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1部 おっかなびっくり放浪編
9 リリーの魔導船
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王都郊外の街『ストーンバイ』に来た。
石造りの家に、石畳の道が続く。
上空から見下ろすと素朴な冒険者も多く、店も栄えている。
お腹減ったぁ。
なんか肌に伝わる感じもいいし、ここでご飯にしよう。
ヌコン村とはまた違った、落ち着く空気が漂っていた。街の雰囲気って、大事。
異国シリーズのドレスとマントが邪魔だったので、空中でジーパンとトレーナーとシューズにかえた。
隠密を発動させているのでそのまま不法に街におりる。通行費はもういいだろ。この国にはバネリ大佐の遊行船を寄付してやったんだから。
さて、どこに座ってご飯食べようかなー。
「この街は採掘場があるから、色んな石が採れるみたいね」
大通りを歩いていると、売っている武器もハンマーとか石斧とか、石系が多かった。
お、ごっつい加治屋のおじさんが看板掲げてなにか宣伝してる。
「加治スキルを持った奴はいないかい? うちはそれだけで給料倍額だよ! 錬金術も持ってたら給料10倍になるよ!」
「ぎゃっはは! おやっさん、錬金術なんてスキル持ってるやつ王都にも数人しかいないだろっ、こんな郊外にわざわざこないって!」
「うっせーサム! てめーはさっさと鉄溶かしてこい!」
おお、下働きがおやっさんに尻蹴っ飛ばされた。
街外れの小高い丘に、石造りの教会が見えた。
近付くと焼きたてのパンの匂いと、ピアノの音が聞こえた。続いて聞こえてきた子供たちの歌声もノリノリだ。
いいねぇ、こういうの。
教会の側にある木を日除けにして腰をおろし、収納から出した照り焼きチキンサンドを食べた。熱々なので肉汁を含んだタレが美味い。カレー味のウインナーロールパンも食べる。甘酢漬けの微塵切りキャベツも入ってて、甘辛酸っぱい、バランス良し。
「なんかこの辺からいい匂いがするぞ~」
「ほんとだー」
うふふ。あげないよ。
珈琲を飲みながら一息ついていると、雨が降ってきた。
大人も子供たちも屋内へと入ってしまう。
私はキャップを被って煙草を吸った。
「あー……家無し子だわぁ……」
フブルフォレストに置いてきたインビジブルタワー、元気にしてるかなぁ。
山菜マスターに壊されては困るのでたまに鑑定をするも、耐久度はそのままだ。
収納には冒険者用の魔導テントや魔導コテージも入ってる。
けどインビジブルタワーほどの機能がないから、出す気になれないんだよね。
バネリ大佐の遊行船をその代りにしようと思ってたのに、とんだ無駄足だったよ。
やっぱり誰にも気付かれることなく隠れられる家は必要だよ。精神が落ち着くもん。
煙草を吸い終えたところで私の肌がピリっとした。
近くに何かがいる。
てか雨で霧が出てきた。
何かが探知にかかった。
教会の裏だ。
「ほう……ほうほうほう」
教会の裏には家があった。石造りの四角い小さな家だけど、他の家とは質感が違っている。
無人になってからかなりの月日が経っているようだ。窓もドアも全て壊れて室内の家財はバラバラになっていた。
質感の違う家の一部を鑑定すると『海賊の屍』と出た。……骨だ。石じゃない。人間の骨でできた家なんだ。あと『飛行石』も使われている。
そこで教会の窓から騒ぐ子供たちの声が聞こえてきた。
「わー、神父さまー。またトムが裏の家から持ってきた石を隠してるー」
「あれに触るのはおよしなさい。あの家は百年も前にこの教会に持ち込まれ、未だ浄化されていない呪われた異物なのです」
諌める神父の神妙な声に子供たちが静かになっていく。
百年前に持ち込まれたものか。
「家じゃないよ。これは海賊魔導船、その一部だね」
ただの海賊船と違って海賊魔導船は沈まない。ベースの素材に飛行石を使っているからだ。骨組みは人間の骨。それも海賊の。
これは海賊がつくった、沈没した海賊船を見付ける為の海賊魔導船、その一部だ。ややこしい。
まず、普通の海賊船は沈没する。
海賊が集めた宝を隠す為に沈めることもある。
しかし沈没したら乗っていた海賊以外は沈没場所が解らなくなる。
