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14話 肝試しとサプライズ
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「素蓋さん! 今日は肝試しですよーっ!」
夕方、ティフシーがオレの部屋に飛び込んできた。
部屋が明るくなった気がする。ティフシーは朝でも夜でも太陽のようなハイテンションだ。
「きっもだめしっ♪ イェイ♪ きっもだめしっ♪ イェイ♪ K・I・M・O! きもだめし! イェイ♪」
「肝試しだよね!? 誕生日パーティーじゃないよね!?」
このテンションで肝試ししたら、エンカウントした側から幽霊が成仏していくぞ!?
「だって、楽しみじゃないですか~! お店の一大イベントですよ!」
「そうなの? オレは肝試しで怖いと思ったことなんてないけどなぁ」
「ふふっ。大丈夫ですよ! 今日は本物の心霊スポットに行きますから! 人が脅かすわけじゃないんです。本物の幽霊が脅かしてくれるんですよ!」
「フッ」
幽霊なんているわけないのに、ティフシーはときどき子供っぽいところがあるなぁ。可愛いけど!
「あ、いまバカにしましたね? 幽霊なんていないと思ってますね?」
「オレは幽霊なんて信じてないよ。いるなら見てみたいね」
「それなら今夜、きっと見れますよ! 楽しみにしててください!」
「妙に自信満々だね?」
こうして、オレは久しぶりにまったりしたイベントに参加することになった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ハッハッハーッ! 肝試し大会を開始するぞォオオオオオッ! 準備はいいかいボーイズ&ガールズ!?」
「イェエエエエエエエエエエエエエエイッッッ! 肝試しだぜェッ!!! ヒャッハーッ!!!!」
夏フェスかっ!
幽霊ぜったい現れないだろ! なんだこの熱気!
「では、さっそくペア分けを始めるぞ! 二人一組でこのトンネルに入っていくのさ! ちなみに、このトンネルは『ブラッドホットチリペパーズ』や『ラッドウィッチーズ』などの幽霊が出ると言われているぞ!」
夏フェスか!
海外バンドも集結する最大級のロックフェスかっ!
「では、さっそくクジを引いてくれ! 早くクジを引かないと、『ブラッドメアリー』に血肉を吸い取られるぞ~?」
それさっきいなかっただろ!
後付けでガチのやつ出してくんな!
「あの、キミ『4』番? あたし『4』番なんだけど」
「えっ?」
振り向くと、ボーイッシュな美少女がクジをオレに見せてきた。
ショートパンツにTシャツ姿。キャップを被っていて、いかにもスポーティな感じだ。
ショートの黒髪で、パッと見は男子にも見えるけど、声は可愛くて、胸も大きい。
ギャップ萌え『あたし』っ子キター!
「オレも『4』番だよ。素蓋だ。よろしくな」
「よろしく、素蓋。あたしはテレサ。こういうの苦手だから、頼りにしてるよ? 素蓋」
「おー、オレはこういうの平気だぜ! それにしても、肝試しにバッチリな番号引いたよなぁ」
「う……ホント最悪だよ。だって知ってる? このトンネルって中に入ったら、周りから笑い声が聞こえてくるんだってさ」
「笑い声? そんな怖くないじゃん」
「明るい笑い声じゃないんだよ? 『ふふふ』みたいな声が聞こえてきて、少しでもその声に反応したら、帰って来れなくなっちゃうんだよ。トンネルから出ると、幽霊の世界に繋がってるんだって」
「テレサ、怖いの苦手なわりに詳しいね」
「う……」
テレサはキャップのツバを触って、俯いた。
「あたし怖い話苦手だけど、聞き始めたら途中でやめられなくなっちゃうんだ……これって呪われてるのかな?」
「いや、それで呪われてるなら、全人類の半分が呪われてると思うよ」
「ちょ、えっ! 怖いこと言わないでよ!? 人類の半分が呪われてるの!?」
「ごめん、いまのナシで!」
うかつにツッコミもできないぜ!
たしかにいまのはオレの言葉のチョイスも悪かったけどさ!
「次は~っ! 四番の素蓋&テレサペアーッ!」
司会のマッチョに呼ばれた。オレたちの番だ。
「行こっか、テレサ」
「うんっ」
「ハッハッハ! よくきたな! さっそく中に入ってもらうぞ! 恐怖のトンネルへようこそ! さあ、早く中に入りたまえ!」
魔王か!
