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第32話
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飛び立ったターボプロップ機の埃っぽい窓を透かし外を見下ろして霧島は少々驚いた。アマラの都市が首都エーサよりも立派だったからだ。超高層ビル群が熱気の中、蜃気楼の如く揺らめいている。間違いなくオイルダラーの産物といった、一種独特の光景だった。
ここではカランドのお国事情に詳しくなった京哉が解説した。
「この辺りは化石燃料の埋蔵量も多くてガリア地方のレアメタル採取にも便利だから企業本社もこっちに多いんですって。だから首都のエーサより発展してるんですよ」
頷きつつ聞く霧島は窓際に座っていたが、隣に腰掛けた京哉が小柄な躰を余計に小さくしているのを見て苦笑する。三列シートの端には巨漢がどっかり腰を下ろしていたのだ。
その巨漢が霧島と京哉の方に向かって白い歯を見せた。
「よう。そんな格好してオイル屋かい。まさかあんたらも売り込みじゃないよな?」
ラフな英語で話しかけられ霧島が応える。
「ああ、その『売り込み』の方だ。景気はどうだ?」
「懐に得物を呑んでるから、まさかと思ったが本当にそれで売り込みとは驚いたな。景気はそこそこだが、ここ暫く指揮官クラスがピンポイントで殺られてるから、指揮命令系統のまともな所を選ばないと命を短くするぜ。俺はドミニクだ」
「私は霧島、そっちが鳴海だ。あんたは何処を狙っている?」
「クインランだ。あそこはケチだが指揮官が殆ど生き残ってるって話だ。取り敢えず命を存えて、それからゆっくり移籍先を探すのさ」
「そいつはいいプランだな。クインラン、私たちもひとくち乗せて貰うとするか」
「おう、構わないぜ。格好は何だが仲間としちゃ悪くない目をしてる」
喋っている間に中型プロペラ機は地対空ミサイルや高射砲などの攻撃を恐れてか一気に高度を取っていた。それを感じ取って霧島は京哉に囁く。
「だが、こんな危ない所に何故子供の乗った大型バスなんだ?」
「何度目かの停戦協定が締結されたときに、国の代表産業である石油化学コンビナートを父兄同伴で社会見学。それでドカーン! ですって」
「堪らんな。無人標的機、ターゲット・ドローンか」
聞きつけて巨漢のドミニクが笑顔で口を挟んだ。
「あんたらは無人機の操作屋なのかい? どうりでインテリめいてると思ったぜ」
ドミニクの言葉を通訳しながら、その口調と笑みに含みがあるのを察知した霧島だったが、意味が分からず京哉に目で訊いた。京哉は苦笑しつつ説明する。
「無人機はタイプによってUAVと呼ばれる比較的大型のものと、ドローンと呼ばれる小型のものがあります。ドローンは部隊でなく個々の兵士で運用できるのが一般的です。完全自律飛行でターゲットを撃破するものもあれば、兵士がリモートコントロールして目標まで誘導するものもある。今後はプログラムや機器の小型化で自律飛行タイプが増えて行くのは当然ですが」
「それくらい知っている。それを組み合わせ敵を叩くのがハンターキラーだからな」
「なら話は早いですね。自律飛行タイプは勿論、リモコンタイプの場合もドローンを動かす人は前線には出て行かない。これは部隊で扱う大型のUAVにも言えることですが」
「だろうな。で?」
「だからですね、そのリモコン操縦士は基地の安全な場所に置かれた操縦機器で遠隔操作するでしょう? すると何ていうか、ちょっと馬鹿にされたりするんです」
「なるほど、前線に出ない臆病者ということか。意味は分かったが下らんな」
戦場に行かず人殺しをするというので疎外されるのだろう。似たものに爆撃機パイロットがある。彼らは敵が高射砲でも設置していない限り、頭上から爆弾を落とすだけというので軍にあっても嫌われることがあるのだ。
更にはスナイパーも毛嫌いされることがある。混乱の戦場では自分の撃った弾が誰を何人殺したのか、果たして当たったのかも定かでない事が多い。放り投げた手りゅう弾だって同じことだ。だがスナイパーは潜んで確実に相手を殺す。または部隊の足を引っ張らせるために兵士を嬲るように傷つけては撤退する。
殺しに貴賤など霧島には馬鹿馬鹿しい限りだが、狙撃手が『卑怯』であり『人道に悖る』という理由で蛇蝎の如く嫌われることがあるのも事実だった。
「下らなくてもね、仕方ないですよ」
元スナイパー、いや、SATにおいては現役のスナイパーでもある京哉が諦めたように肩を竦める。その手を霧島は握り灰色の目で頷いて見せた。『一生、どんなものでも一緒に見てゆく』、『二度と独りでトリガを引かせない』という誓いと想いを込めて。京哉は薄い笑いをやめ、真顔になってから本当に嬉しい微笑みを浮かべた。
