18 / 64
第1章
魔法陣
しおりを挟む
二つの神眼がそれぞれを砲撃する。
それまで広大な魔法防壁を張るために使われていた魔力が莫大な熱量に転換放射されて射線上の物質を破壊していく。
魔力を使いきったところに互いの砲撃を受けて神眼は爆砕。背後の要塞は魔法強化された石造建築だったが、砲撃で溶解してしまって煮えたぎる溶岩の沼を作る。
砲撃は渓谷の表面を焼きながら空へと抜けていって消えた。
暗黒騎士ザニバルと蒼龍フレイアがいる上空にも溶岩の熱気と臭気が届く。
フレイアは下の地獄さながらな光景に呆然としている。
<王国の要塞を消し飛ばしてしまった…… 重大な責任問題だ……>
フレイアの首に乗っている暗黒騎士ザニバルは喜びはしゃいでいる。
<防壁も要塞もなくなった。これでマルメロを売れるよ>
先ほど神眼が砲撃を開始した瞬間、上空の魔法防壁が消えた。フレイアは際どいところで上昇して砲撃をかわした。
気が付けば天高く陽が上り、時刻は昼。良い天気だ。空は空気が冷たく乾いている。
フレイアがしばらく滑空していると、渓谷の穴からぞろぞろと兵士たちが出てくるのが見えた。兵士たちはようやくメロッピから解放されてほっとした顔をしているようだ。ただ司令官はなにやら叫び慌てている。要塞が消えてしまったのでは、そうもなろう。
<司令官、すごく怖がってる>
ザニバルは気楽そうに言う。
フレイアは感慨を覚える。
無茶苦茶だったがともかく要塞は無くなり、国境をさえぎっていた魔法防壁も消えた。
これで少なくとも飛龍ならば上空を自由に行き来できる。渓谷もしばらくすれば歩いて通れるようになる。マルメロの実に限らず貿易路が開かれるだろう。
マルメロが手に入れば祖国で病に伏している魔族たちを救うこともできる。
それもこれもこのザニバルの成し遂げたことだ。
ザニバルをどう思えばよいのかフレイアは分からなくなる。
先の戦争では手痛い目にあわされてサーカス魔術団は壊滅し、自身も殺されかけた。憎んでも憎みきれない。
しかし今、二人で力を合わせて人々を救うための道を開いた。諦めかけていた自分には思いもつかない手だった。
愛する王から授かった竜巻に対し、ザニバルが使ってみせた技も武人として見事なものだった。きっと王も見れば面白がって喜んだことだろう。
この暗黒騎士を敬して感謝すべきなのか。いや甘い。きっとこれもまた陰謀では。
<ナヴァリアに行こうよ。マルメロ買ってくれるんでしょ>
ザニバルが足をジタバタさせて急かす。
フレイアは肩の力が抜けて、思わず笑った。こんな禍々しい鎧をまとった暗黒騎士だが、接してみればまるで駄々っ子のいたずらっ子だ。
ともかく今は付き合ってやろう。
<行くとするか!>
蒼龍は四枚の翼を広げてナヴァリア州へと飛ぶ。首に暗黒騎士を乗せて。
◆ナヴァリア州 芒星城
芒星城の広場ではゴブリンたちが大騒ぎだった。
大きな蒼い飛龍が広場に降り立ったのだ。しかも果樹園から突然消え去った騎士を連れて。
領主の少女アニスと側近ゴブリンのゴニが、城から急いで出てくる。心配そうな顔だ。
「あの子がアニス。たくさんマルメロを売ってくれるよ」
ザニバルがフレイアに伝えると、フレイアは蒼龍の姿を解いて人間に戻った。農作業服を着て、手には鍬を持っている姿だ。これを見たゴブリンたちが驚いてまた騒ぐ。
「アニス、この人は王国のフレイア。マルメロをたくさん買ってくれるんだって」
ザニバルが、フレイアをアニスに紹介する。
「王国から……!?」
アニスは驚いた様子だが、気を取り直して、
「始めまして、私はナヴァリア領主のアニス・ナヴァスです。このたびはマルメロの買い付けにわざわざお越しいただきましてありがたく存じますわ」
満面の笑顔だ。
フレイアもきょとんとしつつ、
「始めまして、フレイア・シュガルです。マルメロの果実をできるだけ多く王国に輸入したいのです」
