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閑話 海王蛇の生態と習性
⑧緩やかに消失していくもの
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ご飯を食べさせた後、リリーとお風呂に入った。
丁寧に髪を洗って、優しく体を洗って、湯船でリリーと戯れる。リリーは、よくお風呂で泳ぐよね。狭いのに。条件反射のように。お湯の中で泳ぐのが好きなのかな? ならそういった場所も造っておこうかな。
「ふにゃ~……フィックスさんは私を甘やかしすぎですよぅ」
「そう? リリーは本当に抜けてるからね。俺に甘やかされてるように感じるんだね」
俺の側は安全だって、リリーさえそう思ってくれていたらいい。
さっきからリリーは自分で気付いていないだろうけど、無意識に左手の指輪に触れている。俺に触れている。その指輪は俺の一部だからね。リリーももう俺の一部なんだよ。
足首に柔らかい感触。
俺の膝に顎を乗せて、リリーが無防備に微睡んでる。キラキラと輝く髪が湯に浮いている。
ザハァっと片足を持ち上げると、リリーは乗ったまま落っこちないよう猫みたいに体勢をかえた。慌てなくても落ちないよ。どれだけ揺らしても落ちない。もう俺の体の一部だからね。それを目で見て確かめて、胸の辺りが満たされる。
リリーが猫みたいに両腕を揃えて一歩ずつ向かってきた。服を着ている時は裸を見られるのを躊躇してるけど、お風呂ではいつも平気な顔してるよね。抱いた後に入ることが多いからかな? 襲われないとでも思ってるのかな?
「到着♪」
額に口付けをしてから顔を覗きこんできた。可愛い。なんて無防備な顔。俺の側は安全だと疑わない顔。腹から欲が飛び出してきそうになる。
「……リリー、体は辛くない?」
「え? 快調だよ」
「そう……朝まで抱いていい?」
眼を開くとリリーが全身を震えさせながらしがみついてきた。抱いてる時のように、びくびくと反応を返して、そのあと怒った。凄い。心臓も正常だ。もう止まりそうになることはない。馴染むのがはやすぎる。俺の欲に反応して目を反らし、そのあと抱きついて信じられない言葉を言った。
「…………い、いけど……私、気絶しないようになったので、」
リリーは本当に、俺に合わせようとするよね。歴代の海王蛇にも、俺にも、誰もそんなことしなかったのに。肩を甘噛みする。びっくりした猫みたいな声が返ってきて、喉の奥で笑った。ああそうだ、笑うのも、リリーと出会ってからだ。人魚と人間の血が入っているから、笑おうと思えば笑えるんだけど、そう思わなくても笑ったのはリリーに出会ってからだ。嬉しい気持ちが沸き上がり、両手でリリーの顔を包み込んだ。
「こっち見て」
「しぬ、朝までこれされたらしぬって!」
「目ぇ開けて」
「そういうの視姦って言うんですよ! もう私の体には飽きたんですか!?」
ああいけない。リリーは抜けてるけど、俺に対しては周りの奴らみたいに、そんな斜め向こうな抜け方はして欲しくない。
「向こうではこうやって愛し合うんだよ」
「向こう!? 死後の世界の話ですか!?」
「海王蛇は発情期に、こうやって生命の危機を感じさせて、排卵させて孕ませるんだよ」
じゃないと雌に雄と認識されないからね。
こっちは見えているのに。雌は巨体の海王蛇のことなんて、ただの岩か壁の一部としか認識していないから。既に絶滅した同族の雌は、体積が雄と比べて眇々たるものでしかないんだ。最後に残った純血種の雄が、人間と交わってくれたお陰で、俺の未来が拓けた。俺が巨体の純血種だったら、リリーは俺を雄と認識してくれなかっただろう。番にしようと手を出したら、直感に従って毒で切りかかってきそうだ。
……ああ、そうか。
ならやっぱりリリーは、あの一瞬の間に、純血種と対峙したんだ。引力に引き寄せられたということは、純血種はリリーを雌と認識して、姿が見えるところまで、海に引き摺りこめる視界の範囲まで、呼ぼうとした。でもリリーは純血種を雄だと認識しなかった。敵だと判断して毒で戦おうとした。そういうことをされると、海王蛇は一回だけ逃がしてあげようと判断するからね。だから戻ってこれたんだ。
