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第35話
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「衛兵っつってもテラ連邦軍なんだよな?」
「王であっても私兵は持てないからね、テラ連邦軍から選抜された兵士が衛兵を務めてる筈だよ。でも城にも明かりが灯ってるし、王室の誰かが離宮にきてるのかも」
「王にも係累はいるんだろ?」
「そりゃあ、いるんじゃないのかな。人の子なんだし」
離宮から雪の降り積んだ針葉樹林を挟んですぐに、ヨアヒム=ユンカースの屋敷が見えてくる。これも巨大な建物だった。白っぽい石の外壁が六、七十メートルも続いているだろうか。さすがに衛兵は歩いていないが、これも青銅の柵の切れ目には門衛小屋だ。
果たしていきなり訪ねて入れて貰えるだろうかと懸念したが、門衛小屋の前で駐まったタクシーからハイファがにこやかに声を掛けると、門衛の男二人は四人のリモータからIDを採取したのち、主と掛け合ってくれる。五分ほど待たされてから正門が開けられた。
「どうぞ中にお進み下さい」
タクシーは流されたプログラム通りに融雪ファイバの小径をゆっくり走り、屋敷の車寄せに滑り込む。四人が降りるとオートで庭のコイル駐車場に走り込んで停止した。
車寄せに立った四人は巨大な天然木材の観音扉を見上げる。その片側が音もなく開いた。開けてくれたのはタキシードを着込んだ老年の男、執事といった風である。
「寒い中をようこそお越し下さいました。どうぞお入り下さい」
中は暖かく、十名ほども並んだメイドを眺めながら、シドは躰の力が抜けてホッとした。辺りを見回すと、広い玄関ホールは三階まで吹き抜けで、天井からは落ちてきたら一大事になりそうなシャンデリアが下がっている。正面にはブラウンのカーペットを敷かれた大階段とオートスロープがあった。脇にはエレベーターもある。
虹色の光を浴びながら四人は防寒着を執事殿に脱がされた。真っ白なヘッドドレスを着けたメイド二名の先導で移動する。上階には上がらず一階の廊下を辿った。
案内されたのは小ぶりのサロンだった。
小ぶりといっても屋敷の規模に比してであって、広さはデカ部屋ほどもある。赤茶色の調度でまとめられた室内では本物の暖炉が赤々と燃え、壁にはAD世紀の遺産である名画の複製が掛かっていた。グランドピアノまで置かれた部屋は掃き出し窓から外の温室に繋がっていて、見事な白薔薇が観賞できる。
趣味のいい室内を見回したのち、応接セットの三人掛けソファにシドとハイファにスティーブが座り、独り掛けにイリヤが腰を下ろした。すぐにメイドがワゴンで茶器を運んでくる。
香り高い紅茶を頂きながら、四人は妙な歓待に居心地の悪さを隠せない。
「どういうつもりなのか、まるで分からんな」
「余裕ぶっこいてみせて、交渉を有利に運ぼうって腹じゃねぇのか?」
「用件を承知してるってことだね? このまま四人揃って拉致られないよう気を付けなきゃ」
「ハイファスは俺が護るからな」
紅茶が半分に減って室温に近くなった頃、ドアが開いてテラ標準歴で七、八十歳といった男が現れた。現在のテラ人の平均寿命は百三十歳前後なので、それほど歳を召しているようには見えない。焦げ茶色の仕立てのいいスーツを身に着け、臙脂のタイを締めている。
「お待たせしたね、申し訳ない。わたしがヨアヒム=ユンカースだ」
茶色い目をしたヨアヒムは三人掛けソファに独りで腰掛け、メイドから受け取った紅茶を啜った。その所作は何処にも後ろ暗さを感じさせるものはない。
だがどうやって斬り込むか悩ませておいて、ヨアヒムは自ら切り出した。
「FC会長チェンバーズ=ファサルートの件に関しては、わたしも憂慮している。全ては王の戯れ言を真に受けたレナード=ブラント以下、手下たちの仕事だ。しかし始めてしまったものは仕方がない。しかるべき段階を踏んでFC会長の身柄は解放する予定だ」
