太陽と月に抱かれて ~異世界で王子を産みなさい!?~

伊東悠香

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17話 いるべき場所(1)最終話 *(6)で完結します

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 ほんの数日離れていただけなのに、カリーナのお城はとても懐かしい場所に感じた。ここが本当の自分の居場所のような、不思議な感覚だ。
「それで、エリオはどこに」
「彼の部屋に寝かせてある」
 アンリに続いて、エリオの部屋へと案内してもらう。思えば、私はエリオの部屋には入った事がない。
(それどころか、私は自分に用意された部屋と、アンリとリュカの部屋くらいしか知らない)
 台所を少し使わせてもらったこともあるけれど、それ以外のお城の中は護衛が張っていて私が入るのを強く禁じていた。
「ここだよ」
 扉が開かれ、中に入ると、エリオが憔悴した様子でベッドに横たわっていた。熱もあるようで、頬が赤くなっている。
「食事もとらないで、どうしてたの」
 額に手を当てると、かなり熱が高いのがわかった。
「スープを少しずつ飲ませてたけど、意識がないからほとんど飲んでもらえなくて」
「それだと、体力的に持たないよ」
(そうか、この世界には点滴がないんだ)
 医療についてはよくわからなかったけれど、私はアンリに頼んで体に水分を与える魔法はないかと聞いた。
「水分を与える……」
「私のいた世界では、針から水分を血液に入れるんだけど」
「あ……それならあの魔法でいけるかな」
 アンリはすっと細い棒を手に出すと、エリオの腕を優しくなぞった。すると、みるみるエリオの顔色が良くなり、彼はふっと目を開けた。
「エリオ!」
 あまりにもあっさりと目を覚ましたから、私もアンリも驚いて同時に声をあげていた。エリオは目をしばたかせ、私たちを見比べながら怪訝な顔をした。
「お二人揃ってどうして私の寝顔を覗き込んでるんです?」
「覗き込んで……って」
 昏睡状態だった人とは思えない回復ぶりに、肩の力が抜ける。
 それでも、いつものエリオがそこにいて、私は心から安堵した。
「エリオ、地下で何があったの」
「地下……」
 少し考えるような表情をしていたエリオが、はっとしたように私を見た。
「ジュリ、あなたどうしてここに」
「僕が連れ戻したんだよ。エリオがうわ言で離れるなっていうから」
「私が?ああ、きっとそれは……」
 エリオが続きを話そうとしたその時、どこからともなく風が起きて部屋全体が暗闇に包まれた。
(何?)
 上を見上げると、黒い渦巻き状の雲が漂っていて、そこから一人の女性が姿を現した。
「王妃っ」
 青ざめたエリオを見て、目の前に立つ女性があの声だけの存在だった王妃だとわかった。険しい表情をし、憎しみに満ちたその顔からは、一国の王妃だったという雰囲気は伝わってこない。

『しぶとい女ね……エリーゼ。もうとうに息の根が止まったと思ったのに』

 王妃は私たちの前に立つと、憎々しげにエリオを睨んだ。
『息子にはまだ明かしてしてないの?お前が実の母親なのだと』
「え……っ、エリオが?」
 アンリが驚いた顔でエリオを見る。当然私も驚き、言葉を失う。その様子が愉快なのか、女王はまだ続ける。
『アンリ、可哀想な子。国王を誘惑し、私を出し抜こうとした性悪女、エリーゼの子が……あなたなのよ?』
 アンリは事実を受け止めきれず、黙ったまま手を握りしめている。
「違います!」
 エリオは悲鳴のように叫び、耳を覆った。
「私は……国王陛下に無理やり……」
『無理やりだろうと、なんだろうと。あなたは国王の寵愛を受け入れて、アンリを産んだじゃないの』
「子どもには……罪はないから」
 エリオは全てを思い出したようで、小さく震える体を抱えながら答える。
(失っていた記憶って……エリーゼとして生きていた頃の記憶だったんだ)
 その事実はエリオによって地下牢から解放された王妃が全てを語った。
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