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閑話 おっかなびっくり彼氏とデート編
②贄坊主
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スス村の外れにある浜辺でフィックスさんとバーベキューをした。
「リリー、銀杏はもう焼けたよ」
「ありがとうございます! わぁ、これ紅珊瑚に実る銀杏ですよねぇ。初めて食べますっ」
フィックスさんは次から次に海の食材を呼び寄せてくれた。公式にも載ってない食材もある。超贅沢。あぁ。夫がチート過ぎる。トングを持つ姿もかっこいい。
「皇帝海老ぷりぷりでおいちい~、わぁ! 桜ニンニクだぁ~、これ海のどこにあるんですか?」
桜の形をしたピンク色のニンニク。
ゲームの公式HPのアイコンだ。
桜ニンニクは海中で咲く桜の花、その実だけど、咲く場所は知らない。確か公式では海中に幽霊学園が実装される予定で、そこに出現すると載っていた。
いま目の前にあるということは、ちゃんと実装されたんだね。
「どこだろうね。閉じ込められた場所にあるよ」
「え~、知りたいですぅ」
「リリーが一人で行ったらしんじゃうから、だめ」
……そんなエリアにあるんだ!
「じゃあ今度デートで連れていって下さいよぅ」
「いいよ」
やったぁ♪
ホクホクの桜ニンニクをアーンされてにんまり。超おいちい。
「あ~、なんて素敵な日なんでしょう」
食べ終えて後片付けを済ませてフィックスさんとまったり。晴れ渡った空と髪を靡かせる潮風が気持ちいい。
「綺麗」
「え?」
「リリーは、綺麗だよね」
フィックスさんが目を細めて私の髪を手で掬った。開放的な浜辺で、天気もよくて、なのに艶めかしい雰囲気を醸し出すフィックスさんに心臓が跳ねた。
「……フ、フィックスさんこそ美しいですよ! 私……あまり男性の顔立ちとか筋肉とか興味なかったけど、そんな私でも、フィックスさんはとても美しい男性だとわかります! 王侯貴族時代が終わった現代だったら、間違いなくフィックスさんは超美形なハリウッドスターとかになってますよ! それかイケメンタレント兼オーナーシェフ!」
「? リリーは魔力も高くて全部可愛いからそこらじゅうから目をつけられるね。同じ人間から見ても欲しいだろうし、獣人から見ても優秀だから、一目見ただけで狙われるね」
「私はフィックスさんしか見てませんよ! 初めて見た時から異性として意識してましたもんっ」
男性からナンパされたのも初めてだったしね。
「俺は初めてリリーを見て俺のものだって思った」
「え~、フィックスさん、もしかして出会ったあの時、私に一目惚れしたんですかぁ?」
「どうだろう? リリーの存在に気付いて、早く手に入れなきゃって……俺、ずっと必死だったから」
「え~、フィックスさんは初対面からずっと余裕のある男性に見えていましたよぉ?」
フィックスさんとの何気ない思い出話。
心臓はばっくばくだ。
既にヤル事はやっているが、事後も普通に会話はしているが、こうやって外で普通に会話すると照れるね。
その後もフィックスさんは色んな話をしてくれた。主にテリーさんの愚痴とか愚痴とか愚痴とか。
「──なんかお話を聞いているとフィックスさんとテリーさんは持ちつ持たれつな関係にみえますね」
「そうなんだろうね。弱点を見つけてもらっても、あまり番に負担をかけないよう、どちらかが冷静な時は対処しようって言われたからね」
「? フィックスさんが冷静じゃない時なんてあるんですか?」
「あるよ」
……そうなんだ。
一緒に商売をして十年は経つそうだし、なんだかテリーさんが羨ましいや。
「暮れてきたね」
「あ、……」
ちらっと洞穴の方を向く。
まだ太陽は沈まない。
確か沈む直前が、一番神秘的なオレンジ色の光が綺麗だったとマリアーナさんが言っていた。
「……フィックスさん、お散歩しましょう!」
「いいよ」
「えーっと……ならあっちの方を……今から探検します!」
「わかった」
手を繋いでてくてく歩く。
うん、もう見えてるんだけどね。
洞穴の洞窟。入り口は真っ暗だけど奥からオレンジ色の淡い光が海面に反射している。
「あ、あの洞窟が怪しいので調べます!」
「先客がいるね」
え? 先客?
