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第4話
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「お葬式はお互い制服に喪章でいいとして。今回の任務は【疑惑解明に従事】かあ」
「妙に曖昧だな、ホシを挙げろっつー訳でもねぇし」
「でも僕はシドの制服姿って見たことないから、ちょっと愉しみ。黒髪に黒い目で黒い制服かあ。前の件で盛装した時も黒が似合ってたし、惚れ直しちゃうかも」
意外と暢気なハイファにシドは呆れる。
「お前、どんな目で自分が見られるのか分かってるのか?」
「そりゃあね、そこまで能天気じゃありません。でも今考えても仕方ないじゃない。それより僕は今晩のメニューの方が心配。冷蔵庫の中身、片付けとかなきゃ」
「冷蔵庫なあ、充分能天気だぜ。なら申請書と武器庫解錠、んで制服持って帰るか」
FAX形式の捜査戦術コンに申請書を流すと課長に武器庫の解錠を申し出た。
二人はオイル臭の充満した武器庫に入って扉を閉める。
太陽系の星系政府は私服司法警察職員に通常時の銃の所持を認めていない。同僚たちが持っている武器はリモータ搭載のスタンレーザーのみだが、それすら殆ど使わない。
しかしイヴェントストライカとそのバディに限っては、この限りではなかった。二人にとって銃はもはや生活必需品、捜査戦術コンも必要性を認めている。
シドが常に携帯しているのはレールガンだった。
針状通電弾体、いわゆるフレシェット弾を三桁もの連射が可能な巨大な代物で、その威力はマックスパワーなら五百メートルもの有効射程を誇る危険物である。
テラ本星セントラルの惑星警察を統括する中央本部直轄の武器開発課が発明した奇跡の銃とされ、二丁しか存在しなかったが一丁はサイキ戦で壊されたので今は予備がない。
その残りであるたった一丁もシド専用で、他の者には使いこなせない上に捜査戦術コンの許可も下りない。
シド個人のカスタムメイドと称しても過言ではない巨大レールガンはこれも専用のヒップホルスタに収め右腰から下げてなお突き出した長い銃身をホルスタ付属のバンドで大腿部に留めて保持していた。
パワーは桁外れだがフレシェット弾自体は針の如く細いのでかさばらないのが利点である。本体を満タンにして更に三百発入りの予備弾の小箱をポケットに入れた。
それとサイドアームに火薬カートリッジ式の旧式銃を選ぶ。
小型セミ・オートマチック・ピストルはAD世紀から使用されている純粋な機械式機構で、惑星警察制式拳銃のシリルM220なる品だ。
手入れは面倒で見た目より重く発射可能弾数は薬室一発マガジン九発の計十発のみ。殆ど利点はないようだが一切の電子部品を使用していないこれがEシンパスとの対決で最後にものを言った。
満タンの予備弾倉を二本持つ。弾は硬化プラだが至近距離なら殺傷能力は充分だ。
一方ハイファの愛銃はソフトスーツの上着の懐、ドレスシャツの左脇にショルダーホルスタでいつも吊っているパウダーカートリッジ式のこれも旧式銃だ。
大昔の名銃テミスM89をコピーしたもので別室任務の際に他星系で拾ってきたらしい。
チャンバ一発ダブルカーラムマガジン十七発、合計十八連発の大型セミ・オート・ピストルは使用弾が認可された硬化プラではなくフルメタルジャケット・九ミリパラベラムで、パワーコントロール不能な銃本体と共に異種人類の集う最高立法機関である汎銀河条約機構のルール・オブ・エンゲージメント、交戦規定に違反している。
登録はしてあるが元より私物で別室長に手を回して貰い、特権的に使用しているのだ。
だったら密かに隠しているかと云えばそうでもなく、暑ければ何ら構わずジャケットを脱いで人目に晒す悪徳軍人だ。これで転属してきた新人刑事とは笑わせる。
ともかくスペアマガジン二本が自室に置いてあるのをシドも知っていて、おそらく全て満タンで都合五十二発の九ミリパラを持ち歩くのだろうと予測はついた。
