亡国の系譜と神の婚約者

仁藤欣太郎

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第一章 盗賊団「鋼鉄のならず者」

第三十三話 魔法石

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 バラバラになったクモの破片の一部は糸に絡まり、また一部は地面に落下した。

「ひいぃぃぃ! ちょっとニコラ! 気持ち悪いもの飛び散らかさないでよ!!」
「そんなこと言われても……」
「いいだろ別に。一気に片付いたんだし」
「うぅぅ、だってぇぇ、気持ち悪いんだもんー」

 シェリーは人目も憚らず泣きべそをかいた。ジャンとニコラはしょうがないなといった感じで、とりあえず彼女が泣きやむまで待つことにした。

「それにしてもよー、なんで見つかんねぇんだろうな、魔法石」
「そうだな。強い魔力は感じるんだけど……」

 そう言ってニコラは懐からコンパスを取り出した。するとコンパスの針はもの凄い速さで回転していた。

「おい、ニコラ、それ……」
「ああ、ここ・・だ! ここ・・にある」

 二人は足元を見た。そこにはつい先ほどバラバラになったクモの腹部が落ちていた。

「たぶんこれ……だよな?」
「たぶんこれだろう」
「解体するか?」
「解体しよう」

 ジャンは長剣の先でクモの腹の部分を解体しだした。それを見たシェリーはまた激しく取り乱した。

「ちょっ、ちょっとジャン! なにやってんのよ!?」
「なにって、クモの胴体を開いてるだけだけど?」
「言ってる意味がわかんないし! もぉぉーなんですぐ虫とか解体しだすのよぉぉぉ!」
「しょうがねぇだろ? 中に魔法石がありそうなんだから」
「しょうがなくなんかないぃぃ」

 シェリーは普段の威勢とは裏腹に、頭を抱えてその場にうずくまってしまった。

 そしてしばらくクモの腹部をほじくり返していると、糸の中から紫色をした拳大の石が現れた。

「ニコラ、これか?」
「ああ、間違いない。禍々しい魔力を放っているのがよくわかる」
「ふーん、俺にはよくわかんないけど。きっとこいつが間違って食っちまったんだろうな。それで、どうやって壊すんだ? これ」
「簡単さ。ちょっとそれ、地面に置いてくれないか?」

 ジャンはニコラに言われた通り、地面に魔法石を置いた。

「これでいいか?」
「ああ、それでいい。じゃあ始めるか」

 ニコラはその場で詠唱を始めた。そしてロッドの先端が白く光り出すと、しゃがみ込んで魔法石にそれを当てた。すると魔法石も白く光り、その直後、粉々に砕け散ってしまった。

「おおっ! すげぇ!」
「これでよし、と」

 ニコラは砕け散った魔法石の破片を小さい布袋に入れ、残りの細かい破片は足裏で地面に擦りつけた。

「これ、どういう仕組みなんだ?」
「うーん、ちょっと難しいんだけど……。簡単に言うと、魔法石は凝縮系の魔法を利用して魔力を閉じ込めた石なんだ。だから凝縮系とは逆の拡散系の魔力を注ぎ込んでやるとこんな風に砕け散る。対になる二つの属性は互いに弱点になるから、こちらが先に魔力を送り込んでやれば相手側がより大きなダメージを受けるわけさ」
「??」
「うん、わからなければいいや」

 ジャンはニコラの説明がちんぷんかんぷんだった。
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