まさか先に村人のカップルが?
目前にある洞穴の洞窟を目指して海に入ると、途端、目の前に丸い生き物が現れた。
海坊主みたいな、うみうしみたいな、不思議な軟体生物。
見上げるほど大きい。
鑑定するも弾かれた。
というより空振りに近い。
何もない場所を鑑定するとよくこうなる。
「リリー?」
「なんですかね、コレ。無機質?」
「贄坊主だよ。邪魔だから追い出したんだ」
「あ、なら先客ってコレのことですか? ってことはここはコレの巣かなにか……?」
「うん。後でまた戻しとくから、大丈夫」
そっか。ごめん。
現れた時のまま、姿に変化はないけど、怒ってるのはわかった。フィックスさんがちらっと見るとビクッと身を引いたけど、困惑してるのも伝わってきた。ほんとごめん。ちょっとだけお邪魔するね。巣は荒らさずすぐ出ていくからね。
「わぁー、これ、めっちゃ綺麗じゃないですかああ!!」
洞穴の洞窟の中はまさに神秘的な光を放っていた。
興奮する。神々しくさえある。
威厳が感じられるオレンジ色の光に、神様とかいそうと思った。神社的な背筋が伸びる感覚。
あぁ。日が沈んできたんだ。
天井から差し込む洞窟内の光も弱まってきた。
何故か寂しさを感じてフィックスさんを見ると、オレンジ色の光が黒髪にマッチしてえもいわれぬ凄絶な色気を放っていた。
今まさに心音はトゥクゥン……。
自然と目を閉じて唇をんぅーと近付けるとぎゅっと抱き締められてチュッとキスしてくれた。すっと力が抜けて雄っぱいに寄りかかる。なんて甘酸っぱい! 前世の分も含めた青春を取り戻した気がした。
「……幸せです」
「俺も……リリーはこういうのも好きなんだね」
「恥ずかしいです……ほんと、こういうの、無頓着だったんですけどね」
「可愛い。大好き」
「私もフィックスさん大好きです」
いい雰囲気になってきた。
そこで目を開けるも真っ暗闇だった。
おや? 夜目発動。優しく微笑むフィックスさんがいる。
「……神秘的なものって儚いですよねぇ。僅か数秒間の奇跡のような光景でした」
うん、スス村で唯一の観光場なだけあるよ。
「大丈夫。そういうの、沢山造っておくから」
「? フィックスさぁん、また一緒に思い出つくってくれますか?」
「うん。沢山つくる」
この後はお店に帰ろうかと考えたが、何故か今夜は帰りたくない!という気分になって、夜はフィックスさんと一緒にキャンプファイアーをした。
「綺麗……紅珊瑚って、こんな美しい炎を放つんですね」
フィックスさんがお取り寄せしてくれた紅珊瑚。鑑定すると油が含まれている。ほんとよく燃える。そして先ほどのオレンジ色の光より幻想的な空間が生まれた。
飛び火がホタルのように美しい。
ぽわっと光って、消えて、まるで線香花火のような儚さまである。
綺麗だなぁ。
フィックスさんに背を預けながら、その炎に見惚れていたら海から贄坊主が上がってきた。
「あれー? 巣に戻らないの?」
「お腹が空いてるみたい」
「へぇ。今からご飯探し? 夜行性なんですね」
なら夕方は寝てる時間だったのか。
悪いことしたなぁ。
ズズズ、ズズズ、と。
浜辺を這うようにスス村がある方角に蝸牛のような触角を向けてゆっくりと進んでいく。
途中、くるっとその触角を向けてきた。
「コンナコト、コンカイダケニシテクレ」
「え?」
「ニエモササゲズスンダノハ、オマエガフタリメダ」
「ん? んっ? なんて?」
いま喋ったよね?
