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第0章

私、異世界行っちゃった!

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 目が覚めたら、木の根が張り巡らされた場所にいた。

 腕は縛られていない。

 自由に身動きがきく。

 服もいつものモノクロの服。


 どういう状況なんだ?


 すぐ斜め前に、ランタンのような灯りが見え、少し安堵する。


 ここはどこだ?


 圧倒的に情報量が少なすぎる。

 にしても私は、よくこんなに冷静にいられるな。
 ちょっと心臓はうるさいけど…。

 背後に気配を感じた。

 さっきよりも何倍も心臓がうるさい。
 私は意を決して振り返った。



「ふぇ…?」

 つい間抜けな声が出てしまった。

 いや、私、捕まえられたとか、そういうのじゃないの?

 そこには、美しい男性?女性?がいた。

 中性的な顔立ちで、後ろで髪を一つに縛っていた。

 美しい。

 見惚れてしまった。



「おい、目を覚ましたか。」

 その美しい顔とは裏腹に、言葉が荒かった。

「覚ましましたけど…。」




「アース。こいつ起きたぞ。」

 アース? 誰だ?

 遠くからどたどたと走ってくる音が聞こえた。

 地下にいるのか、とてもよく響いていた。

「起きた? よかったよ…。」

 よかった? なんのこと?



「こいつ、間抜けな顔をしているぞ。ちゃんと説明したんじゃないのか。」

「ごめん、ノア。なんもしてない。」

「はあ!? 同意の下で連れてきたんじゃないのか!!」

「ごめん。」

 2人が言い争っていた。

 私は呆然と2人の様子を見ていた。
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