太陽と月に抱かれて ~異世界で王子を産みなさい!?~

伊東悠香

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9話 太陽に抱かれる(2)

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 認めたくない気持ちで首を振っていると、アンリは優しく手で頬を覆った。
「好きじゃなくたって行為はできる……それは納得した?」
「してない……してないよ」
(ちゃんと恋をして、心を通じ合わせた人とじゃないと気持ち良くなんかならない……それは絶対だよ)
 確かに疼きをおさめるための行為はできるのかもしれない。でも、その先にあるのは虚しさと嫌悪感だ。エリオに達することを覚えさせられた時、それをはっきりと感じた。
 アンリは私の態度を見て、ふうとため息をついた。
「頑固だなあ……そこまで言うなら、ジュリは相当いい恋をしてきたんだ」
「え……」
「そうでしょ?ジュリがこの人なら体を許していいって思える恋をしたから言えるんでしょ」
 その質問には少し答えづらい。
 確かにそれくらい好きな人が私にはいた。いや、実際今もその人のことは嫌いではないし、好きだ。

(でも……彼はもう別の人のものだし)

 この世界へ来る前の自分が、その苦い思いで日々をやり過ごしていたのを思い出す。
 彼は私の上司……というか会社の社長だった。若干30歳にしてそこそこ大きな会社を立ち上げ、成功している豪快な人だ。当然女性にはモテていたし、彼女だって複数人数いたんじゃないだろうか。
 私は見ているだけでいい、そう思っていたのに……
 ある日、残業中に何となく声をかけられて、一緒に夕ご飯を食べた。帰りはタクシーで送ってもらい、もうこんな機会はないだろうなと思っていたら不意に腕を引かれて抱きしめられた。
「君……温かいな」
 それだけ言って、すぐに腕を緩められる。
(え……今の何?)
 キスをされたわけでもないし、それ以上を求められたわけでもない。
「明日は冷えるらしいから、風邪ひくなよ」
 タクシーを降りる時にかけてくれた言葉は、いつものように社長の顔をしていた。きっとあのハグは彼の気まぐれだったんだろう。
 でも、すごくトキメイテしまった私は、それ以来社長を意識してしまってどうしようもなくなった。情けないけれど、私は初めて男性の腕に抱かれるという感覚を知ったせいで社長に夢中になってしまったのだ。
(でも、その片思いも半年で終わったけど)
 社長はどこかの有名な会社の令嬢と結婚を決めたのだ。政略結婚だと噂は流れたけど、それが本当でも嘘でもどっちでもいい話。
(だってもう、手の届かない人になったのは事実なんだから)
 こんな理由で会社を辞めるわけにもいかず、私は日々妙な胸の痛みを我慢しながら日々を過ごしていた。新しい恋ができるとも思えないし、もういっそ女であることも諦めようかと思っていたところだ。

「……ふーん、そんなにいい男だったの。そいつ」

 アンリの声に私は驚いて目を見開く。
(今、私なにも口にしてない)
「ごめん、俺たち……ああ、俺とリュカだけだけど。思考が読めるんだよ。意識しなければ読めないけど、集中したら心の声が聞こえてきちゃうんだ」
「ひ、酷い!勝手に心を読むなんて!!」
 悪びれずに言うアンリに、私は思わず声を大きくしてしまった。
(今まで思ってたのも、全部読まれてた?)
「だから、ごめんって……集中するのも疲れるから、正直今の思考くらいしか読んでないよ」
「そ……うなんだ」
 私は自分の恥ずかしい過去を知られたことで、がっくり肩を落とした。
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