「マルメロの輸出は念願ですわ。ただ国境が封鎖されておりまして……」
「国境の封鎖は終わりました。見てのとおり、私は飛龍になれますから空路でマルメロを運べます」
アニスとゴニは驚いて顔を見合わせる。
「すばらしいことですわ!」
フレイアはザニバルに小声で、
「おい、ナヴァリアの領主はザニバルと言っただろう。どういうことだ」
「あ」
ザニバルは返答に詰まる。すっかり忘れていた。
ゴニがザニバルに近寄ってくる。ゴニは眉をひそめて、
「ところでアブリル、マルメロ泥棒の件はどうなったんです」
ザニバルは泥棒の件もきれいさっぱり忘れていた。
フレイアの方を向いてから目を泳がせ、
「ええっと、泥棒は…… そう、ザニバルが悪かったんだ。でもやっつけたからもう安心」
今度はフレイアが眉をひそめて、
「おい、ザニバル。いったい何を言ってるんだ。それにアブリルってなんだ」
アニスは小首を傾げて、
「この黒騎士様がデル・アブリル様ですわ」
「いや、しかし、こいつはデス・ザニバル」
フレイアは混乱して訳が分からないという顔をする。
アニスも大きく首をかしげる。
ゴニは疑いのまなざしをザニバルに向ける。
<しまった…… フレイアに話しておくのを忘れてた>
<まったく、いい加減な嘘でごまかすからだよ! だますならもっと上手くやりな>
魔装に宿る悪魔バランが叱る。
<ううう>
ザニバルは兜の下で慌てふためいているがはた目には分からない。
そこでアニスが両手を打った。
「分かりましたわ! デス・ザニバルを倒してその名前をお奪いになられたのですわね! そしてデル・アブリル様からデス・ザニバル様に!」
ザニバルは大きく頷く。
「うん、そう、当たりだよ! アニス、さすがだもん」
フレイアもとにかくその場を収めようと、
「騎士が倒した相手の名前を奪うのはよくあることだ、と聞いたことがあるような気がする」
ゴニだけはうさんくさそうにザニバルをにらみ、
「では、もうマルメロ泥棒は来ないんですね?」
「あの泥棒は来ないよ」
ザニバルが断言し、フレイアは気まずそうな顔をする。
ゴニはため息をつき、
「いいでしょう。しばらく警戒は続けますが、一段落したようだと皆には伝えておきます。それとあなたの勇者係について、登録名をデス・ザニバルに変更しておきます。それでいいですね」
「うん、暗黒騎士デス・ザニバルだよ」
アニスとフレイアが一通りの挨拶を終えて、後は食事をしてから商談の詳細を詰めることになった。
一息ついたザニバルとフレイアにゴブリンおばちゃんたちが群がってくる。
「騎士様、さすがだねえ! これならモテモテだよ! さあ、どの子を嫁にしようかねえ」
「待ちな! 騎士様に紹介するのはこのあたしだよ!」
「違うねえ! このあたしが騎士様と結婚するんだよ」
ザニバルの周りでゴブリンおばちゃんたちがやかましい。
フレイアの周りでも、
「かっこいいお姉ちゃんだねえ。どうだい、年頃の婿がいるんだけど」
「抜け駆けはいけないよお、うちの息子がそろそろ嫁取りの歳なんだから」
「その恰好、農作業が好きそうだねえ。ナヴァリアにはぴったりじゃないかい」
あまりにやかましくてフレイアは困り果てている。
ゴニが二人を騒ぎの中から引きずり出した。
「ほら、みんな邪魔は止めて。これから大事な商談があります」
皆が文句を言いだすもゴニは聞く耳を持たず、二人を城に連れていく。
フレイアは心底助かったという顔だ。
「田舎は恐ろしい…… しかし帝国にゴブリン族が暮らしていたとは」
「ナヴァリアでは昔から魔族と人間が共存してきたのです」
アニスが答える。
一階の広間は相変わらず人が少ない。
ほっとしたフレイアはのんびり歩きかけて、広間の案内図に目を付ける。
「うむ、やはりな」
