グローリー・リーグ -宇宙サッカー奮闘記-

山中カエル

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第三章 謎と試練

60 密談

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 「フィロさん、少しお話よろしいでしょうか」

 夕飯を食べ終えた俺は、部屋に戻る前にフィロさんを呼び止めた。
 人に聞かれたくない話だったので、話をする場は食堂から離れた人気の無い場所を選んだ。

 「なにかしら? 龍也くん。
 未来ちゃんとデートしてたのに、今からお姉さんも誘う気……?」

 ***

 「デートじゃないですからっ!」

 「み、未来ちゃん、どうしたの……?」

 「はっ!? な、なんでもないです……」

 ***

 「お、お姉さん……?」

 「別にそこは突っ込まなくていいから!」

 「いや、俺は17歳ですし、年齢的にギリお姉さんとも言えるのか……?」

 「年齢的にとか言わなくていいから!
 あと"ギリ"って言うの傷つくからやめて!
 ……はいはい、変なことは言わないわ。エリラに行ったことでしょ? カグラから軽く話は聞いてるわ。大丈夫なの?」

 「はい、少し取り乱しましたが、もう大丈夫です」

 「……未来ちゃんかしら? いい子ねあの子」

 「え、ええ、まあ。凄く感謝してます」

 「ふーん。大丈夫そうならよかったわ。カグラは結構心配していたみたいだし。
 それで、何か用かしら?」

 「その節はご迷惑をおかけしましたと伝えていただきたいです……。
 用事は、シンプルにお礼です。
 フィロさんは俺の親や兄弟のことについて知ってたのですよね? そして、このことを俺に伝えられるタイミングは他にもあった。
 しかし、今日まであえて話さず、俺が1番受け止めやすいタイミングで話を聞かせた。エリラについて未来に話し、未来も付いてくるように仕向けたのもフィロさん。
 迷惑はかけてしまいましたが、凄くいい機会になったと思います。ありがとうございました」

 「そんなにかしこまらないで。
 私はあなたたちのサポートを仰せつかっているの。これくらいのことは当然よ。
 でも、未来ちゃんを付けたのは正解だったみたいね。その様子だとかなり助けてもらったみたいだし!
 やっぱり私は人を見る目があるわね」

 「うんうん。男を見る目は無いのにねー」

 「いやいや、私に見る目が無いんじゃなくて、向こうが私を見る目が無いの……って、は!? 急になに!?」

 「えっ!? お、俺じゃないですよ!」

 「へへっ、俺でしたー」

 「!? ペペくん! あなたいつから」

 「いやー、こそこそと怪しかったもんで。
 キャプテンがエリラの中で何をしてたのかも気になってたしね~。
 で、凄く興味深いワードがあったんだけど、キャプテンの親と兄弟がなんとかって」

 ペペ……! こいつ全部聞いてたのか、ここまで聞かれていたら誤魔化せない。いや、そもそも誤魔化すようなことでもないか。素直に話した方が早いな。

 「別に大したことないよ。昔俺の親と兄弟がここに来てたって話だ」

 「ふーん。で、その親か兄弟のどちらかがちょーうサッカー上手いとかー?」

 「サッカー? それは別に関係ない。
 ただその2人が……行方不明だってだけ」

 「…………」

 「…………」

 「そっか。それはちょっとデリカシーに欠けてたな。
 悪かった。見つかるといいなー、2人とも」

 「……ああ!」

 「と、いうことで、俺の用事はしゅーりょー。
 用事はね?」

 「?」

 「えー、まだ出てこないのー?
 もういい加減出てきたら? これは求めてる話じゃないのー?」

 「……気づいているなら気づいていると言えばいいと思いますが。全く、人が悪い」

 「アラン!?」

 は!? アランまで!? 何人いんだよここは??

 「まさか他にも誰か!?」

 「いませんよ。一応周囲は警戒していましたから」

 「そ、そうか。
 で、お前はなんでこんなところにいるんだよ」

 「エリラでの出来事が気になっていたからです。貴方は先程答えてくれなかったので」

 「答えてくれなかったって俺が悪者みたいじゃねえか! お前ストーカーしてたの忘れてないか??」

 「わかっていますわかっています。
 レオくんとペペくんに無理やり連れて行かれたとはいえ、あれは僕が悪かったです。すみませんでした」

 「いや、別に本気で怒ってるわけじゃないからいいけど……。
 てか、いちいちレオとペペがって言うあたり、アランって意外とプライド高い?」

 「そうですか? そんなことは無いと思いますが……。
 そんなことより、あなたの家族についてです。デリケートな話題なのは承知していますが、あえて聞きます。何があったのですか?」

 あまり触れられたくない話題だ。話すことは躊躇われたが、アランが真剣な顔つきだったため、仕方なく全てを話した。

 「なるほど。未知の力を秘めた子……。
 ありがとうございます。色々と参考になりました」

 「お、おう」

 「龍也くん」

 「ん?」

 「お父さんのことは残念だと思います。しかし、まだ兄弟の方は生きている可能性が高いですよね。
 そして、おそらく貴方はゼラからその兄弟を救おうと思っている」

 「ああ! 難しいことはわかってる。それでも俺は絶対に助けてみせる……!」

 「そう言うと思いました。
 それでは、僕もお手伝いします」

 「え?」

 「貴方のご兄弟の救出をですよ。
 困ったときはお互い様です」

 「……!
 ア、ア、アラーン!!!」

 「!?
 な、なんですか。急に」

 「いやー、やっぱアランはいいやつだな。ありがとう。頼りになるぜ」

 「わかりました。わかりましたから離れてください!」

 「ふふっ、青春ね」

 ***

 味方も増え、また一歩目標に近づいた。
 2戦目まではあと1週間。明日からまた練習再開だ。
 遠くの目標も大切だが、直近の目標である次の試合の勝利も大切。
 どんな相手だろうが絶対に負けない。
 決意を新たに、俺は眠りにつくのだった。
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