でも声が重なっておまけにエコーがかかってて聞こえにくかった。
「フィックスさん、今あの子なんて言ってたんですか? カタコトで聞き取れませんでした」
「足が攣ったみたい。痛いって」
「へぇ。水分不足とかですかねぇ」
海中は塩分高めだからね。
海の頂点を着ていなかったら、私ですら海水で水分抜けて指がふやけるもん。
そこでつつつ、と。フィックスさんの指が私の胸元をなぞった。
「っ、」
今は水着のみで、シャツワンピは着ていない。炎の灯りに照らされた胸元がよく見える。
「さっきの洞窟は、光が消えたらリリーの高揚も消えちゃったでしょ」
「そ、れは……」
確かによい雰囲気ではあったけど。
一応他の生き物のお家だからね。
そう言おうと振り返ると、紅い炎に照らされたフィックスさんが目に映った。わお。アダルティー。ロマンチックというより、エッチだ。
「っ、……ぅ」
「高揚してきた?」
「……き、ました」
口角を上げたフィックスさんの顔が近付いてきて、私はさっきの洞窟でしたように、目を閉じて唇を尖らせた。
そして翌朝。
朝日が昇ってきた浜辺で、フィックスさんにモーニングコーヒーを淹れた。
下は何も付けていない身にフィックスさんのシャツを膝下まで被りながら。
今フィックスさんはデニムだけで砂浜にいる。凄い筋肉。背中やばい。またお胸を押し付けたくなる。とても清々しい朝なのに、なんかエッチだ。
コーヒーを注いだカップを渡して、フィックスさんに寄り添う。
「美味しいね」
「はい! 今日は初めての外泊デートと朝帰り記念日ですから! 愛情を込めて丁寧に淹れました!」
そう言うとキスされた。
コーヒー味のキス。
なんかエッチだ。
「あっ……そういえば昨夜は村の方角が騒がしかったですね」
「そうなの? 俺、リリーの声しか聞いてなかったから」
「……さ、騒がしかったですよぉ。たまに悲鳴とか雄叫びとか聞こえてきましたもんっ。あとうろ覚えですが、遠くの方で炎もあがっていたような……」
ぐだぐたにされた意識が一瞬ハッと我に返るくらい、直感もビリビリしてた。まあ、その直後にフィックスさんにふにゃふにゃにされたから、本当にうろ覚えなんだけどね。
「ならお祭りでもしてたのかな」
「ああ、町おこしかなんかですかね」
「そうなんじゃない。テリーも言ってたよ。この辺は海の資源を保つ為に祭りで祈りの儀式をするから、行くならあまり変動させるなって」
「へぇ……」
祭りで儀式って……雨乞い的な?
でもそういうのって、気休め程度にしかならないよね。現実的に考えて海の資源って、きちんと考えて専門家が海が汚染されないよう環境を整えたり、害クラゲを駆除したり、稚魚を放流したり、浄化する貝を放ったり、でもそれを獲る者が近くにいる限りまた減るし汚れるしで……そういやケイシーが魚介を獲り尽くしたあのボーンデビル島、まだ海の恵みは元に戻ってないだろうなぁ。
そう思いながらなんとなしに海の方に意識を向けると、ぎょっとした。
「……フ、フィックスさん!」
「うん?」
「昨日はうっかり私がこの辺一帯の皇帝海老を食べ尽くしちゃったのに、また回復してます!」
「なら祈りが届いたんじゃない。沢山食べたみたいだし」
マジか!
儀式……凄い!
これは侮れんな。さっきは気休め程度だなんて思ってごめん。儀式、凄いわ。
帰る前にスス村に寄ると村人は誰もいなかった。探知探索するも、本当に誰もいない。狩りや畑で出払ってるのかな?
