里眼
ほぉー……ほうほうほう。
流石の元帥。それにマップ開拓ね。
辺りに自分の魔力を行き渡らせ地図を作るスキルね。おまけにただの地図と違って戦う魔獣に合わせた攻略型地図を作成してくれる便利なスキルだ。これを持ってるということはお父様は元帥として真面目に経験を積んだということだ。私はモンスターを倒した時にもらえる経験値、所謂Pが腐るほどあるので即取得した。
ついでに拒絶スキルも取得しておこう。
この男の持つ千里眼で居場所がバレて指定追撃されたら困るからね。
そう思ってパネルを出すとお父様がタイミングよく私の位置に干渉した。千里眼を常時発動にして……常に私を自分の監視下におきたいようだ。
「最後だ。何か要求はあるか?」
お父様がぶっきらぼうに言った。
何か────そうだ。ここで、アマリリス公爵令嬢は必死に家族にとりすがるんだ。選ばれなかったけれど、まだ殿下の婚約者は決まっていない、だから学園にいる三年間で、絶対にヴィッセル殿下に選ばれてみせると、ここで額を土に押し付けて家族に懇願するんだ。
"わたしはまだやれます! だって殿下の幼馴染ですもの! 彼だってわたしに対する情はあるはず! だから、いま一度……どうかチャンスを!"
最後の断罪シーンで処刑場にむかうアマリリスの回想から知っている。ここまで下手に出てもお母様からは無視され、弟からは『姉弟でも情すらないのに、幼馴染って……バっカじゃねーの! 死ねよ! アハハハ!』と返される。
しかしお父様からは『それでこそヒューテック家の人間だ』と、自ら門を開け、娘にチャンスを与える。
さて。どうしようか。
勿論このまま悪役令嬢として家に残る気はない。断罪されるのが解ってる乙女ゲームなんか始まらせるものか。
この家族にバーカ、バーカ、うんこ!と捨て台詞を吐いて飛行で飛び立ってやろうか。
そう考えたところで、スキル【直感】が発動する。採取とかで野良モンスターを前にした時、ほぼ舐めプなんだけど、たまにこれが発動する。
そんな時は近くにドラゴンがいたり、盗賊スキル持ちの運営の作ったプレイヤーがこちらが戦闘中の隙にアイテムを奪おうとしてきたり、まぁ、油断するなということだ。
直感が発動した、それでもステータス的にゴリ押しできるだろう、しかし今はまだこのガルドラという男は、舐めてはいけない気がした。
ゲームでは追い詰められると攻撃力を倍増させるアイテムを持ったドラゴンや、消滅する前に即死攻撃を仕掛けてくるアンデッドもいたのだ。
「いいえ。なにも……"今は"お父様に従います。領地に戻りますわ」
「そうか」
怪しまれないよう、掛けられた千里眼はそのままに。私はカーテシーをして馬車に戻った。
いまだその事実を受け入れられず、帰りの馬車の中で爪を噛んだ。
何が……何がいけなかったの?
「そんな……わたし……わたしが……ダンスどころか、殿下からお声掛けすらしてもらえなかっただなんて……お父様達が知ったら……」
妃教育の為に隣国から引き抜いた外国語教師や、特別な宮廷作法やダンスを身に付ける為にかけた時間。各国の礼儀作法を学ぶ為に莫大なお金もかけた。今年の春先から殿下と同じ王立貴族学園に入学する為、お父様から予算として与えられていた私の持参金も使い切った。
ここまでして選ばれなかった。いや、相手にすらされなかった──その舞踏会の帰り、あまりのショックに意識が途切れ掛けた瞬間、私は前世を思い出した。
「……くぁwせdrftgyふじこふじこ!!!」
頭の中に流れてくる膨大な情報。
それと同時に理解した。
ここは前世で散々プレイしたRPG型乙女ゲーム『恋と魔法のメリーゴーランド』の世界であると。
だってここは地球ではない架空のアルレント国──そして剣と魔法の世界──間違いない、私がハマってたゲームの世界だ。
『恋と魔法のメリーゴーランド』は、主人公であるマーガレット・パステルという激カワキャラで攻略対象者と恋をしながら、たまに即死級の罠を仕掛けてくる悪役令嬢アマリリス・ヒューテックをかわしつつ、魔法に特化したゲームを楽しむ、RPG型乙女ゲームだ。
恋と魔法……最後まで恋を頑張るか、途中で飽きて魔法を鍛え上げるか、どちらも乗り換えがきくのがこのゲームの醍醐味。
「……わたし……いや、私。異世界転生したの……よね?」
思考が遠いどこかへ漂流する。うぅ……これは誰の記憶だろう……流れ着いた先はアラフォー女の多忙な契約社員生活。あ、これわたし……私だ。肌荒れも気にせず睡眠時間を削ってゲーム三昧。たまの楽しみに居酒屋とカラオケ。あぁ……犬飼いたいけど今月の課金額がやばい。副業の内職増やさなきゃ──そこで意識が途切れ、階段から落ちたような気がす……現実の馬車の揺れに一瞬腰が浮き、ハッと我に返った。
チャラタャラーン♪
いま……頭の中にセーブデータがロードされる時のゲーム効果音がした。
それと同時に主人公のマーガレット・パステルがロード中に踊りながら発する「今日もがんばるぞー、えいえいおー!」という定例文も頭の中に入ってきた!