ってツッコミたいけど、テレサがすでに顔面蒼白なので危険な単語は言えない。
「あ、あのさ? 素蓋、袖掴んでていい?」
「うん、別にいいよ~」
っていうか、もう掴んでるけどな。
「そんなに怖いなら、引き返してもいいよ? ムリすることないって」
「うん、でもいまは恐怖心より好奇心の方が勝ってるから」
「そっか。じゃあいこっか」
オレはテレサにトレーニングウェアの袖を掴まれたまま、トンネルの中に入った。
広さはちょうど人が二人通れる程度だ。
中に入ると周囲は草や苔やツタが不気味に周囲を覆っている。
たしかに雰囲気はあるな。
「素蓋、ねぇ……いまの聞こえた?」
「えっ? なにも聞こえなかったけど」
急にどうした!? まだ中に入って三歩くらいだぞ!
「う、ううん。聞こえなかったならいいの。気にしないで」
「いや、気になるんだけど!?」
「気にしないでって!」
「なにが聞こえたんだ!? 気になるって!」
「いや! 教えない!」
「教えろよ!」
「もう、察してよっ!」
そう言ってテレサは顔を赤らめた。
そして。
ぐぎゅるるるるるるる。
今度はオレにもハッキリ聞こえた。
「悪い、つい幽霊の声が聞こえたのかと」
腹が鳴った音だったとは。
「あたしもどなってゴメン。肝試しが楽しみで、夕飯あんまり食べられなくてさ……」
幽霊好きなのか嫌いなのか、どっちなんだ?
と思ったが、幽霊というワードもNGになりそうなので聞けない。
「とりあえず先に進もっか?」
「うん、そうだね」
オレたちはそのまま先へ進んだ。
そして、今度こそ本当に、女の声が聞こえた。
「ふふふふふふふ」
「ぎゃぁああああああああああああああ!」
オレにしがみついて絶叫するテレサ。
いや、気持ちはわかるけど、幽霊の声に反応したらダメなんじゃなかったっけ?
「テレサ、落ち着けって。どうせ外にいる誰がの仕掛けだよ」
「ち、違うよ、素蓋! 本物だよ! もうダメだよぉ! 帰りたいよママぁーっ!」
可愛いなっ!
お母さんのことママって呼んでるのか。
「ふふふふふふふふふ」
女の笑い声はまだ止まらない。
外にいる誰かの仕掛けにしてはしつこい。テレサがこれだけ怖がってるんだから、普通少し手を緩めると思うんだが、大人げないな。
「テレサ、もうすぐ出口だ。とっとと外に出よう」
「う、うぅ……早くでる」
可愛いなっ!
オレはテレサを引っ張って先へ急いだ。
そして外へ出ると、そこはまるで死後の世界だった。
地面にはボロボロの十字架が何本も刺さっている。
樹木はクマに引きちぎられたように折れていて、岩は異様なツタが覆っている。
さらに、地面にはクギで打ち付けられた黒い布。
「こ、これは驚いたな」
「なにこれっ!? あたしたち、幽霊の世界にきちゃったの?」
「いや、たぶん違うと思うけど」
これはたぶん店側の仕掛けだろう。
不気味な樹木やツタは、自然にできたものだ。だからここが心霊スポットになっていたのだろう。
そこに十字架や黒い布などの装飾をして、さらにそれっぽい雰囲気を作ったようだ。
まさに、幽霊の世界。なかなかのクオリティだ。
ティフシーが『店の一大イベント』と張り切っていたのもうなづける。
『幽霊の世界へ繋がっているトンネル』の噂話を聞いてトンネルに入り、出口を出たら『幽霊の世界だった!』というオチだな。
「素蓋、ごめん。あたしが幽霊の笑い声に反応しちゃったから、もう帰れなくなっちゃったんだ」
「いや、そんなことないって」
トンネルを戻れば二分で帰れるからな。
「素蓋、ねぇ……あたしとキスしない?」
「え!?」
突然、テレサが暴走し始めた。
オレの胸の辺りを掴んで顔を接近させてくる。
ねだるような色っぽい表情。さらに、胸の谷間が丸見えだ。
まさか、もう帰れないと思って開き直ってる!?
「こんなときに言うのもなんだけど、あたしはその……まだしたことなくて、素蓋は頼りになるし」
「いや、ちょっ」
ガチモードに入ってるので止めづらい!