「……な、ら、発情期に……排卵、させたらいいじゃないですかぁ……」
「俺は嫌がっても止めないし、肝心な場面では甘やかさないよ。発情期に知ったでしょ? なのにリリーがさっき俺をそう思ったのは、なんでだろうね?」
「……甘やかすの定義が、」
甘やかしてあげたいよ。ちゃんと帰ってきたからね。リリーは純血種より俺を番に選んだ。そう思うと、もうなんでも言うこと聞いてあげたくなる。だって海王蛇は発情期に、そこらじゅうの生き物を飲み込んで、番への一生分の贈り物にするんだ。雌が餌を取ってこなくてもいいように、栄養を蓄えて早く子を孕める体になるように、それが進化の過程で、徐々に胃が大きくなって、新しい世界を造りだしてしまうことになった。胃の中でも、飲み込まれた生物が、一生を終えても気付かないほど、大きな世界。番を独占したくて、番の唯一の世界になりたくて、番が望んだものは全て用意できるように、海王蛇は番が望む世界を造りだせるように進化したんだ。
人族の体にも様々な生物がいるからね。リリーの体も、そこに住んでる生物にとっては、ひとつの大きな世界なんだよ。
早く俺の中で生活したらいいのに。リリーさえそうしてくれれば、その中で際限なく甘やかしてあげるのに……。
「フィックスさん、私は貴方に抱かれてめちゃくちゃにされるのが……その、好きです」
「うん」
「……でも、一人だけよがっているのは、その、寂しいじゃないですかぁ……私だって、フィックスさんが乱れているところを、その……ね?」
うん。でも俺、肝心なところでは甘やかさないってさっき言ったよね。こうやって、外にいる時は、リリーが俺に餌を与えて抑えてくれないと。
「好きだよ、リリー……愛してる」
そう伝えるとリリーが嬉しそうに口許を緩めて、言葉は返してくれない。せめて人間の言葉で愛してるとこたえてくれたらいいのに。
また眼を開きたくなる。リリーを前後不覚にすると、お願いしたらなんでも言ってくれるからね。
そうだ。もう無理矢理のみ込むことはしないと決めたんだ。だからこれもちゃんと言葉にして伝えないと。リリーは変な方向に抜けていってしまうから。
「リリーは恥ずかしがり屋だから……その一人でよがってる時だけ、俺に愛してるって気絶するまで言ってくれるからね。もう味しめちゃった。でも今夜は気絶しないで、ずっと言ってくれるんだよね?」
「……うそん」
ああ。なんて可愛い無防備な顔。
今夜は俺が安心するまで、沢山愛してると言ってもらおう。
◇ ◇ ◇ ◇
「フィックスさぁん……愛してます」
正気の時でもリリーはそう言ってくれるようになった。そんなに俺に合わせて、今すぐ丸のみしたくなる。
「愛してます……昨日も沢山言った気がするけど……」
「……うん。夢見心地だった。リリーを抱き締めながら寝かし付けてる時も……うわ言のようにずっと愛してるって言ってて……それ聞いてたら俺も眠くなってきて」
あれは番を胃の中に入れて全ての神経が安心したような、至福の眠りだった。起きてリリーが胃の中にいないことに気付いてすぐ目の前のリリーを羽交い締めにしてしまったけど。それも幸せな一時だった。
「……リリー、ご飯食べたらもう一緒に寝」
「今日は行商にいきます。夕方必ず帰ってきます」
行商か。船には乗らないならいいかな。もうドラゴン都市の領海の生物も、徐々に減らしてだいぶ数が少なくなってきたし、船に乗ったとしてもリリーは門限より早く帰って来る気がする。でももっと頑張らないと。緩やかに。早急に。
◇ ◇ ◇ ◇
翌日。
リリーはご機嫌で船に転移した。
悔しくて今度はドラゴン都市だけじゃなくムンタリ大陸の領海の生物も減らした。
「水の都市からフィクサーナを経由して海王蛇に苦情がきている。もうこれ以上海の生物を減らさないでくれと」
「水龍人でしょ。食い潰れそうなら魔獣の多いドラゴン都市にでもいけば」
