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璃悠

恋人と友達

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「なんで、そんな簡単に言えんだよ!」  

 思いっきり叫んで、怒って…なのに、お前はそんな俺を首を傾げながら困った顔で見るんだ。

「だって…ただ、恋人から友達に戻るだけだよ?」

「友達って事は、俺に新しい恋人ができてもお前は、笑っておめでとうって、心から言ってくれんのかよ!!俺は、俺は…お前に新しい恋人ができても…そんなこと、心から言えない…」

「…ぁ、きと…?違う、そうじゃなくてね…。」

パシッ

「触んな!!」

 俯いた俺の頬に手が伸びて、それを思い切り払った。それから、きっと赤くなってるであろう目で思い切り睨みつけた。

「別れるんだろ。なら、俺がどんなやつといても文句言うなよ。お前の望み通り、『お友達』ってやつに戻ってやるよ!!」

「っ、璃翔あきと!!」

 その場から逃げるように走った。ゆうは、俺の事を呼んだ。

(…呼んだだけで…追いかけてはこねぇのな…)

 俺は、ゆうの恋人だった。高校の時に一目惚れして、俺が告白して…大学だって、ゆうと一緒が良くて…俺は、ずっとゆうを追いかけて来た。

 でも、自分ばっかり好きみたいで…。

(さっきだって、俺はただ…ただ…)

 大学のサークルの後輩は、ゆうの事が好きみたいで…俺がゆうと仲が良いからって、いっつも絡んで来た。

璃翔あきと先輩、ゆう先輩って、どんな女の人が好きとかあるんですか?」
「…そう言う話は、あんまりしないから…ごめんわかんないや」
「じゃあ…璃翔あきと先輩は?」
「え?俺?…俺は…」

(俺は、女より…悠がいい。悠だけが…)

「…よく、わかんないや」


 こんなやりとりだけでも、すごく不安になる。悠が、俺以外…例えば、この子と…付き合ったり、したら…。

 そんな事を思っていた矢先。悠が後輩と一緒にカフェから出てくるのを見てしまった。

(あ…終わった。)



「なぁ、悠…今日、何してた?」
「どうしたの、急に」
「いや、なんか…気になって…。」
「んもぉ、可愛いなぁ璃翔あきとは。もー、撫でてやる。」
「んー、あんま撫でんな。で、何してたんだよー」
「図書館で勉強してたよ?」

 あまりにも、平然と笑顔で言うもんだから不安が大きくなった。
(なんで、そんな普通に嘘つけんだよ…俺が気付いてないだけで、もしかしたら…前からこう言う事あったのか…)

「璃翔?どうしたの?具合悪い?」

「なんで、嘘つくんだよ」

「え?…嘘って…璃翔?」

「お前、後輩とカフェいただろ!俺、見たんだからな!」

 俺が、そう言った瞬間、悠の雰囲気が変わった。

「あー…見られてたんだ。…でも、浮気じゃないよ?」
「でも、嘘付いてた」
「それは謝るよ、でも、ただそれだけだよ。休日に後輩とカフェでお喋りして終わり。なにも怒ることじゃないでしょ?」

 悠は、少しイラついたように俺に言う。

「…ただ、それだけの事なのに…なんで嘘なんか付くんだよ!!」

「…っ、れは…。」

 明らかに動揺した悠が言葉を詰まらせた。

「やっぱり…やましいことがあんだろ…」

「…ない、けど…璃翔だけには言いたくない。」


 それから、しばらくの沈黙の後 悠が口を開いた。

「……あのさ、璃翔…恋人やめない?」

「は…?」

「だから、その…友達に戻ろう。」

 そこで、冒頭に戻るわけだ。


(…やっぱり、俺…嫌われたのかな。あんなにしつこくして。悠は、浮気じゃないって言ってたのに。でも…やっぱり、俺ばっかり好きだったって事かな。)


(…失恋…したのかな。)

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