赤い屋根の飯屋もなかった。
何故か焼け焦げた家はあったけど。
それとあちこちに木に地方の警察が貼ったらしき、行方不明者の捜索書があった。どれも年数がかなり経っている。殆どが旅行者や冒険者みたいだけど。新しいものは故意に破られたような痕跡もあった。まあ、道も整備されていない辺境だし、捜査は難航するよね。
「なぁんだ。儀式を成功させるとか結構凄い村だから寄ってみたんですが、おすすめされた飲食店も無いみたいですね……お腹も空きましたしそろそろ帰宅しましょうか」
「大丈夫。帰ったらリリーに美味しいの作ってあげるから」
「ありがとうございます!」
帰りはまたお胸を押し付けちゃお。
お店に帰宅すると従業員の皆さんが暖かい目で出迎えてくれた。
なんか外泊と朝帰りでお店に入る時もじもじしちゃったけど、フィックスさんとはもう結婚が決まってる仲だもんね! それにステータスを見る限り既に夫婦も同然な称号もあるし、胸を張ってただいまーと言った。
あー、最北端ほんと楽しかったぁ。
次のデートの約束もしてくれたし、また遠出するの楽しみだなぁ。
「リリー、銀杏はもう焼けたよ」
「ありがとうございます! わぁ、これ紅珊瑚に実る銀杏ですよねぇ。初めて食べますっ」
フィックスさんは次から次に海の食材を呼び寄せてくれた。公式にも載ってない食材もある。超贅沢。あぁ。夫がチート過ぎる。トングを持つ姿もかっこいい。
「皇帝海老ぷりぷりでおいちい~、わぁ! 桜ニンニクだぁ~、これ海のどこにあるんですか?」
桜の形をしたピンク色のニンニク。
ゲームの公式HPのアイコンだ。
桜ニンニクは海中で咲く桜の花、その実だけど、咲く場所は知らない。確か公式では海中に幽霊学園が実装される予定で、そこに出現すると載っていた。
いま目の前にあるということは、ちゃんと実装されたんだね。
「どこだろうね。閉じ込められた場所にあるよ」
「え~、知りたいですぅ」
「リリーが一人で行ったらしんじゃうから、だめ」
……そんなエリアにあるんだ!
「じゃあ今度デートで連れていって下さいよぅ」
「いいよ」
やったぁ♪
ホクホクの桜ニンニクをアーンされてにんまり。超おいちい。
「あ~、なんて素敵な日なんでしょう」
食べ終えて後片付けを済ませてフィックスさんとまったり。晴れ渡った空と髪を靡かせる潮風が気持ちいい。
「綺麗」
「え?」
「リリーは、綺麗だよね」
フィックスさんが目を細めて私の髪を手で掬った。開放的な浜辺で、天気もよくて、なのに艶めかしい雰囲気を醸し出すフィックスさんに心臓が跳ねた。
「……フ、フィックスさんこそ美しいですよ! 私……あまり男性の顔立ちとか筋肉とか興味なかったけど、そんな私でも、フィックスさんはとても美しい男性だとわかります! 王侯貴族時代が終わった現代だったら、間違いなくフィックスさんは超美形なハリウッドスターとかになってますよ! それかイケメンタレント兼オーナーシェフ!」
「? リリーは魔力も高くて全部可愛いからそこらじゅうから目をつけられるね。同じ人間から見ても欲しいだろうし、獣人から見ても優秀だから、一目見ただけで狙われるね」
「私はフィックスさんしか見てませんよ! 初めて見た時から異性として意識してましたもんっ」
男性からナンパされたのも初めてだったしね。
「俺は初めてリリーを見て俺のものだって思った」
「え~、フィックスさん、もしかして出会ったあの時、私に一目惚れしたんですかぁ?」
「どうだろう? リリーの存在に気付いて、早く手に入れなきゃって……俺、ずっと必死だったから」
「え~、フィックスさんは初対面からずっと余裕のある男性に見えていましたよぉ?」
フィックスさんとの何気ない思い出話。
心臓はばっくばくだ。
既にヤル事はやっているが、事後も普通に会話はしているが、こうやって外で普通に会話すると照れるね。
その後もフィックスさんは色んな話をしてくれた。主にテリーさんの愚痴とか愚痴とか愚痴とか。
「──なんかお話を聞いているとフィックスさんとテリーさんは持ちつ持たれつな関係にみえますね」
「そうなんだろうね。弱点を見つけてもらっても、あまり番に負担をかけないよう、どちらかが冷静な時は対処しようって言われたからね」
「? フィックスさんが冷静じゃない時なんてあるんですか?」
「あるよ」
……そうなんだ。
一緒に商売をして十年は経つそうだし、なんだかテリーさんが羨ましいや。
「暮れてきたね」
「あ、……」
ちらっと洞穴の方を向く。
まだ太陽は沈まない。
確か沈む直前が、一番神秘的なオレンジ色の光が綺麗だったとマリアーナさんが言っていた。
「……フィックスさん、お散歩しましょう!」
「いいよ」
「えーっと……ならあっちの方を……今から探検します!」
「わかった」
手を繋いでてくてく歩く。
うん、もう見えてるんだけどね。
洞穴の洞窟。入り口は真っ暗だけど奥からオレンジ色の淡い光が海面に反射している。
「あ、あの洞窟が怪しいので調べます!」
「先客がいるね」
え? 先客?
