11 / 41
第11話
しおりを挟む
「いやいや、だからあたしも門外漢でして。しかし総額百億クレジット超の荒稼ぎとは恐れ入りますよ。今の世の中、正直者が損をする時代ですからねえ。真っ当な納税者としちゃ、腹が立つ限りでして――」
憤慨するオヤジの文句をひとしきり聞いてやってから、シドはおもむろに切り出した。
「じゃあその『真っ当な納税者』さんに脱税の事実も思い出して貰おうか。例のブツ、入ってるんだろ。隠さず全部出してみろ」
途端にオヤジはイヤな顔をしたが、割と素直に傍の小さなチェストを開ける。二十シートばかりの錠剤の束を掴み出してショーケースに載せた。そのシートには厚生局の印がなく、つまりは違法ドラッグである。
表のポストに稀少な漢方薬を入れ、代わりに誰とも知れない相手が交換に入れていく違法ドラッグを売り捌いて、このオヤジは小金を稼いでいるのだ。
「旦那相手に誤魔化しが利かないのは承知、これで全部です」
「何だ、やけに多いじゃねぇか」
「チョウセンニンジン三本分ですから」
「じゃあそれ全部……は勘弁してやる。半分貰っとこうか」
言い放ったシドにオヤジは涙を浮かべてショーケース越しに縋った。
「ええっ、半分もですか? ネタ取っておいて酷いじゃないですか、旦那あ!」
「今から知り合いの麻取と繋ぎを取るんだが、ついでに通報してやってもいいんだぜ?」
「分かった、分かりました。ったく、旦那には敵いませんよ」
泣き落としが効かないと悟ったオヤジは、半分でも手元に残ったのを幸いと思ったか、仏頂面で十シートを小さな紙袋に詰め込む。それと引き替えにシドはリモータを突き出した。
「お代はいいって言ってるのに、律儀に払うんだから旦那にはぐうの音も出やしません」
「しっかり文句垂れてるじゃねぇか」
他の客に比べれば微額であり情報料という訳でもないが、シドは必ずクレジットを支払うのである。勿論こんなやり方は違法捜査であり、バレたらタダでは済まない。
おまけに違法ドラッグを見逃しているのだ。シドがこんなことに手を染めているとは思いも寄らず、ハイファは初めて知ったとき、目と耳を疑ったものだった。問い詰めもした。
だが今はもう何も言わない。シドは何年も掛けてこの大都市での捜査手法を確立してきたのであり、その正誤について誰よりも自分自身の胸に問い続けていると知ったからだ。そこでハイファが口を挟むべきことは残されてはいなかった。
綺麗すぎる川に魚は棲まないという言葉をハイファはいつも思い出す。
「危ない奴には絶対に売るんじゃねぇぞ」
「分かってます、ちゃんとIDと誓約書も取ってますから」
「ふん、カネ抱いて地獄に堕ちろ。じゃあな、また来る」
「寒いですから、お気を付けて」
またチャリンとベルの音をさせて二人は外に出た。目の覚めるような寒さで、ハイファは先程までのやけに黄色い明かりに満ちた店内が、まるで酔夢だったような気がして目を瞬かせる。気付くとシドは盛り場方向へと歩き出していて、ハイファは慌てて肩を並べた。
「すごいよね、フェイダル星系にPSCなんて情報が得られちゃった」
「だよな、訊いてみるもんだぜ。ふあーあ、三時だ。今日はこの辺で上がりだな」
飛び出してくるホロ看板を突き破り、僅かに薄くなった人混みを泳ぎ渡るように歩いて、二人は店舗の間の小径を通り抜け、人の気配が全く感じられない表通りに出る。そのままコイルもたまにしか通らない大通りを渡ると、最終目的地の公園内に足を踏み入れた。
入り口近くのオートドリンカにシドがリモータを翳す。クレジットを移して省電力モードから息を吹き返させ、ハイファがボタンを押してホットコーヒーを手に入れた。
足を載せるとボウッと発光するファイバブロックを踏み、公園の奥へと進んで外灯にパステルカラーの遊具や噴水が照らされている場所まで辿り着くと、二人はベンチに腰掛ける。
「まずはカミーユにタレ込んでやるか」
「麻取のカミーユ=サトクリフさんだね」
知己であるカミーユに得た情報をリモータ発振すると、シドは煙草を出して一本咥え、オイルライターで火を点けた。ついでのようにポケットから薬屋で買った違法ドラッグを出すと、破いた紙袋を軽く丸めてこれにも火を点ける。炎で薬物のシートを炙り始めた。
