グランピングランタン

あお

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第二章

わたあめ

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7月から8月にかけ各地で行われる夏祭り。そんな祭りの1つに参加した龍。祭囃子の音が遠のいて行く帰り道。
1人肩を落としながらー。
そんな時、予報外れの雨が降り始める。

〔雨って冷たいのに冷たくないんだな〕

雨にうたれながら、そう心の中で呟いた。話をしたいのに、したくはない。誰に何を話せばいいのかわからず、いつもよりゆっくりとした足取りで歩いて行く。

時は梅雨も明け、夏休みに入る前のテスト期間。学校に居残って下校ぎりぎりまで、絶賛勉強中だ。

「勉強、頑張ってる?」

そう声をかけてきたのは担任の藤本先生。この3年間ずっと同じ担任の熱血先生だ。

「いやー…頑張ってるつもりではいるんですが…。」
「びっくりしたよ。まさか木村が真剣に勉強に取り組むなんて。」
「東海高校に行くって親にも言っちゃったし、今の学力じゃちょっと無理ですからね。」
「まぁ勉強するのが学生の本分ではあるが、結局はそのプロセスが大事だと俺は思ってはいるんだけどねぇ。」
「…プロセス?」
「そう。まだ深く考えなくてもいいさ。今は東海高校に受かるように頑張りなさい!」

あれから進路について親と話をした。誰に言われた。とか誰かが行くから。とかじゃなくただ東海高校に行きたいと。その話を聞いた親は、好きにしなさい。と、一言。ましてや加奈子に言われたなんて。そんなことを思い、もじもじしながら親に伝えた。

「塾には通う気でいるの?」
「通わないつもり。」
「大丈夫なの?点数、足りてないんでしょ?」
「あぁ…高梨が教えてくれるってさ。」
「あんた加奈子ちゃんも同じ受験生なんだから。」

そんな会話を思い出しながらノートに過去問題を解き走らせる。

〔というか…あいつには何も話してないや。〕
〔けど、今さら話すなんてのもなぁ〕
「結局東海高校受けるんじゃん!」
〔?!?!?!〕

バッと後ろを振り向くとニタニタしながらこっちを見ている加奈子。
 
「なんだよ!なんで知ってんだよ!」
「今朝、藤本先生に聞いたのよ。」
「ち…。」
「話せばいいじゃん!勉強教えるって!」
「…お前も受験なんだからあんまり迷惑かけれないだろ。」
「心配してくれてるの?」
「俺の母さんが心配かけるなって」
「私はもう及第点だからいいの!今日は帰るからわからないところあれば聞いてね。」
「あいよ。」

後ろ向きで手を振る龍。それを見たのかはわからないが、聞こえていた足跡がだんだんと遠くなって行く。それからはなぜかわからないが、集中して勉強ができた。

「…………。よし!今日はもう帰るか!」

薄暗く、すれ違う車はランプの光が眩しい。そんな中、かすかではあるが賑やかな音がした。祭りの音だ。

〔そうか、夏祭りか。学校でも話してたなそーいや。〕

学校から帰ると、携帯の着信音が鳴る。

「もしもし。」
「あーおれおれ、田口。木村って今日の夜、家から出れたりする?」
「なんで?」
「学校の近くにある神社で、夏祭りあるの知ってるだろ?」
「あぁ…そーいや町内の夏祭りって言ってたよな。」
「21時には終わっちゃうからさ。19時には迎えに行くよ!」

只今の時刻、18時15分回ったばかり。

「わーった。親に話して準備しとくわ。あとは誰がくるの?」
「俺と江藤と甲斐田。」
「あれ?香川は来ないの?」
「あぁ。あいつ今日塾だってさ。」
「ふーん。ま、とりあえずわかったよ。」
「そんじゃよろしくー!」

田口・江藤・甲斐田・香川。いつも遊ぶ友達だ。田口と江藤は中学から。甲斐田と香川は小学校からの友達だ。
急いで着替える龍。ドタバタと準備を済ませ、迎えを待つ。

キキーッ!と、自転車のブレーキの音がして外を覗くと3人が見える。最近気に入ってる靴を履き、キュッと紐を結び玄関を開け、自転車に乗り出す。ワイワイと話しながら、4人は15分ほど自転車を漕ぐと神社の鳥居の前に到着した。横にある簡易の自転車置き場に自転車を置き、ガヤガヤとたくさんの人が祭りを楽しんでるのかそこからでも十分伝わる。

「おれ、たこ焼き食べよーっと。」
「おいおい甲斐田。さっき飯食ったって言ってなかったか?」
「こういうところに来たらなんか食べたくなるだろ?とか言いながら江藤。お前もさっきわたあめ見てたじゃんか。」
「あのわたあめ大きくねぇ?」
「たしかに!あれだけ大きいわたあめ食べると甘すぎて食えないや。」

そんな下らない話をしながら4人は進んでいき、賽銭箱の近くに辿り着く。そこで賽銭箱の前に立っている2人に気づく。

「あれ…?おい、木村。香川じゃないあれ?」
「ん?あいつ塾だとお前が言ってただろ。しっかりと…見ろ……よ…」
「おいおいおい!隣に女の子いるぞ!」
「まじ?!誰だよ?!あいつ彼女いないっていってたじゃんか!!!」

田口と江藤と甲斐田は身を乗り出しながらバレないように覗く。そんな中、龍は手先が冷たくなって行く感覚がわかった。

「あれって…高梨じゃね?」
「あいつら付き合ってんのかよ!」
「まじかー!高梨可愛いもんなぁ!羨ましいー!」

塾に行ってるはずの香川は、女の子と一緒にお賽銭箱の前で手を合わせ、何かを願ってるようだった。

「ありがとう高梨。」
「ううん。大丈夫だよ!」

2人が振り向き、こちらには気づかず歩いて来る。慌てて4人は人混みに隠れ、バレないようバレないようにと見ていた。

「…。…!!…?………!」
「…?……!」

2人は何か会話していたが祭りの音やたくさんの人の声で聞こえない。そんな2人の後ろ姿を見ながらニヤニヤする3人。

「いやー…びっくりしたな!あれは学校で聞くしかないね!」
「あのさ、俺帰るわ。なんか気持ち悪くてさ。」
「人酔いでもしたのか木村?」
「いや、大丈夫。すまないな。悪い。」

そう3人に言い残し、早く神社から離れたかった。
自転車に乗り、全力の力でペダルを踏む。が、長くは続かず息が上がる。

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」

サドルから降り、自転車を押すことにした龍。なんとも言えない気持ちが胸に押し寄せる。
そんな時、予報外れの雨が降り始める。

〔雨って冷たいのに冷たくないんだな〕

雨にうたれながら、そう心の中で呟いた。話をしたいのに、したくはない。誰に何を話せばいいのかわからず、いつもよりゆっくりとした足取りで歩いて行く。

続く。
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