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第16話
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「うーん、正直、食欲はないですね」
「そうか。ならば喉が渇いたらこれを飲め。トイレは大丈夫か、点滴するからな」
「そんなものまで持ってきたんですか?」
「勝手に持って行けと言われたからな。ほら、腕を出せ」
ナップサックの紐で細い腕を縛ると消毒し、器用に一回で静脈を捉えた。これも持ち出ってきた紙テープで固定すると輸液パックはベッドの上段にあったフックに掛けて保持する。心臓に負担を掛けないよう落ちる速度を調節し毛布を掛けてやった。
頑丈が身上の霧島がこんな知識を得たのも、特別任務でドえらい目に遭ってきたからである。
留守にするなら京哉が動けない今のうちだ。京哉に告げた霧島は食堂に行って朝食をかき込むと、京哉のためにアルミの灰皿を一個掠め盗って持ち帰る。
思いついて共用フロアに積んであったシーツも三枚ほど失敬した。あの状態のままでは様々な意味で拙いのと、着替えがないなら裸で寝かせてシーツを換えようという魂胆だ。
部屋に戻ってみると京哉は瞑っていた目を開いた。チーム長殿は仕事を忘れておらず、頼まれて霧島がオスカーに携帯で連絡する。さすがにベースキャンプ内は電波が届いた。
《はあ、機長が熱発ですか……》
「悪いが、私も出て行けそうにない。今日は適当に茶を濁しておいてくれ」
《分かった、お大事にと伝えて欲しい。リッキー共々、明日は待ってるからな》
「そちらこそ、飲み過ぎるんじゃないぞ」
《了解。アウト》
通話を切って振り向くと寒いのか京哉が蛹のように毛布にくるまったまま霧島を見上げている。高熱で茫洋としているのか、僅かに舌足らずな物言いで訊いてきた。
「忍さん、貴方は少し寝たっていうの、嘘でしょう?」
「一晩や二晩の徹夜くらいでへばるほどヤワではない」
「でも寝るに越したことはありませんよね。一緒に寝て下さい」
見上げてくる京哉の黒い瞳は潤み、目元が上気し赤く染まっていて堪らなく色っぽい。更にはブラインドである程度遮られた窓からの日差しで、美女とも見紛う顔立ちは陰影が濃くなりノーブルさを際立たせている。
そんな京哉をまた汚したい想いが突き上がってきて、霧島は己の果てない欲望を持て余した挙げ句に脱力した。
京哉の枕元に腰掛ける。汗に濡れた前髪をかき分けて白い額にキスを落とした。
「この点滴が終わったら薬を塗ってシーツ替えだ。そうしたら一緒に寝る」
「はい。あのう、お願いがあるんですけど……煙草、だめですか?」
窓を少し開けてきた霧島は奪ってきた灰皿と煙草にオイルライターをセットで京哉に渡し、背中に枕を詰め込んでやった。上体を起こされた京哉は一本咥えて火を点けると深々と吸い込み霧島を避けて紫煙を吐く。それを眺めて霧島も一本貰った。
京哉から貰い火をした霧島は元々吸っていたので喫煙者には割と寛容である。
二人して一本ずつ灰にしてしまうと京哉の点滴も終わった。手早く処置をする。
そうして羞恥から自分ですると言い張る京哉を説き伏せ、俯せにさせると霧島は自分の指に抗生物質入りの塗り薬をたっぷりと出し京哉の体内にそっと、だがしっかりと塗り込んだ。
二度目にクリーム状の薬をなるべく奥まで届かせようとしたら、これだけ経っても閉じ込められていた霧島自身の欲望の残滓が溢れ出てきて、霧島は眩暈のような情欲を感じる。
本気で襲い掛かりかねない己を思い切り抑えつけて薬を塗り終えた。感触では傷ついたのは体内ではなさそうで強引に挿入した際に入り口を傷つけただけらしい。溢れた体液にも血は混じっていなかった。重篤な感染症の可能性は僅かだが減った訳だ。
少し安堵を得た霧島は熱からではなく顔を真っ赤にした京哉を寝かせたままで器用にシーツを交換する。清潔になった寝床でようやく羞恥から立ち直った京哉がにっこり笑って毛布を剥がし、自分の隣を示すとポンポンと叩いて見せた。
てらいのない笑顔が眩しく、縋りつきたくなるくらい綺麗で霧島は目を眇める。
「私にそんなに優しくするな、京哉」
「どうしてですか、貴方はこんなに優しいのに。僕も好きな人に優しくしたいです」
「自分でもよく分からん。だが本当に拙いんだ」