かじかんだ手を保温ボトルで温めながらコーヒーを飲みつつハイファが歌うように呟く。
「こんな所で燃やして、消防に通報されても知らないからね」
咥え煙草で器用に応えてシド、
「持ち帰ると怒りだす奴がいるから、仕方ねぇだろ」
「だって怪我の痛みを紛らわすためって、味見しちゃう悪徳警官がいるんだもん」
「二度とやるもんか、あのバッドトリップで懲りたぜ」
「そう願いたいよ。貴方が痛いのも苦しいのも僕は堪らないから」
やがて炎が消えてシートが冷え固まると、シドは掌ですくい上げて傍のダストボックスに捨てる。ダストボックスの下部にはパイプが縦横無尽に通っていて、圧搾空気で処理場まで送られるシステムだ。全てを放り込んでしまうとベンチを立つ。
噴水で真っ黒になった手を洗った。気温が低すぎるせいだろう、水は意外に冷たく感じなかった。ベンチに戻るとハイファがハンカチを手渡してくれる。拭ってコーヒーと交換し、残りの温かい液体を一気飲みして空ボトルもダストボックスに投げ入れた。
「よし、帰ろうぜ」
◇◇◇◇
翌朝は三時間も眠らずに起き出すことになったが、それくらいでへばるほどヤワではない。シドもハイファも普段と何ら変わりなく、タマにカリカリをやってコーヒーを沸かし、朝食の支度を整えた。パンケーキにハムエッグ、野菜サラダにポタージュを食べてしまうと、午後からの入隊に備えて準備を始める。
まずはタマをキャリーバッグに入れて担ぐと隣家を訪ねた。ドア脇のパネル、音声素子が埋まった辺りに声を掛けると、十秒もせずにマルチェロ医師が顔を出す。
「先生、悪いんだけどまたタマを預かって貰えるかな?」
「構いませんがね。何だ、お前さんたちはまた厄介事かい。好きだなあ、おい」
「好きで背負ってる訳じゃねぇの、知ってるだろ」
「今話題の誘拐事件だよ。取り敢えずはセントラル基地のHRTに入隊するから」
「ほう。なら基地で顔を合わせるかも知れませんねえ」
こぶしとメスの応酬でシドとじゃれ合いながらマルチェロ医師はニヤリと笑う。
「まあいい。たまには変わった出汁でメシもいいからな、置いて行け」
「ちょっと先生、猫ラーメンは禁止だからね。カールに監視役を頼んでいくから」
「カールの野郎と鍋を囲むのもいいかも知れんな。その材料をさっさと寄越せ」
天井を仰ぐシドとハイファからキャリーバッグを奪い取ると医師は手を振った。
「冗談だ。まあ、気を付けて任務に励めよ」
「はーい。じゃあお願いします」
隣家には既に猫グッズ完備で身柄を預けるだけである。キャリーバッグに手を入れて毛皮を交互に撫でてやると、向かいの部屋のカールにも頼んでからシドの部屋に戻った。
「さてと、まずは出勤するか」
「どうせ『出張』か『研修』だと思うけどね」
ソフトキスを交わしてシドの部屋を出ると出てロックする。一旦七分署機捜課に出勤だが、ストライクしているヒマがないので、今日もスカイチューブでオート通勤だ。
難なく機捜のデカ部屋に着くとデジタルボードの二人の欄には既に『出張』と入力されていた。イヴェントストライカなる部下の不在中に命の洗濯をするヴィンティス課長が嬉々として入力したのだと思われ、シドの機嫌が少々斜めになる。
「やっぱり課長の野郎は昨日の夜、ユアン=ガードナーの妖怪野郎と飲みやがったな!」
案の定二人を見ると課長はいつも哀しみを湛えているブルーアイにチカラを漲らせ、
「タイタン二分署での射撃教官として期間配置、誠意努めてきてくれたまえ」
などと大声で見え透いた猿芝居を打った。周囲は半笑いで聞き流している。シドとハイファだけにまたも降って湧いた特別勤務だ、何か秘密があると悟りながらも黙っていてくれるのである。だが独りヤマサキだけは目を輝かせて左隣の席からシドたちを見た。
「射撃教官っスか、やっぱり射撃大会でのすごさが伝わったんスかね?」
「うるせぇな、ヤマサキ。騒ぐんじゃねぇよ」
と、封殺したつもりだったがヤマサキは先日の射撃大会での興奮が今頃になって押し寄せてきたらしく、喋りに喋り倒す。相手をするのも疲れてシドは課長に叫んだ。
「ヴィンティス課長、武器庫の解錠願います!」
喋るヤマサキを置いてシドとハイファは武器庫に向かい、入って分厚いドアを閉める。
