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第40話 画像解説付属
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「ゲーム会社またはIT企業にできることで『自然な形で皆に知られたい』ことなんてあるのかなあ? 例えばゲームをフライトシミュレータとして使うとか。結構高く売れそうですけど」
「リライがまさにそれでカランド政府から専用コントローラの販売認可を受けたな」
「専用コントローラの存在でハンターキラーは爆発的にヒットしたんですよね」
「全てが仕組まれたものだとすれば、ハンターキラーのヒット自体もそうなのかも知れんな。大手ゲーム会社の下請けが、親会社をすっ飛ばしての大ヒットだ」
オレンジ一個を分け合って食べると京哉は洗面所で手を洗ってきた。
「じゃあハンターキラーのヒットにも意味があるって言うんですか?」
「かも知れん。『にも意味がある』のではなく『ヒットに意味がある』のか……」
「ハンターキラーの中に何か特殊な、例えばサブリミナル的な仕掛けがあるとか?」
「それでゲーマーの意志を自在に動かすのか? だめだな」
「どうしてだめなんですか?」
「クインランとリライ事務にマクミラン、誰も得していないからだ。幾らどんなものでもカネに替える錬金術師でも、世界各国のゲーマーが起こすテロをどうやって稼ぎに繋げるんだ? リライはともかくクインランやマクミランが根を張るのはこのカランドだけだ」
却下されて京哉は口を尖らせた。だが霧島の意見は正しいと認めざるを得ない。
「うーん、ナルコム社にハンターキラーかあ。結局そこに戻ってきちゃいましたね」
「そこに隠れたキィが私たちの上が狙う『何か』ではないかと思う」
「貴方の予測が当たってるなら僕らがドン引きしそうな『何か』なんですよね……」
「ふん。嫌な予感がしてきたな……堂本一佐、自衛隊か」
吐き捨てるように言った霧島が京哉の煙草を盗んで咥えようとしたとき、二人の携帯が同時に震え出す。ポケットから出して操作し思わず霧島は仰け反った。
「アルバートから、ソーティだと?」
「わあ、本当だ。〇九三〇時にヘリエプロンに集合ですって」
「前線投入されるのに、この『前線を離れる感』はいったい何なんだろうな」
「遠い目になってないで忍さん。もう九時四分ですよ」
元より着替えて銃も吊っている。水筒に水を詰めて腰に下げ、京哉がAW50のソフトケースを担いで霧島がレーザースコープと気象計を首から提げると準備は終わりだ。居室を出てキィロックすると二人は階段を駆け下りる。
「何なんだ、この非常呼集並みの作戦は!」
「僕に訊かれたって知りませんよ!」
息せき切って駆け付けたのは昨日着いた場所、そこには既に五、六名の兵士たちが集まっていた。灰皿代わりの大きな空き缶を囲んで数名が煙草を吸っている。
哀しい依存症患者の会に霧島は珍しく混ざらずスライド式の大扉を開け放った巨大なカマボコ型の建物を覗いた。そこは格納庫になっていて、昨日から見たかった無人航空機UAVが十機ほども並んでいた。暑さも忘れて見入る。
近くで見ると現物は想像より遥かに大きかった。全長十メートルくらいある。だがどうやっても人は乗れない仕様になっていて、真っ先に気が付くのは窓がない点だ。通常なら透明なキャノピ越しに見えるコクピットがなく、のっぺりと一枚の素材で尾翼近くまでを覆っている様子はまるで顔がないようで少々不気味だった。
泳ぐ魚が上からは海の色に溶け込むよう背が濃い色、下からは日光に紛れて見えないよう腹が白っぽい色をして、一種の擬態をとることをカウンターシェーディングという。同じく戦場を飛ぶ航空機も上からは地面に、下からは空と陽の光に馴染むような塗装をしてあるのが普通だ。
だがこの機は迷彩でもなく本体が薄いグレイ、翼は真っ白である。
それはまるで敵に値するものなどいないという意思表示のようで却って威圧感を与えるに充分だった。実際この機はあらゆる機能を人の代わりに詰め込んでいる。
最新式のレーダーシステムが複数系統あり、敵レーダーに感知されづらいステルス性も備え、武装もミサイル二基の他にロケット弾や二十五ミリチェーンガンまで積んでいた。
「こんな大きな物体と自分が一体化しているとは予想外だった」
しみじみ呟いた霧島に京哉が微笑みを浮かべる。男の子に還った愛し人は非常に嬉しそうに灰色の目を輝かせていて、霧島が嬉しければ自分も嬉しいのが京哉だ。
「UAVにも色々ありますよ、戻ってきたのを捕虫網で捕まえるくらいのもあるし。日本では二百グラム以下だとUAVとは呼ばないんですけど」
「ふうん、そうなのか?」
「逆にもっと大きなの、古くて使わなくなった航空機をUAVにすることもありますし」
「それは豪快だな。他国の砂漠か何処かで撃ち落としたら気持ち良かろうな」
「そうですね。でも感心してないで、ほら、点呼ですって」
点呼で確認した面々を眺めると、ドミニクとパットの他ウィノナがいてサイラスがいた。あとも少々緊張の面持ちで、どうやら新入りばかりが集められたらしい。
それでもここのPSCは兵員を自社栽培しない方針だということで、皆が傭兵かそれに準じた生活をしてきた筈である。故に霧島は自分と京哉の二人だけが本当の初心者なのだと改めて思ってみたが全く実感はない。
下手すると戦争より危険な特別任務に従事してきたため緊張感は微塵もなかった。
やってきた上司はアルともう一人、Tシャツにアーマーベストの中年男である。
「リライがまさにそれでカランド政府から専用コントローラの販売認可を受けたな」
「専用コントローラの存在でハンターキラーは爆発的にヒットしたんですよね」
「全てが仕組まれたものだとすれば、ハンターキラーのヒット自体もそうなのかも知れんな。大手ゲーム会社の下請けが、親会社をすっ飛ばしての大ヒットだ」
オレンジ一個を分け合って食べると京哉は洗面所で手を洗ってきた。
「じゃあハンターキラーのヒットにも意味があるって言うんですか?」
「かも知れん。『にも意味がある』のではなく『ヒットに意味がある』のか……」
「ハンターキラーの中に何か特殊な、例えばサブリミナル的な仕掛けがあるとか?」
「それでゲーマーの意志を自在に動かすのか? だめだな」
「どうしてだめなんですか?」
「クインランとリライ事務にマクミラン、誰も得していないからだ。幾らどんなものでもカネに替える錬金術師でも、世界各国のゲーマーが起こすテロをどうやって稼ぎに繋げるんだ? リライはともかくクインランやマクミランが根を張るのはこのカランドだけだ」
却下されて京哉は口を尖らせた。だが霧島の意見は正しいと認めざるを得ない。
「うーん、ナルコム社にハンターキラーかあ。結局そこに戻ってきちゃいましたね」
「そこに隠れたキィが私たちの上が狙う『何か』ではないかと思う」
「貴方の予測が当たってるなら僕らがドン引きしそうな『何か』なんですよね……」
「ふん。嫌な予感がしてきたな……堂本一佐、自衛隊か」
吐き捨てるように言った霧島が京哉の煙草を盗んで咥えようとしたとき、二人の携帯が同時に震え出す。ポケットから出して操作し思わず霧島は仰け反った。
「アルバートから、ソーティだと?」
「わあ、本当だ。〇九三〇時にヘリエプロンに集合ですって」
「前線投入されるのに、この『前線を離れる感』はいったい何なんだろうな」
「遠い目になってないで忍さん。もう九時四分ですよ」
元より着替えて銃も吊っている。水筒に水を詰めて腰に下げ、京哉がAW50のソフトケースを担いで霧島がレーザースコープと気象計を首から提げると準備は終わりだ。居室を出てキィロックすると二人は階段を駆け下りる。
「何なんだ、この非常呼集並みの作戦は!」
「僕に訊かれたって知りませんよ!」
息せき切って駆け付けたのは昨日着いた場所、そこには既に五、六名の兵士たちが集まっていた。灰皿代わりの大きな空き缶を囲んで数名が煙草を吸っている。
哀しい依存症患者の会に霧島は珍しく混ざらずスライド式の大扉を開け放った巨大なカマボコ型の建物を覗いた。そこは格納庫になっていて、昨日から見たかった無人航空機UAVが十機ほども並んでいた。暑さも忘れて見入る。
近くで見ると現物は想像より遥かに大きかった。全長十メートルくらいある。だがどうやっても人は乗れない仕様になっていて、真っ先に気が付くのは窓がない点だ。通常なら透明なキャノピ越しに見えるコクピットがなく、のっぺりと一枚の素材で尾翼近くまでを覆っている様子はまるで顔がないようで少々不気味だった。
泳ぐ魚が上からは海の色に溶け込むよう背が濃い色、下からは日光に紛れて見えないよう腹が白っぽい色をして、一種の擬態をとることをカウンターシェーディングという。同じく戦場を飛ぶ航空機も上からは地面に、下からは空と陽の光に馴染むような塗装をしてあるのが普通だ。
だがこの機は迷彩でもなく本体が薄いグレイ、翼は真っ白である。
それはまるで敵に値するものなどいないという意思表示のようで却って威圧感を与えるに充分だった。実際この機はあらゆる機能を人の代わりに詰め込んでいる。
最新式のレーダーシステムが複数系統あり、敵レーダーに感知されづらいステルス性も備え、武装もミサイル二基の他にロケット弾や二十五ミリチェーンガンまで積んでいた。
「こんな大きな物体と自分が一体化しているとは予想外だった」
しみじみ呟いた霧島に京哉が微笑みを浮かべる。男の子に還った愛し人は非常に嬉しそうに灰色の目を輝かせていて、霧島が嬉しければ自分も嬉しいのが京哉だ。
「UAVにも色々ありますよ、戻ってきたのを捕虫網で捕まえるくらいのもあるし。日本では二百グラム以下だとUAVとは呼ばないんですけど」
「ふうん、そうなのか?」
「逆にもっと大きなの、古くて使わなくなった航空機をUAVにすることもありますし」
「それは豪快だな。他国の砂漠か何処かで撃ち落としたら気持ち良かろうな」
「そうですね。でも感心してないで、ほら、点呼ですって」
点呼で確認した面々を眺めると、ドミニクとパットの他ウィノナがいてサイラスがいた。あとも少々緊張の面持ちで、どうやら新入りばかりが集められたらしい。
それでもここのPSCは兵員を自社栽培しない方針だということで、皆が傭兵かそれに準じた生活をしてきた筈である。故に霧島は自分と京哉の二人だけが本当の初心者なのだと改めて思ってみたが全く実感はない。
下手すると戦争より危険な特別任務に従事してきたため緊張感は微塵もなかった。
やってきた上司はアルともう一人、Tシャツにアーマーベストの中年男である。
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