そこで海賊魔導船と呼ばれる、沈没した海賊船に向かって走る船を作成する。
骨組み材料は海賊の骨。船長が望ましいが、乗組員のでもつくれる。どちらも魔力持ちが相応しい。
ベースとなる素材には飛行石を使う。いずれ骨組みに使われた海賊の怨念で、船が沈没するからだ。よくできてる。
ちなみに私は海賊船を襲ったこともあるし、沈没させたこともあるし、沈没から掘り起こしたこともある。
あ、前世でね。
とりあえずこの海賊魔導船の一部は異空間に収納。
そこから廃材とか要らない物を取り除き、再び表に出す。
平たい屋根は無くなり四角い部屋のようなものが現れた。部屋の真ん中には小さな箱……というか四角いコンクリの塊みたいなのがある。
「これは海賊魔導船の中心部……宝を隠す部屋そのものだわ」
絶対そう。だってゲームで見たもん。
一番頑丈に作られているから、百年もの間も崩れなかったんだ。
それに収納には廃材の他に年代物の銀食器、海賊の手記、人魚の歌声(喉仏の骨)、他国のメダル類が新たに入っていた。
とりあえずお宝は今は置いといて、私はご機嫌で海賊魔導船の一部を収納すると採掘場に向かった。
採掘場『ストーンマウンテン』
見晴らしのいい林に、岩が多い小高い岩石地帯。
雨が降って霧も出てきたので、人気はなくなっていた。探知にも誰も引っ掛からない。
そこで探索を拡げ、飛行石を掘りまくった。飛行石なんて、飛行魔法あるし転移魔法あるしで見向きもしなかったからね。収納には29個しかなかったんだ。
「安いし武具屋に買いにいけばいいんだけどさぁ~、王都も近いしあまり顔を見られたくないのよね」
殴りや蹴りでは時間がかかるな。
収納から【暴れるピッケル】を20本出して、暴れさせた。
おー、素材が集まる集まる。
採掘成果。
鉄鉱石×998
上鉄鉱石×322
飛行石×141
舌巻き蜥蜴の化石×11
古の食人花の化石×1
千年ドラゴンの卵×1
ま、こんなもんかー。
飛行石以外は要らんのでまた埋めておこう。
ステータスを開いて取得可スキルから錬金術を取得、そして暴れるピッケルが暴れた痕跡を綺麗に消す。
「よし、やるか」
収納から出した海賊魔導船の一部と、採掘した飛行石を溶かして混ぜる。
飛行石で嵩まししても素材が少ないから、海賊船のように大きな船は作れないだろう。
錬金術でイメージするのは前世で見た屋形船。もちろん屋根付き。
「いいんじゃない」
形成された灰色の屋形船。
屋根の下に船室はつくらなかった。
船の中心、四方に軒をおろした屋根だけ。
ぱっと見は屋形船ぽいけど、船型東屋の方がしっくりくる。
狭いけど地下室も造ったぞ。
でもなんか色がねぇ。泥でつくった船みたいだ。
「確か収納に極楽蝶の素材が大量にあったな」
七色に輝く極楽蝶は、太陽の下では光を反射させて目眩ましする。逆に暗闇では反射するものがなく、真っ黒に擬態するのだ。おまけに捕まえようとしてもこの蝶は物理攻撃を吸収する体質なので、捕獲には専用の虫取網が必須となる。
「よし、船本体と屋根にも極楽蝶を練り込もう」
異国シリーズのドレスやマントと大差ない、七色にキラッキラで目に痛い船が出来上がったよ。これなら遠目からでは見つかりにくくてちょうどいい。操縦席も作って。船内はいじくってないから、灰色のままだ。
ふぅ。錬金術で結構魔力を持ってかれたな。
あとは飾り付け。
今日中に内装も完成させよ~♪
船内にはミントグリーンのペンキを塗った。目に優しいパステルカラー。屋根の裏も柱にも。
東屋の中心には魔導囲炉裏を出して座布団は四枚敷く。ごろ寝用。その横に寝室として扇型の魔導テントを出した。扇を広げると中に入れる、千鳥柄の渋いテントだ。
地下室のドアは床下収納みたいな戸を付けた。地下室の壁は細かい穴があって海水と酸素を取り入れれるようにした。手作り生け簀、上手く機能するかなー?
あとは飾りつけ。
イベントの夏フェスで手に入れた提灯シリーズ【祭】【焼き鳥】【酒処】【いか焼き】【そば】【おでん】を屋根につけた。
ダルマ提灯もあったのでぶら下げとく。
うん、雰囲気ある。てか笑ける。
「完成! この船は『リリーの魔導船』と名付けよう。では鑑定!」
『リリーの魔導船(海賊魔導船)』
耐久度:60000/60000
魔力値:120000/120000
え。
耐久度すごない?
