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三話 弟の仲間

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「ではルイのお部屋に行ってお話しましょう。恋人様もおつかれでしょうから」

 丁寧な口調で微笑まれる。微笑み返そうとしても長年の苦労からか表情筋は固く動かない。元より微笑み返す気もないが。

 城は近しく見ていなかったが立派で上品なものだった。裏口から衛兵に入れてもらい城内へ入る。俺は未だ担がれたままであるが体力を消費しなくてすごく楽なので特に気にしてはいない。

「恋人様はどんな飲み物がお好き?」
「...」

 レーナに話しかけられるが何も答えない。いや、答えられないのだ。どんな飲み物と言ってもスラムには水しかない。お茶も出回るが何が入っているか分からないから水しか飲めない状態だ。レーナは俺がスラムとは知らないのだろうか。俺はこんなに汚いし臭いから一目瞭然といえばそうなのだが。最近は少し髭も生えてきて面倒くさがって切っていないから汚い印象をより与えると思う。

「あらあら私は恋人様に嫌われてしまったかしら」
「がははっレーナに話しかけられても顔を染めないやつがいるんだな。外見はいいのにな」

 レオはレーナに叩かれ地面にめり込む。少し外見だけと言っていた意味が分かったかもしれない。

「おほほ気にしないでくださいまし」

 気にしない。スラムでもこういうのに一々構ってると大変だから気にしないのが一番良い。子供達に一番に教えたのもそれだった。

 薄暗い廊下を歩いていくと光の漏れた部屋がある。そこに入ると俺はまたふわふわな椅子に座らされ肩に手を置かれた。目の前にはキラキラと輝くイケメンが座っていた。その隣にはイケメンにくっつくように無表情なショートカットの女の子が座っている。

「お迎えご苦労様です。レーナ、レオ」
「いいのよ。少し楽しかったわ」
「悪魔め」
「あらレオはもう一発喰らいたいようね」

 レーナは上品に扇子で口元を隠しながら右手に拳を作る。レオは青ざめながら顔を横にブンブンと振り続けている。顔を染める...あー。

「レーナ、今はやめてください。ルイの恋人こ話をききましょう」
「そうね!そうしましょう」

 メイドが入ってきて飲み物と可愛いお菓子を置いていく。少し食べてみたい。だが毒が入っていたら...。

 弟がパクッとお菓子を口に運んでから同じお菓子を俺の前に持ってくる。両手で恐る恐る食べると今まで食べた事のない甘い風味が広がった。

「美味しい?」

 もちろん頷く。外はサクサクで中はふわふわとして甘い。こんなものスラムでは食べられないから今のうちに食べておきたい。出来れば子供達にもお土産を持って行ってあげたい。

「やっぱりルイにしては口調おかしくねぇか?」
「そうね。こんな優しい声と顔なんて聞いたこともないし見たこともないわ」
「そうですね。もっと食べていいですよ」

 イケメンに許可を貰ったことで弟が食べたものを見ながら同じものを食べていく。どれも美味しい。ポケットから布を取り出すと包む。

「なんで包むの?」
「子供達の土産」
「あそこには戻らせないよ」

 肩に置いている手の力が強まる。
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