早口で言ったヨアヒムに対し、ハイファが静かに訊く。
「それでは何もかも認めるんですね?」
「きみの言う何もかもとは、いったいどんなことかな?」
「マフィアからの借入金を返済するため、王がエレボス騎士団を組織して誘拐ビジネスを始めた。本星での連続誘拐やFC会長の誘拐も、王が司令塔となっているということです」
「ふむ……証拠は?」
「さっきあんた自身が言ったじゃねぇか、今更何を抜かしてやがる」
噛みついたシドを茶色い目が見返して笑った。
「はて、わたしが何か言ったかな? 何れにせよ聞き捨てならない嫌疑を掛けられたようだ」
「とにかくFC会長を即、解放して頂きたい」
「いやはや、王を大犯罪者扱いとは、不敬にもほどがある」
「我々は中央情報局第二部別室の命を受けている。テラ連邦軍基地を動かし、この屋敷を囲ませることも可能だ。それでもしらを切り通すつもりか?」
「とんでもない輩を屋敷に入れてしまったようだ。さて困った――」
ことごとく流されてイリヤが眉をひそめる。だからといって星系政府の重鎮でもあるヨアヒム=ユンカースをこの場で締め上げることはできない。何ひとつ証拠がないのだ。
そこで様々な犯罪者を相手にしてきたシドが平然と口を開いた。
「なあ、ジイさんよ。ふたつだけ教えてくれ。客の健康状態と居場所だ」
「丁重にもてなしさせて貰っている。だが居場所に関しては、さて?」
「ふん。なら王と直接話ができるっつー、レナード=ブラントを叩かせて貰うぜ?」
「脅しているつもりかね?」
「脅しになってるなら嬉しいんだがな。けどこの小さな街でレナード=ブラント一人を炙り出して締め上げるくらい、訳はねぇぞ。遠慮なくやらせて貰う、覚悟してやがれ」
「まあ、頑張ってレナードが素面のときを狙うんだね。最近の奴はドラッグ漬けだ」
嘆くように頭を振ると、ヨアヒムはメイドにもう一杯ずつ紅茶を淹れさせる。ブレンドティーを前にシドは遠慮なく煙草を咥えた。そんなシドを見てヨアヒムはゆるゆると語る。
「実際、破綻寸前のこの星系はどうなってゆくのか……この歳で引退もできん」
「難儀なことだな、暴走する王の尻拭いか? それとも焚きつけたのはテメェらの方か?」
「焚きつけたつもりはない。だが当時の王の側近は非常に質が悪かった。それは今でも……我々が気付いたときには既に輪が回り始めていた。事を進めるしか手立てはなかったのだよ」
「だからって誘拐はねぇだろ。そんな自転車操業でいつまで星系が保つと思ってるんだ。大体マフィアにカネを借りる時点で、どうしてテラ連邦議会に助けを求めなかったんだ?」
「植民星系に後戻りし隷属への道を選べと言うのかね? 主権は渡せないのだよ、絶対に」
論外だという風にヨアヒムはまた頭を振った。けれど星系を憂いてマフィアの手を借りた挙げ句に誘拐だ。雇った末端は人質を殺してもいる。目茶苦茶すぎて同情の余地もない。
鼻を鳴らしてシドはクリスタルの灰皿で煙草を消した。紅茶を一気飲みする。
「邪魔したな、ジイさん」
「寒いから気を付けて帰りたまえ。また茶でも飲みにくるがいい」
笑って見送られサロンから出ると、メイドが待ち受けていて玄関ホールまで先導に立った。玄関ホールで四人は防寒着を身に着ける。
執事殿に扉を開けられて恭しく礼をされ、外に出るとタクシーは車寄せに待機していた。乗り込んで正門を出るとシドが店二軒きりの歓楽街を座標指定する。十二分で到着予定だ。
「レナード=ブラントを叩きに行くんだよね?」
「ああ。あのジイさん、合法ドラッグ店にいることも吐きやがった」
「本当に合法かどうかは疑問だと思うけれどな」
口を挟んだスティーブにシドも頷く。相手はマフィア直営のドラッグ屋だ。用があるのはレナード=ブラントのみ、だがサンズのときと同じく武闘派バシリーの手下が取り巻いている可能性を考えて軍人三人は懐の銃を抜き、初弾が薬室に装填されているのを確認した。