インビジブルタワーの6倍あるんだけど。
まぁ、インビジブルタワーは基本透明化で使う、ダメージすら食らわない優れものだからね。
「……魔力値120000か。これは飛行石が効いたな」
あ、そうそう。収納から魔導具『舵』を取り出して操縦席にぶっ刺しといた。ここから魔力を船に流し込んで操作し、方向転換、停止、急発進、飛行、自由に操作できる。
そしてこの時、いつかバネリ大佐の魔導船より凄い船を手に入れようと私はひそかに決心した。世界は広いのだ。不可能だって打ち破ってみせる。
あー、小腹が減った。
雨もやんできたし魔導船を収納して、手頃な岩に腰をおろした。
ミニ冷麺を出して食べていたら、なんか物足りなくて酢をかけた。そしたら食欲が出て止まらなくなってきたので厚切りベーコン入りのペペロンチーノを出してがっついた。辛いソースをぶっかけて胃袋も大喜びだ。
あちー。アイスコーヒーが染みるぅ。
「む?」
私にかけられたお父様の千里眼が発動している。
実家を去ったあの後、千里眼の対抗スキル『追跡不可』を取得しておいたからいつ千里眼が発動しようと常時相殺されている。
ざまぁみろ。
一息ついて街に戻ってきたら、教会に人だかりができていた。
神父が興奮気味に人々に説明してる。
なんでも百年も前に教会に持ち込まれ、なかなか浄化されなかった呪いの異物が綺麗さっぱり消えたそうだ。へぇー、よかったね。子供たちも遊ぶ敷地がふえたと喜んでる。私も船ゲットできて大満足だよ。
ストーンバイを去り、そこから100キロ離れたシミューズ運河に移動した。
シミューズ運河とは、2つの海と繋がっている水路だ。試運転も兼ねて最初は運河にきた。この運河は年々魔獣も増えて何年も前から廃水路となっている。水路を鑑定すると既に運河じゃなく【冒険者の釣り場】に塗り替えられていた。ほんと都合がいいね。
ああ楽しみ。海釣りスキルもゲットしたよ。
もう夜も遅いので明るくなったら船を出そう。魔導コテージを出して周囲に結界を張る。
海のロマン溢れる海賊の手記を読んでいたら微睡んできた。
ホットココアを飲んでおやすみなさい。
石造りの家に、石畳の道が続く。
上空から見下ろすと素朴な冒険者も多く、店も栄えている。
お腹減ったぁ。
なんか肌に伝わる感じもいいし、ここでご飯にしよう。
ヌコン村とはまた違った、落ち着く空気が漂っていた。街の雰囲気って、大事。
異国シリーズのドレスとマントが邪魔だったので、空中でジーパンとトレーナーとシューズにかえた。
隠密を発動させているのでそのまま不法に街におりる。通行費はもういいだろ。この国にはバネリ大佐の遊行船を寄付してやったんだから。
さて、どこに座ってご飯食べようかなー。
「この街は採掘場があるから、色んな石が採れるみたいね」
大通りを歩いていると、売っている武器もハンマーとか石斧とか、石系が多かった。
お、ごっつい加治屋のおじさんが看板掲げてなにか宣伝してる。
「加治スキルを持った奴はいないかい? うちはそれだけで給料倍額だよ! 錬金術も持ってたら給料10倍になるよ!」
「ぎゃっはは! おやっさん、錬金術なんてスキル持ってるやつ王都にも数人しかいないだろっ、こんな郊外にわざわざこないって!」
「うっせーサム! てめーはさっさと鉄溶かしてこい!」
おお、下働きがおやっさんに尻蹴っ飛ばされた。
街外れの小高い丘に、石造りの教会が見えた。
近付くと焼きたてのパンの匂いと、ピアノの音が聞こえた。続いて聞こえてきた子供たちの歌声もノリノリだ。
いいねぇ、こういうの。
教会の側にある木を日除けにして腰をおろし、収納から出した照り焼きチキンサンドを食べた。熱々なので肉汁を含んだタレが美味い。カレー味のウインナーロールパンも食べる。甘酢漬けの微塵切りキャベツも入ってて、甘辛酸っぱい、バランス良し。
「なんかこの辺からいい匂いがするぞ~」
「ほんとだー」
うふふ。あげないよ。
珈琲を飲みながら一息ついていると、雨が降ってきた。
大人も子供たちも屋内へと入ってしまう。
私はキャップを被って煙草を吸った。
「あー……家無し子だわぁ……」
フブルフォレストに置いてきたインビジブルタワー、元気にしてるかなぁ。