言いつつリクエストに応えて服を脱いで京哉の隣に横になった。狭いベッドで京哉を背後から抱き込むと高熱を感じながら霧島も浅い眠りに落ちてゆく。
「そうか。ならば喉が渇いたらこれを飲め。トイレは大丈夫か、点滴するからな」
「そんなものまで持ってきたんですか?」
「勝手に持って行けと言われたからな。ほら、腕を出せ」
ナップサックの紐で細い腕を縛ると消毒し、器用に一回で静脈を捉えた。これも持ち出ってきた紙テープで固定すると輸液パックはベッドの上段にあったフックに掛けて保持する。心臓に負担を掛けないよう落ちる速度を調節し毛布を掛けてやった。
頑丈が身上の霧島がこんな知識を得たのも、特別任務でドえらい目に遭ってきたからである。
留守にするなら京哉が動けない今のうちだ。京哉に告げた霧島は食堂に行って朝食をかき込むと、京哉のためにアルミの灰皿を一個掠め盗って持ち帰る。
思いついて共用フロアに積んであったシーツも三枚ほど失敬した。あの状態のままでは様々な意味で拙いのと、着替えがないなら裸で寝かせてシーツを換えようという魂胆だ。
部屋に戻ってみると京哉は瞑っていた目を開いた。チーム長殿は仕事を忘れておらず、頼まれて霧島がオスカーに携帯で連絡する。さすがにベースキャンプ内は電波が届いた。
《はあ、機長が熱発ですか……》
「悪いが、私も出て行けそうにない。今日は適当に茶を濁しておいてくれ」
《分かった、お大事にと伝えて欲しい。リッキー共々、明日は待ってるからな》
「そちらこそ、飲み過ぎるんじゃないぞ」
《了解。アウト》
通話を切って振り向くと寒いのか京哉が蛹のように毛布にくるまったまま霧島を見上げている。高熱で茫洋としているのか、僅かに舌足らずな物言いで訊いてきた。
「忍さん、貴方は少し寝たっていうの、嘘でしょう?」
「一晩や二晩の徹夜くらいでへばるほどヤワではない」
「でも寝るに越したことはありませんよね。一緒に寝て下さい」
見上げてくる京哉の黒い瞳は潤み、目元が上気し赤く染まっていて堪らなく色っぽい。更にはブラインドである程度遮られた窓からの日差しで、美女とも見紛う顔立ちは陰影が濃くなりノーブルさを際立たせている。
そんな京哉をまた汚したい想いが突き上がってきて、霧島は己の果てない欲望を持て余した挙げ句に脱力した。
京哉の枕元に腰掛ける。汗に濡れた前髪をかき分けて白い額にキスを落とした。
「この点滴が終わったら薬を塗ってシーツ替えだ。そうしたら一緒に寝る」
「はい。あのう、お願いがあるんですけど……煙草、だめですか?」
窓を少し開けてきた霧島は奪ってきた灰皿と煙草にオイルライターをセットで京哉に渡し、背中に枕を詰め込んでやった。上体を起こされた京哉は一本咥えて火を点けると深々と吸い込み霧島を避けて紫煙を吐く。それを眺めて霧島も一本貰った。
京哉から貰い火をした霧島は元々吸っていたので喫煙者には割と寛容である。
二人して一本ずつ灰にしてしまうと京哉の点滴も終わった。手早く処置をする。
そうして羞恥から自分ですると言い張る京哉を説き伏せ、俯せにさせると霧島は自分の指に抗生物質入りの塗り薬をたっぷりと出し京哉の体内にそっと、だがしっかりと塗り込んだ。
二度目にクリーム状の薬をなるべく奥まで届かせようとしたら、これだけ経っても閉じ込められていた霧島自身の欲望の残滓が溢れ出てきて、霧島は眩暈のような情欲を感じる。
本気で襲い掛かりかねない己を思い切り抑えつけて薬を塗り終えた。感触では傷ついたのは体内ではなさそうで強引に挿入した際に入り口を傷つけただけらしい。溢れた体液にも血は混じっていなかった。重篤な感染症の可能性は僅かだが減った訳だ。
少し安堵を得た霧島は熱からではなく顔を真っ赤にした京哉を寝かせたままで器用にシーツを交換する。清潔になった寝床でようやく羞恥から立ち直った京哉がにっこり笑って毛布を剥がし、自分の隣を示すとポンポンと叩いて見せた。
てらいのない笑顔が眩しく、縋りつきたくなるくらい綺麗で霧島は目を眇める。
「私にそんなに優しくするな、京哉」
「どうしてですか、貴方はこんなに優しいのに。僕も好きな人に優しくしたいです」
「自分でもよく分からん。だが本当に拙いんだ」
言いつつリクエストに応えて服を脱いで京哉の隣に横になった。狭いベッドで京哉を背後から抱き込むと高熱を感じながら霧島も浅い眠りに落ちてゆく。
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