「――けどクインランはUAVにも力を入れてるって話だ、狙い目ではあるぞ」
一人で喋っていたドミニクに霧島は相槌を打つ。
「卑怯者、結構だ。だが戦闘薬でギグに参加するのも悪くないのだがな」
「何だ、あんたジャンキーに見えないが。けど心配しなくていいぜ。前線まで行かなくても最近はPTSDを嫌って、ミサイルのスイッチを押すだけの奴にも戦闘薬を配るからな」
「そんなにありふれたブツなのか?」
「まあな。ここの戦争はPSC同士の代理戦争だ。全てをクールかつシステマチックに動かすためには必要なんだろうよ。ジャンキー除隊も多いらしいがな」
「ふうん。そうなった奴らはどうなるんだ?」
「PSCと企業が共同出資した専門病院がしこたま儲けてるさ」
そうして稼いだカネをむしり取られ、本人が治った気になれば再び戦場に出る。そのループに嵌った人間が多いとドミニクは笑った。何ともシビアな世界だった。
「かくいう俺の相棒もそろそろヤバくてな。おい、大人しくしてくれよ、パット」
と、通路を挟んだ席に座る細身の戦闘服をドミニクは諭す。パットと呼ばれたその男は落ち着きなく膝を揺らし、何度も瞬きを繰り返していた。初期の禁断症状だ。
霧島も京哉も特別任務の中で敵に拉致られ、ブツは違うがクスリ漬けにされたことがある。依存から脱するまでの苦しみを思い出してしまい、何となく掛ける言葉を失っているうちに中型機は降下を始めた。やがて無事にユガル空港に到着しランディングする。
並んで降機してみるとアマラより更に暑い空気に押し包まれた。コンクリートの滑走路からの照り返しが眩しく、冗談でなく眩暈を感じて霧島は目を瞬かせた。そそくさと送迎の大型バスに退避する。ターミナルビルというには少々貧弱なメイン施設のロータリーで降ろされた霧島と京哉は、勝手知ったる風のドミニクの背を視界に入れて歩いた。
「上手くクインランのUAV部門に潜り込めればいいのだがな」
「UAV部門に?」
「六つのキィワードだ。ドミニクの言う通りなら戦闘薬と並行で探れる」
「最前線のホットゾーンは勘弁ですもんね」
こんな他国の内戦で命を落とすなど人生設計にない二人だ。
空港を出た二人はクラクラするような日差しの下、ドミニクたちとクインラン・ユガル支社へと歩き始めた。低い山脈に三方を囲まれたユガルの街は二次元的に広く、せいぜい二階建ての建物が並んだ茶色く砂っぽい街だった。メインの通りも片側二車線しかない。
歩道はアスファルトで固められていたが街路樹は時々生えている程度で、それも強すぎる日差しの中でグッタリと肩を落としているようだ。
そもそも街自体に人通りが殆どなく闊歩しているのは兵士らしき者ばかりである。
ここではカランドのお国事情に詳しくなった京哉が解説した。
「この辺りは化石燃料の埋蔵量も多くてガリア地方のレアメタル採取にも便利だから企業本社もこっちに多いんですって。だから首都のエーサより発展してるんですよ」
頷きつつ聞く霧島は窓際に座っていたが、隣に腰掛けた京哉が小柄な躰を余計に小さくしているのを見て苦笑する。三列シートの端には巨漢がどっかり腰を下ろしていたのだ。
その巨漢が霧島と京哉の方に向かって白い歯を見せた。
「よう。そんな格好してオイル屋かい。まさかあんたらも売り込みじゃないよな?」
ラフな英語で話しかけられ霧島が応える。
「ああ、その『売り込み』の方だ。景気はどうだ?」
「懐に得物を呑んでるから、まさかと思ったが本当にそれで売り込みとは驚いたな。景気はそこそこだが、ここ暫く指揮官クラスがピンポイントで殺られてるから、指揮命令系統のまともな所を選ばないと命を短くするぜ。俺はドミニクだ」
「私は霧島、そっちが鳴海だ。あんたは何処を狙っている?」
「クインランだ。あそこはケチだが指揮官が殆ど生き残ってるって話だ。取り敢えず命を存えて、それからゆっくり移籍先を探すのさ」
「そいつはいいプランだな。クインラン、私たちもひとくち乗せて貰うとするか」
「おう、構わないぜ。格好は何だが仲間としちゃ悪くない目をしてる」
喋っている間に中型プロペラ機は地対空ミサイルや高射砲などの攻撃を恐れてか一気に高度を取っていた。それを感じ取って霧島は京哉に囁く。
「だが、こんな危ない所に何故子供の乗った大型バスなんだ?」
「何度目かの停戦協定が締結されたときに、国の代表産業である石油化学コンビナートを父兄同伴で社会見学。それでドカーン! ですって」
「堪らんな。無人標的機、ターゲット・ドローンか」
聞きつけて巨漢のドミニクが笑顔で口を挟んだ。
「あんたらは無人機の操作屋なのかい? どうりでインテリめいてると思ったぜ」
ドミニクの言葉を通訳しながら、その口調と笑みに含みがあるのを察知した霧島だったが、意味が分からず京哉に目で訊いた。京哉は苦笑しつつ説明する。
