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1部 おっかなびっくり放浪編
13 ガッ君
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オオトカゲ達への餌やりも程々に、地下室の生け簀を調べると稚鯛が全滅していた。
え? 昨夜のイルカのあとはまだ生きてたのに。
地下室はとくに強固な結界を常時展開にしているから身体的なダメージは無いだろうけど、やっぱり細かい穴があるだけの生け簀じゃ生きていけないのかな。
「……はぁ」
腐った匂いもないし、まだ新鮮だけどこれもオオトカゲ達にあげよう。
ガックシだよ。生け簀は一から作り直さないと。でも仕組みが解らないし……どこかに漁師さんとかいないかな?
まだ餌をくれと目をハートにしたオオトカゲ達がしつこかったので、目の前まで飛行して威圧したら瞬時に散らばった。ボーンデビルドラゴンだけは逃げなかった。
「クウァ」
「はぁ……なんで生け簀が機能しないのかなぁ」
「クァ」
「結界もあるし酸素石も入れたし餌は大好物のチマチマ海老を入れといたし……やっぱりストレスかなぁ」
「クウァ……クァ」
ボーンデビルドラゴンの頭に座って緑茶を飲みながら考えた。
「活き餌ってさ、収納できないのよ。わかる? 物理的に持ち運びするしかないの」
「クゥン」
「生きたまま手元に置いとくには、生け簀が必要なのよ」
チロチロと舌を出して反応するボーンデビルドラゴン。
全長15mくらいかな。今は私の話を聞きながらとぐろを巻いているので見た目は蛇っぽい。
体は半透明の黒で、どういった仕組みかは解らないが体内の骨が透けて見えている。頭も凶悪な印象を与えるつくりの頭蓋骨だ。夜だと頚が長いガイコツが動いていように見えるだろう。
なので『ガッ君』と名付けた。
鑑定するとなんと雌雄両性。そして190歳。わお。長生き。
ガッ君は私を頭に乗せたまま、八本の足で犬かきをしながら島の周りを遊泳してくれた。
風が気持ちいい。
船とはまた違った解放感がある。
たまに収納から出した魚をあげると、それはもう『クゥンクウァ』と喜んで食べていた。
その日は夜遅くまでガッ君と遊んでしまった。島を一周してからお別れして、私は自分の船に戻って寝た。
翌朝。
茹で玉子を食べながらテントから出ると浜辺にいたガッ君が海に入り、犬かきで寄ってきた。
昨夜は船を守るようにすぐ近くに居たのを知っている。結界には触れずに、たまにくるオオトカゲを追い払っていた。
今朝は肩が軽いし爽快な目覚めだった。ビビり疲れもあったけど、朝まで結界への干渉がなく眠ったので、良質な睡眠がとれた気がする。
「ガッ君~、ほらオオコカトリスの生卵食べるー?」
「クゥンクゥン」
爬虫類って卵好きよねぇ。
ガッ君は顎が外れるんじゃないかってくらい口を開けて卵を丸飲みした。とても満足そうだ。
収納から人魚姫シリーズ『海の頂点』というワンピース水着を出して着替えた。この水着は攻防共に優れていて、泳ぎの技術があがり、息継ぎも不要で、海中で物も食べれるし声も出せる。なにより水の抵抗がないぶっ壊れ性能。
「久々に泳ぐぞー」
海に飛び込んでガッ君と戯れる。
海中相撲は負けた。長い胴体と八本の足ですぐコテンとひっくり返される。
ガッ君も息継ぎは1時間くらい大丈夫なようで、少し遠出しながら海底にある擬態した貝や岩にしか見えない海老、透明なヒラメの見抜き方等々、食糧がある場所を教えてあげた。
「絶滅させないように食べるのよ。増えたら食べて、減ったら増えるのを待って。食べ尽くせば、自分の首を締めることになるわ」
「クポ」
ガッ君が口から息を出して反応する。ふむ。言った通りお残ししてるし知能は高いようだ。
遠出してみて解ったが、ガッ君はボーンデビル島、この孤島の周り、かなり広範囲を含めた中でも頂点だな。
一度遠くを気にして警戒する素振りを見せたが、広範囲に探知したところ、ガッ君より強いのはいなさそうだし。
攻防はともかく、泳ぎの速さだけなら海龍と大差ない。
「あれは海草に見えるけど貝なの」
「クポ」
「あの蟹は夕方になると息継ぎしに岩から離れるのよ」
「クポー」
「この模様がある海底には土海鼠がいるわ。ほら、そこっ」
「クッポー」
空腹にも気付かず夢中で泳いでいたら夕方になっていた。
島に向かって犬かきをするガッ君の頭の上で羊肉の串焼きを頂く。熱々でうみゃー。
「ガッ君も食べるー?」
「……ゲフ」
もうお腹いっぱいらしい。
朝からよく見つけて食べたもんねー。
サンドイッチを摘まみながら沈む太陽を眺めた。
あぁ。真っ暗になってきた。
ガッ君は帰巣本能があるのか、迷いなく泳いでいく。
あ、いま近くに鳥を探知した。船までもうすぐ────。
「……待ってガッ君!」
「クウァ?」
島になにかいる。
なにこの気配。
昨夜はなかった。
どこから来た?