「王であっても私兵は持てないからね、テラ連邦軍から選抜された兵士が衛兵を務めてる筈だよ。でも城にも明かりが灯ってるし、王室の誰かが離宮にきてるのかも」
「王にも係累はいるんだろ?」
「そりゃあ、いるんじゃないのかな。人の子なんだし」
離宮から雪の降り積んだ針葉樹林を挟んですぐに、ヨアヒム=ユンカースの屋敷が見えてくる。これも巨大な建物だった。白っぽい石の外壁が六、七十メートルも続いているだろうか。さすがに衛兵は歩いていないが、これも青銅の柵の切れ目には門衛小屋だ。
果たしていきなり訪ねて入れて貰えるだろうかと懸念したが、門衛小屋の前で駐まったタクシーからハイファがにこやかに声を掛けると、門衛の男二人は四人のリモータからIDを採取したのち、主と掛け合ってくれる。五分ほど待たされてから正門が開けられた。
「どうぞ中にお進み下さい」
タクシーは流されたプログラム通りに融雪ファイバの小径をゆっくり走り、屋敷の車寄せに滑り込む。四人が降りるとオートで庭のコイル駐車場に走り込んで停止した。
車寄せに立った四人は巨大な天然木材の観音扉を見上げる。その片側が音もなく開いた。開けてくれたのはタキシードを着込んだ老年の男、執事といった風である。
「寒い中をようこそお越し下さいました。どうぞお入り下さい」
中は暖かく、十名ほども並んだメイドを眺めながら、シドは躰の力が抜けてホッとした。辺りを見回すと、広い玄関ホールは三階まで吹き抜けで、天井からは落ちてきたら一大事になりそうなシャンデリアが下がっている。正面にはブラウンのカーペットを敷かれた大階段とオートスロープがあった。脇にはエレベーターもある。
虹色の光を浴びながら四人は防寒着を執事殿に脱がされた。真っ白なヘッドドレスを着けたメイド二名の先導で移動する。上階には上がらず一階の廊下を辿った。
案内されたのは小ぶりのサロンだった。
小ぶりといっても屋敷の規模に比してであって、広さはデカ部屋ほどもある。赤茶色の調度でまとめられた室内では本物の暖炉が赤々と燃え、壁にはAD世紀の遺産である名画の複製が掛かっていた。グランドピアノまで置かれた部屋は掃き出し窓から外の温室に繋がっていて、見事な白薔薇が観賞できる。
趣味のいい室内を見回したのち、応接セットの三人掛けソファにシドとハイファにスティーブが座り、独り掛けにイリヤが腰を下ろした。すぐにメイドがワゴンで茶器を運んでくる。
香り高い紅茶を頂きながら、四人は妙な歓待に居心地の悪さを隠せない。
「どういうつもりなのか、まるで分からんな」
「余裕ぶっこいてみせて、交渉を有利に運ぼうって腹じゃねぇのか?」
「用件を承知してるってことだね? このまま四人揃って拉致られないよう気を付けなきゃ」
「ハイファスは俺が護るからな」
紅茶が半分に減って室温に近くなった頃、ドアが開いてテラ標準歴で七、八十歳といった男が現れた。現在のテラ人の平均寿命は百三十歳前後なので、それほど歳を召しているようには見えない。焦げ茶色の仕立てのいいスーツを身に着け、臙脂のタイを締めている。
「お待たせしたね、申し訳ない。わたしがヨアヒム=ユンカースだ」
茶色い目をしたヨアヒムは三人掛けソファに独りで腰掛け、メイドから受け取った紅茶を啜った。その所作は何処にも後ろ暗さを感じさせるものはない。
だがどうやって斬り込むか悩ませておいて、ヨアヒムは自ら切り出した。
「FC会長チェンバーズ=ファサルートの件に関しては、わたしも憂慮している。全ては王の戯れ言を真に受けたレナード=ブラント以下、手下たちの仕事だ。しかし始めてしまったものは仕方がない。しかるべき段階を踏んでFC会長の身柄は解放する予定だ」
早口で言ったヨアヒムに対し、ハイファが静かに訊く。
「それでは何もかも認めるんですね?」
