悪役令嬢は嫌なので、放浪して好き勝手します

cqrijy

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1部 おっかなびっくり放浪編

12 孤島の海賊幽霊船

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早朝、喉の渇きに身を捻った。

「乾燥するぅ~」

またあまり眠れなかった。
なんとなくだけど、運動不足っぽいな。
パラダイス樹蜜と楽園ハニービーをブレンドした高濃度栄養ドリンクを3本飲み体を覚醒させた。

うー。だるい。
洗浄……よりお風呂だな。
魔導テントの中で朝風呂に入る。
きもちー。額からわき出る汗。熱い湯が体を軽くしてくれる。
やっぱり疲れとか老廃物が溜まってたみたいね。
海は消えない。のんびりいこう。別に急ぐ狩りではないのだ。1日の終わりには風呂に入って体を休めよう。それでも鼻歌まじりに湯船で目玉ルアーを生産していった。


「よおおおし!  絶好調!」

テントから出て空に叫ぶ。
飯にするぞー、と思ったら気付いた。船が停止している。そしてどこからか鳥の鳴き声がした……鳥、ってことはどこかに羽を休める場所があるはず。

「キャッシャアアアッッ!」
「あ、カモメ」

探知探索……するより先に島を見つけた。飛んでいた剛爪カモメを目で追っていたらすぐ近くにあった。

緑が深い孤島。
鑑定すると『ボーンデビル島』
爬虫類魔獣系の生息地。無人島と表示された。
その浜辺にボロボロになった船が打ち上げられていた。

遠目でもわかる、全体が茶色に錆びた大型船……鑑定すると、海賊幽霊船と表示された。そんなのはじめて見る。

「幽霊……船、なの?」

今まで手動しない限り動いていた船は停止している。
それでも波にさらわれないよう舵をとり、この場に停止させた。結界も念入りに重ねた。
まずは飛行で偵察したいけど……。

「怖いわー……装備どうしよ」

火焔龍の頭輪。
翠水龍の上皮ワンピース。
蛇神の腰ベルト。
砂丘神秘亀の安全靴。

全部装備。
これで爬虫類系は大丈夫。
幽霊対策は……。

聖なるペンダント。
交渉悪魔のイヤリング。
ホーリー神父の指輪。
四大天使の羽飾り。
呪い返しの麝香。

……ビビり過ぎだろ。
いやこれくらいして挑むのが礼儀というものだ。

最後に収納から【偽りの勇者】という双剣を取り出した。攻撃してきた相手に自動的に襲いかかる双剣だ。攻撃防御が対になっていて、1つは攻撃、もう1つは防御してくれるビビり用のぶっ壊れ性能だ。
剣の属性は【火、水、雷、光、闇】相手によって変化する。

物理障壁、魔法障壁発動。

よし行くか。



海賊幽霊船は損失が酷く、穴があき、貝や珊瑚の死骸がこびりついていた。帆柱は倒れて砂に埋まっている。柱は空洞で、中を鑑定するも価値のあるものはなかった。

この船、元は小島くらいの大きさはあったんじゃないかな。

あ、怖いからまだ船体の周りを飛行でうろついてるだけね。

てか船の中からミシミシ音が鳴ってるのよぉ。そりゃあ島の爬虫類も住み着いてるだろうけど、中を探索するのは気が進まないよね。

船の表面がグズグズだわ。
双剣でチョンと穴を開けると中から緑色のドロドロの液体が垂れてきた。気持ち悪。

その液体を鑑定すると【海賊の発光液】と表示された。

「………………発光液?」

気持ち悪いけど探索するか……。
ゲームでもとくに海賊系のアイテムは少ない。
この中にお宝があるかもしれないのだ。

腹がえぐれたように大きな穴が開いた船の真ん中……そこから潜り込んだ。

ぴぇぇん。怖い。飴ちゃんチュパチュパ。



「お。ここは食物庫かぁ」

鑑定しながら進む。
粉々になった瓶や麻袋だった残骸がある。携帯食料の箱もあるが、既に干からびてぺしゃんこだ。
聖なるペンダントが放つ光で船内は明るく、難なく探索できた。