ガッ君は気にする様子もなく島に向かっていく。
船を目視できる距離にきて、驚愕した。
海賊幽霊船の船上が、淡い緑色に輝いている。
あと何か燃えて……松明の火だ。近付くにつれて楽器と歌声も聞こえてきた。
船上に動くもの……あれは……人?
「…………どういうこと?」
ガッ君は止まってくれない。
飛行で離れる。夜目を発動し、収納から『真実の双眼鏡』を出した。
「あわ、あわ、わ」
双眼鏡から見た海賊幽霊船は、初めて見た時のままオンボロだった。夜なので味がある。こえー。
でも自分の目で直視すると……損傷なんてなかったように、黒光りした船体に帆柱が立っている。日中に見た海賊幽霊船とは思えない。船首は鋭い嘴のように伸び、完全な姿を現している。
船上では数十人の……服装からいって海賊だ。飲めや歌えのまさに宴会のさなか。
船首に誰か立っている。黒いキャプテンハット。あの船の船長だ。腰まである黒髪を1つにまとめ肩に流している。
あ、ガッ君が浜辺についた。
それに気付いた船長が船首から飛び下りガッ君を撫でている。ガッ君は船長の足に噛みつき、尾で攻撃している。本気じゃない戯れ。そんなガッ君の態度に船長が夜空に向かって笑ってから──私の方を見た。ひぇ。
船上からドーン!とでかい声が上がった。酒を交わしながらなにやら大盛りあがりだ。
うぅ。男ばっかり。
そっと飛行で自分の船まで戻った。
やっぱり幽霊船なんだ……ここを離れようか。
ちらっと振り返ると、浜辺にいた船長がもうすぐそば、腰まで海中に浸かって私を見上げていた。怖。移動の仕方が人間じゃないよね。魔力の波動が無かったもん。うぅ。そういうのいいから。
船長はクイッとハットを上げて青い目を見せた。鋭い目付きの、でも暗闇でもわかる日に焼けた肌が健康的な無精髭のおじさんだ。
「ダサイ船だな」
「…………は」
「乗ってる人間もダサイ」
「……は?」
呆けていると水音を立てて勝手に船に乗り上がってきた。げ……この結界を素通りするか。なら酸素と同じで、こちらに害を与える者ではないようだ。
「狭いな。船室はどうした、地下にあるのか? なんだこれ? 拷問用の部屋か?」
勝手に生け簀を開けて趣味悪ぃーな、と舌打ちしやがった。
「なんだこのちんちくりんは? 邪魔だ、外せよ」
提灯をつつくんじゃない! それはイカ釣りとサンマ釣りで効果を発するんだ!