「飛龍と地龍が混在すれば、ドラゴン都市は瞬く間に枯渇するぞ」
「ならその隣の暗黒都市にでも引っ越せばいいんじゃない。エサも沢山飛んでるし」
「暗黒都市には水が無いだろう」
「なんなの? エサじゃなく水が目的なの?」
「いや釣り糸に獲物が全くかからないらしい。このままでは第169回バネリ釣王大会が開けないと嘆いていたそうだ」
「知らないよ。それも俺のせいじゃないもん」
「そうか」
リリーはご機嫌で鮫と物々交換してる。
鍵を渡したから、リリーは裏の物を認識できるようになった。リリーは闇アイテムと言っていたけど、海王蛇の番が裏の世界から表の世界にたまたま持ってきて放置してるやつだよ。幽霊はどちらも見て触れるからね。早く鮫が憑依してるあの船をサリラン大陸にでも飛ばさないと、リリーの関心を引き続けてしまう。でも一度に沢山動くのは怪しまれる。慎重にいかないと。
「フィックス、そのフカヒレ、団子にでもするのか?」
「うん?」
リリーから渡されたフカヒレを裂いていたら既に原型を留めていなかった。それを更に千切ってを繰り返していたから、細胞が繋ぎ合って団子みたいになっていた。
スプラッターシャークを呼び寄せ作りなおす。
ドラゴン都市の領海にはもういないから、胃の中から出した。
「あああ! 厨房がッ! 厨房がああっっ! 見えない何かに押し潰されるうう!」
「諦めるな! 押し潰される前に尻尾を切って窓から逃げろ!」
「フィックス、頼むから少しじっとしていてくれ」
ん……リリーが海上に向けて泳ぎだした。途中、通りすがりの鮫を狩って、その時、周りに目を向けて……ようやく関心を無くした。努力が実った。リリーは早めに帰って来る。
「これお嬢ちゃんが食べるのか?」
「ヒレだけね、お肉は廃棄、放っておけば魚の餌」
「そうか」
鮫のヒレをむしって残りは海に飛ばす。リリーが海にいる時、たまに声に出して可愛く言うんだ。『肝だけゲット、身はポイポイ、放っておけば海の栄養♪』とか『内臓だけ回収、皮は放流、放っておけば海のカーテン♪』とか色んな言い回しをする時があるので可愛い。
「さっき作ったそこのタレで煮込んどいて。味の仕上げは俺がするから。それ以外なにもしないで」
「はい」
リリーが帰って来る。
いや、帰宅したら門限まで出掛ける気かもしれない。
どうにかして繋ぎ止めないと。
「フィックスさぁん……ただいま戻りましたぁ」
「……おかえりリリー。お腹すいた?」
「はい。フィックスさんが食べたいです」
リリーを繋ぎ止めることが出来た。テリーから「お前は一体なにをしているんだ?」と奇怪な目を向けられたけどどうでもいい。嬉しくてすぐにリリーを2階へ連れていった。次もどうやって繋ぎ止めるか、考えておかないと。
丁寧に髪を洗って、優しく体を洗って、湯船でリリーと戯れる。リリーは、よくお風呂で泳ぐよね。狭いのに。条件反射のように。お湯の中で泳ぐのが好きなのかな? ならそういった場所も造っておこうかな。
「ふにゃ~……フィックスさんは私を甘やかしすぎですよぅ」
「そう? リリーは本当に抜けてるからね。俺に甘やかされてるように感じるんだね」
俺の側は安全だって、リリーさえそう思ってくれていたらいい。
さっきからリリーは自分で気付いていないだろうけど、無意識に左手の指輪に触れている。俺に触れている。その指輪は俺の一部だからね。リリーももう俺の一部なんだよ。
足首に柔らかい感触。
俺の膝に顎を乗せて、リリーが無防備に微睡んでる。キラキラと輝く髪が湯に浮いている。
ザハァっと片足を持ち上げると、リリーは乗ったまま落っこちないよう猫みたいに体勢をかえた。慌てなくても落ちないよ。どれだけ揺らしても落ちない。もう俺の体の一部だからね。それを目で見て確かめて、胸の辺りが満たされる。
リリーが猫みたいに両腕を揃えて一歩ずつ向かってきた。服を着ている時は裸を見られるのを躊躇してるけど、お風呂ではいつも平気な顔してるよね。抱いた後に入ることが多いからかな? 襲われないとでも思ってるのかな?