それにしても設計が複雑だ。
隠し通路に隠し部屋。と思ったら階段があったり。
探知探索でこの海賊幽霊船を網羅する。

骨のようなものが大量にあった。
その全部じゃないけど鑑定した一部は海賊の頭蓋骨や大腿骨。濃い黄土色になって、質感が粘土みたいに変質していた。 

「……素材になってもらおう」

南無南無……。
収納する前にお酒をかけておく。
海賊といえばワイン?  ビール?  両方かけといた。その際、黙祷も忘れずに。

「……蛇が多いね」

鑑定するとそこらじゅうに『もぐり蛇』がいた。
核で体温を調整する魔獣だ。淡水海水に適応している。動きも鈍く、日中はあまり行動しないようだ。天井の柱に、頭蓋骨の中に、はたまた壁の中に。
これがミシミシと鳴る音の正体か。

そしてこの船はかなり頑丈に造られていたようだ。

骨組み素材はモンスターオクトパスの軟骨。硬いし柔らかいし伸びるし物理的な衝撃なんて吸収してしまう優れもの。

でもこの船の腹に開いた穴は物理的な攻撃によるものだ。……外側から大きな一撃。船の真ん中まであった。恐らくそれが致命傷となった。

「……これを私の船で耐えるには、衝撃を吸収させるより、船体にダメージを分散させて最後は海中に逃がす仕組みにしないといけないわね」

ダメージを分散させる場所は多いほどいい。屋根も利用して受けたダメージを空に放ってはどうだろうか。

結界を破るわけだからその時点で船にかかるダメージは減らせるでしょ。あとは……色々考えていたら答えが出た。

「てか船ごと空に飛んで陸に逃げればいいんだよ。うん。正解」

よおおうし!
ビビり疲れで腹も減ってきた!
朝飯もまだだし戻って飯にしよう!


飛行で船まで戻る途中、海中からドクロオオトカゲが飛び出してきた。

「わぁ、ドクロ柄だー」
「……キャアアアっっっ!」

こちらの装備(龍系)を見てトカゲは逃走。でも尻尾を掴んだぞ。

「これ食べれるのかなぁ……」
「シャアアアアっっ!」
「鑑定、査定」

ドクロオオトカゲ──ドクロ柄の皮がそこそこ人気。
皮──金貨5~6枚。
肉──無価値。

情報これだけ?
あ、調べてる隙に尻尾切って逃げた。
爬虫類系は、龍とか苦手なんだよねぇ。ゲームでも皮とか爪を置いとくだけで逃げてくし。

「その特性を罠猟で使えないかな」

てか爬虫類は私的に使い道がない。お肉も……食べる気がしないし。

尻尾を収納して船に戻った。


よーく冷えたブロッコリーと半熟卵のタルタルソースサラダを前菜に、熱々のペペロンチーノを啜り、激辛チョリソーにかぶりつく。お口の中がヒリヒリ。汗を垂らしながらアイスコーヒーを飲んだ。

