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31.風呂
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※※※明日生視点です。
二人の視線を感じる。
すごく綺麗な瞳だから、見つめられると前は落ち着かなかったんだけど、平気になった。
甲斐さんは覚さんは人を観察して他の人生まで疑似体験してるんじゃないかって言ってた。
それで覚さんがピアノひとつ使ってあんなすごい世界を作っているんだとしたら、僕なんかいくらでも見てくれて構わない。
僕で役に立つのなら、もっと見てほしいくらいだ。
夕食がすんでみんなで談話室でのんびりしているうちに、すっかり夜になっていた。
「そろそろお風呂行きましょうか」
「そだな」
甲斐さんが二人に訊いた。
「ここには大きな浴場が二つと、シャワー室があるんですけど。みんなと一緒にお風呂に入るのが嫌ならシャワーにしますか?」
「別に嫌じゃないけど?」
「俺たちも、いつも風呂一緒に入ってるよ?」
「「「……」」」
貴也先輩と夜穂先輩と良実先輩が何か言いたいけど何も言えない様子だ。
「はあ……。じゃあ、東の浴場へ行きましょうか。貴也くんと夜穂ちゃんは西の方へ行ってくださいね」
「え? なんで! 俺も双子と一緒に風呂入ってみたい!」
貴也先輩が抗議したのに、甲斐さんは冷たい目で貴也先輩を説得した。
「この二人は初めて日本の風呂文化に触れるんですよ。それなのに貴也くんが一緒じゃ日本の風呂が『とにかく混雑』って印象になっちゃうじゃないですか。遠慮してください」
「風呂文化って、おおげさな。まあ、いいよ」
「「混雑……?」」
二人が首をかしげていたので説明した。
「貴也先輩は人気者なので、みなさん一緒にお風呂に入りたがって毎日大混雑になっちゃうんです。夜穂先輩と一緒ですよ」
「じゃあ、みんなの前で貴也にキスとかしたら……」
甲斐さんが言いかけた諒さんの頭に手を置いて、続きを言った。
「大騒ぎになります。やめてくださいね」
「そうだね、貴也も可愛いもんね」
覚さんが何気なくそう言って、貴也先輩が苦笑した。
「じゃあ、お風呂の後に甲斐さんの部屋に集合してくださいね」
僕が夜穂先輩、良実先輩、貴也先輩にそう言うと、みんな頷いた。
なにかと戸惑っているらしい二人は甲斐さんに任せて、先に浴場に入る。
男しかいないし設備的にも仕方ないんだろうけど、みんなで風呂に入るのはどうかといつも思う。
僕や夜穂先輩みたいなのもいるんだから、精神衛生上よくない。
まあ……みんなの裸を見ないようにするのには慣れた。
でもちょっと罪悪感があるんだ。
「「明日生」」
名前を呼ばれて、振り向くと諒さんと覚さんが立っていた。
当り前だけど全身ミルク色の肌で、とにかくその質が綺麗なのにびっくりした。
以前に会った白人の男性はもっと粗い肌質だった気がする。
ビタミンを豊富に摂っているせいなのか、年齢が若いからなのか……。
思ってたほどガリガリに見えない。
すごく細いのは確かなんだけど病的には見えないのは、多分肌の色が綺麗だからなんだろう。
腹筋がちゃんとついてて、触り心地がよさそう。
あ……駄目だ、何を考えてるんだ、僕は。
だから嫌なんだ、大浴場は。
「えっと……裸だと見分けがつかないんですけど……どっちが諒さんですか?」
向かって右側の方が手を挙げた。
「あれ? 甲斐さんは?」
「俺たちパジャマ持ってこなかったんだ」
「それで今用意しに行ってくれてるんだ」
「ああ、そうなんですか」
僕は甲斐さんの代わりに、二人に風呂の使い方を説明した。