「到着♪」
額に口付けをしてから顔を覗きこんできた。可愛い。なんて無防備な顔。俺の側は安全だと疑わない顔。腹から欲が飛び出してきそうになる。
「……リリー、体は辛くない?」
「え? 快調だよ」
「そう……朝まで抱いていい?」
眼を開くとリリーが全身を震えさせながらしがみついてきた。抱いてる時のように、びくびくと反応を返して、そのあと怒った。凄い。心臓も正常だ。もう止まりそうになることはない。馴染むのがはやすぎる。俺の欲に反応して目を反らし、そのあと抱きついて信じられない言葉を言った。
「…………い、いけど……私、気絶しないようになったので、」
リリーは本当に、俺に合わせようとするよね。歴代の海王蛇にも、俺にも、誰もそんなことしなかったのに。肩を甘噛みする。びっくりした猫みたいな声が返ってきて、喉の奥で笑った。ああそうだ、笑うのも、リリーと出会ってからだ。人魚と人間の血が入っているから、笑おうと思えば笑えるんだけど、そう思わなくても笑ったのはリリーに出会ってからだ。嬉しい気持ちが沸き上がり、両手でリリーの顔を包み込んだ。
「こっち見て」
「しぬ、朝までこれされたらしぬって!」
「目ぇ開けて」
「そういうの視姦って言うんですよ! もう私の体には飽きたんですか!?」
ああいけない。リリーは抜けてるけど、俺に対しては周りの奴らみたいに、そんな斜め向こうな抜け方はして欲しくない。
「向こうではこうやって愛し合うんだよ」
「向こう!? 死後の世界の話ですか!?」
「海王蛇は発情期に、こうやって生命の危機を感じさせて、排卵させて孕ませるんだよ」
じゃないと雌に雄と認識されないからね。
こっちは見えているのに。雌は巨体の海王蛇のことなんて、ただの岩か壁の一部としか認識していないから。既に絶滅した同族の雌は、体積が雄と比べて眇々たるものでしかないんだ。最後に残った純血種の雄が、人間と交わってくれたお陰で、俺の未来が拓けた。俺が巨体の純血種だったら、リリーは俺を雄と認識してくれなかっただろう。番にしようと手を出したら、直感に従って毒で切りかかってきそうだ。
……ああ、そうか。
ならやっぱりリリーは、あの一瞬の間に、純血種と対峙したんだ。引力に引き寄せられたということは、純血種はリリーを雌と認識して、姿が見えるところまで、海に引き摺りこめる視界の範囲まで、呼ぼうとした。でもリリーは純血種を雄だと認識しなかった。敵だと判断して毒で戦おうとした。そういうことをされると、海王蛇は一回だけ逃がしてあげようと判断するからね。だから戻ってこれたんだ。
「……な、ら、発情期に……排卵、させたらいいじゃないですかぁ……」
「俺は嫌がっても止めないし、肝心な場面では甘やかさないよ。発情期に知ったでしょ? なのにリリーがさっき俺をそう思ったのは、なんでだろうね?」
「……甘やかすの定義が、」
甘やかしてあげたいよ。ちゃんと帰ってきたからね。リリーは純血種より俺を番に選んだ。そう思うと、もうなんでも言うこと聞いてあげたくなる。だって海王蛇は発情期に、そこらじゅうの生き物を飲み込んで、番への一生分の贈り物にするんだ。雌が餌を取ってこなくてもいいように、栄養を蓄えて早く子を孕める体になるように、それが進化の過程で、徐々に胃が大きくなって、新しい世界を造りだしてしまうことになった。胃の中でも、飲み込まれた生物が、一生を終えても気付かないほど、大きな世界。番を独占したくて、番の唯一の世界になりたくて、番が望んだものは全て用意できるように、海王蛇は番が望む世界を造りだせるように進化したんだ。
人族の体にも様々な生物がいるからね。リリーの体も、そこに住んでる生物にとっては、ひとつの大きな世界なんだよ。
早く俺の中で生活したらいいのに。リリーさえそうしてくれれば、その中で際限なく甘やかしてあげるのに……。
「フィックスさん、私は貴方に抱かれてめちゃくちゃにされるのが……その、好きです」
「うん」
「……でも、一人だけよがっているのは、その、寂しいじゃないですかぁ……私だって、フィックスさんが乱れているところを、その……ね?」
うん。でも俺、肝心なところでは甘やかさないってさっき言ったよね。こうやって、外にいる時は、リリーが俺に餌を与えて抑えてくれないと。
「好きだよ、リリー……愛してる」
そう伝えるとリリーが嬉しそうに口許を緩めて、言葉は返してくれない。せめて人間の言葉で愛してるとこたえてくれたらいいのに。
また眼を開きたくなる。リリーを前後不覚にすると、お願いしたらなんでも言ってくれるからね。
そうだ。もう無理矢理のみ込むことはしないと決めたんだ。だからこれもちゃんと言葉にして伝えないと。リリーは変な方向に抜けていってしまうから。