「これってまさか私っ……ステータス、オープン」
アマリリス・ヒューテック
15歳 公爵令嬢
HP 999520/999999
MP 999820/999890
【スキル】
生活魔法/火魔法/水魔法/鑑定
【未解放スキル】
雷魔法/毒魔法/氷魔法/身体強化/隠密/飛行/魔法強化/聖属性魔法/闇属性魔法/異空間魔法/転移魔法/聖霊術(土/植物/風/幻覚)
【取得可スキル】残957802354P
殺シリーズ……毒殺/失血/窒息/溺死/凍死/暗殺(各1000P)……▽クリック
「くぁwせdrftgyふじこふーじこちゃーん!」
現れた半透明パネル。
……流石だ。ほぼカンスト。
これが課金しまくったなれの果て。
前世のまんまですやん。
体は悪役令嬢アマリリス……なのに、中身の能力値は主人公のマーガレット・パステルとか……一体?
「お嬢様、どうかしましたか?」
再び奇声を発した私に、御者が面倒臭そうに小窓を開けてキチガイを見るような目を向けてきた。
……ふむ。
どうやらこのステータスは私にしか見えていないようね。好都合、好都合。
「なんでもありません」
「……そうですか………………フン、気でも違ったか」
うん。私、いまさっき王族の婚約者選びに敗退したからね。御者とはいえ、駒にもならなかった公爵令嬢相手にそんな態度になるのも当然か。
……あ、取得可スキル。クリック押したらまだ取得できそうなのが長々と出てきたわ。無詠唱、これ取得しておこう。
あと未解放スキルも。
物理障壁、魔法障壁、隠密、飛行、異空間魔法、転移魔法、聖霊術。
他にも地図、査定、直感、料理、洗浄、山歩き、水流使い、採取、探知、探索、威圧、夜目、ダメージ減とか作業高速化とか色々。
前世で戦いで使っていた殺シリーズも取得しているとヒューテック家の屋敷についた。
あ~ん。もっと吟味したかったのにぃ。
既に先触れが家族に渡っていたようで、待ち構えていたように施錠された門の内側に門兵と、その後ろに弟とお母様と、書状を持ったお父様が立っていた。
馬車が停止しても開門する気配がない。
降りて門の側までいくと、近付いてきた弟が「餞別だ」と言っていくつかの宝石を顔にぶん投げてきた。
「?」
宝石とはいえただの小石みたいものだ。
ノーダメージなので瞬きもせず黙っていたら弟に「ぷ」と笑われた。
……状況がわからない。
とりあえず無詠唱で鑑定と査定をする。
パールネックレス(銀貨7枚)
天然石(無価値)
鍍金チェーン(銀貨1枚)
え?
まさか餞別って……これ持って出てけってこと?
「姉上。今夜は殿下の婚約者に選ばれるから帰ってこれないって、出発前に家令に大口叩いてたよね? 僕も帰って来なくていいよって笑顔で送り出したけど、本当に帰ってきて欲しくなかった故の発言だからね。まぁ、いいや。実質、姉上は公爵家から追放ってこと、わかる?」
追放って……。
いや、前世を思い出した今だからこそノーダメージなんだけど、頭を探れば今世の記憶もある。弟とは仲良くもなく、悪くもなかった。お互いパーソナルスペースを守って何事も常識の範囲内で接してきたし、弟も接してきてた。だからこそ弟のその態度は人としてあかんのでは?と唖然とした。
「姉上って殿下の婚約者にならなかったら他に使い道ないよな。女だから跡取りにもなれないし、公爵令嬢ってだけで余所から婚約の打診がじゃんじゃんくる筈なのに、その顔と根暗な態度じゃ引き取り手もないよね」
弟……名前はヘンリー。黙ってれば金髪碧眼で大変見目麗しい。それが完全に上から目線で私を蔑み、舌打ちしてきた。
よし、こいつのステータスオープン!(鑑定)
ヘンリー・ヒューテック
14歳 公爵令息
HP 3009/3010
MP 2002/2111
【スキル】
火魔法/聞き耳
え……これだけ?
