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第5話・休日初日午後後半〈画像解説付属〉
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その他、過去の母の『やらかし』をつらつら考えているとアタリがきた。本当に金魚並みに小さなアイナメの子供がエサをつついているだけかも知れない。だがやはり釣り人の多分に漏れず、またしても大和は『岩場の主』を釣り上げる気、満々だ。
何度かのアタリにもじっと我慢で反応せず、やっと食ったかと思えたところで鋭く合わせた。
ヒットだ。キリキリとリールを巻く。結構な重みがあるが、あまり暴れない。やはりアイナメか。
見えてきた。すぐ足元の水面は岩陰で見えづらいが確かに白っぽい……え?
「ちょ、何でお前がこんな所にいるんだよ!?」
愚痴のひとつも云いたかった。それは怒りに膨らんだハリセンボンだったのだ。
こんな浅瀬に普通はハリセンボンなどいない。だが釣れてしまったモノは仕方ないので針を外すと、未だ膨らんでいるトゲトゲをそうっと両手で挟んで、クーラーボックスのエアレーションしている海水の中にコロリと置いた。
思考をグルグルさせて釣りも上の空だったからか、エサの青イソメもなくなっているのに今、気付く。仕方ない、今日はもう納竿だ。
クーラーボックスの中身はムニエルと、せいぜい天ぷらの足しだ。小さなハゼ二匹をリリースする。
そして処遇に悩んだのが、ようやく膨らむのをやめてヒレをひらひらさせつつ、狭い四角で気持ち良さげに泳いでいるハリセンボンだ。
「沖縄の方では食うらしいなァ!」
唐突に声がして振り返ると、それは同じく納竿らしい堤防で隣にいたおじさんだった。沖縄ではハリセンボンを食材にするというのを大和も知っていて、だが笑うおじさんはジョーク口調である。
大和も笑って見せながら応えた。
「アバサーでしたっけ、向こうでの呼び名は」
「だぁねえ。ここいらじゃあ何年も前には大量発生して漁網いっぱい、こいつだらけで網に引っ掛かるし、こっちじゃロクに食えもしないしで浜に重機で穴掘って埋めたり、始末が大変だったっけなァ」
「はあ、ってことは生き埋め……」
「漁師さんは死活問題だもんなァ」
「……なら、俺はこいつを食います」
「はあ?」
いきなり何を言い出したんだ、この若造はとおじさんは笑顔のまま表情を固まらせ、長身を見上げて「アー」と口を開けている。
「リリースしても生き埋めになるかも知れないのなら、食ってこそ供養です!」
「あ、まあ、食えるところは少なそうだがね。じゃあ」
とっととおじさんは帰路に就いた。その背を見送ってからしゃがむと大和はクーラーボックスの中に囁いた。
「食ってやる」
一日中、別れた男の事ばかり考えさせられてしまった、その八つ当たりだった。
何度かのアタリにもじっと我慢で反応せず、やっと食ったかと思えたところで鋭く合わせた。
ヒットだ。キリキリとリールを巻く。結構な重みがあるが、あまり暴れない。やはりアイナメか。
見えてきた。すぐ足元の水面は岩陰で見えづらいが確かに白っぽい……え?
「ちょ、何でお前がこんな所にいるんだよ!?」
愚痴のひとつも云いたかった。それは怒りに膨らんだハリセンボンだったのだ。
こんな浅瀬に普通はハリセンボンなどいない。だが釣れてしまったモノは仕方ないので針を外すと、未だ膨らんでいるトゲトゲをそうっと両手で挟んで、クーラーボックスのエアレーションしている海水の中にコロリと置いた。
思考をグルグルさせて釣りも上の空だったからか、エサの青イソメもなくなっているのに今、気付く。仕方ない、今日はもう納竿だ。
クーラーボックスの中身はムニエルと、せいぜい天ぷらの足しだ。小さなハゼ二匹をリリースする。
そして処遇に悩んだのが、ようやく膨らむのをやめてヒレをひらひらさせつつ、狭い四角で気持ち良さげに泳いでいるハリセンボンだ。
「沖縄の方では食うらしいなァ!」
唐突に声がして振り返ると、それは同じく納竿らしい堤防で隣にいたおじさんだった。沖縄ではハリセンボンを食材にするというのを大和も知っていて、だが笑うおじさんはジョーク口調である。
大和も笑って見せながら応えた。
「アバサーでしたっけ、向こうでの呼び名は」
「だぁねえ。ここいらじゃあ何年も前には大量発生して漁網いっぱい、こいつだらけで網に引っ掛かるし、こっちじゃロクに食えもしないしで浜に重機で穴掘って埋めたり、始末が大変だったっけなァ」
「はあ、ってことは生き埋め……」
「漁師さんは死活問題だもんなァ」
「……なら、俺はこいつを食います」
「はあ?」
いきなり何を言い出したんだ、この若造はとおじさんは笑顔のまま表情を固まらせ、長身を見上げて「アー」と口を開けている。
「リリースしても生き埋めになるかも知れないのなら、食ってこそ供養です!」
「あ、まあ、食えるところは少なそうだがね。じゃあ」
とっととおじさんは帰路に就いた。その背を見送ってからしゃがむと大和はクーラーボックスの中に囁いた。
「食ってやる」
一日中、別れた男の事ばかり考えさせられてしまった、その八つ当たりだった。
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