「リリーは恥ずかしがり屋だから……その一人でよがってる時だけ、俺に愛してるって気絶するまで言ってくれるからね。もう味しめちゃった。でも今夜は気絶しないで、ずっと言ってくれるんだよね?」
「……うそん」
ああ。なんて可愛い無防備な顔。
今夜は俺が安心するまで、沢山愛してると言ってもらおう。
◇ ◇ ◇ ◇
「フィックスさぁん……愛してます」
正気の時でもリリーはそう言ってくれるようになった。そんなに俺に合わせて、今すぐ丸のみしたくなる。
「愛してます……昨日も沢山言った気がするけど……」
「……うん。夢見心地だった。リリーを抱き締めながら寝かし付けてる時も……うわ言のようにずっと愛してるって言ってて……それ聞いてたら俺も眠くなってきて」
あれは番を胃の中に入れて全ての神経が安心したような、至福の眠りだった。起きてリリーが胃の中にいないことに気付いてすぐ目の前のリリーを羽交い締めにしてしまったけど。それも幸せな一時だった。
「……リリー、ご飯食べたらもう一緒に寝」
「今日は行商にいきます。夕方必ず帰ってきます」
行商か。船には乗らないならいいかな。もうドラゴン都市の領海の生物も、徐々に減らしてだいぶ数が少なくなってきたし、船に乗ったとしてもリリーは門限より早く帰って来る気がする。でももっと頑張らないと。緩やかに。早急に。
◇ ◇ ◇ ◇
翌日。
リリーはご機嫌で船に転移した。
悔しくて今度はドラゴン都市だけじゃなくムンタリ大陸の領海の生物も減らした。
「水の都市からフィクサーナを経由して海王蛇に苦情がきている。もうこれ以上海の生物を減らさないでくれと」
「水龍人でしょ。食い潰れそうなら魔獣の多いドラゴン都市にでもいけば」
「飛龍と地龍が混在すれば、ドラゴン都市は瞬く間に枯渇するぞ」
「ならその隣の暗黒都市にでも引っ越せばいいんじゃない。エサも沢山飛んでるし」
「暗黒都市には水が無いだろう」
「なんなの? エサじゃなく水が目的なの?」
「いや釣り糸に獲物が全くかからないらしい。このままでは第169回バネリ釣王大会が開けないと嘆いていたそうだ」
「知らないよ。それも俺のせいじゃないもん」
「そうか」
リリーはご機嫌で鮫と物々交換してる。
鍵を渡したから、リリーは裏の物を認識できるようになった。リリーは闇アイテムと言っていたけど、海王蛇の番が裏の世界から表の世界にたまたま持ってきて放置してるやつだよ。幽霊はどちらも見て触れるからね。早く鮫が憑依してるあの船をサリラン大陸にでも飛ばさないと、リリーの関心を引き続けてしまう。でも一度に沢山動くのは怪しまれる。慎重にいかないと。
「フィックス、そのフカヒレ、団子にでもするのか?」
「うん?」
リリーから渡されたフカヒレを裂いていたら既に原型を留めていなかった。それを更に千切ってを繰り返していたから、細胞が繋ぎ合って団子みたいになっていた。
スプラッターシャークを呼び寄せ作りなおす。
ドラゴン都市の領海にはもういないから、胃の中から出した。
「あああ! 厨房がッ! 厨房がああっっ! 見えない何かに押し潰されるうう!」
「諦めるな! 押し潰される前に尻尾を切って窓から逃げろ!」
「フィックス、頼むから少しじっとしていてくれ」
ん……リリーが海上に向けて泳ぎだした。途中、通りすがりの鮫を狩って、その時、周りに目を向けて……ようやく関心を無くした。努力が実った。リリーは早めに帰って来る。
「これお嬢ちゃんが食べるのか?」
「ヒレだけね、お肉は廃棄、放っておけば魚の餌」
「そうか」
鮫のヒレをむしって残りは海に飛ばす。リリーが海にいる時、たまに声に出して可愛く言うんだ。『肝だけゲット、身はポイポイ、放っておけば海の栄養♪』とか『内臓だけ回収、皮は放流、放っておけば海のカーテン♪』とか色んな言い回しをする時があるので可愛い。
「さっき作ったそこのタレで煮込んどいて。味の仕上げは俺がするから。それ以外なにもしないで」
「はい」
リリーが帰って来る。
いや、帰宅したら門限まで出掛ける気かもしれない。
どうにかして繋ぎ止めないと。
「フィックスさぁん……ただいま戻りましたぁ」
「……おかえりリリー。お腹すいた?」
「はい。フィックスさんが食べたいです」
リリーを繋ぎ止めることが出来た。テリーから「お前は一体なにをしているんだ?」と奇怪な目を向けられたけどどうでもいい。嬉しくてすぐにリリーを2階へ連れていった。次もどうやって繋ぎ止めるか、考えておかないと。
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