「無人機はタイプによってUAVと呼ばれる比較的大型のものと、ドローンと呼ばれる小型のものがあります。ドローンは部隊でなく個々の兵士で運用できるのが一般的です。完全自律飛行でターゲットを撃破するものもあれば、兵士がリモートコントロールして目標まで誘導するものもある。今後はプログラムや機器の小型化で自律飛行タイプが増えて行くのは当然ですが」
「それくらい知っている。それを組み合わせ敵を叩くのがハンターキラーだからな」
「なら話は早いですね。自律飛行タイプは勿論、リモコンタイプの場合もドローンを動かす人は前線には出て行かない。これは部隊で扱う大型のUAVにも言えることですが」
「だろうな。で?」
「だからですね、そのリモコン操縦士は基地の安全な場所に置かれた操縦機器で遠隔操作するでしょう? すると何ていうか、ちょっと馬鹿にされたりするんです」
「なるほど、前線に出ない臆病者ということか。意味は分かったが下らんな」
戦場に行かず人殺しをするというので疎外されるのだろう。似たものに爆撃機パイロットがある。彼らは敵が高射砲でも設置していない限り、頭上から爆弾を落とすだけというので軍にあっても嫌われることがあるのだ。
更にはスナイパーも毛嫌いされることがある。混乱の戦場では自分の撃った弾が誰を何人殺したのか、果たして当たったのかも定かでない事が多い。放り投げた手りゅう弾だって同じことだ。だがスナイパーは潜んで確実に相手を殺す。または部隊の足を引っ張らせるために兵士を嬲るように傷つけては撤退する。
殺しに貴賤など霧島には馬鹿馬鹿しい限りだが、狙撃手が『卑怯』であり『人道に悖る』という理由で蛇蝎の如く嫌われることがあるのも事実だった。
「下らなくてもね、仕方ないですよ」
元スナイパー、いや、SATにおいては現役のスナイパーでもある京哉が諦めたように肩を竦める。その手を霧島は握り灰色の目で頷いて見せた。『一生、どんなものでも一緒に見てゆく』、『二度と独りでトリガを引かせない』という誓いと想いを込めて。京哉は薄い笑いをやめ、真顔になってから本当に嬉しい微笑みを浮かべた。
「――けどクインランはUAVにも力を入れてるって話だ、狙い目ではあるぞ」
一人で喋っていたドミニクに霧島は相槌を打つ。
「卑怯者、結構だ。だが戦闘薬でギグに参加するのも悪くないのだがな」
「何だ、あんたジャンキーに見えないが。けど心配しなくていいぜ。前線まで行かなくても最近はPTSDを嫌って、ミサイルのスイッチを押すだけの奴にも戦闘薬を配るからな」
「そんなにありふれたブツなのか?」
「まあな。ここの戦争はPSC同士の代理戦争だ。全てをクールかつシステマチックに動かすためには必要なんだろうよ。ジャンキー除隊も多いらしいがな」
「ふうん。そうなった奴らはどうなるんだ?」
「PSCと企業が共同出資した専門病院がしこたま儲けてるさ」
そうして稼いだカネをむしり取られ、本人が治った気になれば再び戦場に出る。そのループに嵌った人間が多いとドミニクは笑った。何ともシビアな世界だった。
「かくいう俺の相棒もそろそろヤバくてな。おい、大人しくしてくれよ、パット」
と、通路を挟んだ席に座る細身の戦闘服をドミニクは諭す。パットと呼ばれたその男は落ち着きなく膝を揺らし、何度も瞬きを繰り返していた。初期の禁断症状だ。
霧島も京哉も特別任務の中で敵に拉致られ、ブツは違うがクスリ漬けにされたことがある。依存から脱するまでの苦しみを思い出してしまい、何となく掛ける言葉を失っているうちに中型機は降下を始めた。やがて無事にユガル空港に到着しランディングする。
並んで降機してみるとアマラより更に暑い空気に押し包まれた。コンクリートの滑走路からの照り返しが眩しく、冗談でなく眩暈を感じて霧島は目を瞬かせた。そそくさと送迎の大型バスに退避する。ターミナルビルというには少々貧弱なメイン施設のロータリーで降ろされた霧島と京哉は、勝手知ったる風のドミニクの背を視界に入れて歩いた。
「上手くクインランのUAV部門に潜り込めればいいのだがな」
「UAV部門に?」
「六つのキィワードだ。ドミニクの言う通りなら戦闘薬と並行で探れる」
「最前線のホットゾーンは勘弁ですもんね」
こんな他国の内戦で命を落とすなど人生設計にない二人だ。
空港を出た二人はクラクラするような日差しの下、ドミニクたちとクインラン・ユガル支社へと歩き始めた。低い山脈に三方を囲まれたユガルの街は二次元的に広く、せいぜい二階建ての建物が並んだ茶色く砂っぽい街だった。メインの通りも片側二車線しかない。
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