グローリー・リーグ -宇宙サッカー奮闘記-

山中カエル

文字の大きさ
64 / 109
第三章 謎と試練

64 対フロージア対策会議

しおりを挟む
 「ヒル先輩も来た! これで全員集まったかな?」

 ホテルの一室に集められた俺たち。
 高級なホテルなのだろう。全員が集まっても余裕があるくらいには部屋は広い。
 気温的には寒いのだろうが、俺たちはオグレス製のジャージを着ているため大丈夫だ。

 「いやぁ、まさかフロージアでこんなことが起こっていたとは……。
 色々大変な状況なんだねぇ」

 「いやいやいやいや」
 「未来……」

 「え……?」

 「残念ながら、あれは全て嘘でしょうね。
 全てというか、何らかの組織に破壊されたの部分は。
 凍ったコートを作るためにフロージア星が仕組んだのでしょう」

 「え!? そうなの!?」

 未来……。
 ごめんみんな、そんな目で見ないでやってくれ。
 未来はサッカーIQは高いけど、普段は結構アホなんだ……。

 「しかし、これは厄介ですね。
 僕たちはここまで来るのにも苦労しました。あの状態の地面で試合をするとは……考えたくもないですね……」

 アランの言う通りだ。
 正直、あんな状態のコートで試合をするなんて話にならない。
 ゼラにも話が通っているということで、そっち方面での対策もできない。

 というか、この状態のコートでの試合は流石にダメだろぉ。ゼラ……これくらいはなんとかしてくれよ……。
 これもホームのアドバンテージってやつなのか……大きすぎるだろ……。

 「ふっふっふっ、みんな困っているようね」

 「「「フィロさん!?」」」

 「やれやれ。このくらいの事態、この私が予測してないと思われているのは屈辱ね」

 「!
 まさか!」

 「ええ! こんなこともあろうかと、滑り止めシューズ全員分作ってありまーすっ!」

 「うおお! フィロちゃん!」
 「流石っス! フィロさん!」

 「うんうん、もっと褒めて褒めて」

 「フィロさん、ありがとうございます。
 かなり助かります」

 「そうでしょそうでしょ。
 それにしても、予測はしていたとはいえ、正直低い確率だと思っていたわ。
 スタジアムはともかく、フォノウはフロージアにとって要となる施設。これを破壊したとなるとフロージアの生活水準はかなり下がってしまう。
 ゼラが今回の件を許可したのも、この覚悟を評価したのかもしれないわね」

 なるほど。確かにフロージアは前回の試合で敗北し、これ以上の負けは許されない状況。
 何がなんでも勝ちたいというわけか。

 「はい、とりあえず全員にシューズ渡しとくわね。
 でも実際かなり危なかったわ。
 もしこの事態を予測していなかったとして、オグレスに戻って滑らない靴を持ってくる時間はあったかもしれない。しかし、あなたたちに合う、あなたたち専用の靴を作ることは間に合わなかった。
 ギリギリまで私たちに報告しなかったことといい、本気ね、フロージアは」

 そんなことを言いながら、俺たちに靴を配っていくフィロさん。
 それにしてもありがたい。このシューズが無ければ俺たちは惨敗していただろう。本当に、感謝しかない。

 「いやー、俺は要らないかなー、そのシューズ」

 すると、遠くから少しだけ揉める声が聞こえてくる。

 「何言ってるのペペくん! これが無かったら滑って試合にならないわよ!?」

 「うーん、でもさ、これ履いて滑らなくなったら普通に勝っちゃうんでしょー? それじゃ俺ちょっとつまんないかなー」

 ペペは前回の試合も途中でベンチに下がっていた。
 張り合いがあればあるほど燃えるタイプなのだろうか。それだけなら良いのだが、逆に張り合いが無ければやる気を無くしてしまうのは悪い点だ。

 「まあ、勝ってるならそれでもいいけど。ピンチだったらこれ履いてしっかり活躍してね。それと、怪我だけはしないように」

 「はーい」

 しかし、ペペはこのチームでも頭一つ抜けてサッカーの上手い大事な選手。その欠点を差し引いても彼の重要性は変わらない。

 「ということで今から少しだけ練習するわよ。
 ほぼ滑らないとは思うけど、一応どんな感じか靴履いた感覚を掴むことと、氷の上でのボールの動きを把握することを中心にね」

 「あ、確かに地面が凍っていると俺たちだけじゃなくてボールも影響受けるのか。
 今からの練習で間に合うか……?」

 「大丈夫よ龍也くん。
 意外と簡単だから、君たちレベルなら半日もあれば慣れられると思うわ。
 そうよね、クレートくん、ラーラさん」

 「えっと、ま、まあ、多分、大丈夫……?」
 「大丈夫だろう。少しボールのスピードが上がるだけだ、感覚さえ掴めれば問題ない」

 雪国出身の2人が言うならそうなのだろう。
 その言葉を信じ、外へ出て練習を始める。
 練習用のスペースは一応確保してくれてあるらしい。練習用のスペースと言ってもただの空き地だが、無いよりは100倍増しだ。

 まずは靴の感覚……おお……これは凄い。
 本当に滑らない。コケまくっていたさっきまでとは大違いだ。これなら凍った地面を気にせずにサッカーができる……!

 そしてボールの感覚。
 ……なるほど。確かによく滑る分スピードは速くなる……が、それだけだ。
 変な動きをするわけでもない。
 これなら半日練習すれば充分慣れることができそうだ。
 シュートやキーパー、浮かしたパスなんかにはそもそも影響が無いしな。

 よし! 明日の試合に向けて、全力で特訓だ……!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

悪役令嬢の騎士

コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。 異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。 少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。 そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。 少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。

異世界からの召喚者《完結》

アーエル
恋愛
中央神殿の敷地にある聖なる森に一筋の光が差し込んだ。 それは【異世界の扉】と呼ばれるもので、この世界の神に選ばれた使者が降臨されるという。 今回、招かれたのは若い女性だった。 ☆他社でも公開

【完結】シュゼットのはなし

ここ
恋愛
子猫(獣人)のシュゼットは王子を守るため、かわりに竜の呪いを受けた。 顔に大きな傷ができてしまう。 当然責任をとって妃のひとりになるはずだったのだが‥。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!

ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。 ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!? 「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」 理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。 これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!

コンバット

サクラ近衛将監
ファンタジー
 藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。  ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。  忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。  担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。  その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。  その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。  かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。  この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。  しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。  この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。  一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

処理中です...