山菜マスターに壊されては困るのでたまに鑑定をするも、耐久度はそのままだ。
収納には冒険者用の魔導テントや魔導コテージも入ってる。
けどインビジブルタワーほどの機能がないから、出す気になれないんだよね。
バネリ大佐の遊行船をその代りにしようと思ってたのに、とんだ無駄足だったよ。
やっぱり誰にも気付かれることなく隠れられる家は必要だよ。精神が落ち着くもん。
煙草を吸い終えたところで私の肌がピリっとした。
近くに何かがいる。
てか雨で霧が出てきた。
何かが探知にかかった。
教会の裏だ。
「ほう……ほうほうほう」
教会の裏には家があった。石造りの四角い小さな家だけど、他の家とは質感が違っている。
無人になってからかなりの月日が経っているようだ。窓もドアも全て壊れて室内の家財はバラバラになっていた。
質感の違う家の一部を鑑定すると『海賊の屍』と出た。……骨だ。石じゃない。人間の骨でできた家なんだ。あと『飛行石』も使われている。
そこで教会の窓から騒ぐ子供たちの声が聞こえてきた。
「わー、神父さまー。またトムが裏の家から持ってきた石を隠してるー」
「あれに触るのはおよしなさい。あの家は百年も前にこの教会に持ち込まれ、未だ浄化されていない呪われた異物なのです」
諌める神父の神妙な声に子供たちが静かになっていく。
百年前に持ち込まれたものか。
「家じゃないよ。これは海賊魔導船、その一部だね」
ただの海賊船と違って海賊魔導船は沈まない。ベースの素材に飛行石を使っているからだ。骨組みは人間の骨。それも海賊の。
これは海賊がつくった、沈没した海賊船を見付ける為の海賊魔導船、その一部だ。ややこしい。
まず、普通の海賊船は沈没する。
海賊が集めた宝を隠す為に沈めることもある。
しかし沈没したら乗っていた海賊以外は沈没場所が解らなくなる。
そこで海賊魔導船と呼ばれる、沈没した海賊船に向かって走る船を作成する。
骨組み材料は海賊の骨。船長が望ましいが、乗組員のでもつくれる。どちらも魔力持ちが相応しい。
ベースとなる素材には飛行石を使う。いずれ骨組みに使われた海賊の怨念で、船が沈没するからだ。よくできてる。
ちなみに私は海賊船を襲ったこともあるし、沈没させたこともあるし、沈没から掘り起こしたこともある。
あ、前世でね。
とりあえずこの海賊魔導船の一部は異空間に収納。
そこから廃材とか要らない物を取り除き、再び表に出す。
平たい屋根は無くなり四角い部屋のようなものが現れた。部屋の真ん中には小さな箱……というか四角いコンクリの塊みたいなのがある。
「これは海賊魔導船の中心部……宝を隠す部屋そのものだわ」
絶対そう。だってゲームで見たもん。
一番頑丈に作られているから、百年もの間も崩れなかったんだ。
それに収納には廃材の他に年代物の銀食器、海賊の手記、人魚の歌声(喉仏の骨)、他国のメダル類が新たに入っていた。
とりあえずお宝は今は置いといて、私はご機嫌で海賊魔導船の一部を収納すると採掘場に向かった。
採掘場『ストーンマウンテン』
見晴らしのいい林に、岩が多い小高い岩石地帯。
雨が降って霧も出てきたので、人気はなくなっていた。探知にも誰も引っ掛からない。
そこで探索を拡げ、飛行石を掘りまくった。飛行石なんて、飛行魔法あるし転移魔法あるしで見向きもしなかったからね。収納には29個しかなかったんだ。
「安いし武具屋に買いにいけばいいんだけどさぁ~、王都も近いしあまり顔を見られたくないのよね」
殴りや蹴りでは時間がかかるな。
収納から【暴れるピッケル】を20本出して、暴れさせた。
おー、素材が集まる集まる。
採掘成果。
鉄鉱石×998
上鉄鉱石×322
飛行石×141
舌巻き蜥蜴の化石×11
古の食人花の化石×1
千年ドラゴンの卵×1
ま、こんなもんかー。
飛行石以外は要らんのでまた埋めておこう。
ステータスを開いて取得可スキルから錬金術を取得、そして暴れるピッケルが暴れた痕跡を綺麗に消す。
「よし、やるか」
収納から出した海賊魔導船の一部と、採掘した飛行石を溶かして混ぜる。
飛行石で嵩まししても素材が少ないから、海賊船のように大きな船は作れないだろう。