まさか先に村人のカップルが?
目前にある洞穴の洞窟を目指して海に入ると、途端、目の前に丸い生き物が現れた。
海坊主みたいな、うみうしみたいな、不思議な軟体生物。
見上げるほど大きい。
鑑定するも弾かれた。
というより空振りに近い。
何もない場所を鑑定するとよくこうなる。
「リリー?」
「なんですかね、コレ。無機質?」
「贄坊主だよ。邪魔だから追い出したんだ」
「あ、なら先客ってコレのことですか? ってことはここはコレの巣かなにか……?」
「うん。後でまた戻しとくから、大丈夫」
そっか。ごめん。
現れた時のまま、姿に変化はないけど、怒ってるのはわかった。フィックスさんがちらっと見るとビクッと身を引いたけど、困惑してるのも伝わってきた。ほんとごめん。ちょっとだけお邪魔するね。巣は荒らさずすぐ出ていくからね。
「わぁー、これ、めっちゃ綺麗じゃないですかああ!!」
洞穴の洞窟の中はまさに神秘的な光を放っていた。
興奮する。神々しくさえある。
威厳が感じられるオレンジ色の光に、神様とかいそうと思った。神社的な背筋が伸びる感覚。
あぁ。日が沈んできたんだ。
天井から差し込む洞窟内の光も弱まってきた。
何故か寂しさを感じてフィックスさんを見ると、オレンジ色の光が黒髪にマッチしてえもいわれぬ凄絶な色気を放っていた。
今まさに心音はトゥクゥン……。
自然と目を閉じて唇をんぅーと近付けるとぎゅっと抱き締められてチュッとキスしてくれた。すっと力が抜けて雄っぱいに寄りかかる。なんて甘酸っぱい! 前世の分も含めた青春を取り戻した気がした。
「……幸せです」
「俺も……リリーはこういうのも好きなんだね」
「恥ずかしいです……ほんと、こういうの、無頓着だったんですけどね」
「可愛い。大好き」
「私もフィックスさん大好きです」
いい雰囲気になってきた。
そこで目を開けるも真っ暗闇だった。
おや? 夜目発動。優しく微笑むフィックスさんがいる。
「……神秘的なものって儚いですよねぇ。僅か数秒間の奇跡のような光景でした」
うん、スス村で唯一の観光場なだけあるよ。
「大丈夫。そういうの、沢山造っておくから」
「? フィックスさぁん、また一緒に思い出つくってくれますか?」
「うん。沢山つくる」
この後はお店に帰ろうかと考えたが、何故か今夜は帰りたくない!という気分になって、夜はフィックスさんと一緒にキャンプファイアーをした。
「綺麗……紅珊瑚って、こんな美しい炎を放つんですね」
フィックスさんがお取り寄せしてくれた紅珊瑚。鑑定すると油が含まれている。ほんとよく燃える。そして先ほどのオレンジ色の光より幻想的な空間が生まれた。
飛び火がホタルのように美しい。
ぽわっと光って、消えて、まるで線香花火のような儚さまである。
綺麗だなぁ。
フィックスさんに背を預けながら、その炎に見惚れていたら海から贄坊主が上がってきた。
「あれー? 巣に戻らないの?」
「お腹が空いてるみたい」
「へぇ。今からご飯探し? 夜行性なんですね」
なら夕方は寝てる時間だったのか。
悪いことしたなぁ。
ズズズ、ズズズ、と。
浜辺を這うようにスス村がある方角に蝸牛のような触角を向けてゆっくりと進んでいく。
途中、くるっとその触角を向けてきた。
「コンナコト、コンカイダケニシテクレ」
「え?」
「ニエモササゲズスンダノハ、オマエガフタリメダ」
「ん? んっ? なんて?」
いま喋ったよね?