案内図には五芒星型をした城の形が描かれている。フレイアはその五芒星に指先で二重円を重ねて描いた。
その様を見たザニバルが凍りついた。
「今の、なに!?」
「なにって、ここの魔法陣だ。空からこの城を見たときに気付いたぞ、城と道を使って大規模な魔法陣が構築されているとな。異界から魔法生命体を召喚するためのものと思うが、これほど巨大であればさぞ強力なものを召喚できただろう」
フレイアが興味深そうに語る。
フレイアが描いてみせた魔法陣の形をザニバルは知っていた。脳裏に焼き付いている形だ。
かつて悪魔ヴラドが新たな悪魔を召喚しようとして、ザニバルの家族たちを生贄に使ったときの魔法陣。それと同じ形だった。
ザニバルはフレイアの両肩を掴む。
「あいつはどこ! この魔法陣を使おうとしている悪魔は!」
血相を変えた様子のザニバルにフレイアは、
「落ち着け。この魔法陣は使用済みだ。よほど負荷をかけたのだろうな、魔力の伝導線が焼き付いている」
「じゃあ、魔法陣を描いたのは誰!?」
「私に分かる訳がなかろう」
その会話を聞いていたアニスとゴニは顔を見合わせる。
アニスは困った様子で、
「この城と周りの道が魔法陣とは初耳なのですが、もしそうだったとして、お父様が城を建て始めたのはずいぶん前のことです。設計したのが誰なのかは…… 戦争があって、お父様も…… 城や道を設計した職人たちも、もう……」
魔装に宿る悪魔バランがザニバルだけに聞こえるよう話し始める。
<城が悪魔召喚の魔法陣だったとはね。全く、言われるまで気が付かないなんて大恥さ>
ザニバルは拳を握りしめる。
<きっと…… ナヴァリアの誰かにあいつが憑りついている…… 絶対見つけ出して、絶対にやっつけるんだもん。許さないんだもん!>
それまで広大な魔法防壁を張るために使われていた魔力が莫大な熱量に転換放射されて射線上の物質を破壊していく。
魔力を使いきったところに互いの砲撃を受けて神眼は爆砕。背後の要塞は魔法強化された石造建築だったが、砲撃で溶解してしまって煮えたぎる溶岩の沼を作る。
砲撃は渓谷の表面を焼きながら空へと抜けていって消えた。
暗黒騎士ザニバルと蒼龍フレイアがいる上空にも溶岩の熱気と臭気が届く。
フレイアは下の地獄さながらな光景に呆然としている。
<王国の要塞を消し飛ばしてしまった…… 重大な責任問題だ……>
フレイアの首に乗っている暗黒騎士ザニバルは喜びはしゃいでいる。
<防壁も要塞もなくなった。これでマルメロを売れるよ>
先ほど神眼が砲撃を開始した瞬間、上空の魔法防壁が消えた。フレイアは際どいところで上昇して砲撃をかわした。
気が付けば天高く陽が上り、時刻は昼。良い天気だ。空は空気が冷たく乾いている。
フレイアがしばらく滑空していると、渓谷の穴からぞろぞろと兵士たちが出てくるのが見えた。兵士たちはようやくメロッピから解放されてほっとした顔をしているようだ。ただ司令官はなにやら叫び慌てている。要塞が消えてしまったのでは、そうもなろう。
<司令官、すごく怖がってる>
ザニバルは気楽そうに言う。
フレイアは感慨を覚える。
無茶苦茶だったがともかく要塞は無くなり、国境をさえぎっていた魔法防壁も消えた。
これで少なくとも飛龍ならば上空を自由に行き来できる。渓谷もしばらくすれば歩いて通れるようになる。マルメロの実に限らず貿易路が開かれるだろう。
マルメロが手に入れば祖国で病に伏している魔族たちを救うこともできる。
それもこれもこのザニバルの成し遂げたことだ。
ザニバルをどう思えばよいのかフレイアは分からなくなる。
先の戦争では手痛い目にあわされてサーカス魔術団は壊滅し、自身も殺されかけた。憎んでも憎みきれない。
しかし今、二人で力を合わせて人々を救うための道を開いた。諦めかけていた自分には思いもつかない手だった。