しかもこの可愛さと色気のコンボは、本能的に受け入れそうになってしまう。
これはまずい。
ネタバレするタイミングを完全に逃した!
たぶん店側の仕掛け人がどこかに隠れて聞いてるぞ。
「素蓋、じゃあおっぱい触る?」
「ちょ!? 落ちつけテレサ!」
テレサが自分で自分のおっぱいを触る。
谷間がプルプル揺れて、奇跡のような光景だ。
これが平常時ならなんの問題もないんだが。
「テレサ、ネタバレするけど、たぶんこれは店の仕掛けで」
と言いかけた瞬間。
テレサがオレの背後を見て、目を見開いた。
唇を震わせて、なにか言おうとしてるが、声が出てない。
「え、どうした?」
振り向くと、そこには半透明な女がいた。
白でも黒でもない無色。なのになぜか見える。
ゾッとするほど美しいのに、まったく魅力を感じない不気味さ。
感覚的にわかる。こいつは人間じゃない。
こいつは間違いなく。
「幽霊だぁあああああああああああああああ!」
「きゃぁああああああああああああああああ!」
オレとテレサの絶叫がこだました。
幽霊がテレサの喉元に手を伸ばしてくる。
オレはとっさに、地面に刺さっていたボロボロの十字架を引き抜いた。
ホラー映画などでよく見る解決方法は3つ!
幽霊に対抗できるのは、銀、聖水、十字架のどれかだ!
「おりゃっ!」
「!!!!!」
剣の達人のような速度で十字架を振り抜くと、幽霊女はスパッと上半身と下半身にわかれた。
そのまま霧状になり、風に流され、消えていく。
気づくと、そこは普通の森になっていた。
十字架や黒い布は消え、草木は綺麗に戻っている。
「あっ!」
ドラキュラのコスプレをしたティフシーがオレたちを指さした。
ガイコツを頭に被ったマッチョたちや、包帯を巻いたダイナマイトボディの美女たちも、オレとテレサを振り向く。
「オォオオオオオオッ! いったいどこにいたんだ素蓋&テレサペアーッ!」
「驚かせようと思ってたら、私たちの方が驚かされてしまったわ! さすが素蓋、なにをしても私たちの予想を超えてくるわね!」
「素蓋さん、さすがですー! すごいサプライズですよーっ! トンネルの両方からみんなで探したのに! どこにいたんですかーっ!?」
「インビジブルマッスルだぁあああ! さすが素蓋! ハンパねぇぜーッッッッッ!! ヒャッハァアアアアアアアアアアア!」
若干一名、まだ肝試しテンションのやつもいるな!
それにしても、どうやらオレたちは本当に幽霊の世界に行ってたらしい。
よく考えたらオレは異世界転移したことがあるから、幽霊の世界に迷い混んだとしても不思議じゃない。
無事に帰れてよかったぜ!
「素蓋ぁーっ!」
「えっ!?」
テレサは突然、オレの腕に抱きついてきた。
柔らかい感触がオレの腕を包み込む。
オレの腕に押されたおっぱいはTシャツから盛りあがっていて、視覚的にもエロい。
な、なんだこの天国は!? オレまだ死んでないよな!?
「素蓋、ありがとうーっ! 怖かったぁ。ドキドキしたよぉ~!」
「そ、そうだね。完全に同意する」
こうして肝試し大会は、幽霊に会ったときの数十倍のサプライズで幕を閉じた。
夕方、ティフシーがオレの部屋に飛び込んできた。
部屋が明るくなった気がする。ティフシーは朝でも夜でも太陽のようなハイテンションだ。
「きっもだめしっ♪ イェイ♪ きっもだめしっ♪ イェイ♪ K・I・M・O! きもだめし! イェイ♪」
「肝試しだよね!? 誕生日パーティーじゃないよね!?」
このテンションで肝試ししたら、エンカウントした側から幽霊が成仏していくぞ!?
「だって、楽しみじゃないですか~! お店の一大イベントですよ!」
「そうなの? オレは肝試しで怖いと思ったことなんてないけどなぁ」
「ふふっ。大丈夫ですよ! 今日は本物の心霊スポットに行きますから! 人が脅かすわけじゃないんです。本物の幽霊が脅かしてくれるんですよ!」
「フッ」
幽霊なんているわけないのに、ティフシーはときどき子供っぽいところがあるなぁ。可愛いけど!