「……まぁ、女にはこれくらいの小型船が限界か」
「はっ。これだから男は……でかければいいってもんじゃないのよ」
「ほう?」
ワンピース水着で格好は悪いが、胸をはって腕を組む。
「私の船はそこにあるオンボロ船と違って立派な魔導船ですからね」
「それでか。この船には海の軌跡がない。中身が空っぽな船は、頭の悪い処女と似てる」
「はぁ!?」
効くか解らないけど威圧を全開にしたら船長が少したじろいだ。そして大笑いした。奥歯を見せて腹を抱えている。
……もぅぃぃ。扇型の魔導テントを拡げて中に入ろうとしたら肩を掴まれた。
「悪りぃ……待て待て、昨日俺らに酒をくれたのはアンタだろ?」
「……え。酒って」
「潮ワインに波ビールだよっ」
クルっと身をまわされ、両肩を掴まれた。
「久々の酒だ。アンタのせいで野郎共が起きちまった!」
船長は立てた親指をクイッと背後に向けた。
途端、向こうから「オー!」と歓声が返ってくる。
「お、起きたって……?」
「いつもは可愛がってるあのトカゲ──ケイシーが俺らに供え物してくれんだけどな、それは有り難いんだが、ケイシーが魚介を摂り尽くしてこの島の生態系が変わっちまったんだ。ほら、この辺一帯トカゲとヘビだらけだろ? だから俺らは海の恵が元に戻るまで、姿を現さないでおこうと皆で決めていたんだ……だがあの酒には敵わなかった! 混じりっ気一切無しの酒なんて、アンタ王都から来た商人だろ!?」
「お、う」
「やはりそうだったか!」
ケイシー? ってガッ君のことだよね。
じゃあさっきは……船長と久々の逢瀬だった?
つれない態度は照れ隠し?
そう思って近くの海中から顔だけ出したガッ君──もといケイシーを見た。船長が気になって寄ってきてたのは、探知で解ってた。
「……あの、すみません」
「うん?」
「……その、骨を頂いたんです。そちらの海賊船から」
「うん」
「恐らく貴方達の……骨、ですよね?」
「うんうん」
「……お返しした方がいいですか?」
「とりあえずこっち来い!」
「うぇ!?」
引っ張られて空中を浮いた。
船長飛んでる。飛行持ちか?
ぅ……鑑定。
ガックリード・パルハルコン
海賊 海洋生物学者
HP 0/0
MP 0/0
【スキル】
海の囁き/海底散歩/海賊の印/生態調査/操縦士/夢針/死魂
うむ! 海賊の主なスキルだね!
夢針とか珍しいな。夢で相手に警告できるスキルだけど、ネット環境なんてない世界だから海賊とはいえ重宝するよね。
そしてスキル死魂……死んでも魂だけは生きてるってやつ……ってことは船長やっぱり幽霊なんだ。海洋生物学者ってとこには驚き。
……ってこっちがガッ君だった。
え? 昨夜のイルカのあとはまだ生きてたのに。
地下室はとくに強固な結界を常時展開にしているから身体的なダメージは無いだろうけど、やっぱり細かい穴があるだけの生け簀じゃ生きていけないのかな。
「……はぁ」
腐った匂いもないし、まだ新鮮だけどこれもオオトカゲ達にあげよう。
ガックシだよ。生け簀は一から作り直さないと。でも仕組みが解らないし……どこかに漁師さんとかいないかな?
まだ餌をくれと目をハートにしたオオトカゲ達がしつこかったので、目の前まで飛行して威圧したら瞬時に散らばった。ボーンデビルドラゴンだけは逃げなかった。
「クウァ」
「はぁ……なんで生け簀が機能しないのかなぁ」
「クァ」
「結界もあるし酸素石も入れたし餌は大好物のチマチマ海老を入れといたし……やっぱりストレスかなぁ」
「クウァ……クァ」
ボーンデビルドラゴンの頭に座って緑茶を飲みながら考えた。
「活き餌ってさ、収納できないのよ。わかる? 物理的に持ち運びするしかないの」
「クゥン」
「生きたまま手元に置いとくには、生け簀が必要なのよ」