背中を流してあげようとしたのに、二人が頑なに嫌がるから、むきになって洗おうとしてしまった。
「なんか、楽しそうですね」
甲斐さんがやってきてそう言った。
「甲斐さんも参加しますか?」
「私は観戦してます」
とんでもなくくすぐったがりの甲斐さんが参加するわけはないけど、楽しそうに僕らを見てた。
「甲斐、助けてよ!」
「何を恥ずかしがってるんです? いつも二人で洗いっこしてるんでしょう?」
「いつもとは全然違うー!」
「明日生くん、頑張らないと、逃げられてますよ」
「だって2対1じゃないですか!」
「そろそろ洗い終わらないと、お湯に浸かる時間なくなりますよ」
「「時間決まってるの!?」」
「そりゃ、たくさんの人が使いますから、だいたい15分くらいですね」
慌てて二人は身体についてた泡を流して浴槽に向かった。
『『熱い……』』
二人が英語で呟いた。
そういえば僕がイギリスで使った風呂ってぬるかった気がする。
二人はさっさとお湯から上がってしまった。
お湯に浸かった部分の肌が見事に赤くなっている。
追いかけるように僕も脱衣場に行くと、二人はもう既に服を着始めていた。
「なんか……僕のパジャマ持ってきましょうか?」
甲斐さんがあわてて用意したらしいけど、上はランニングシャツに下はステテコみたいなハーフパンツとジャージだ。
「……寝るだけなら何でもいいけど」
「いつも裸で寝てるし」
甲斐さんが呆れた顔で指差したのは、バスローブだった。
「この二人これ持ってきたんですよ。この時期に個室でこんなもの着てたら熱中症になっちゃいますよ」
談話室、娯楽室、食堂や救護室は冷房が効いてるけど、個室の方は全くで夏はすごく暑い。
二人はそれを知らなかったんだろう。
いつも空調が効いている家で過ごしてるから、確かに危険だ。
甲斐さんのチョイスも考えてのことなんだろうと思う。
でも。
僕は笑ってしまった。
なんだか、クジャクがぞうきん着てるみたい。
二人の視線を感じる。
すごく綺麗な瞳だから、見つめられると前は落ち着かなかったんだけど、平気になった。
甲斐さんは覚さんは人を観察して他の人生まで疑似体験してるんじゃないかって言ってた。
それで覚さんがピアノひとつ使ってあんなすごい世界を作っているんだとしたら、僕なんかいくらでも見てくれて構わない。
僕で役に立つのなら、もっと見てほしいくらいだ。
夕食がすんでみんなで談話室でのんびりしているうちに、すっかり夜になっていた。
「そろそろお風呂行きましょうか」
「そだな」
甲斐さんが二人に訊いた。
「ここには大きな浴場が二つと、シャワー室があるんですけど。みんなと一緒にお風呂に入るのが嫌ならシャワーにしますか?」
「別に嫌じゃないけど?」
「俺たちも、いつも風呂一緒に入ってるよ?」
「「「……」」」
貴也先輩と夜穂先輩と良実先輩が何か言いたいけど何も言えない様子だ。
「はあ……。じゃあ、東の浴場へ行きましょうか。貴也くんと夜穂ちゃんは西の方へ行ってくださいね」
「え? なんで! 俺も双子と一緒に風呂入ってみたい!」
貴也先輩が抗議したのに、甲斐さんは冷たい目で貴也先輩を説得した。
「この二人は初めて日本の風呂文化に触れるんですよ。それなのに貴也くんが一緒じゃ日本の風呂が『とにかく混雑』って印象になっちゃうじゃないですか。遠慮してください」
「風呂文化って、おおげさな。まあ、いいよ」
「「混雑……?」」
二人が首をかしげていたので説明した。
「貴也先輩は人気者なので、みなさん一緒にお風呂に入りたがって毎日大混雑になっちゃうんです。夜穂先輩と一緒ですよ」
「じゃあ、みんなの前で貴也にキスとかしたら……」
甲斐さんが言いかけた諒さんの頭に手を置いて、続きを言った。
