60 / 109
第三章 謎と試練
60 密談
しおりを挟む
「フィロさん、少しお話よろしいでしょうか」
夕飯を食べ終えた俺は、部屋に戻る前にフィロさんを呼び止めた。
人に聞かれたくない話だったので、話をする場は食堂から離れた人気の無い場所を選んだ。
「なにかしら? 龍也くん。
未来ちゃんとデートしてたのに、今からお姉さんも誘う気……?」
***
「デートじゃないですからっ!」
「み、未来ちゃん、どうしたの……?」
「はっ!? な、なんでもないです……」
***
「お、お姉さん……?」
「別にそこは突っ込まなくていいから!」
「いや、俺は17歳ですし、年齢的にギリお姉さんとも言えるのか……?」
「年齢的にとか言わなくていいから!
あと"ギリ"って言うの傷つくからやめて!
……はいはい、変なことは言わないわ。エリラに行ったことでしょ? カグラから軽く話は聞いてるわ。大丈夫なの?」
「はい、少し取り乱しましたが、もう大丈夫です」
「……未来ちゃんかしら? いい子ねあの子」
「え、ええ、まあ。凄く感謝してます」
「ふーん。大丈夫そうならよかったわ。カグラは結構心配していたみたいだし。
それで、何か用かしら?」
「その節はご迷惑をおかけしましたと伝えていただきたいです……。
用事は、シンプルにお礼です。
フィロさんは俺の親や兄弟のことについて知ってたのですよね? そして、このことを俺に伝えられるタイミングは他にもあった。
しかし、今日まであえて話さず、俺が1番受け止めやすいタイミングで話を聞かせた。エリラについて未来に話し、未来も付いてくるように仕向けたのもフィロさん。
迷惑はかけてしまいましたが、凄くいい機会になったと思います。ありがとうございました」
「そんなにかしこまらないで。
私はあなたたちのサポートを仰せつかっているの。これくらいのことは当然よ。
でも、未来ちゃんを付けたのは正解だったみたいね。その様子だとかなり助けてもらったみたいだし!
やっぱり私は人を見る目があるわね」
「うんうん。男を見る目は無いのにねー」
「いやいや、私に見る目が無いんじゃなくて、向こうが私を見る目が無いの……って、は!? 急になに!?」
「えっ!? お、俺じゃないですよ!」
「へへっ、俺でしたー」
「!? ペペくん! あなたいつから」
「いやー、こそこそと怪しかったもんで。
キャプテンがエリラの中で何をしてたのかも気になってたしね~。
で、凄く興味深いワードがあったんだけど、キャプテンの親と兄弟がなんとかって」
ペペ……! こいつ全部聞いてたのか、ここまで聞かれていたら誤魔化せない。いや、そもそも誤魔化すようなことでもないか。素直に話した方が早いな。
「別に大したことないよ。昔俺の親と兄弟がここに来てたって話だ」
「ふーん。で、その親か兄弟のどちらかがちょーうサッカー上手いとかー?」
「サッカー? それは別に関係ない。
ただその2人が……行方不明だってだけ」
「…………」
「…………」
「そっか。それはちょっとデリカシーに欠けてたな。
悪かった。見つかるといいなー、2人とも」
「……ああ!」
「と、いうことで、俺の用事はしゅーりょー。
俺の用事はね?」
「?」
「えー、まだ出てこないのー?
もういい加減出てきたら? これは君の求めてる話じゃないのー?」
「……気づいているなら気づいていると言えばいいと思いますが。全く、人が悪い」
「アラン!?」
は!? アランまで!? 何人いんだよここは??