二人は雑毛布を敷いたデスクの上でそれぞれの愛銃を分解した。完全にバラバラにするのではなく、フィールドストリッピングという簡易分解である。シドはレールガン内部の電磁石や絶縁体の摩耗度合いをマイクロメータで計り、納得すると針のようなフレシェット弾をフルロードして組み直し、ホルスタに収めた。予備弾三百発入りの小箱もひとつ手にする。
一方ハイファはニトロソルベントを染み込ませた布で銃口通しをし、パーツにガンオイルを吹きつけて硝煙やスラッグという金属屑をぬぐい取った。これも組み上げるとショルダーホルスタに収める。九ミリパラはここにはないが、今は十八発フルロードしてあった。
武器庫を出ると早く行けと云わんばかりの課長の目前でシドは煙草を五本吸い、泥水を二杯飲むという嫌がらせをする。更には皆と雑談をして一時間ほども時間を潰した。
やがてハイファが「僕は行くからね」宣言をして席を立つ。
課長の多機能デスクの前で二人は形ばかりの挨拶をして、
「機捜課代表、頑張ってきてくれたまえ。早く帰るには及ばない」
などと小躍りしそうな課長と、半笑いの同僚たちに見送られてデカ部屋を出た。
憤慨するオヤジの文句をひとしきり聞いてやってから、シドはおもむろに切り出した。
「じゃあその『真っ当な納税者』さんに脱税の事実も思い出して貰おうか。例のブツ、入ってるんだろ。隠さず全部出してみろ」
途端にオヤジはイヤな顔をしたが、割と素直に傍の小さなチェストを開ける。二十シートばかりの錠剤の束を掴み出してショーケースに載せた。そのシートには厚生局の印がなく、つまりは違法ドラッグである。
表のポストに稀少な漢方薬を入れ、代わりに誰とも知れない相手が交換に入れていく違法ドラッグを売り捌いて、このオヤジは小金を稼いでいるのだ。
「旦那相手に誤魔化しが利かないのは承知、これで全部です」
「何だ、やけに多いじゃねぇか」
「チョウセンニンジン三本分ですから」
「じゃあそれ全部……は勘弁してやる。半分貰っとこうか」
言い放ったシドにオヤジは涙を浮かべてショーケース越しに縋った。
「ええっ、半分もですか? ネタ取っておいて酷いじゃないですか、旦那あ!」
「今から知り合いの麻取と繋ぎを取るんだが、ついでに通報してやってもいいんだぜ?」
「分かった、分かりました。ったく、旦那には敵いませんよ」
泣き落としが効かないと悟ったオヤジは、半分でも手元に残ったのを幸いと思ったか、仏頂面で十シートを小さな紙袋に詰め込む。それと引き替えにシドはリモータを突き出した。
「お代はいいって言ってるのに、律儀に払うんだから旦那にはぐうの音も出やしません」
「しっかり文句垂れてるじゃねぇか」
他の客に比べれば微額であり情報料という訳でもないが、シドは必ずクレジットを支払うのである。勿論こんなやり方は違法捜査であり、バレたらタダでは済まない。
おまけに違法ドラッグを見逃しているのだ。シドがこんなことに手を染めているとは思いも寄らず、ハイファは初めて知ったとき、目と耳を疑ったものだった。問い詰めもした。
だが今はもう何も言わない。シドは何年も掛けてこの大都市での捜査手法を確立してきたのであり、その正誤について誰よりも自分自身の胸に問い続けていると知ったからだ。そこでハイファが口を挟むべきことは残されてはいなかった。
綺麗すぎる川に魚は棲まないという言葉をハイファはいつも思い出す。
「危ない奴には絶対に売るんじゃねぇぞ」
「分かってます、ちゃんとIDと誓約書も取ってますから」
「ふん、カネ抱いて地獄に堕ちろ。じゃあな、また来る」
「寒いですから、お気を付けて」
またチャリンとベルの音をさせて二人は外に出た。目の覚めるような寒さで、ハイファは先程までのやけに黄色い明かりに満ちた店内が、まるで酔夢だったような気がして目を瞬かせる。気付くとシドは盛り場方向へと歩き出していて、ハイファは慌てて肩を並べた。
「すごいよね、フェイダル星系にPSCなんて情報が得られちゃった」
「だよな、訊いてみるもんだぜ。ふあーあ、三時だ。今日はこの辺で上がりだな」
飛び出してくるホロ看板を突き破り、僅かに薄くなった人混みを泳ぎ渡るように歩いて、二人は店舗の間の小径を通り抜け、人の気配が全く感じられない表通りに出る。そのままコイルもたまにしか通らない大通りを渡ると、最終目的地の公園内に足を踏み入れた。
