グローリー・リーグ -宇宙サッカー奮闘記-

山中カエル

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序章 宇宙人襲来

02 戦う覚悟

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 UFOだ

 UFOが会場を、俺の夢を破壊している。
 それに、客席には大勢の観客が……。

 理解が追いつかない
 これは現実……?
 呆然としていると

 「龍也! 逃げるぞ!!」

 春樹の声で目を覚ます。 

 「なんなんだよあれ!」
 「わからねえ……わからねえよ! だけど……とにかく逃げなきゃ……!」

 周囲を見渡すとパニックになりながら逃げている選手や観客たち。日本代表のみんなも既にいない。俺も逃げようと思ったその瞬間、UFOから声が響いた。

『地球人に告ぐ。我々は俗に言う宇宙人だ。この地球を侵略しに来た。
 見ての通り、我々と貴様ら地球人の間には圧倒的な科学力の差がある。戦えば我らが圧勝するだろう。だが、それでは面白みがない。そこで』

 少し間を置いて宇宙人は声を発する

『我々とサッカーで勝負だ』

 「……は?」
 思わず声が出たのも無理はない。この状況でありえない言葉が発せられたのだ。
 そんな俺たち地球人の気持ちなど微塵も興味が無いかのように宇宙人は続ける。

『今から1時間後、我々と試合をし、もし貴様らが勝てば見逃してやろう。もちろん我々が勝てば地球は侵略する。チャンスは一度きりだ、精々足掻くといい』

 そう言い残し、宇宙人からの通信は途絶え、UFOは姿を消した。

 唖然とする俺たち地球人。
 そんな中会場のビジョンに映像が映る。
 外国人の男だ。

『地球人の諸君、呆然としているところすまない。私はサッカー連盟会長のトール・クロニクだ。大変なことになった。しかし、ただ惚けてるわけにもいかない。
 理由はわからないが、奴らはサッカーで試合を申し込んできた。簡単に信じるのも愚かな話だが、あの科学力を見せつけられた今、奴らが与えたチャンスが唯一の希望だと考えざるを得ない。
 そこで、今会場にいる君たちの力を貸してほしい。偶然にもここには世界でもトップクラスの選手が揃っている。
 奴らと戦い地球を救う覚悟のあるものは会長室まで来てくれ。
 突然のことですまない。だが事態は一刻を争う。頼んだよ……!』

 そう言ったところで映像が消える。
 話していた言語は英語だったが、横に翻訳が載っていたため内容は理解できた。

 少し頭の中を整理していた俺に春樹は
 「逃げよう龍也! 宇宙人と試合? 冗談じゃねえ! とりあえずここから離れるぞ。少しでも遠くに逃げればもしかしたら助かるかも」

 「春樹」
 俺はまだ頭の整理がついてない。だけど、それでも1つ決意したことがある。
 「俺は戦う」

 「冗談だろ!? 相手は宇宙人だぞ? 危険すぎる!」

 「ああ、それでも誰かがやらなくちゃならないんだ。
 それに、俺の夢がこんな形で終わるなんて到底納得できない」

 黙り込む春樹、そして少し笑ってこう言う。
 「そんな気はしてたよ。お前はそういうやつだ。昔から正義感が強かったよな。
 仕方ねえ、ここは親友としていっちょ手を貸してやる。……と言いたいところだが……。
 すまねえ……俺には……ここでお前についていくだけの勇気がねぇ……! すまねぇ……すまねぇ……」

 気がつくと春樹は泣いていた。
 仕方のないことだ。俺だって気を緩めると立っていられない程の恐怖に襲われている。
 確かに昔から正義感は強かった。だが正義感だけで立ち向かえるほど恐怖は甘くない。
 そんな俺が戦う覚悟を決められたのは夢のため。

 それに……何故か湧いてくる使命感。
 まるで俺は今日この時ここで地球を救うために生まれてきたかのような……。

 「気にするな、その気持ちだけで俺は嬉しい」

 泣いてる春樹を見ながら俺は続ける。

 「行ってくるよ。応援頼む。絶対に勝って地球を、俺たちのサッカーを救ってくるからな……!」

 そう言い残し俺は会長室へと向かう。

 ***

 「龍也くん!」

 会長室へ向かっている途中、俺を1つの声が呼び止めた。

 「未来!?
 お前、なんでここに……?」

 声の正体は白花未来しらはなみらい。日本代表のマネージャーだ。もうとっくに逃げたものだと思っていたが……。

 「逃げようとしてたんだけどね、スタジアムの奥に向かう龍也くんを発見したから、それで……」

 「心配かけたのならごめん。でも俺は大丈夫だから未来は気にせず逃げてくれ」

 未来を危険な目に遭わせたくない。その一心からこの場から遠ざけようとするも……。

 「嫌だよ! 龍也くん宇宙人と戦うつもりでしょ? なら私も一緒にいく! 龍也くん1人に戦わせるなんて出来ないもん!」

 しかし未来は一歩も引かず、予想通りの返事が戻ってくる。

 「俺は選手だからいいんだよ! 未来はマネージャーだろ? 呼ばれてないんだから逃げてくれよ!」
 「そ、そうだけど……。それでもやれることはあるかもでしょ!」

 お互いに一歩も引かない言い合いが続く。こうなった未来は頑固だと幼なじみの俺はよく知っている。
 それなら……

 「未来、今からは本当に大切な戦いなんだ。そんな所にお前がいると、その、め、迷惑なんだよ!」

 「……!
 そ、そうなんだ……ごめんね……」

 俺の言葉を聞いた未来は悲しそうな顔をして走り去っていく。
 かなり辛いが今は突き放すしかない。安全なところにいてくれるのなら何よりだ。

 ***

 会長室に着いた。
 そもそも11人も集まらないのではないかという不安もあったがその心配は杞憂に終わる。
 ドアを開けると、そこには
 アメリカ代表 ブラド・イーガン
 イタリア代表 クレート・スカンツィオ
 を筆頭に世界の優秀な選手が合わせて10人立っていた。

 彼らの横に立つ男が流暢な日本語で俺に話しかける。
 「君は……日本代表の山下龍也くんだね。この場に足を運んでくれたこと、本当に感謝するよ」

 先ほど映像で話していた男、トール・クロニク会長だ。彼は続ける。
 「いきなりですまないが、もう試合まで時間が無い。単刀直入に問おう。君に宇宙人と戦う覚悟はあるかい?」

 真剣な眼差しで俺を見つめる。
 大丈夫だ、覚悟は決まっている。
 俺は力強く答える。

 「はい!」

 と、その瞬間、宇宙人から再び通信が入る。

『時間だ。グラウンドに来い』
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