錬金術でイメージするのは前世で見た屋形船。もちろん屋根付き。
「いいんじゃない」
形成された灰色の屋形船。
屋根の下に船室はつくらなかった。
船の中心、四方に軒をおろした屋根だけ。
ぱっと見は屋形船ぽいけど、船型東屋の方がしっくりくる。
狭いけど地下室も造ったぞ。
でもなんか色がねぇ。泥でつくった船みたいだ。
「確か収納に極楽蝶の素材が大量にあったな」
七色に輝く極楽蝶は、太陽の下では光を反射させて目眩ましする。逆に暗闇では反射するものがなく、真っ黒に擬態するのだ。おまけに捕まえようとしてもこの蝶は物理攻撃を吸収する体質なので、捕獲には専用の虫取網が必須となる。
「よし、船本体と屋根にも極楽蝶を練り込もう」
異国シリーズのドレスやマントと大差ない、七色にキラッキラで目に痛い船が出来上がったよ。これなら遠目からでは見つかりにくくてちょうどいい。操縦席も作って。船内はいじくってないから、灰色のままだ。
ふぅ。錬金術で結構魔力を持ってかれたな。
あとは飾り付け。
今日中に内装も完成させよ~♪
船内にはミントグリーンのペンキを塗った。目に優しいパステルカラー。屋根の裏も柱にも。
東屋の中心には魔導囲炉裏を出して座布団は四枚敷く。ごろ寝用。その横に寝室として扇型の魔導テントを出した。扇を広げると中に入れる、千鳥柄の渋いテントだ。
地下室のドアは床下収納みたいな戸を付けた。地下室の壁は細かい穴があって海水と酸素を取り入れれるようにした。手作り生け簀、上手く機能するかなー?
あとは飾りつけ。
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ダルマ提灯もあったのでぶら下げとく。
うん、雰囲気ある。てか笑ける。
「完成! この船は『リリーの魔導船』と名付けよう。では鑑定!」
『リリーの魔導船(海賊魔導船)』
耐久度:60000/60000
魔力値:120000/120000
え。
耐久度すごない?
インビジブルタワーの6倍あるんだけど。
まぁ、インビジブルタワーは基本透明化で使う、ダメージすら食らわない優れものだからね。
「……魔力値120000か。これは飛行石が効いたな」
あ、そうそう。収納から魔導具『舵』を取り出して操縦席にぶっ刺しといた。ここから魔力を船に流し込んで操作し、方向転換、停止、急発進、飛行、自由に操作できる。
そしてこの時、いつかバネリ大佐の魔導船より凄い船を手に入れようと私はひそかに決心した。世界は広いのだ。不可能だって打ち破ってみせる。
あー、小腹が減った。
雨もやんできたし魔導船を収納して、手頃な岩に腰をおろした。
ミニ冷麺を出して食べていたら、なんか物足りなくて酢をかけた。そしたら食欲が出て止まらなくなってきたので厚切りベーコン入りのペペロンチーノを出してがっついた。辛いソースをぶっかけて胃袋も大喜びだ。
あちー。アイスコーヒーが染みるぅ。
「む?」
私にかけられたお父様の千里眼が発動している。
実家を去ったあの後、千里眼の対抗スキル『追跡不可』を取得しておいたからいつ千里眼が発動しようと常時相殺されている。
ざまぁみろ。
一息ついて街に戻ってきたら、教会に人だかりができていた。
神父が興奮気味に人々に説明してる。
なんでも百年も前に教会に持ち込まれ、なかなか浄化されなかった呪いの異物が綺麗さっぱり消えたそうだ。へぇー、よかったね。子供たちも遊ぶ敷地がふえたと喜んでる。私も船ゲットできて大満足だよ。
ストーンバイを去り、そこから100キロ離れたシミューズ運河に移動した。
シミューズ運河とは、2つの海と繋がっている水路だ。試運転も兼ねて最初は運河にきた。この運河は年々魔獣も増えて何年も前から廃水路となっている。水路を鑑定すると既に運河じゃなく【冒険者の釣り場】に塗り替えられていた。ほんと都合がいいね。
ああ楽しみ。海釣りスキルもゲットしたよ。
もう夜も遅いので明るくなったら船を出そう。魔導コテージを出して周囲に結界を張る。
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