「まさか他にも誰か!?」
「いませんよ。一応周囲は警戒していましたから」
「そ、そうか。
で、お前はなんでこんなところにいるんだよ」
「エリラでの出来事が気になっていたからです。貴方は先程答えてくれなかったので」
「答えてくれなかったって俺が悪者みたいじゃねえか! お前ストーカーしてたの忘れてないか??」
「わかっていますわかっています。
レオくんとペペくんに無理やり連れて行かれたとはいえ、あれは僕が悪かったです。すみませんでした」
「いや、別に本気で怒ってるわけじゃないからいいけど……。
てか、いちいちレオとペペがって言うあたり、アランって意外とプライド高い?」
「そうですか? そんなことは無いと思いますが……。
そんなことより、あなたの家族についてです。デリケートな話題なのは承知していますが、あえて聞きます。何があったのですか?」
あまり触れられたくない話題だ。話すことは躊躇われたが、アランが真剣な顔つきだったため、仕方なく全てを話した。
「なるほど。未知の力を秘めた子……。
ありがとうございます。色々と参考になりました」
「お、おう」
「龍也くん」
「ん?」
「お父さんのことは残念だと思います。しかし、まだ兄弟の方は生きている可能性が高いですよね。
そして、おそらく貴方はゼラからその兄弟を救おうと思っている」
「ああ! 難しいことはわかってる。それでも俺は絶対に助けてみせる……!」
「そう言うと思いました。
それでは、僕もお手伝いします」
「え?」
「貴方のご兄弟の救出をですよ。
困ったときはお互い様です」
「……!
ア、ア、アラーン!!!」
「!?
な、なんですか。急に」
「いやー、やっぱアランはいいやつだな。ありがとう。頼りになるぜ」
「わかりました。わかりましたから離れてください!」
「ふふっ、青春ね」
***
味方も増え、また一歩目標に近づいた。
2戦目まではあと1週間。明日からまた練習再開だ。
遠くの目標も大切だが、直近の目標である次の試合の勝利も大切。
どんな相手だろうが絶対に負けない。
決意を新たに、俺は眠りにつくのだった。
夕飯を食べ終えた俺は、部屋に戻る前にフィロさんを呼び止めた。
人に聞かれたくない話だったので、話をする場は食堂から離れた人気の無い場所を選んだ。
「なにかしら? 龍也くん。
未来ちゃんとデートしてたのに、今からお姉さんも誘う気……?」
***
「デートじゃないですからっ!」
「み、未来ちゃん、どうしたの……?」
「はっ!? な、なんでもないです……」
***
「お、お姉さん……?」
「別にそこは突っ込まなくていいから!」
「いや、俺は17歳ですし、年齢的にギリお姉さんとも言えるのか……?」
「年齢的にとか言わなくていいから!
あと"ギリ"って言うの傷つくからやめて!
……はいはい、変なことは言わないわ。エリラに行ったことでしょ? カグラから軽く話は聞いてるわ。大丈夫なの?」
「はい、少し取り乱しましたが、もう大丈夫です」
「……未来ちゃんかしら? いい子ねあの子」
「え、ええ、まあ。凄く感謝してます」
「ふーん。大丈夫そうならよかったわ。カグラは結構心配していたみたいだし。
それで、何か用かしら?」
「その節はご迷惑をおかけしましたと伝えていただきたいです……。
用事は、シンプルにお礼です。
フィロさんは俺の親や兄弟のことについて知ってたのですよね? そして、このことを俺に伝えられるタイミングは他にもあった。
しかし、今日まであえて話さず、俺が1番受け止めやすいタイミングで話を聞かせた。エリラについて未来に話し、未来も付いてくるように仕向けたのもフィロさん。
迷惑はかけてしまいましたが、凄くいい機会になったと思います。ありがとうございました」
「そんなにかしこまらないで。
私はあなたたちのサポートを仰せつかっているの。これくらいのことは当然よ。
でも、未来ちゃんを付けたのは正解だったみたいね。その様子だとかなり助けてもらったみたいだし!
やっぱり私は人を見る目があるわね」
「うんうん。男を見る目は無いのにねー」
「いやいや、私に見る目が無いんじゃなくて、向こうが私を見る目が無いの……って、は!? 急になに!?」
「えっ!? お、俺じゃないですよ!」
「へへっ、俺でしたー」
「!? ペペくん! あなたいつから」
「いやー、こそこそと怪しかったもんで。
キャプテンがエリラの中で何をしてたのかも気になってたしね~。
で、凄く興味深いワードがあったんだけど、キャプテンの親と兄弟がなんとかって」
ペペ……! こいつ全部聞いてたのか、ここまで聞かれていたら誤魔化せない。いや、そもそも誤魔化すようなことでもないか。素直に話した方が早いな。
「別に大したことないよ。昔俺の親と兄弟がここに来てたって話だ」
「ふーん。で、その親か兄弟のどちらかがちょーうサッカー上手いとかー?」
「サッカー? それは別に関係ない。
ただその2人が……行方不明だってだけ」
「…………」
「…………」
「そっか。それはちょっとデリカシーに欠けてたな。
悪かった。見つかるといいなー、2人とも」
「……ああ!」
「と、いうことで、俺の用事はしゅーりょー。
俺の用事はね?」
「?」
「えー、まだ出てこないのー?