入り口近くのオートドリンカにシドがリモータを翳す。クレジットを移して省電力モードから息を吹き返させ、ハイファがボタンを押してホットコーヒーを手に入れた。
足を載せるとボウッと発光するファイバブロックを踏み、公園の奥へと進んで外灯にパステルカラーの遊具や噴水が照らされている場所まで辿り着くと、二人はベンチに腰掛ける。
「まずはカミーユにタレ込んでやるか」
「麻取のカミーユ=サトクリフさんだね」
知己であるカミーユに得た情報をリモータ発振すると、シドは煙草を出して一本咥え、オイルライターで火を点けた。ついでのようにポケットから薬屋で買った違法ドラッグを出すと、破いた紙袋を軽く丸めてこれにも火を点ける。炎で薬物のシートを炙り始めた。
かじかんだ手を保温ボトルで温めながらコーヒーを飲みつつハイファが歌うように呟く。
「こんな所で燃やして、消防に通報されても知らないからね」
咥え煙草で器用に応えてシド、
「持ち帰ると怒りだす奴がいるから、仕方ねぇだろ」
「だって怪我の痛みを紛らわすためって、味見しちゃう悪徳警官がいるんだもん」
「二度とやるもんか、あのバッドトリップで懲りたぜ」
「そう願いたいよ。貴方が痛いのも苦しいのも僕は堪らないから」
やがて炎が消えてシートが冷え固まると、シドは掌ですくい上げて傍のダストボックスに捨てる。ダストボックスの下部にはパイプが縦横無尽に通っていて、圧搾空気で処理場まで送られるシステムだ。全てを放り込んでしまうとベンチを立つ。
噴水で真っ黒になった手を洗った。気温が低すぎるせいだろう、水は意外に冷たく感じなかった。ベンチに戻るとハイファがハンカチを手渡してくれる。拭ってコーヒーと交換し、残りの温かい液体を一気飲みして空ボトルもダストボックスに投げ入れた。
「よし、帰ろうぜ」
◇◇◇◇
翌朝は三時間も眠らずに起き出すことになったが、それくらいでへばるほどヤワではない。シドもハイファも普段と何ら変わりなく、タマにカリカリをやってコーヒーを沸かし、朝食の支度を整えた。パンケーキにハムエッグ、野菜サラダにポタージュを食べてしまうと、午後からの入隊に備えて準備を始める。
まずはタマをキャリーバッグに入れて担ぐと隣家を訪ねた。ドア脇のパネル、音声素子が埋まった辺りに声を掛けると、十秒もせずにマルチェロ医師が顔を出す。
「先生、悪いんだけどまたタマを預かって貰えるかな?」
「構いませんがね。何だ、お前さんたちはまた厄介事かい。好きだなあ、おい」
「好きで背負ってる訳じゃねぇの、知ってるだろ」
「今話題の誘拐事件だよ。取り敢えずはセントラル基地のHRTに入隊するから」
「ほう。なら基地で顔を合わせるかも知れませんねえ」
こぶしとメスの応酬でシドとじゃれ合いながらマルチェロ医師はニヤリと笑う。
「まあいい。たまには変わった出汁でメシもいいからな、置いて行け」
「ちょっと先生、猫ラーメンは禁止だからね。カールに監視役を頼んでいくから」
「カールの野郎と鍋を囲むのもいいかも知れんな。その材料をさっさと寄越せ」
天井を仰ぐシドとハイファからキャリーバッグを奪い取ると医師は手を振った。
「冗談だ。まあ、気を付けて任務に励めよ」
「はーい。じゃあお願いします」
隣家には既に猫グッズ完備で身柄を預けるだけである。キャリーバッグに手を入れて毛皮を交互に撫でてやると、向かいの部屋のカールにも頼んでからシドの部屋に戻った。
「さてと、まずは出勤するか」
「どうせ『出張』か『研修』だと思うけどね」
ソフトキスを交わしてシドの部屋を出ると出てロックする。一旦七分署機捜課に出勤だが、ストライクしているヒマがないので、今日もスカイチューブでオート通勤だ。
難なく機捜のデカ部屋に着くとデジタルボードの二人の欄には既に『出張』と入力されていた。イヴェントストライカなる部下の不在中に命の洗濯をするヴィンティス課長が嬉々として入力したのだと思われ、シドの機嫌が少々斜めになる。
「やっぱり課長の野郎は昨日の夜、ユアン=ガードナーの妖怪野郎と飲みやがったな!」
案の定二人を見ると課長はいつも哀しみを湛えているブルーアイにチカラを漲らせ、