「あ、いまバカにしましたね? 幽霊なんていないと思ってますね?」
「オレは幽霊なんて信じてないよ。いるなら見てみたいね」
「それなら今夜、きっと見れますよ! 楽しみにしててください!」
「妙に自信満々だね?」
こうして、オレは久しぶりにまったりしたイベントに参加することになった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ハッハッハーッ! 肝試し大会を開始するぞォオオオオオッ! 準備はいいかいボーイズ&ガールズ!?」
「イェエエエエエエエエエエエエエエイッッッ! 肝試しだぜェッ!!! ヒャッハーッ!!!!」
夏フェスかっ!
幽霊ぜったい現れないだろ! なんだこの熱気!
「では、さっそくペア分けを始めるぞ! 二人一組でこのトンネルに入っていくのさ! ちなみに、このトンネルは『ブラッドホットチリペパーズ』や『ラッドウィッチーズ』などの幽霊が出ると言われているぞ!」
夏フェスか!
海外バンドも集結する最大級のロックフェスかっ!
「では、さっそくクジを引いてくれ! 早くクジを引かないと、『ブラッドメアリー』に血肉を吸い取られるぞ~?」
それさっきいなかっただろ!
後付けでガチのやつ出してくんな!
「あの、キミ『4』番? あたし『4』番なんだけど」
「えっ?」
振り向くと、ボーイッシュな美少女がクジをオレに見せてきた。
ショートパンツにTシャツ姿。キャップを被っていて、いかにもスポーティな感じだ。
ショートの黒髪で、パッと見は男子にも見えるけど、声は可愛くて、胸も大きい。
ギャップ萌え『あたし』っ子キター!
「オレも『4』番だよ。素蓋だ。よろしくな」
「よろしく、素蓋。あたしはテレサ。こういうの苦手だから、頼りにしてるよ? 素蓋」
「おー、オレはこういうの平気だぜ! それにしても、肝試しにバッチリな番号引いたよなぁ」
「う……ホント最悪だよ。だって知ってる? このトンネルって中に入ったら、周りから笑い声が聞こえてくるんだってさ」
「笑い声? そんな怖くないじゃん」
「明るい笑い声じゃないんだよ? 『ふふふ』みたいな声が聞こえてきて、少しでもその声に反応したら、帰って来れなくなっちゃうんだよ。トンネルから出ると、幽霊の世界に繋がってるんだって」
「テレサ、怖いの苦手なわりに詳しいね」
「う……」
テレサはキャップのツバを触って、俯いた。
「あたし怖い話苦手だけど、聞き始めたら途中でやめられなくなっちゃうんだ……これって呪われてるのかな?」
「いや、それで呪われてるなら、全人類の半分が呪われてると思うよ」
「ちょ、えっ! 怖いこと言わないでよ!? 人類の半分が呪われてるの!?」
「ごめん、いまのナシで!」
うかつにツッコミもできないぜ!
たしかにいまのはオレの言葉のチョイスも悪かったけどさ!
「次は~っ! 四番の素蓋&テレサペアーッ!」
司会のマッチョに呼ばれた。オレたちの番だ。
「行こっか、テレサ」
「うんっ」
「ハッハッハ! よくきたな! さっそく中に入ってもらうぞ! 恐怖のトンネルへようこそ! さあ、早く中に入りたまえ!」
魔王か!
ってツッコミたいけど、テレサがすでに顔面蒼白なので危険な単語は言えない。
「あ、あのさ? 素蓋、袖掴んでていい?」
「うん、別にいいよ~」
っていうか、もう掴んでるけどな。
「そんなに怖いなら、引き返してもいいよ? ムリすることないって」
「うん、でもいまは恐怖心より好奇心の方が勝ってるから」
「そっか。じゃあいこっか」
オレはテレサにトレーニングウェアの袖を掴まれたまま、トンネルの中に入った。
広さはちょうど人が二人通れる程度だ。
中に入ると周囲は草や苔やツタが不気味に周囲を覆っている。
たしかに雰囲気はあるな。
「素蓋、ねぇ……いまの聞こえた?」
「えっ? なにも聞こえなかったけど」
急にどうした!? まだ中に入って三歩くらいだぞ!