チロチロと舌を出して反応するボーンデビルドラゴン。
全長15mくらいかな。今は私の話を聞きながらとぐろを巻いているので見た目は蛇っぽい。
体は半透明の黒で、どういった仕組みかは解らないが体内の骨が透けて見えている。頭も凶悪な印象を与えるつくりの頭蓋骨だ。夜だと頚が長いガイコツが動いていように見えるだろう。
なので『ガッ君』と名付けた。
鑑定するとなんと雌雄両性。そして190歳。わお。長生き。
ガッ君は私を頭に乗せたまま、八本の足で犬かきをしながら島の周りを遊泳してくれた。
風が気持ちいい。
船とはまた違った解放感がある。
たまに収納から出した魚をあげると、それはもう『クゥンクウァ』と喜んで食べていた。
その日は夜遅くまでガッ君と遊んでしまった。島を一周してからお別れして、私は自分の船に戻って寝た。
翌朝。
茹で玉子を食べながらテントから出ると浜辺にいたガッ君が海に入り、犬かきで寄ってきた。
昨夜は船を守るようにすぐ近くに居たのを知っている。結界には触れずに、たまにくるオオトカゲを追い払っていた。
今朝は肩が軽いし爽快な目覚めだった。ビビり疲れもあったけど、朝まで結界への干渉がなく眠ったので、良質な睡眠がとれた気がする。
「ガッ君~、ほらオオコカトリスの生卵食べるー?」
「クゥンクゥン」
爬虫類って卵好きよねぇ。
ガッ君は顎が外れるんじゃないかってくらい口を開けて卵を丸飲みした。とても満足そうだ。
収納から人魚姫シリーズ『海の頂点』というワンピース水着を出して着替えた。この水着は攻防共に優れていて、泳ぎの技術があがり、息継ぎも不要で、海中で物も食べれるし声も出せる。なにより水の抵抗がないぶっ壊れ性能。
「久々に泳ぐぞー」
海に飛び込んでガッ君と戯れる。
海中相撲は負けた。長い胴体と八本の足ですぐコテンとひっくり返される。
ガッ君も息継ぎは1時間くらい大丈夫なようで、少し遠出しながら海底にある擬態した貝や岩にしか見えない海老、透明なヒラメの見抜き方等々、食糧がある場所を教えてあげた。
「絶滅させないように食べるのよ。増えたら食べて、減ったら増えるのを待って。食べ尽くせば、自分の首を締めることになるわ」
「クポ」
ガッ君が口から息を出して反応する。ふむ。言った通りお残ししてるし知能は高いようだ。
遠出してみて解ったが、ガッ君はボーンデビル島、この孤島の周り、かなり広範囲を含めた中でも頂点だな。
一度遠くを気にして警戒する素振りを見せたが、広範囲に探知したところ、ガッ君より強いのはいなさそうだし。
攻防はともかく、泳ぎの速さだけなら海龍と大差ない。
「あれは海草に見えるけど貝なの」
「クポ」
「あの蟹は夕方になると息継ぎしに岩から離れるのよ」
「クポー」
「この模様がある海底には土海鼠がいるわ。ほら、そこっ」
「クッポー」
空腹にも気付かず夢中で泳いでいたら夕方になっていた。
島に向かって犬かきをするガッ君の頭の上で羊肉の串焼きを頂く。熱々でうみゃー。
「ガッ君も食べるー?」
「……ゲフ」
もうお腹いっぱいらしい。
朝からよく見つけて食べたもんねー。
サンドイッチを摘まみながら沈む太陽を眺めた。
あぁ。真っ暗になってきた。
ガッ君は帰巣本能があるのか、迷いなく泳いでいく。
あ、いま近くに鳥を探知した。船までもうすぐ────。
「……待ってガッ君!」
「クウァ?」
島になにかいる。
なにこの気配。
昨夜はなかった。
どこから来た?
ガッ君は気にする様子もなく島に向かっていく。
船を目視できる距離にきて、驚愕した。
海賊幽霊船の船上が、淡い緑色に輝いている。
あと何か燃えて……松明の火だ。近付くにつれて楽器と歌声も聞こえてきた。
船上に動くもの……あれは……人?