「きみの言う何もかもとは、いったいどんなことかな?」
「マフィアからの借入金を返済するため、王がエレボス騎士団を組織して誘拐ビジネスを始めた。本星での連続誘拐やFC会長の誘拐も、王が司令塔となっているということです」
「ふむ……証拠は?」
「さっきあんた自身が言ったじゃねぇか、今更何を抜かしてやがる」
噛みついたシドを茶色い目が見返して笑った。
「はて、わたしが何か言ったかな? 何れにせよ聞き捨てならない嫌疑を掛けられたようだ」
「とにかくFC会長を即、解放して頂きたい」
「いやはや、王を大犯罪者扱いとは、不敬にもほどがある」
「我々は中央情報局第二部別室の命を受けている。テラ連邦軍基地を動かし、この屋敷を囲ませることも可能だ。それでもしらを切り通すつもりか?」
「とんでもない輩を屋敷に入れてしまったようだ。さて困った――」
ことごとく流されてイリヤが眉をひそめる。だからといって星系政府の重鎮でもあるヨアヒム=ユンカースをこの場で締め上げることはできない。何ひとつ証拠がないのだ。
そこで様々な犯罪者を相手にしてきたシドが平然と口を開いた。
「なあ、ジイさんよ。ふたつだけ教えてくれ。客の健康状態と居場所だ」
「丁重にもてなしさせて貰っている。だが居場所に関しては、さて?」
「ふん。なら王と直接話ができるっつー、レナード=ブラントを叩かせて貰うぜ?」
「脅しているつもりかね?」
「脅しになってるなら嬉しいんだがな。けどこの小さな街でレナード=ブラント一人を炙り出して締め上げるくらい、訳はねぇぞ。遠慮なくやらせて貰う、覚悟してやがれ」
「まあ、頑張ってレナードが素面のときを狙うんだね。最近の奴はドラッグ漬けだ」
嘆くように頭を振ると、ヨアヒムはメイドにもう一杯ずつ紅茶を淹れさせる。ブレンドティーを前にシドは遠慮なく煙草を咥えた。そんなシドを見てヨアヒムはゆるゆると語る。
「実際、破綻寸前のこの星系はどうなってゆくのか……この歳で引退もできん」
「難儀なことだな、暴走する王の尻拭いか? それとも焚きつけたのはテメェらの方か?」
「焚きつけたつもりはない。だが当時の王の側近は非常に質が悪かった。それは今でも……我々が気付いたときには既に輪が回り始めていた。事を進めるしか手立てはなかったのだよ」
「だからって誘拐はねぇだろ。そんな自転車操業でいつまで星系が保つと思ってるんだ。大体マフィアにカネを借りる時点で、どうしてテラ連邦議会に助けを求めなかったんだ?」
「植民星系に後戻りし隷属への道を選べと言うのかね? 主権は渡せないのだよ、絶対に」
論外だという風にヨアヒムはまた頭を振った。けれど星系を憂いてマフィアの手を借りた挙げ句に誘拐だ。雇った末端は人質を殺してもいる。目茶苦茶すぎて同情の余地もない。
鼻を鳴らしてシドはクリスタルの灰皿で煙草を消した。紅茶を一気飲みする。
「邪魔したな、ジイさん」
「寒いから気を付けて帰りたまえ。また茶でも飲みにくるがいい」
笑って見送られサロンから出ると、メイドが待ち受けていて玄関ホールまで先導に立った。玄関ホールで四人は防寒着を身に着ける。
執事殿に扉を開けられて恭しく礼をされ、外に出るとタクシーは車寄せに待機していた。乗り込んで正門を出るとシドが店二軒きりの歓楽街を座標指定する。十二分で到着予定だ。
「レナード=ブラントを叩きに行くんだよね?」
「ああ。あのジイさん、合法ドラッグ店にいることも吐きやがった」
「本当に合法かどうかは疑問だと思うけれどな」
口を挟んだスティーブにシドも頷く。相手はマフィア直営のドラッグ屋だ。用があるのはレナード=ブラントのみ、だがサンズのときと同じく武闘派バシリーの手下が取り巻いている可能性を考えて軍人三人は懐の銃を抜き、初弾が薬室に装填されているのを確認した。
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