「ぷっはー。午後も張り切ってお宝探しするか!」

でもその前に魚介の解体をね。決して嫌なことを先のばししてるわけじゃない。
あとこの辺の生物を探るために、孤島の周りに目玉ルアーを30個放り投げた。


「花シュリンプは刺身で食べられるんだよねぇ~」

この海老は全身が真っ赤で、頭に黄色い花を咲かせている。そんな可愛い姿とは裏腹に、海底に胴体を隠して獲物を待ち伏せし、花に近付いたら尾で強烈な攻撃をするのだ。

引き締まった身はねっとりとした甘味があり、プリっプリだ。解体しながらつまみ食い。あまぁい。

頭の花も生で食べると、茹でた海老みたいな味で美味しかった。殻も出汁がとれるそうなので棄てずに収納。

「鑑定があるとほんと便利よね♪」

剣山ヒトデと吸血ウツボの身は硬く、内臓しか食べるところがない。よーく洗って塩漬けにしたら白飯に合う高級珍味になる。

羽鯛と地鯛は鱗をとって、お刺身とお茶漬け用にカット。内臓は塩をふって血ごと瓶に保存。先程の珍味と共に魔導テントに置いておく。チャンジャ楽しみだー。

他の魚介も全て料理と作業高速化のスキルで処理した。ふぅー。一息いれてティータイムにしよう。

ミニレッドライチの果肉を使ってフルーツ紅茶を淹れていると、船の周りに大小様々なトカゲやヘビが寄ってきていた。

魚介って寄生虫だらけだったし、処理した際、色々海に棄てたから食べにきたんだな。

おー、潮オオトカゲが海中で相撲してる。あいつらは羽鯛の羽とヒレを取り合ってるんだな。棄てたヒトデとウツボの硬い身もバリバリ食べてる。

カップをよせてライチの爽やかな香りを楽しんだ。

「ん。美味しい」

鯉に餌やってる気分だ。景観もよく、水飛沫の音が耳に涼しい。いい午後だ。

お、30個投げた目玉ルアーの1つがもう一杯になったぞ。

「どれどれ~、イカとか入ってたらいいなぁ」


ドクロオオトカゲ。
マーブルオオトカゲ。
潮オオトカゲ。
迷彩オオトカゲ。

「え。4体で満員?」

どれもオオトカゲなのでそれなりの大きさだ。そこで船の結界にバチンと音が鳴った。

見ると一際大きなトカゲ──胴体が蛇のように長いボーンデビルドラゴン、巨大なトカゲだ。八本ある足には太い爪がはえている。陸の龍みたい。

それがしつこく尾で船を攻撃してくる。
結界越しとはいえ、私の装備を見てもビビらない。

「頑張れー。あと500回くらい攻撃したら結界にヒビが入るぞー」
「ゴォアアアアアアアアア!!」
「……む?」

1つ、2つ、3つ──全部で9個。
島の周りに投げた目玉ルアーが一気に定員になった。
なにこれ……。


ストライプスネーク×3
マーブルオオトカゲ×3
ドクロオオトカゲ×5
ナナイロスネーク×2
潮オオトカゲ×2
五ツ尾オオトカゲ×2
スネーク昆布×1
とぐろ蛇貝×1
双頭オオトカゲ×6
迷彩オオトカゲ×5


……え。
残りの目玉ルアーを回収するも、魚介がひとつも無い。スネーク昆布はペラペラなだけの蛇だし、とぐろ蛇貝も巻き貝に住み着いた蛇だ。まさかこれって……。

探知探索。
魔力を拡げて海中に生息する生き物を探る。

「島から100m離れた海中に……魚どころか、小さな貝すらいない」

まるで魚介は食べ尽くされた状態。
船の周りを見ると、気持ち悪いくらい集まってきていた。大体トカゲかヘビ。上空は鳥が飛んでいるものの、海中には爬虫類しかいない。

「シャアアアア!」
「ギャアアッッッ!」
「ゴォアアアアアアアアア!」

船に頭突き。体当りによる打撃に尾っぽ攻撃。
オオトカゲ達は必死だ。

「あー、はいはい。そういうことね」

試しにさっき収納したドクロオオトカゲの尻尾を海に投げるも、見向きもしない。あ、潮オオトカゲが尻尾をくわえて私に投げ返してきた。結界にあたり、再び収納という形で私の手元に戻ってきた。

「シャー、シャー」
「プー、ブー」
「……しばくぞコラァ!」

お残しは許しませんと尻尾を投げてはまた戻され、そんなことを3度繰り返した。
お、とうとうボーンデビルドラゴンが不満げに舌を伸ばして、不味そうな顔で尻尾を食べたぞ。

仕方ない。
収納になんかあったかなー?

「マウンテン殺戮蜂の巨大巣とー、氷漬けアースマンモスの鼻とー、メガント蟹のビッグハサミにー、あと大王マグロの頭でしょー、他には──」

どうせ前世からの死蔵だ。
装備や武器作成で使わなかった余り物が何千個と残ってる。
ポイポイ投げていく。

「キャアアアアア!」
「ブシャアアアアアアア!」
「ゴォアアアアアアアアア!」
「ギャアアアアッッッ!」

やだ。オオトカゲ達の目がハート。

あ、目玉ルアーに掛かった獲物は窒息させて収納した。獲物の柄的にアーティストギルドに卸したら喜ばれるはず。……多分。
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