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妄想乙女ゲームに終止符を

270.(修正)乙女ゲームに終止符を 其の二

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ヨルク副団長さんからは、今回の処遇について説明された。


破落戸ゴロツキ達は、殺しも請け負っていた者達だったので、死罪は免れない。

冒険者達は、それこそ北部の収容所に入れられる。・・・男性冒険者の方は、何処ぞの貴族の次男だったらしいけど、貴族サイドの収容所(修道院)ではない方に入る様だ。

それに付随し、情報漏洩と索敵妨害の魔導具を盗んだギルド受付嬢2名についても、通常の情報漏洩や窃盗の罰にはならないことになった。
彼女達の起こした結末が、『獅子の牙レオ・ファング』と『水の女神アクア・ヴィヌス』の2パーティーを瓦解させ、ギルドの指名クエストを受けた『影猿シャドウモンキー』の瓦解危機に晒したこと。また、A級ライセンス持ちの冒険者を奴隷落ちにさせる様な犯罪未遂に加担した、ということで、やはり、北部の収容所行き決定となった。

ヒルデ嬢の護衛だったサーフェスと、もう1人の騎士は、思い込みというより、完全たる悪意を『旅馬車トラベリン・バス』側に持っていたことを踏まえ、アンジェリン=サルバと同様処置とはならず、騎士位剥奪の上、やはり北部の収容所送りとなるだろうこと。

それらが、順を追って説明された。


「では・・・コウラル君に、リン殿・・・というか、クラスAパーティー『旅馬車トラベリン・バス』への賠償をさせて貰いたいのだが。」


全ての説明が終わり、領主様が私達への賠償について口にした。

その申し出に、ふむ、と考える。

・・・とは言え、既に、領内での自由活動への了承は貰っているし。
特に何が欲しいとか、こうして欲しいとか、無いんだよなぁ。


「俺は何も無いので、当事者のコウさんとリンさんで決めて貰って良いですよ?」


ぐるぐる考えていると、背後から声がかかり。ちらりと振り返ると、糸目で微笑むカン君がいる。


「僕も、ヒルデ嬢が物理的に離れるなら、それだけで良いからなぁ。リンに任せるよ。」


隣にいるこーくんまで、そんなことを言う。
困った私は、こーくんの後ろに控えていた、師匠を見やる。


「うん?お前の好きにしろ。悩むんなら、貸し一つって事にしとけばいい。」


そう言って、にやり、と笑う師匠。
すげー至る所に貸し作りまくってるんですね?分かります。
でもなぁ、そこまでは必要ないかな。

うーん。
私の一存で決めていいのなら。


「分かりました・・・では、北部修道院へ送られる前に、ヒルデ様とお話をさせて頂く機会を設けて下さい。」


私の発言に、その場が固まる。


「・・・リン殿。それは、何故か尋ねても良いだろうか?」


いち早く、我を取り戻したアイザック団長さんが尋ねてきた。


「こう言っては何ですが・・・気になる事があるから、ですかね。あまり深く考えないで下さい。単なる興味本位です。」


つらっと答えると、また皆んながあり得ないモノを見る目で、こちらを見た。

・・・こっち見んな。



『ヒルデ嬢に会わせろ。』



私のその要求に、領主様に、ヨルク副団長、こーくんが慌てている。

領主様は、加害者家族として、彼女がまた私を傷付ける可能性を危惧して。
ヨルク副団長は、加害者と被害者が会うなんて前例が無いことから。
こーくんは、純粋に私が思い悩む事を心配して。

師匠とロイドさんは、何処か諦めた、呆れたような表情で、好きにしろ、と言った風。
アイザック団長さんと、ロメル第1部隊部隊長さんは、真意をつかみかねる、って感じかな?


別に、仕返ししようとか、殴ろうとかって訳じゃない。
話をして、矯正できるとも思わない。医者や、カウンセラーじゃあるまいし。

ただ。
彼女の行動原理を知りたいと思った。
それだけ。

言うなれば、ただの野次馬根性。話してみて、意味不明なら諦めもする。
でも、もしかして、前世記憶があって。カン君が説明してくれた乙女ゲーのキャラだと、彼女が思い込んでいるなら。
・・・今後同様の案件があった時に、回避できるかもしれないし。

こーくん、レザリック先生に、ヒルデ嬢・・・転生記憶の持ち主がこの領内に3人はいた訳で。
国の規模で考えたら、きっと、潜在的に、もっと居るはず。

レザリック先生のように、昇華して生きる事を選んだ人。
こーくんのように、人知れず悩み続けている人。
そして、ヒルデ嬢の様に迷惑千万な人。・・・そんなに居ないと思いたいけど。


ぽん、と後ろから肩を叩かれ、掴まれる。


「分かりました。リンさん、俺も同席します。」

「え?」


振り返ると、カン君が微笑んでいた。


「は?なんで?」

「だってみなさん、マンツーマンでヒルデ嬢と会って、何か起こる可能性を心配してるんスから、俺が同席して、リンさんを守ればいいでしょ?」

「でも・・・」

「それなら、僕も同席する。」


少し怒ったような、拗ねたような、そんな顔をして、こーくんが割り込んできた。


「それはダメっスよ。コウさんを同席させちゃうと、多分彼女は「助けに来てくれたのねー!」って興奮しちゃって、話にならないだろうし。
騎士団の人や領主様だと、身内への甘えや、権力を使おうとして、使えないことで逆ギレしそうだし。
師匠やロイドさんだと、無駄に威圧して、ビビって話にならなさそうでしょ?
だから、面割れしてない俺が、変装した上でついて行くっス。常時【 保護プロテクト 】と【 障壁バリア 】展開しとけば、ヒルデ嬢程度は如何様にも出来ますし。それに・・・俺も少し気になってるんで。」

「ん?」

「ん?」

最後の言葉が聞き取れず、首を傾げてカン君を見るも、同じように首を傾げて微笑まれただけだった。
・・・誤魔化された気がする。

その後、ぶつくさと文句を垂れるこーくんを師匠が一喝し。
渋々な領主様、騎士団長の了解を得て、私とカン君の面会が調整される事となった。
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