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溢れ出した思いを記す。

自身の最期を知っている時、最期までの時をどうやって生きれるだろうか

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一筋の光が流れて 

喉の奥が苦しくなった


それは綺麗で美しくて

とても冷たい


手を伸ばしても

触れることはできない


どんなに望んでも

破り捨てられてしまう


“これでいいのか”

“このままでいいのか”

何度だって己に問う



止められない思いは影となって光の跡を追う


二律背反の先に見えるのは

悲しみか喜びか


苦しさが勝ってしまわないように

悲しさに手を引かれてしまわないように

いつだって恐れていて

いつだって不安なんだ


本当はやめてしまいたい


けれど やめてしまったら

もう二度と 同じ幸福には出会えない


その幸福すら捨て去りたくならないように

この幸せから逃げ出してしまわないように


君の手を掴めなくなってしまう前に

いや もうすでに掴むことすら怖い

君を留めておくのが怖い

“手を離せば何処かに行ってしまうかもしれない”
そんな環境を作るのが怖い

だから 君の手を掴めない

掴んだら 離せなくなってしまう自分が怖い

手に入れてしまったら 僕はきっと二度と手を離せない

それなのに 君に拒まれてしまったら

そんなの 耐えられない

だから 手に入って欲しくない
だから 君の手を掴まない

君が僕の線を越えるのも
僕が君の線を越えるのも

どちらとも 怖い

僕はどうしたって臆病で自分を守ってしまう


君が愛しいと同時に君を愛しいと思う自分が怖い


君を好きでいたい
君を好きになりたくない

隣にいたい
離れていたい

君のことを考えていたい
君のことを考えたくない

好きになって欲しい
嫌いになって欲しい

心を開きたい
心を閉ざしていたい


涙が流れるのは

悲しいから?

それとも

嬉しいから?


一筋の光が頬を伝って

答えは喉の奥に消えていった


愛しい人

どうか 幸せであって欲しい

そして 僕がいない世界を悲しまないで欲しい

君との別れは きっと僕が作ってしまう


君の気持ちをなめていた

一時の気の迷いだと信じていた


けれど 僕が思うよりずっと君の中に僕がいるらしい

嬉しいよ 嬉しいのに


それ以上 僕を好きにならないで

僕の時間は決まっていて
不確かな君とは違う


だから それまでに

君から別れを告げられればいいと思っていた

君の望む形で 離れることができると思っていた


けれど もう わからない


そうなるよりも先に 僕の時間が来てしまうかもしれない


残される人の悲しみを 僕は知っている

心の痛みを持っている


大切にしたい人だから
大事にしたい人だから

そんな痛みを僕のために思って欲しくない


僕が時間を止める事を 拒んで欲しくない

悲しんで欲しくない


それならいっそ もう……


けれど なんて言えばいい?


“僕は死ぬから別れよう”って?

そんなの 言えるわけない


そうやって 迷って 時間は過ぎていく

僕の時間が消えていく


こうなるって わかっていたから

好きだなんて言われたくなかったんだ

恋なんてしたくないんだ
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