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第18話(BL特有シーン・回避可)

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 言うが早いかシドは返事も待たずにガウンに包まれたハイファの躰をすくい上げ、横抱きにする。ベッドまで運んで荒々しく放り出した。
 横たわった細い躰にのしかかり、ハイファの両手を頭上で縫い止めるように押さえ付けてキスを奪う。柔らかな唇を捩るように貪った。

 歯列を割って舌を侵入させるとハイファの口内を舐めまわす。歯の裏まで探り、舌を絡め取って唾液ごと、舌が痺れて痛みが走るほど吸い上げた。

「んっ、ぅうん、ン……んんっ!」

 息もできないくらいに口を蹂躙しながら、シドの片手はハイファのガウンの紐を解き、前をはだけている。自分の紐も解いて露わとなった肌同士を擦りつけた。

 口を解放するとハイファは肩で息をしながらしなやかに背を反らせる。

「ん……はあっ、シド……あぅんっ」

 白くきめ細かな肌をまさぐり、胸の小さな突起を指先で転がし押し込むように刺激すると、ハイファは身を捩らせて甘く鳴いた。

 両手はシドの右手一本で封じられたまま、ハイファは荒っぽいシドの愛撫で躰の至る処に炎を灯されてゆく。擦りつけられる象牙色の滑らかな肌が信じがたいくらい心地良く、愛し人の重みを受け止める悦びに酔った。

「シド、僕も……んっ……貴方に触りたい」

 逞しい胸を撫で、黒髪の頭を抱き締めたいのに、訴えるもシドは手を離そうとしない。

 せめてもの逆襲に腰を揺らすと、更に強く下半身を擦り合わされて痛みが走った。既に二人とも熱く硬く勃ち上がらせていて、痛みは甘い疼きに変わる。

 快感に悶えるハイファの躰の中心をシドが掴んだ。ゆったりと扱くと細い躰が跳ねる。

「あっ、シド……ずるい、はぁん!」
「ずるくねぇよ……こんなにそそる躰してる、お前が悪い」
「そんな……あっ、ふ……ああんっ!」

 抵抗を封じたまま扱き続け、薄い肩から鎖骨、華奢な首筋のラインに噛み付くように顔を埋めた。濃厚に舌を這わせては唇で挟んで吸い上げ、幾つも赤い印を刻み込む。

 仰け反った白い喉に歯を立てて甘噛みしながら、扱く指先にハイファが先端から零した蜜を絡めた。その手を若草色の瞳の前に翳して踊らせる。

 ようやく両手を解放されたものの、ハイファは自分の溢れさせた蜜でとろとろに濡れた指を見せつけられて、羞恥に身を固くした。呼吸が知らず浅く速くなる。

「この指でどうして欲しいんだ?」
「……そんな……っん」

 何て意地悪をいうんだろうと端正な顔を睨みつけた。だが黒い目は笑ってなどおらず、狂おしいまでの情欲を湛えていて、ぞくりと背筋を疼きが駆け下りる。
 匂い立つようなシドの色気に誘われ、堪らなくなって乞う。

「お願い、僕を……指で、犯して」
「分かった――」

 膝を曲げた脚を大きく広げさせられた。露わとなった後ろの蕾にシドの指が触れる。

「んっ……あっ、あっ……はぅんっ!」

 こじ開けるように挿入された指先がするすると奥まで達して内襞を優しく掻いた。途端に鋭い快感が襲いかかる。ポイントを知り尽くした指がハイファの思考を掻き乱し、理性を打ち砕いた。腰が揺らめいてしまうのを止められない。

「ハイファ、あんまり動くな、傷つける」
「あっ、んんっ……っあ、ぅうんっ!」

 全てをシドの指使いに支配され、言葉にならなかった。徐々に増やされる指を難なく咥え込んでゆく。そんな自分の躰を恥ずかしいと思う片端から羞恥心は快感に蕩かされてしまう。

 一方のシドも桜色に染まった細い躰を前に、躰の中心を痛いくらいに張り詰めさせていた。自分の指を呑み込んで快感に悶えるハイファは酷く淫らなのに、堕ちてきたヴィーナスのように美しくも気高く感じられる。

 もっと汚して堕としてやりたい衝動に駆られ、馴らしたそこから指を抜いた。快感が途切れて指を追う仕草を見せたハイファに己の熱く滾ったものをあてがう。
 のしかかるようにして潤んだ若草色の瞳を見つめた。

「俺を入れてくれるか、ハイファ?」
「中にきて、シド……んんっ、あ、はうっ!」

 愛しくて、愛しすぎて堪らず、シドはひと息に太いものを根元まで打ち込んで、ハイファに悲鳴のような喘ぎを洩らさせていた。

 柔らかくもきついハイファに包まれて、シドは一瞬で放出してしまいそうになり、奥歯を噛み締めて波をやり過ごす。ハイファも息を詰めて指とは比べものにならない太さの硬く熱いシドに堪えていた。