愛する王から授かった竜巻に対し、ザニバルが使ってみせた技も武人として見事なものだった。きっと王も見れば面白がって喜んだことだろう。
この暗黒騎士を敬して感謝すべきなのか。いや甘い。きっとこれもまた陰謀では。
<ナヴァリアに行こうよ。マルメロ買ってくれるんでしょ>
ザニバルが足をジタバタさせて急かす。
フレイアは肩の力が抜けて、思わず笑った。こんな禍々しい鎧をまとった暗黒騎士だが、接してみればまるで駄々っ子のいたずらっ子だ。
ともかく今は付き合ってやろう。
<行くとするか!>
蒼龍は四枚の翼を広げてナヴァリア州へと飛ぶ。首に暗黒騎士を乗せて。
◆ナヴァリア州 芒星城
芒星城の広場ではゴブリンたちが大騒ぎだった。
大きな蒼い飛龍が広場に降り立ったのだ。しかも果樹園から突然消え去った騎士を連れて。
領主の少女アニスと側近ゴブリンのゴニが、城から急いで出てくる。心配そうな顔だ。
「あの子がアニス。たくさんマルメロを売ってくれるよ」
ザニバルがフレイアに伝えると、フレイアは蒼龍の姿を解いて人間に戻った。農作業服を着て、手には鍬を持っている姿だ。これを見たゴブリンたちが驚いてまた騒ぐ。
「アニス、この人は王国のフレイア。マルメロをたくさん買ってくれるんだって」
ザニバルが、フレイアをアニスに紹介する。
「王国から……!?」
アニスは驚いた様子だが、気を取り直して、
「始めまして、私はナヴァリア領主のアニス・ナヴァスです。このたびはマルメロの買い付けにわざわざお越しいただきましてありがたく存じますわ」
満面の笑顔だ。
フレイアもきょとんとしつつ、
「始めまして、フレイア・シュガルです。マルメロの果実をできるだけ多く王国に輸入したいのです」
「マルメロの輸出は念願ですわ。ただ国境が封鎖されておりまして……」
「国境の封鎖は終わりました。見てのとおり、私は飛龍になれますから空路でマルメロを運べます」
アニスとゴニは驚いて顔を見合わせる。
「すばらしいことですわ!」
フレイアはザニバルに小声で、
「おい、ナヴァリアの領主はザニバルと言っただろう。どういうことだ」
「あ」
ザニバルは返答に詰まる。すっかり忘れていた。
ゴニがザニバルに近寄ってくる。ゴニは眉をひそめて、
「ところでアブリル、マルメロ泥棒の件はどうなったんです」
ザニバルは泥棒の件もきれいさっぱり忘れていた。
フレイアの方を向いてから目を泳がせ、
「ええっと、泥棒は…… そう、ザニバルが悪かったんだ。でもやっつけたからもう安心」
今度はフレイアが眉をひそめて、
「おい、ザニバル。いったい何を言ってるんだ。それにアブリルってなんだ」
アニスは小首を傾げて、
「この黒騎士様がデル・アブリル様ですわ」
「いや、しかし、こいつはデス・ザニバル」
フレイアは混乱して訳が分からないという顔をする。
アニスも大きく首をかしげる。
ゴニは疑いのまなざしをザニバルに向ける。
<しまった…… フレイアに話しておくのを忘れてた>
<まったく、いい加減な嘘でごまかすからだよ! だますならもっと上手くやりな>
魔装に宿る悪魔バランが叱る。
<ううう>
ザニバルは兜の下で慌てふためいているがはた目には分からない。
そこでアニスが両手を打った。
「分かりましたわ! デス・ザニバルを倒してその名前をお奪いになられたのですわね! そしてデル・アブリル様からデス・ザニバル様に!」
ザニバルは大きく頷く。
「うん、そう、当たりだよ! アニス、さすがだもん」
フレイアもとにかくその場を収めようと、
「騎士が倒した相手の名前を奪うのはよくあることだ、と聞いたことがあるような気がする」
ゴニだけはうさんくさそうにザニバルをにらみ、
「では、もうマルメロ泥棒は来ないんですね?」
「あの泥棒は来ないよ」
ザニバルが断言し、フレイアは気まずそうな顔をする。
ゴニはため息をつき、