「大騒ぎになります。やめてくださいね」
「そうだね、貴也も可愛いもんね」
覚さんが何気なくそう言って、貴也先輩が苦笑した。
「じゃあ、お風呂の後に甲斐さんの部屋に集合してくださいね」
僕が夜穂先輩、良実先輩、貴也先輩にそう言うと、みんな頷いた。
なにかと戸惑っているらしい二人は甲斐さんに任せて、先に浴場に入る。
男しかいないし設備的にも仕方ないんだろうけど、みんなで風呂に入るのはどうかといつも思う。
僕や夜穂先輩みたいなのもいるんだから、精神衛生上よくない。
まあ……みんなの裸を見ないようにするのには慣れた。
でもちょっと罪悪感があるんだ。
「「明日生」」
名前を呼ばれて、振り向くと諒さんと覚さんが立っていた。
当り前だけど全身ミルク色の肌で、とにかくその質が綺麗なのにびっくりした。
以前に会った白人の男性はもっと粗い肌質だった気がする。
ビタミンを豊富に摂っているせいなのか、年齢が若いからなのか……。
思ってたほどガリガリに見えない。
すごく細いのは確かなんだけど病的には見えないのは、多分肌の色が綺麗だからなんだろう。
腹筋がちゃんとついてて、触り心地がよさそう。
あ……駄目だ、何を考えてるんだ、僕は。
だから嫌なんだ、大浴場は。
「えっと……裸だと見分けがつかないんですけど……どっちが諒さんですか?」
向かって右側の方が手を挙げた。
「あれ? 甲斐さんは?」
「俺たちパジャマ持ってこなかったんだ」
「それで今用意しに行ってくれてるんだ」
「ああ、そうなんですか」
僕は甲斐さんの代わりに、二人に風呂の使い方を説明した。
背中を流してあげようとしたのに、二人が頑なに嫌がるから、むきになって洗おうとしてしまった。
「なんか、楽しそうですね」
甲斐さんがやってきてそう言った。
「甲斐さんも参加しますか?」
「私は観戦してます」
とんでもなくくすぐったがりの甲斐さんが参加するわけはないけど、楽しそうに僕らを見てた。
「甲斐、助けてよ!」
「何を恥ずかしがってるんです? いつも二人で洗いっこしてるんでしょう?」
「いつもとは全然違うー!」
「明日生くん、頑張らないと、逃げられてますよ」
「だって2対1じゃないですか!」
「そろそろ洗い終わらないと、お湯に浸かる時間なくなりますよ」
「「時間決まってるの!?」」
「そりゃ、たくさんの人が使いますから、だいたい15分くらいですね」
慌てて二人は身体についてた泡を流して浴槽に向かった。
『『熱い……』』
二人が英語で呟いた。
そういえば僕がイギリスで使った風呂ってぬるかった気がする。
二人はさっさとお湯から上がってしまった。
お湯に浸かった部分の肌が見事に赤くなっている。
追いかけるように僕も脱衣場に行くと、二人はもう既に服を着始めていた。
「なんか……僕のパジャマ持ってきましょうか?」
甲斐さんがあわてて用意したらしいけど、上はランニングシャツに下はステテコみたいなハーフパンツとジャージだ。
「……寝るだけなら何でもいいけど」
「いつも裸で寝てるし」
甲斐さんが呆れた顔で指差したのは、バスローブだった。
「この二人これ持ってきたんですよ。この時期に個室でこんなもの着てたら熱中症になっちゃいますよ」
談話室、娯楽室、食堂や救護室は冷房が効いてるけど、個室の方は全くで夏はすごく暑い。
二人はそれを知らなかったんだろう。
いつも空調が効いている家で過ごしてるから、確かに危険だ。
甲斐さんのチョイスも考えてのことなんだろうと思う。
でも。
僕は笑ってしまった。
なんだか、クジャクがぞうきん着てるみたい。
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