「くっ……痛くねぇか、ハイファ?」
「あ、んっ……痛くない……でも、シドでいっぱい――」

 蠕動して奥へと誘う内襞の感触に我慢も限界、不規則なハイファの息が整うまで待てずにシドは腰を大きく引く。繋がりが解けてしまう寸前まで己のものを引きずり出し、力強く腰をスライドさせて引き裂くように突き入れた。

「あうっ! シド、すごい……硬い、太いよ……はぅん!」
「うっ……ハイファ、すんげぇ気持ちいい」
「ああっ、シド、いい……突いて、もっと……」

 快感はシドの思考を白く灼いた。激しく突き立て貫いて細い躰を揺らす。きつく締め付けてくるそこを、ちぎらんばかりにこじ開け続けた。芯まで届かせて掻き回しこね回す。

「んんっ、あっ……シド、ああんっ!」
「ハイファ、愛してる……お前だけだ、ハイファ!」
「シド……僕の、シド、あっ……はぁんっ!」

 躰同士を叩き付けるようにシドが突き上げた。容赦なく粘膜を擦り立てられ、掻き混ぜられて、絶え間なく喘いでいたハイファが訴える。

「はうっ……シド、もう、だめ」
「俺も、いかせてくれ――」

 夢中でシドは細い躰を貫いた。ハイファの熱いものに手を伸ばし握り込む。腰のスライドに合わせてやや乱暴に扱いた。甘い声が叫びに変わる。

「んっ、ああっ……いく、いっちゃう……あうっ!」
「――ハイファ、あっ……くうっ!」

 手の中のハイファが熱く溢れさせる。シドもハイファの芯で幾重にも迸らせていた。だがハイファの中をずぶ濡れにしながらも、シドはまだ熱く硬く充血させている。

「シド、貴方……いいよ、好きなだけして」
「ンなに煽りやがって……知らねぇからな!」

 自らシーツに這ったハイファは枕に片頬を押し付けて腰を高く掲げる、煽情的な姿態を取って誘っていた。斜めに振り向いて見つめる若草色の瞳は、まばたきすれば零れてしまいそうに涙が湛えられている。

 そんな姿を目にしたシドは胸が焦げ付くような愛しさと同時に、壊れそうなくらい抱き尽くしてしまいたい征服欲が湧き上がり、一瞬で理性を飛ばした。
 シド自身が放ったものが溢れ出ている秘部に猛った楔を突き立てる。

「ハイファ……ハイファ!」
「シド……ぅうんっ、あっ……はぁんっ!」
「ハイファ、俺の、ハイファ……ぁあ――」

 繰り返し名を呼びながら細い腰を手繰り寄せては突き上げた。白い躰にのめり込み溺れきっていた。引き抜いては突き入れ、掻き回しては貫き続ける。体位のせいで先程までより深く届いていた。突き立てるたびに窄まりが締まり、シドも呻きを抑えられない。

 太いもので擦られ与え続けられる快感と、何処までもシドを受け入れる悦びとで、いつしかハイファも再び勃ち上がらせていた。

「ハイファ、すまん、メチャメチャよくて……止められねぇ――」
「んんっ、はぁんっ……はぅんっ、ああっ!」

 体内で暴れ狂うシドに躰を揺らされながら、ハイファはシーツを掴み締めて強烈な快感に堪える。口からは叫ぶような喘ぎが洩れ続けていた。何度も意識を手放しそうになっては、より鋭い快感で引き戻される。

 何処までが自分で何処からがシドなのか、もう分からないくらいに融け合った頃、ふいに快感のピークが背筋を駆け上ってきてハイファを襲った。

 ハイファの熱いものを握り込んだシドも思い切り締め付けられ一緒に身を震わせる。

「シド、シド、もうだめ……ああんっ!」
「俺も……あっ、く……ハイファ、あうっ!」

 手の中にハイファが爆ぜさせると同時に、二度目とは思えないほど、たっぷりとシドはハイファに注ぎ込んでいた。途端に細い躰から全ての力が抜ける。

「――ハイファ?」

 白い頬を軽く叩くも反応はなかった。一瞬で眠りに落ちたのか、気を失ったのか。耳をすませたが呼吸は正常で、脈は少し速めだ。暫く顔を眺めてから手を洗ってくるとハイファの躰の後始末をしてやる。

 ガウンをちゃんと着せかけ、乱れた金髪を撫でた。起きる気配がないので隣に横になり、毛布を被せて左腕で腕枕をする。さらさらの金髪を指で梳き、白い額にキスを落とす。

 愛しくてならない存在をシドはしっかりと腕に抱いた。
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