サイドアームにはレーザーガンのロデスM480を選んでいる。惑星警察の制式銃のひとつで、ベルトに通すヒップホルスタに収めても気づかれないほど小型だ。
二人して計四丁の銃を分解・整備する。ときに自分の命を預けるモノだ、幾ら武器係が定期整備しているとはいえ、己の手と目で確かめておくのが鉄則だった。
シドはシリルをフィールドストリッピングという簡易分解した。内部機構を確認すると殆ど使用していない新品同様の品である。満足して組み立て直した。
あとは満タンに装填したマガジンを叩き込み、銃上部の遊底を素早く引いてチャンバに装弾する。もう一度マガジンキャッチを押してマガジンを抜き、装弾されて減った一発をリロード、再度マガジンを入れて安全装置をかけた。スプリングの固すぎないスペアマガジンを選び硬化プラ弾を満タンに装填してマガジンパウチに収める。
これも対衝撃ジャケットのポケットに突っ込んだ。
シリル本体はインサイドパンツホルスタで腹のやや左に差し込んで保持する。もし巨大レールガンを持ち込めない場に出くわしたらコンシールドキャリー、いわゆる隠し持って他人に悟らせないよう持ち込める、このシリルで乗り切るしかない。
次にレールガンをバラし絶縁体や電磁石の摩耗度合いをマイクロメータで測る。
「ここの武器係の人って几帳面だね。反射鏡が超綺麗」
本来、旧式の有反動銃を好むハイファだがここのレーザーは気に入ったらしい。
「武器係な。今度紹介してやるよ。お前に劣らずのヲタでおまけに女だがな」
「えっ、女性? ふうん、シドってば僕に女性を紹介するなんて大した自信だね」
「幾らお前がバイセクシュアルったって、あれはなー。自身っつー問題じゃねぇような、ちょいと変わってるっつーか……まあ、そのうちな」
「愉しみだなあ。あ、それより別室から僕のリモータにバルナ行きのBELやら軌道エレベーターやらのチケットだのクレジットだのがきてた。勿論、二人分」
軌道エレベーターはテラ本星と地上五百キロに浮かぶバルナを結ぶ長いチューブ状の交通機関の一種だ。
「そうか。なら制服と制帽とってくる。喪章、お前の分も」
「ん、サンクス」
「妙に曖昧だな、ホシを挙げろっつー訳でもねぇし」
「でも僕はシドの制服姿って見たことないから、ちょっと愉しみ。黒髪に黒い目で黒い制服かあ。前の件で盛装した時も黒が似合ってたし、惚れ直しちゃうかも」
意外と暢気なハイファにシドは呆れる。
「お前、どんな目で自分が見られるのか分かってるのか?」
「そりゃあね、そこまで能天気じゃありません。でも今考えても仕方ないじゃない。それより僕は今晩のメニューの方が心配。冷蔵庫の中身、片付けとかなきゃ」
「冷蔵庫なあ、充分能天気だぜ。なら申請書と武器庫解錠、んで制服持って帰るか」
FAX形式の捜査戦術コンに申請書を流すと課長に武器庫の解錠を申し出た。
二人はオイル臭の充満した武器庫に入って扉を閉める。
太陽系の星系政府は私服司法警察職員に通常時の銃の所持を認めていない。同僚たちが持っている武器はリモータ搭載のスタンレーザーのみだが、それすら殆ど使わない。
しかしイヴェントストライカとそのバディに限っては、この限りではなかった。二人にとって銃はもはや生活必需品、捜査戦術コンも必要性を認めている。
シドが常に携帯しているのはレールガンだった。
針状通電弾体、いわゆるフレシェット弾を三桁もの連射が可能な巨大な代物で、その威力はマックスパワーなら五百メートルもの有効射程を誇る危険物である。
テラ本星セントラルの惑星警察を統括する中央本部直轄の武器開発課が発明した奇跡の銃とされ、二丁しか存在しなかったが一丁はサイキ戦で壊されたので今は予備がない。
その残りであるたった一丁もシド専用で、他の者には使いこなせない上に捜査戦術コンの許可も下りない。
シド個人のカスタムメイドと称しても過言ではない巨大レールガンはこれも専用のヒップホルスタに収め右腰から下げてなお突き出した長い銃身をホルスタ付属のバンドで大腿部に留めて保持していた。