「タイタン二分署での射撃教官として期間配置、誠意努めてきてくれたまえ」
などと大声で見え透いた猿芝居を打った。周囲は半笑いで聞き流している。シドとハイファだけにまたも降って湧いた特別勤務だ、何か秘密があると悟りながらも黙っていてくれるのである。だが独りヤマサキだけは目を輝かせて左隣の席からシドたちを見た。
「射撃教官っスか、やっぱり射撃大会でのすごさが伝わったんスかね?」
「うるせぇな、ヤマサキ。騒ぐんじゃねぇよ」
と、封殺したつもりだったがヤマサキは先日の射撃大会での興奮が今頃になって押し寄せてきたらしく、喋りに喋り倒す。相手をするのも疲れてシドは課長に叫んだ。
「ヴィンティス課長、武器庫の解錠願います!」
喋るヤマサキを置いてシドとハイファは武器庫に向かい、入って分厚いドアを閉める。
二人は雑毛布を敷いたデスクの上でそれぞれの愛銃を分解した。完全にバラバラにするのではなく、フィールドストリッピングという簡易分解である。シドはレールガン内部の電磁石や絶縁体の摩耗度合いをマイクロメータで計り、納得すると針のようなフレシェット弾をフルロードして組み直し、ホルスタに収めた。予備弾三百発入りの小箱もひとつ手にする。
一方ハイファはニトロソルベントを染み込ませた布で銃口通しをし、パーツにガンオイルを吹きつけて硝煙やスラッグという金属屑をぬぐい取った。これも組み上げるとショルダーホルスタに収める。九ミリパラはここにはないが、今は十八発フルロードしてあった。
武器庫を出ると早く行けと云わんばかりの課長の目前でシドは煙草を五本吸い、泥水を二杯飲むという嫌がらせをする。更には皆と雑談をして一時間ほども時間を潰した。
やがてハイファが「僕は行くからね」宣言をして席を立つ。
課長の多機能デスクの前で二人は形ばかりの挨拶をして、
「機捜課代表、頑張ってきてくれたまえ。早く帰るには及ばない」
などと小躍りしそうな課長と、半笑いの同僚たちに見送られてデカ部屋を出た。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
徒野先輩の怪異語り
佐倉みづき
キャラ文芸
「助けて、知らない駅にいる――」
きさらぎ駅に迷い込み行方不明となった幼馴染みを探す未那は、我が物顔で民俗学予備研究室に陣取る院生・徒野荒野を訪ねる。
あらゆる怪談や怪奇現象を蒐集、研究する彼の助手にされた未那は徒野と共に様々な怪異に行き当たることに……
「いつの世も、怪異を作り出すのは人間なんだ」
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
【完結】結界守護者の憂鬱なあやかし幻境譚 ~平凡な男子高校生、今日から結界を繕います~
御崎菟翔
キャラ文芸
【平凡な高校生 × 妖従者たちが紡ぐ、絆と成長の主従現代和風ファンタジー!】
★第9回キャラ文芸大賞エントリー中!
「選ぶのはお前だ」
――そう言われても、もう引き返せない。
ごく普通の高校生・奏太(そうた)は、夏休みのある日、本家から奇妙な呼び出しを受ける。
そこで待っていたのは、人の言葉を話す蝶・汐(うしお)と、大鷲・亘(わたり)。
彼らに告げられたのは、人界と異界を隔てる結界を修復する「守り手」という、一族に伝わる秘密の役目だった。
「嫌なら断ってもいい」と言われたものの、放置すれば友人が、家族が、町が危険に晒される。
なし崩し的に役目を引き受けた奏太は、夜な夜な大鷲の背に乗り、廃校や心霊スポットへ「出勤」することに!
小生意気な妖たちに絡まれ、毒を吐く蛙と戦い、ついには異世界「妖界」での政変にまで巻き込まれていく奏太。
その過程で彼は、一族が隠し続けてきた「残酷な真実」と、従姉・結(ゆい)の悲しい運命を知ることになる――
これは、後に「秩序の神」と呼ばれる青年が、まだ「ただの人間」だった頃の、始まりの物語。
★新作『蜻蛉商会のヒトガミ様』
この物語から300年後……神様になった奏太の物語も公開中!
https://www.alphapolis.co.jp/novel/174241108/158016858
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる