ソムリエ相談役

8.秋はワインのシーズン

　木々が徐々に赤みを帯びてきた11月初旬。HIBIKIにはヌーボーを待ちわびたお客さんが、続々とやって来る。
　この時期にしか来ない常連さんもいて、ヌーボーがいかに日本人に浸透しているかがわかる。ちなみに、フランスのボジョレー・ヌーボーの最大輸出先の一つが日本である。
　「マスター、甲州の新酒ある？」今夜は常連のサラリーマン、キミさんが来ている。キミさんは新宿に本社を構える大手企業で働く40代男性で、秋になるとよく店にやって来る。
　「11月3日に解禁したばかりだからね、新鮮なのがあるよ！」ケイは自慢気に山梨県産の甲州ワインをグラスに注いだ。
　「うん、うまい。今年の出来も上々だね。」
　「そうですね、天候も安定してましたから、いい葡萄が採れたんじゃないですかね。」
　「そうそう、もう少ししたらボジョレーも飲めるね！マスター、モルゴンを仕入れといてよ。」
キミさんはボジョレーの格付けの一つ「モルゴン」のヌーボーが大好きだ。
　「わかってますよ。もう業者に予約入れてあります。」
　「さすがマスター！わかってますね～。」

　HIBIKIではお客さんの要望があれば、なるべくそのワインを仕入れるようにしている。お客さんに満足してもらいたいのもあるが、ケイも一緒に飲んでワインについて語れるのが、一番楽しいからだ。