もういい加減出てきたら? これは君の求めてる話じゃないのー?」
「……気づいているなら気づいていると言えばいいと思いますが。全く、人が悪い」
「アラン!?」
は!? アランまで!? 何人いんだよここは??
「まさか他にも誰か!?」
「いませんよ。一応周囲は警戒していましたから」
「そ、そうか。
で、お前はなんでこんなところにいるんだよ」
「エリラでの出来事が気になっていたからです。貴方は先程答えてくれなかったので」
「答えてくれなかったって俺が悪者みたいじゃねえか! お前ストーカーしてたの忘れてないか??」
「わかっていますわかっています。
レオくんとペペくんに無理やり連れて行かれたとはいえ、あれは僕が悪かったです。すみませんでした」
「いや、別に本気で怒ってるわけじゃないからいいけど……。
てか、いちいちレオとペペがって言うあたり、アランって意外とプライド高い?」
「そうですか? そんなことは無いと思いますが……。
そんなことより、あなたの家族についてです。デリケートな話題なのは承知していますが、あえて聞きます。何があったのですか?」
あまり触れられたくない話題だ。話すことは躊躇われたが、アランが真剣な顔つきだったため、仕方なく全てを話した。
「なるほど。未知の力を秘めた子……。
ありがとうございます。色々と参考になりました」
「お、おう」
「龍也くん」
「ん?」
「お父さんのことは残念だと思います。しかし、まだ兄弟の方は生きている可能性が高いですよね。
そして、おそらく貴方はゼラからその兄弟を救おうと思っている」
「ああ! 難しいことはわかってる。それでも俺は絶対に助けてみせる……!」
「そう言うと思いました。
それでは、僕もお手伝いします」
「え?」
「貴方のご兄弟の救出をですよ。
困ったときはお互い様です」
「……!
ア、ア、アラーン!!!」
「!?
な、なんですか。急に」
「いやー、やっぱアランはいいやつだな。ありがとう。頼りになるぜ」
「わかりました。わかりましたから離れてください!」
「ふふっ、青春ね」
***
味方も増え、また一歩目標に近づいた。
2戦目まではあと1週間。明日からまた練習再開だ。
遠くの目標も大切だが、直近の目標である次の試合の勝利も大切。
どんな相手だろうが絶対に負けない。
決意を新たに、俺は眠りにつくのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
コンバット
サクラ近衛将監
ファンタジー
藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。
ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。
忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。
担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。
その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。
その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。
かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。
この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。
しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。
この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。
一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。
異世界転生したので、文明レベルを21世紀まで引き上げてみた ~前世の膨大な知識を元手に、貧乏貴族から世界を変える“近代化の父”になります~
夏見ナイ
ファンタジー
過労死したプラントエンジニアの俺が転生したのは、剣と魔法の世界のド貧乏な貴族の三男、リオ。石鹸すらない不衛生な環境、飢える家族と領民……。こんな絶望的な状況、やってられるか! 前世の知識を総動員し、俺は快適な生活とスローライフを目指して領地改革を開始する!
農業革命で食料問題を解決し、衛生革命で疫病を撲滅。石鹸、ガラス、醤油もどきで次々と生活レベルを向上させると、寂れた領地はみるみる豊かになっていった。
逃げてきた伯爵令嬢や森のエルフ、ワケありの元騎士など、頼れる仲間も集まり、順風満帆かと思いきや……その成功が、強欲な隣領や王都の貴族たちの目に留まってしまう。
これは、ただ快適に暮らしたかっただけの男が、やがて“近代化の父”と呼ばれるようになるまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる