Shot~Barter.9~

志賀雅基

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第48話

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 最前線に北軍副司令ニックス=イヴァン少将が現れたとの噂を、霧島と京哉にコージは十九時の夕食を摂りに行った第二食堂で聞いた。三人は目で頷き合う。

「迎撃第二陣が二十時に出るぞ、歩兵中隊は急げ!」

 食堂内は怒号が飛び交い、仲間の仇討ちだと叫ぶ者やニックス=イヴァンの首を取って名を上げようと盛り上がる者などで一気に喧噪の渦となる。
 そんな中で静かに夕食を冷たい茶で流し込んだ三人は立ち上がり、足早に食堂から出て歩兵たちが集まる本部庁舎前の広場に向かった。そこで今回の指揮官を探す。

 ここでは戦場カメラマン間宮孝司の名がものをいい、今晩の作戦大隊長の少佐は身の安全の保障はないとしながらも三人のホットゾーンへの同行に快く頷いてくれた。

「それでオペレーションはどのような内容なんですか?」

 重量軽減と機動性を考えてハードケースから出し、フルロードにしてスリングで担いだ京哉のバレットXM500を眺めながら大隊長が霧島の問いに穏やかに答える。

「四十キロ先に我が軍の第六CPがあります。先日奪われたそこにニックス=イヴァンが現れたとの確実な情報があり、まずはそこを奪還することが今回の目的です」
「移動方法は?」
「第一陣の歩兵中隊は出発済み、第二陣を目標から約四キロ離れた第五CPまで大型ヘリ三機で輸送します。これに乗られますか?」

 あとの二人が頷くのを見て、霧島は大隊長に頭を下げた。

 武装した兵士を満載した大型ヘリは二十時ジャスト、予定通りにテイクオフした。

 布張りシートに腰掛けた三人は水筒を借りて腰に下げたのみの軽装だ。勿論京哉はXM500、コージはカメラ、霧島はレーザースコープと気象計を携行している。

 オペレーションを前に緊張し、または勇壮に盛り上がる兵士たちを撮ることにコージは余念がない。様々な角度からベストショットを狙っている。

「忍さん、まだ大丈夫ですか? 気分が悪くなったら早めに申告して下さいね」
「ああ。オペレーション終了までは保つだろう」

 そう返した霧島は内ポケットにハンカチで包んだシリンジを隠し持っていた。だが出発直前に射ったものの僅か一回分、シリンジ二本を持参しているのみである。人目を忍ぶ違法物を大量に持ち歩きたくないのは分かるが京哉は気が気でない。

 高度を取り夜空を飛行していた大型ヘリは徐々に速度を落とし降下を始めた。ホットゾーンから約四キロ離れた第五CPに接地するまで幸い攻撃は受けなかった。

 第五CPも村の跡地だった。大型ヘリの最終便が着くとそこもすぐに出発だ。

 暗い密林行は困難だった。第六CPまで道が通っていたが隊列はブービートラップを警戒してすぐにその道も外れる。
 先頭でブッシュをかき分け張り出した枝葉を山刀で打ち払ってゆくのは地元を知り尽くしたポイントマンだ。真っ先に接敵する彼らは発射速度の速いサブマシンガンを提げ、僅かな月と星明かりで迷いなく進んで行く。

「三時間は掛かりそうですね。忍さん、こんなに歩いて怪我は大丈夫なんですか?」
「あれが効いているからな、痛くも痒くもない。気分がいいくらいだ」
「でもたった一回分、ギリギリじゃないですか」
「そう心配するな。帰りはどうせ第六CPからヘリだ。大丈夫、問題ない」

 一時間に一回、五分の小休止を挟みながら三回目の小休止を取る前にポイントマンが足を止める。第六CPまで約一キロ、ここから霧島と京哉にコージは別行動だ。

 霧島たちを置いて隊列は再び道なき道を辿りだした。密林の中で滅多に行われない夜襲は東と西に分かれての挟撃である。まずは砲撃をして敵を混乱させたのち、先に送られた歩兵中隊と挟み撃ちにする作戦だと聞いていた。敵はともかく味方も混乱が予想される。

「コージは部隊について行ってもいいですよ?」
「いや、今回はあんたらの仕事を見せて貰うさ」

 スナイプ可能な地を探す京哉たちは作戦大隊長の厚意でつけて貰ったポイントマン二人を先頭にこちらもまた密林行だ。条件を告げてあるので今はまだついて行く。

「この暗さでジャングルからスナイプか。かなり近づかなきゃならんだろうな」
「それは仕方ないですよ。スポッタ、頼りにしてますからね」
「ああ、任せておけ。だが京哉、お前は本当にヲタ根性だな。約十二キロだろう?」
「それが何か? 忍さんが初めて僕のスナイプを見た時、あれ二十六キロでしたよ」

 ぼそぼそと喋りながらCPまで直線距離で七、八百メートルの地点まで辿り着く。そこからポイントマンたちとハンドサインでやり取りしつつ、見つけた狙撃ポイントは大木に囲まれ丘陵地になった草地だった。京哉はじっくり辺りを見回す。

 もうブッシュを透かしてCPの明かりが見えていた。大きな物音は立てられない。特別任務時は対等だが今は女房役の霧島がレーザースコープを覗きつつ京哉に囁く。

「距離は七百八十だが、ここでいいのか?」
「七百八十、コピー。そうですね、これ以上の場所はない。ここでやります」
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