「…………どういうこと?」
ガッ君は止まってくれない。
飛行で離れる。夜目を発動し、収納から『真実の双眼鏡』を出した。
「あわ、あわ、わ」
双眼鏡から見た海賊幽霊船は、初めて見た時のままオンボロだった。夜なので味がある。こえー。
でも自分の目で直視すると……損傷なんてなかったように、黒光りした船体に帆柱が立っている。日中に見た海賊幽霊船とは思えない。船首は鋭い嘴のように伸び、完全な姿を現している。
船上では数十人の……服装からいって海賊だ。飲めや歌えのまさに宴会のさなか。
船首に誰か立っている。黒いキャプテンハット。あの船の船長だ。腰まである黒髪を1つにまとめ肩に流している。
あ、ガッ君が浜辺についた。
それに気付いた船長が船首から飛び下りガッ君を撫でている。ガッ君は船長の足に噛みつき、尾で攻撃している。本気じゃない戯れ。そんなガッ君の態度に船長が夜空に向かって笑ってから──私の方を見た。ひぇ。
船上からドーン!とでかい声が上がった。酒を交わしながらなにやら大盛りあがりだ。
うぅ。男ばっかり。
そっと飛行で自分の船まで戻った。
やっぱり幽霊船なんだ……ここを離れようか。
ちらっと振り返ると、浜辺にいた船長がもうすぐそば、腰まで海中に浸かって私を見上げていた。怖。移動の仕方が人間じゃないよね。魔力の波動が無かったもん。うぅ。そういうのいいから。
船長はクイッとハットを上げて青い目を見せた。鋭い目付きの、でも暗闇でもわかる日に焼けた肌が健康的な無精髭のおじさんだ。
「ダサイ船だな」
「…………は」
「乗ってる人間もダサイ」
「……は?」
呆けていると水音を立てて勝手に船に乗り上がってきた。げ……この結界を素通りするか。なら酸素と同じで、こちらに害を与える者ではないようだ。
「狭いな。船室はどうした、地下にあるのか? なんだこれ? 拷問用の部屋か?」
勝手に生け簀を開けて趣味悪ぃーな、と舌打ちしやがった。
「なんだこのちんちくりんは? 邪魔だ、外せよ」
提灯をつつくんじゃない! それはイカ釣りとサンマ釣りで効果を発するんだ!
「……まぁ、女にはこれくらいの小型船が限界か」
「はっ。これだから男は……でかければいいってもんじゃないのよ」
「ほう?」
ワンピース水着で格好は悪いが、胸をはって腕を組む。
「私の船はそこにあるオンボロ船と違って立派な魔導船ですからね」
「それでか。この船には海の軌跡がない。中身が空っぽな船は、頭の悪い処女と似てる」
「はぁ!?」
効くか解らないけど威圧を全開にしたら船長が少したじろいだ。そして大笑いした。奥歯を見せて腹を抱えている。
……もぅぃぃ。扇型の魔導テントを拡げて中に入ろうとしたら肩を掴まれた。
「悪りぃ……待て待て、昨日俺らに酒をくれたのはアンタだろ?」
「……え。酒って」
「潮ワインに波ビールだよっ」
クルっと身をまわされ、両肩を掴まれた。
「久々の酒だ。アンタのせいで野郎共が起きちまった!」
船長は立てた親指をクイッと背後に向けた。
途端、向こうから「オー!」と歓声が返ってくる。
「お、起きたって……?」
「いつもは可愛がってるあのトカゲ──ケイシーが俺らに供え物してくれんだけどな、それは有り難いんだが、ケイシーが魚介を摂り尽くしてこの島の生態系が変わっちまったんだ。ほら、この辺一帯トカゲとヘビだらけだろ? だから俺らは海の恵が元に戻るまで、姿を現さないでおこうと皆で決めていたんだ……だがあの酒には敵わなかった! 混じりっ気一切無しの酒なんて、アンタ王都から来た商人だろ!?」
「お、う」
「やはりそうだったか!」
ケイシー? ってガッ君のことだよね。
じゃあさっきは……船長と久々の逢瀬だった?
つれない態度は照れ隠し?
そう思って近くの海中から顔だけ出したガッ君──もといケイシーを見た。船長が気になって寄ってきてたのは、探知で解ってた。
「……あの、すみません」
「うん?」
「……その、骨を頂いたんです。そちらの海賊船から」
「うん」
「恐らく貴方達の……骨、ですよね?」
「うんうん」
「……お返しした方がいいですか?」
「とりあえずこっち来い!」
「うぇ!?」
引っ張られて空中を浮いた。
船長飛んでる。飛行持ちか?
ぅ……鑑定。
ガックリード・パルハルコン
海賊 海洋生物学者
HP 0/0
MP 0/0
【スキル】
海の囁き/海底散歩/海賊の印/生態調査/操縦士/夢針/死魂
うむ! 海賊の主なスキルだね!
夢針とか珍しいな。夢で相手に警告できるスキルだけど、ネット環境なんてない世界だから海賊とはいえ重宝するよね。
そしてスキル死魂……死んでも魂だけは生きてるってやつ……ってことは船長やっぱり幽霊なんだ。海洋生物学者ってとこには驚き。
……ってこっちがガッ君だった。
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