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第20話
しおりを挟む日が暮れた頃にルイスは第三騎士団の医務室で目が覚めた。
ルイスは今日あった事が実は夢だったのではないかと思ったが、自分の着ていた服が裂けているのと側に置いてあった愛剣が真っ二つに折れているのを見て夢ではなく現実であった事を実感させられた。
「あ、団長起きましたか」
ボーッと誰もいない医務室のベッドで窓の外を見ていると、ドアが開きロベルトの声が聞こえた。
「ロベルト、ソフィア達はどうしたのだ?」
「起きて一番に聞くのがそれとは、本当にソフィアさんの事が大切なのですね」
「なっ!大切だとっ!?」
「違いましたか?あのオークキングにソフィアさんが襲われそうになった時の団長の足の早さに私は驚きましたよ」
「ロベルトお前、俺の事からかってるだろ」
「当たり前です、貴方が死にそうになって私も肝を冷したのですから、それなのに…」
「それは…すまなかった」
申し訳なさそうに顔を背け謝るルイスに、本当に仕方がない人だとロベルトは息を吐いた。
破れた服の代わりの着替えを持ってきたくれたロベルトに礼を言いルイスは着替える。
「それにしても、ソフィアさんの治癒魔法は凄かったですね。お狐様の力をお借りしたら瀕死の者まで治せるとは驚きました」
「あぁ、おかげで命拾いしたな」
ざっくりと破れた服を見たルイスとロベルトは、改めてソフィアとキューちゃんの力に驚き、そして感謝したのであった。
「団長、王に渡す報告書を作りましたので確認の方をお願い致します」
「あぁ、すまん助かった」
ロベルトは、今回の森で起きた異変を王に知らせるべく、報告書を作りルイスへと渡した。
「後…王には今回の件を説明するにあたり、ソフィアさんとレティシアさんの事を言わなければならないのですが……」
「だが、それではソフィアが!」
「団長…、人の話は最後まで聞いて下さい、ソフィアさんのお狐様の事は全て伏せて王に話を通すつもりです」
「あ、そうか…だが、新人達にも知られてしまったからな、どこかで狐の事がバレてしまう可能性もあるかもしれない…」
「いえ、大丈夫かと思われます」
「なんでだ?」
「新人達は皆、ソフィア様、レティシア様と女神の様に崇め奉っているので、彼女達が望まぬ事はしないと考えれます。それでも何かの拍子で話してしまう可能性も考えれたので血の契約をさせ、お狐様の事は一切話せないようにしました」
「血の契約!?」
血の契約とは紙に書かれた内容が一切誰にも伝えられなくなる。
制約魔法の中で一番重い契約である。
もし話したり書いたりしようとしても、身体が固まり誰かに伝える事が出来ない様になるのだ。
「少しの可能性も潰しておいた方が良いのですよ。お狐様の事がバレれば絶対に教会が出てきて、無理やりソフィアさんの事を攫って聖女として担ぎ上げますよ。
そうなれば一生ソフィアは教会から出る事が出来なくなってしまいます」
「そっ…それは確かに困るな…。ロベルトお前の対応は正しかった、ありがとう」
「当たり前です、ソフィアさんとレティシアさんは私達の命の恩人です。秘密になさってたお狐様の力も団長の為にお使いになられたのですから、ソフィアさん達が望まれない事などしません」
ロベルトの迅速な対応のおかげでソフィア達の生活が、教会に脅かされる心配はなさそうでルイスはホッとしたのであった。
「それにしても、団長はソフィアさんの事をどう思っているのです?」
「なっ!?急にどうしたのだ……ソフィアの事はその」
ロベルトの急な問いかけにルイスはベットから転げ落ちる、その顔は真っ赤になっていた。
「お好きなのでしょう?」
「うっ……………好きだが」
直球なロベルトにルイスは渋々返事をすると、やはりと思ったロベルトはルイスに助言した。
「自分のお気持ちに気が付かれたのなら、早めに行動なさった方が宜しいですよ?うかうかしていると団員の中でソフィアさんに告白する者が現れますよ、ただでさえ美しく、料理も上手で、心優しい女性なのです」
「うっ…」
「気がついたら他の男性とお付き合いしているかもしれませんよ」
「………そうだな。善処する」
ロベルトはルイスにもっと積極的なアプローチをしなければソフィアに好かれて貰えないから頑張れというつもりで言ったのだが。
(そうか、やはり早くソフィアに想いを告げ婚約者になってもらわなければ。他の男がソフィアに想いを寄せるかもしれない……。しかし今まで見合いは全戦全敗の俺などソフィアは好きになってくれるだろうか?)
ルイスは早くソフィアに自分の思いを伝えなければ他の男に取られてしまうと思い、次に会った時に婚約者になって貰える様に告白しようと考えた。
ここで意見が食い違っていることに二人は気が付かなかった。
元平民であるロベルトと、生粋の貴族であるルイスの恋愛の考え方が違うのである。
平民にも見合いはあるが、大体が恋愛結婚の為。
本人同士が仲良くなり告白し、付き合ってから婚約するなり結婚するのがセオリーなのだが。
貴族では殆どが親の決めてきた相手か、見合いであり顔合わせの後、婚約となるので、そもそも付き合うというのは滅多にないのである。
この齟齬が後に問題になるのは誰も気が付かなかったのであった。
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