グローリー・リーグ -宇宙サッカー奮闘記-

山中カエル

文字の大きさ
1 / 109
序章 宇宙人襲来

01 夢、散る

しおりを挟む
 「それでは、我々に予言をお聞かせください」
 大勢の民が固唾を呑んで次の言葉を待つ。
 重たい期待を背負いながら予言者は口を開く。

『1年後の今日、地球にて未知の力を持った子どもが1人生まれる。
 その力は宇宙の理を壊しかねないものだ』

 ***

 ー現在 2038年 6月ー

 スポーツで世界一になる。

 誰もが一度は描いたことのある夢だろう。かくいう俺もその1人。小さな頃から焦がれ続けた。そして今日、俺は夢への一歩を踏み出した。

 ワールドカップ開会式直前。本戦に駒を進めた各国の代表たちがスタジアムへの入場を終え、開会の合図を今か今かと待ちわびている。
 そんなここセントラルスタジアムにて、俺、山下龍也やましたりゅうやも日本代表の1人として整列し、これからの未来への希望に胸を膨らませていた。

 「やべぇな龍也、今から開会式だぜ? いまだに現実感ねえよ俺は」
 緊張した雰囲気の中、小声でそう話しかけてきたのは同じ日本代表の石井春樹いしいはるき。共に予選を勝ち抜いた大切な仲間だ。
 「ああ、だけど現実だ。勝って絶対に世界一になろう!」
 俺は笑いながらそう返すと、目を閉じ今までの人生を思い返す。

 父さんは俺が小さい頃にいなくなった。思い出が無いほど昔の話だ。
 しかし、母さんはそんな父さんのことを決して悪く言わず、女手一つで俺を育ててくれた。貧乏な暮らしだったが幸せな毎日だった。
 そして母さんは大のサッカー好き。直接聞いたわけではないが、父さんもサッカーが大好きだったらしい。もちろん息子の俺もすぐにサッカーの虜になった。

 正直才能がある方ではなかった。だけどサッカーを楽しむ才能は人一倍あったと思う。幼い頃から毎日毎日、ひたすらにサッカーを楽しんできた。俺の人生はサッカーだ。
 プレーすることだけがサッカーじゃない、観戦することも楽しみ方の1つだ。現在過去問わず様々な試合を見ていた俺は、伝説のサッカープレイヤー、ガル・イーザンに憧れた。ガルは俺が生まれた時には既に引退していたが、その荒々しくも美しいプレイ、仲間を最大限活かす戦い方、そして1番の魅力である諦めない心に魅了された。俺がサッカーで世界を目指すことになったきっかけだ。

 サッカーをしていれば父さんに会えるかも。
 そう考えたことが無いと言えば嘘になる。
 しかし今はもうそんな考えは無い。
 貧乏ながらもサッカーを続けさせてくれた母さんを喜ばせたい、そして何よりサッカーが大好きだという自分自身の気持ちに応えるため、俺は世界一に――

 「おい!」

 なんだ? 今いい感じに浸ってる所なんだから邪魔を
 「おい! 龍也! あれを見ろ!」
 なんだよ。春樹の必死な声に疑問を覚えつつ、俺はしぶしぶ目を開けた。するとそこには

 UFOがあった

 そしてそのUFOが会場を

 破壊した

 逃げ惑う人々。混乱する会場。

 俺の夢は、儚く散った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

10秒で読めるちょっと怖い話。

絢郷水沙
ホラー
 ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

【完結】シュゼットのはなし

ここ
恋愛
子猫(獣人)のシュゼットは王子を守るため、かわりに竜の呪いを受けた。 顔に大きな傷ができてしまう。 当然責任をとって妃のひとりになるはずだったのだが‥。

白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!

ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。 ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!? 「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」 理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。 これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!

異世界転生したので、文明レベルを21世紀まで引き上げてみた ~前世の膨大な知識を元手に、貧乏貴族から世界を変える“近代化の父”になります~

夏見ナイ
ファンタジー
過労死したプラントエンジニアの俺が転生したのは、剣と魔法の世界のド貧乏な貴族の三男、リオ。石鹸すらない不衛生な環境、飢える家族と領民……。こんな絶望的な状況、やってられるか! 前世の知識を総動員し、俺は快適な生活とスローライフを目指して領地改革を開始する! 農業革命で食料問題を解決し、衛生革命で疫病を撲滅。石鹸、ガラス、醤油もどきで次々と生活レベルを向上させると、寂れた領地はみるみる豊かになっていった。 逃げてきた伯爵令嬢や森のエルフ、ワケありの元騎士など、頼れる仲間も集まり、順風満帆かと思いきや……その成功が、強欲な隣領や王都の貴族たちの目に留まってしまう。 これは、ただ快適に暮らしたかっただけの男が、やがて“近代化の父”と呼ばれるようになるまでの物語。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

異世界転生特典『絶対安全領域(マイホーム)』~家の中にいれば神すら無効化、一歩も出ずに世界最強になりました~

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が転生時に願ったのは、たった一つ。「誰にも邪魔されず、絶対に安全な家で引きこもりたい!」 その切実な願いを聞き入れた神は、ユニークスキル『絶対安全領域(マイホーム)』を授けてくれた。この家の中にいれば、神の干渉すら無効化する究極の無敵空間だ! 「これで理想の怠惰な生活が送れる!」と喜んだのも束の間、追われる王女様が俺の庭に逃げ込んできて……? 面倒だが仕方なく、庭いじりのついでに追手を撃退したら、なぜかここが「聖域」だと勘違いされ、獣人の娘やエルフの学者まで押しかけてきた! 俺は家から出ずに快適なスローライフを送りたいだけなのに! 知らぬ間に世界を救う、無自覚最強の引きこもりファンタジー、開幕!

処理中です...