パワーは桁外れだがフレシェット弾自体は針の如く細いのでかさばらないのが利点である。本体を満タンにして更に三百発入りの予備弾の小箱をポケットに入れた。
それとサイドアームに火薬カートリッジ式の旧式銃を選ぶ。
小型セミ・オートマチック・ピストルはAD世紀から使用されている純粋な機械式機構で、惑星警察制式拳銃のシリルM220なる品だ。
手入れは面倒で見た目より重く発射可能弾数は薬室一発マガジン九発の計十発のみ。殆ど利点はないようだが一切の電子部品を使用していないこれがEシンパスとの対決で最後にものを言った。
満タンの予備弾倉を二本持つ。弾は硬化プラだが至近距離なら殺傷能力は充分だ。
一方ハイファの愛銃はソフトスーツの上着の懐、ドレスシャツの左脇にショルダーホルスタでいつも吊っているパウダーカートリッジ式のこれも旧式銃だ。
大昔の名銃テミスM89をコピーしたもので別室任務の際に他星系で拾ってきたらしい。
チャンバ一発ダブルカーラムマガジン十七発、合計十八連発の大型セミ・オート・ピストルは使用弾が認可された硬化プラではなくフルメタルジャケット・九ミリパラベラムで、パワーコントロール不能な銃本体と共に異種人類の集う最高立法機関である汎銀河条約機構のルール・オブ・エンゲージメント、交戦規定に違反している。
登録はしてあるが元より私物で別室長に手を回して貰い、特権的に使用しているのだ。
だったら密かに隠しているかと云えばそうでもなく、暑ければ何ら構わずジャケットを脱いで人目に晒す悪徳軍人だ。これで転属してきた新人刑事とは笑わせる。
ともかくスペアマガジン二本が自室に置いてあるのをシドも知っていて、おそらく全て満タンで都合五十二発の九ミリパラを持ち歩くのだろうと予測はついた。
サイドアームにはレーザーガンのロデスM480を選んでいる。惑星警察の制式銃のひとつで、ベルトに通すヒップホルスタに収めても気づかれないほど小型だ。
二人して計四丁の銃を分解・整備する。ときに自分の命を預けるモノだ、幾ら武器係が定期整備しているとはいえ、己の手と目で確かめておくのが鉄則だった。
シドはシリルをフィールドストリッピングという簡易分解した。内部機構を確認すると殆ど使用していない新品同様の品である。満足して組み立て直した。
あとは満タンに装填したマガジンを叩き込み、銃上部の遊底を素早く引いてチャンバに装弾する。もう一度マガジンキャッチを押してマガジンを抜き、装弾されて減った一発をリロード、再度マガジンを入れて安全装置をかけた。スプリングの固すぎないスペアマガジンを選び硬化プラ弾を満タンに装填してマガジンパウチに収める。
これも対衝撃ジャケットのポケットに突っ込んだ。
シリル本体はインサイドパンツホルスタで腹のやや左に差し込んで保持する。もし巨大レールガンを持ち込めない場に出くわしたらコンシールドキャリー、いわゆる隠し持って他人に悟らせないよう持ち込める、このシリルで乗り切るしかない。
次にレールガンをバラし絶縁体や電磁石の摩耗度合いをマイクロメータで測る。
「ここの武器係の人って几帳面だね。反射鏡が超綺麗」
本来、旧式の有反動銃を好むハイファだがここのレーザーは気に入ったらしい。
「武器係な。今度紹介してやるよ。お前に劣らずのヲタでおまけに女だがな」
「えっ、女性? ふうん、シドってば僕に女性を紹介するなんて大した自信だね」
「幾らお前がバイセクシュアルったって、あれはなー。自身っつー問題じゃねぇような、ちょいと変わってるっつーか……まあ、そのうちな」
「愉しみだなあ。あ、それより別室から僕のリモータにバルナ行きのBELやら軌道エレベーターやらのチケットだのクレジットだのがきてた。勿論、二人分」
軌道エレベーターはテラ本星と地上五百キロに浮かぶバルナを結ぶ長いチューブ状の交通機関の一種だ。
「そうか。なら制服と制帽とってくる。喪章、お前の分も」
「ん、サンクス」
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