「いいでしょう。しばらく警戒は続けますが、一段落したようだと皆には伝えておきます。それとあなたの勇者係について、登録名をデス・ザニバルに変更しておきます。それでいいですね」
「うん、暗黒騎士デス・ザニバルだよ」
アニスとフレイアが一通りの挨拶を終えて、後は食事をしてから商談の詳細を詰めることになった。
一息ついたザニバルとフレイアにゴブリンおばちゃんたちが群がってくる。
「騎士様、さすがだねえ! これならモテモテだよ! さあ、どの子を嫁にしようかねえ」
「待ちな! 騎士様に紹介するのはこのあたしだよ!」
「違うねえ! このあたしが騎士様と結婚するんだよ」
ザニバルの周りでゴブリンおばちゃんたちがやかましい。
フレイアの周りでも、
「かっこいいお姉ちゃんだねえ。どうだい、年頃の婿がいるんだけど」
「抜け駆けはいけないよお、うちの息子がそろそろ嫁取りの歳なんだから」
「その恰好、農作業が好きそうだねえ。ナヴァリアにはぴったりじゃないかい」
あまりにやかましくてフレイアは困り果てている。
ゴニが二人を騒ぎの中から引きずり出した。
「ほら、みんな邪魔は止めて。これから大事な商談があります」
皆が文句を言いだすもゴニは聞く耳を持たず、二人を城に連れていく。
フレイアは心底助かったという顔だ。
「田舎は恐ろしい…… しかし帝国にゴブリン族が暮らしていたとは」
「ナヴァリアでは昔から魔族と人間が共存してきたのです」
アニスが答える。
一階の広間は相変わらず人が少ない。
ほっとしたフレイアはのんびり歩きかけて、広間の案内図に目を付ける。
「うむ、やはりな」
案内図には五芒星型をした城の形が描かれている。フレイアはその五芒星に指先で二重円を重ねて描いた。
その様を見たザニバルが凍りついた。
「今の、なに!?」
「なにって、ここの魔法陣だ。空からこの城を見たときに気付いたぞ、城と道を使って大規模な魔法陣が構築されているとな。異界から魔法生命体を召喚するためのものと思うが、これほど巨大であればさぞ強力なものを召喚できただろう」
フレイアが興味深そうに語る。
フレイアが描いてみせた魔法陣の形をザニバルは知っていた。脳裏に焼き付いている形だ。
かつて悪魔ヴラドが新たな悪魔を召喚しようとして、ザニバルの家族たちを生贄に使ったときの魔法陣。それと同じ形だった。
ザニバルはフレイアの両肩を掴む。
「あいつはどこ! この魔法陣を使おうとしている悪魔は!」
血相を変えた様子のザニバルにフレイアは、
「落ち着け。この魔法陣は使用済みだ。よほど負荷をかけたのだろうな、魔力の伝導線が焼き付いている」
「じゃあ、魔法陣を描いたのは誰!?」
「私に分かる訳がなかろう」
その会話を聞いていたアニスとゴニは顔を見合わせる。
アニスは困った様子で、
「この城と周りの道が魔法陣とは初耳なのですが、もしそうだったとして、お父様が城を建て始めたのはずいぶん前のことです。設計したのが誰なのかは…… 戦争があって、お父様も…… 城や道を設計した職人たちも、もう……」
魔装に宿る悪魔バランがザニバルだけに聞こえるよう話し始める。
<城が悪魔召喚の魔法陣だったとはね。全く、言われるまで気が付かないなんて大恥さ>
ザニバルは拳を握りしめる。
<きっと…… ナヴァリアの誰かにあいつが憑りついている…… 絶対見つけ出して、絶対にやっつけるんだもん。許さないんだもん!>
0
あなたにおすすめの小説
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。
無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。
やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる