Pair[ペア]～楽園22～

第12話（BL特有シーン・回避可）

　俯いたシドがさらさらの感触を頬で確かめていると、ハイファが顔を上げキスをねだる。唇をそっと触れ合わせると、ハイファは思いがけない勢いでシドを求めた。

　捩るように唇を合わせ、開いた歯列からシドの口内に舌を侵入させる。口中を舐め回して舌を絡ませ、幾度も唾液をねだった。痺れるくらいに舌を吸い上げる。

「んっ……く、ハイファ――」

　ハイファはシドの口を解放したが抱き締めた躰は離さない。躰の至る処をまさぐり、もどかしい手つきで綿のシャツのボタンを外した。

　前をはだけて露わとなった滑らかな象牙色の肌に、ハイファは熱い吐息を掛けつつ手を這わせ唇を押し付ける。胸の小さな尖りを口に含み舌先で転がすと、シドは僅かに喉を仰け反らせて喉の奥で呻いた。

「うっ、くっ……あ」

　押されて一歩、二歩と後退しデスクにぶつかる。身動きの取れなくなったシドの象牙色の肌にハイファは夢中で愛撫を加えていた。シドの脚の間に自身の脚を割り込ませ腰を擦りつけて刺激する。愛しさに胸が焦げそうだった。無我夢中でシドの温かな肌をまさぐる。

「シド……僕の、シド！」
「ハイファ……あっ、んっ」

　腹から胸を舐め上げられ、シドは思わず小さな喘ぎを洩らした。飢えてでもいたようにハイファはシドの引き締まった腹に、逞しい胸に手を、舌をくまなく這わせて愛撫する。

　何度も唇で肌を挟んではきつく吸い上げ、赤く自身の証しを刻み込んだ。　　
　余す処なくシドの全てを我がものにしたいという想いが切ないまでに伝わってくる。シドはこみ上げる愛しさに、暫し自身の欲望を抑えつけてハイファの攻めに耐えた。

　シドの下半身を撫で上げ、若草色の瞳が黒い目を窺う。

「ねえ、欲しいよ」
「好きにしていい、お前のものだ」

　頷くとハイファは床に跪いてシドのベルトを緩める。コットンパンツを下着ごと僅かに押し下げた。熱く硬く成長したシドを露わにすると愛しげに先端を舌先でなぞる。舌を潜り込ませ、滲み出す透明の液体をピチャピチャと舐め啜った。

　太い茎に濃厚に舌を這わせ、深々と咥え込む。

「うっく……あっ、あ……ハイファ！」

　温かな口腔粘膜に包まれてシドは快感に喘いだ。耳を塞がれたように世界が遠くなる。荒い息をつきながら、ハイファの喉を突いてしまわぬようデスクに躰を押し付けた。

　小刻みに蠢く舌づかいに、前後する淫らな赤い唇に、シドの全てが支配され思考が蒸発してしまったかのように何も考えられなくなる。

「はあっ……あっ、ふ……ハイファ、ああっ！」
「んっ、ぅうん……っん、んんぅ」

　自分でも思ってもみなかったような喘ぎをシドが洩らす一方で、ハイファも愛し人のものを咥えるという行為に酔い、いつしか甘く鳴いていた。
　強烈な快感に晒され、甘い声を聞かされてシドは一気に昇り詰める。

「あっ、く……ハイファ、もう――」

　逃れようと訴えるもハイファは許さない。シドはハイファの喉の奥に幾度も痙攣させて爆ぜさせてしまう。どくどくと溢れた濃い液体をハイファは残らず嚥下した。手で扱いて先端から滲み出たものまでピンクの舌で舐め取る。

「シド……まだこんなにしてる」
「欲しいんだろ」
「……うん」

　放ってなおハイファの手の中でシドは熱く硬度を保ったままだった。情欲を湛えて見上げる若草色の瞳に堪らずシドは細い腕を掴んで立たせ、片腕できつく抱き締めて華奢な首筋に唇を押し当てる。

「俺の、ハイファ……愛してる……お前だけだ」

　片手で器用にハイファのボタンを外し、胸元を広くはだけて薄い肩まで剥き出した。肩から鎖骨、首筋を舐めねぶり、白い肌を吸い上げては赤い印を穿つ。

　右手で細い躰を荒っぽく愛撫すると、しなやかな背が反った。
　知り尽くしたポイントをやや乱暴に擦られて、ハイファはシドの黒髪を掻き乱す。

「んっ……シド、淋しかった……貴方しかいないよ、あっ、はぁん！」

　鎖骨を甘噛みされたハイファは高く喘いだ。下衣の上から擦り合わせた下半身には疼きが溜まりきり、無意識に細い腰は揺らめいている。

「もっと気持ち良くしてやるからな」

　シドはハイファの耳許で囁くと自分の右手指を口に含んで、たっぷりの唾液で濡らした。ハイファの下衣は脱がせないままに中に手を入れ指で後ろを探る。

「あっ……あ、ふ……ああんっ！」

　蕾をこじ開けるようにして指が挿し入れられ、ハイファはビクリと躰を跳ねさせた。構わず指は奥まで侵入してくる。シドの中指が内襞を引っ掻くように擦り上げた。
　途端にハイファの思考は白熱する。眩暈がするような快感に膝が震えた。粘膜を掻き回されてまともに立っていることができなくなりシドの首に縋り付く。

「んっ、ぅうんっ……はぅんっ！」

　絶え間ない喘ぎが喉から洩れ続けた。腰が蕩けそうな感覚に理性が狂わされる。シドの指がもたらす快感にハイファは完全に征服されていた。

　徐々に増える指にほぐされながら、浅く速い息を繰り返す。下腹には熱く太いシドが当たっていて、これを迎え入れる準備をさせられているという期待で快感は更に増した。

「……ああっ、そんな……んっ、ああんっ！」

　咥え込んだ数指をバラバラに動かされて、言葉とは裏腹に細い腰がうねる。

「このまま、これでいくか？」

　耳許に低音で囁かれ、ハイファは夢中で首を横に振った。

「いや……シドが欲しい、中に……お願い」
「そうか、分かった」

　指が抜かれる。シドに促されて位置を入れ替わった。デスクに両手をついて身を支えると、下着ごとスラックスを足首まで引き下ろされる。後ろに熱く滾ったシドが押し当てられた。ぬめりを広げるように先端が動かされる。

「いいか、入るぞ」
「うん……はぁん、あっ、あっ……はうっ！」

　引き裂くように侵入してきたシドは硬く太く、ひと息に芯までを貫かれてハイファは息を詰め、身を硬直させた。苦しさと悦びが入り混じり、根元まで突き入れたシドと共にすぐには動けずに喘ぐ。

「ハイファ……きつ、い……力抜けって」
「んっ……無理……動いて、いいから」
「……くっ、あ――」

　我慢も限界に達したシドが楔を半ば以上引き抜いた。背後から片腕でしっかりとハイファを抱き、繋がりが解けてしまう寸前で腰を力強くスライドさせる。

　指でさんざん嬲られて敏感になった内襞を思い切り擦られ、ハイファは気が遠くなりそうな快感に悲鳴のような高い喘ぎを洩らした。

「ああんっ……いい、あっ……はぁんっ！」
「ハイファ、すっげぇ気持ちいい――」

　激しい抽挿入でハイファは上下感覚も失くすほどに揺らされる。芯を掻き回しこね回すように熱い楔が体内でうねっていた。しなやかな躰を仰け反らせて快感に酔い痴れる。
　長い髪を乱して快感に集中していると、シドがうなじを舐めねぶって歯を立てた。

「あっ、すご、く……感じる……シド！」
「こうするのは、お前とだけだぞ」

　背後から深々と貫き突き立てられながらシドに躰の中心を握り込まれる。激しいスライドに合わせてやや乱暴に扱かれ、前後を同時に攻められてハイファはあっという間に絶頂へと駆け上った。

「……シド、もう、だめ……っん！」
「俺も、一緒に……いくからな」

　腰を叩き付けるようにシドは容赦なく突き上げる。痛々しいまでにデスクに爪を立てて堪えるハイファは美しくも妖艶だった。

「ああっ……シド、早く……あっ、はぅんっ！」
「――ハイファ……くぅっ……あうっ！」

　シドが躰の最奥で弾けさせるのを感じながら、ハイファもシドの手の中に思い切り解放していた。何度も身を震わせて熱く放つ。
　ふっと細い躰は力を失くし、ハイファはその場に頽れた。

「ハイファ、大丈夫か？」
「ん、大丈夫。例によって少しの間、動けないだけだから」
「ちょっと待ってろ」

　喘ぎ疲れて掠れた声にシドは苦笑し、洗面所で手を洗うと飲料ディスペンサーから紙コップにアイスティーを注いでハイファに手渡した。ハイファは一気に飲み干して溜息をつく。シドの右腕を借りデスクに縋りつつ、何とか立ち上がった。

　殆どの体重をシドの右腕に預けた状態で力の抜けた膝を叱咤し、やっとベッドに辿り着いて倒れ込む。シドが片手でハイファのスラックスを脱がせた。

「毎度ながら、スミマセン……」
「リフレッシャは起きてからでいいよな」
「貴方も眠らないとだめだよ」
「分かってる」

　コットンパンツを脱いでベッドに上がり、シドはハイファの隣に横になる。毛布を被ると短い左腕の上に金髪頭を載せてやった。若草色の瞳が怯えたように見る。

「痛く――」
「ねぇから心配するな」
「そっか。じゃあおやすみ、シド」
「ああ、おやすみ」

　ハイファがリモータでライトパネルを常夜灯モードにする。
　シドの胸に抱かれ、長い髪を指で梳かれながらハイファは深い安堵を得て眠りに落ちた。