「う、ううん。聞こえなかったならいいの。気にしないで」
「いや、気になるんだけど!?」
「気にしないでって!」
「なにが聞こえたんだ!? 気になるって!」
「いや! 教えない!」
「教えろよ!」
「もう、察してよっ!」
そう言ってテレサは顔を赤らめた。
そして。
ぐぎゅるるるるるるる。
今度はオレにもハッキリ聞こえた。
「悪い、つい幽霊の声が聞こえたのかと」
腹が鳴った音だったとは。
「あたしもどなってゴメン。肝試しが楽しみで、夕飯あんまり食べられなくてさ……」
幽霊好きなのか嫌いなのか、どっちなんだ?
と思ったが、幽霊というワードもNGになりそうなので聞けない。
「とりあえず先に進もっか?」
「うん、そうだね」
オレたちはそのまま先へ進んだ。
そして、今度こそ本当に、女の声が聞こえた。
「ふふふふふふふ」
「ぎゃぁああああああああああああああ!」
オレにしがみついて絶叫するテレサ。
いや、気持ちはわかるけど、幽霊の声に反応したらダメなんじゃなかったっけ?
「テレサ、落ち着けって。どうせ外にいる誰がの仕掛けだよ」
「ち、違うよ、素蓋! 本物だよ! もうダメだよぉ! 帰りたいよママぁーっ!」
可愛いなっ!
お母さんのことママって呼んでるのか。
「ふふふふふふふふふ」
女の笑い声はまだ止まらない。
外にいる誰かの仕掛けにしてはしつこい。テレサがこれだけ怖がってるんだから、普通少し手を緩めると思うんだが、大人げないな。
「テレサ、もうすぐ出口だ。とっとと外に出よう」
「う、うぅ……早くでる」
可愛いなっ!
オレはテレサを引っ張って先へ急いだ。
そして外へ出ると、そこはまるで死後の世界だった。
地面にはボロボロの十字架が何本も刺さっている。
樹木はクマに引きちぎられたように折れていて、岩は異様なツタが覆っている。
さらに、地面にはクギで打ち付けられた黒い布。
「こ、これは驚いたな」
「なにこれっ!? あたしたち、幽霊の世界にきちゃったの?」
「いや、たぶん違うと思うけど」
これはたぶん店側の仕掛けだろう。
不気味な樹木やツタは、自然にできたものだ。だからここが心霊スポットになっていたのだろう。
そこに十字架や黒い布などの装飾をして、さらにそれっぽい雰囲気を作ったようだ。
まさに、幽霊の世界。なかなかのクオリティだ。
ティフシーが『店の一大イベント』と張り切っていたのもうなづける。
『幽霊の世界へ繋がっているトンネル』の噂話を聞いてトンネルに入り、出口を出たら『幽霊の世界だった!』というオチだな。
「素蓋、ごめん。あたしが幽霊の笑い声に反応しちゃったから、もう帰れなくなっちゃったんだ」
「いや、そんなことないって」
トンネルを戻れば二分で帰れるからな。
「素蓋、ねぇ……あたしとキスしない?」
「え!?」
突然、テレサが暴走し始めた。
オレの胸の辺りを掴んで顔を接近させてくる。
ねだるような色っぽい表情。さらに、胸の谷間が丸見えだ。
まさか、もう帰れないと思って開き直ってる!?
「こんなときに言うのもなんだけど、あたしはその……まだしたことなくて、素蓋は頼りになるし」
「いや、ちょっ」
ガチモードに入ってるので止めづらい!
しかもこの可愛さと色気のコンボは、本能的に受け入れそうになってしまう。
これはまずい。
ネタバレするタイミングを完全に逃した!
たぶん店側の仕掛け人がどこかに隠れて聞いてるぞ。
「素蓋、じゃあおっぱい触る?」
「ちょ!? 落ちつけテレサ!」
テレサが自分で自分のおっぱいを触る。
谷間がプルプル揺れて、奇跡のような光景だ。
これが平常時ならなんの問題もないんだが。
「テレサ、ネタバレするけど、たぶんこれは店の仕掛けで」
と言いかけた瞬間。
テレサがオレの背後を見て、目を見開いた。
唇を震わせて、なにか言おうとしてるが、声が出てない。
「え、どうした?」
振り向くと、そこには半透明な女がいた。
白でも黒でもない無色。なのになぜか見える。
ゾッとするほど美しいのに、まったく魅力を感じない不気味さ。
感覚的にわかる。こいつは人間じゃない。
こいつは間違いなく。
「幽霊だぁあああああああああああああああ!」
「きゃぁああああああああああああああああ!」
オレとテレサの絶叫がこだました。
幽霊がテレサの喉元に手を伸ばしてくる。
オレはとっさに、地面に刺さっていたボロボロの十字架を引き抜いた。
ホラー映画などでよく見る解決方法は3つ!