でも声が重なっておまけにエコーがかかってて聞こえにくかった。
「フィックスさん、今あの子なんて言ってたんですか? カタコトで聞き取れませんでした」
「足が攣ったみたい。痛いって」
「へぇ。水分不足とかですかねぇ」
海中は塩分高めだからね。
海の頂点を着ていなかったら、私ですら海水で水分抜けて指がふやけるもん。
そこでつつつ、と。フィックスさんの指が私の胸元をなぞった。
「っ、」
今は水着のみで、シャツワンピは着ていない。炎の灯りに照らされた胸元がよく見える。
「さっきの洞窟は、光が消えたらリリーの高揚も消えちゃったでしょ」
「そ、れは……」
確かによい雰囲気ではあったけど。
一応他の生き物のお家だからね。
そう言おうと振り返ると、紅い炎に照らされたフィックスさんが目に映った。わお。アダルティー。ロマンチックというより、エッチだ。
「っ、……ぅ」
「高揚してきた?」
「……き、ました」
口角を上げたフィックスさんの顔が近付いてきて、私はさっきの洞窟でしたように、目を閉じて唇を尖らせた。
そして翌朝。
朝日が昇ってきた浜辺で、フィックスさんにモーニングコーヒーを淹れた。
下は何も付けていない身にフィックスさんのシャツを膝下まで被りながら。
今フィックスさんはデニムだけで砂浜にいる。凄い筋肉。背中やばい。またお胸を押し付けたくなる。とても清々しい朝なのに、なんかエッチだ。
コーヒーを注いだカップを渡して、フィックスさんに寄り添う。
「美味しいね」
「はい! 今日は初めての外泊デートと朝帰り記念日ですから! 愛情を込めて丁寧に淹れました!」
そう言うとキスされた。
コーヒー味のキス。
なんかエッチだ。
「あっ……そういえば昨夜は村の方角が騒がしかったですね」
「そうなの? 俺、リリーの声しか聞いてなかったから」
「……さ、騒がしかったですよぉ。たまに悲鳴とか雄叫びとか聞こえてきましたもんっ。あとうろ覚えですが、遠くの方で炎もあがっていたような……」
ぐだぐたにされた意識が一瞬ハッと我に返るくらい、直感もビリビリしてた。まあ、その直後にフィックスさんにふにゃふにゃにされたから、本当にうろ覚えなんだけどね。
「ならお祭りでもしてたのかな」
「ああ、町おこしかなんかですかね」
「そうなんじゃない。テリーも言ってたよ。この辺は海の資源を保つ為に祭りで祈りの儀式をするから、行くならあまり変動させるなって」
「へぇ……」
祭りで儀式って……雨乞い的な?
でもそういうのって、気休め程度にしかならないよね。現実的に考えて海の資源って、きちんと考えて専門家が海が汚染されないよう環境を整えたり、害クラゲを駆除したり、稚魚を放流したり、浄化する貝を放ったり、でもそれを獲る者が近くにいる限りまた減るし汚れるしで……そういやケイシーが魚介を獲り尽くしたあのボーンデビル島、まだ海の恵みは元に戻ってないだろうなぁ。
そう思いながらなんとなしに海の方に意識を向けると、ぎょっとした。
「……フ、フィックスさん!」
「うん?」
「昨日はうっかり私がこの辺一帯の皇帝海老を食べ尽くしちゃったのに、また回復してます!」
「なら祈りが届いたんじゃない。沢山食べたみたいだし」
マジか!
儀式……凄い!
これは侮れんな。さっきは気休め程度だなんて思ってごめん。儀式、凄いわ。
帰る前にスス村に寄ると村人は誰もいなかった。探知探索するも、本当に誰もいない。狩りや畑で出払ってるのかな?
赤い屋根の飯屋もなかった。
何故か焼け焦げた家はあったけど。
それとあちこちに木に地方の警察が貼ったらしき、行方不明者の捜索書があった。どれも年数がかなり経っている。殆どが旅行者や冒険者みたいだけど。新しいものは故意に破られたような痕跡もあった。まあ、道も整備されていない辺境だし、捜査は難航するよね。
「なぁんだ。儀式を成功させるとか結構凄い村だから寄ってみたんですが、おすすめされた飲食店も無いみたいですね……お腹も空きましたしそろそろ帰宅しましょうか」
「大丈夫。帰ったらリリーに美味しいの作ってあげるから」
「ありがとうございます!」
帰りはまたお胸を押し付けちゃお。
お店に帰宅すると従業員の皆さんが暖かい目で出迎えてくれた。
なんか外泊と朝帰りでお店に入る時もじもじしちゃったけど、フィックスさんとはもう結婚が決まってる仲だもんね! それにステータスを見る限り既に夫婦も同然な称号もあるし、胸を張ってただいまーと言った。
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