あ、でもゲーム初期値と比べたらまだマシか。鍛えてる村人とかでこれくらいだもんな。
話し掛けようと一歩近付くとお母様が扇子を閉じた。
「アマリリス、これまで時間と財力をかけて高度な教育を施してきたというのに、お前はヴィッセル殿下の婚約者に選ばれなかった──これがどれほど我がヒューテック公爵家に損害を与えたか、解っているの?」
お母様はもうお前はわたくしの娘じゃない、と汚いものを見るような目つきで吐き捨ててきた。
こちらも改めて見ると金髪碧眼ですっげー美人だな。んじゃ、鑑定してみようか。
ベゴニア・ヒューテック
39歳 公爵夫人
HP 1902/2088
MP 2907/2907
【スキル】
火魔法/治癒魔法/傲慢
ほぉー……治癒魔法。
そうだった。取得しておこう。
治癒魔法は魔力を多く使うから自動回復系がいいかな。
パネルで確認すると光神の加護(回復値100~100000)が出てきた。受けたダメージに対して自動で体力を補充してくれる優れものだ。元々は課金で手に入る能力だから既に持っていたみたいだ。P消費なく取得できた。
「アマリリス。全くッ……呆けよって。ヒューテック家の恥さらしが。お前は領地へ戻れ。明日には学園に休学届を出す。これで寮費くらいは払い戻しされるだろう。お前の使い道は後日報せる。それまでおとなしくしていろ」
アマリリスのお父様。いい声だ。舌打ちの発音も弟より格段に素晴らしい。外国にこんな俳優いそうだな。でも前世を思い出した今、金髪碧眼のオッサンに凄まれても現実味が無いなぁ。では鑑定。
ガルドラ・ヒューテック
41歳 公爵 元帥
HP 173220/180411
MP 20801/22005
【スキル】
火魔法/身体強化/弱体化/暗殺/指定追撃/マップ開拓/千里眼
ほぉー……ほうほうほう。
流石の元帥。それにマップ開拓ね。
辺りに自分の魔力を行き渡らせ地図を作るスキルね。おまけにただの地図と違って戦う魔獣に合わせた攻略型地図を作成してくれる便利なスキルだ。これを持ってるということはお父様は元帥として真面目に経験を積んだということだ。私はモンスターを倒した時にもらえる経験値、所謂Pが腐るほどあるので即取得した。
ついでに拒絶スキルも取得しておこう。
この男の持つ千里眼で居場所がバレて指定追撃されたら困るからね。
そう思ってパネルを出すとお父様がタイミングよく私の位置に干渉した。千里眼を常時発動にして……常に私を自分の監視下におきたいようだ。
「最後だ。何か要求はあるか?」
お父様がぶっきらぼうに言った。
何か────そうだ。ここで、アマリリス公爵令嬢は必死に家族にとりすがるんだ。選ばれなかったけれど、まだ殿下の婚約者は決まっていない、だから学園にいる三年間で、絶対にヴィッセル殿下に選ばれてみせると、ここで額を土に押し付けて家族に懇願するんだ。
"わたしはまだやれます! だって殿下の幼馴染ですもの! 彼だってわたしに対する情はあるはず! だから、いま一度……どうかチャンスを!"
最後の断罪シーンで処刑場にむかうアマリリスの回想から知っている。ここまで下手に出てもお母様からは無視され、弟からは『姉弟でも情すらないのに、幼馴染って……バっカじゃねーの! 死ねよ! アハハハ!』と返される。
しかしお父様からは『それでこそヒューテック家の人間だ』と、自ら門を開け、娘にチャンスを与える。
さて。どうしようか。
勿論このまま悪役令嬢として家に残る気はない。断罪されるのが解ってる乙女ゲームなんか始まらせるものか。
この家族にバーカ、バーカ、うんこ!と捨て台詞を吐いて飛行で飛び立ってやろうか。
そう考えたところで、スキル【直感】が発動する。採取とかで野良モンスターを前にした時、ほぼ舐めプなんだけど、たまにこれが発動する。
そんな時は近くにドラゴンがいたり、盗賊スキル持ちの運営の作ったプレイヤーがこちらが戦闘中の隙にアイテムを奪おうとしてきたり、まぁ、油断するなということだ。
直感が発動した、それでもステータス的にゴリ押しできるだろう、しかし今はまだこのガルドラという男は、舐めてはいけない気がした。
ゲームでは追い詰められると攻撃力を倍増させるアイテムを持ったドラゴンや、消滅する前に即死攻撃を仕掛けてくるアンデッドもいたのだ。
「いいえ。なにも……"今は"お父様に従います。領地に戻りますわ」
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