幽霊に対抗できるのは、銀、聖水、十字架のどれかだ!
「おりゃっ!」
「!!!!!」
剣の達人のような速度で十字架を振り抜くと、幽霊女はスパッと上半身と下半身にわかれた。
そのまま霧状になり、風に流され、消えていく。
気づくと、そこは普通の森になっていた。
十字架や黒い布は消え、草木は綺麗に戻っている。
「あっ!」
ドラキュラのコスプレをしたティフシーがオレたちを指さした。
ガイコツを頭に被ったマッチョたちや、包帯を巻いたダイナマイトボディの美女たちも、オレとテレサを振り向く。
「オォオオオオオオッ! いったいどこにいたんだ素蓋&テレサペアーッ!」
「驚かせようと思ってたら、私たちの方が驚かされてしまったわ! さすが素蓋、なにをしても私たちの予想を超えてくるわね!」
「素蓋さん、さすがですー! すごいサプライズですよーっ! トンネルの両方からみんなで探したのに! どこにいたんですかーっ!?」
「インビジブルマッスルだぁあああ! さすが素蓋! ハンパねぇぜーッッッッッ!! ヒャッハァアアアアアアアアアアア!」
若干一名、まだ肝試しテンションのやつもいるな!
それにしても、どうやらオレたちは本当に幽霊の世界に行ってたらしい。
よく考えたらオレは異世界転移したことがあるから、幽霊の世界に迷い混んだとしても不思議じゃない。
無事に帰れてよかったぜ!
「素蓋ぁーっ!」
「えっ!?」
テレサは突然、オレの腕に抱きついてきた。
柔らかい感触がオレの腕を包み込む。
オレの腕に押されたおっぱいはTシャツから盛りあがっていて、視覚的にもエロい。
な、なんだこの天国は!? オレまだ死んでないよな!?
「素蓋、ありがとうーっ! 怖かったぁ。ドキドキしたよぉ~!」
「そ、そうだね。完全に同意する」
こうして肝試し大会は、幽霊に会ったときの数十倍のサプライズで幕を閉じた。
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下着が持つ特性をそのまま、レイスケ自身の強力なスキルとして永続獲得する。
■システム3:魔導再構築(リビルド・テーラー)
エキスを抜いた下着を分解し、レイスケの魔力で再構成。着用者に特定のスキルを付与する『魔導下着』へと造り変える。
死の淵にいた獣人の少女や、魔力暴走に苦しむ聖女にこれを与えると、彼女たちは一騎当千の力を得て覚醒する。ただし――その力は「着用している間」しか発揮されず、脱いだ瞬間に激しい喪失感が彼女たちを襲う。
■システム4:深淵還元(フィードバック・エキス)
これがこのスキルの最も恐ろしい真価。
一定期間着用された下着を回収し、そこに染み付いた「着用者の魔力・汗・感情」から高純度エキスを抽出。
それをレイスケが取り込むことで、彼のステータスは指数関数的に跳ね上がっていく。
「君を一番美しく、そして最強にできるのは僕だけだ」
レイスケが至高の一枚を仕立てるたびに、最強の女性たちが彼の腕の中で陶酔し、さらなる「エキス」を捧げるために戦場へと赴く。
追放した者たちが後悔してももう遅い。下着を通じて魂まで繋がった「下着軍団(ランジェリーズ)」を引き連れ、レイスケは異世界の理を書き換えていく。
【本作の見どころ】
毎日更新の累積型チート: 1日1回の下着取り寄せが、確実にレイスケを最強へと近づけます。
独自の強化ロジック: 「ただのバフ」ではなく、着用者の頑張りがレイスケに還元される共生システム。
深まる共依存: 下着を脱げないヒロインたちの葛藤と、レイスケへの異常な執着が描く背徳的ハーレム。
「パンツを制する者は、世界を制す――」
変態と蔑まれた男による、至高の異世界再編ファンタジー、ここに開幕!
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