Blue Revolution[青の公転]~楽園2~

志賀雅基

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第40話

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 シートベルトを外しつつセンリーが問うも、パイロットたちは混乱のさなかにあった。急遽行われた本社社長視察で緊張していたところに持ってきてこの有様である。

「分かりませんっ、何処からか発信された強い誘導波に制御を奪われてますっ!」
「この星でそんな機材があるのは宙港くらいでしょう。どういうことですか?」

 パイロットとコ・パイロットは泣きそうだった。お陰で何を訊かれても、

「分かりません」

 と、繰り返すばかりだ。実際、原因不明らしいので仕方がないといえる。

 そこでセンリーは自らパイロット席に赴いて操縦不能からの脱出を試みた。

 その間にもBELはどんどん降下し、今にも黒い鬱蒼とした森に機体の腹を擦りそうになる。けれど元宙軍士官候補のセンリーはアビオニクスを一部カットし、完全手動状態での飛行を可能にした。さすがはセンリー、BELはその機体を僅かに上昇させる。

 しかし直後に機体後部で爆発音が響き、途端に機体姿勢が不安定となった。
 いよいよの異常事態にシドは後部へと駆け寄り、窓外を注視した。

「センリー、だめだ! 低空へ降ろせ! 最減速で着陸、全員、対ショック姿勢!」
「何故ですか、着陸地点も見えません!」
「RPG、携帯式ロケット砲で狙われてるぞ! いや、この速度で当ててきた辺り、ただのロケットじゃねぇ、ホーミング・ミサイルかも知れねぇな」
「何ですって? それなら尚更、高度を取らないと……うっ!」

 二発目の直撃を食らい、姿勢安定に欠かせない三角翼が派手に飛び散るのが薄暗がりでもはっきりシドの目に映った。喋っていたセンリーは衝撃で舌を噛んだらしい。

「何処でもいいから降りろ、出張所は遠いのか!」
「やってますし、もう見えてますっ! この辺りは森ばかり、あそこの前庭しか降りられません! かなりのハードランディングになります、掴まってて下さいね!」

 そしてシドたちの乗ったBELは、辺りの木々をなぎ倒しながら出張所の前庭に火花を散らしつつ滑り込み、かろうじて森に鼻先を突っ込んだ状態で停止した。
 反重力装置は燃料が要らないので爆発の危険がない。それだけは幸いだった。 

 唐突にドアが外から開いた。
 開くなり湧いた怒号は皆に「降りろ!」と急かしている。急かすだけならともかく、銃を構えて威嚇する相手に逆らっても良いことはなさそうで、仕方なく皆がシートベルトを外した。
 パイロットとコ・パイを先頭にマクリスタル支社長と部長にセンリー、マルチェロ医師の順に降りる。
 誰もが打ち身程度で大した怪我はなかったが、ラッキィと思う者もいなかった。

 外にも待ち受けていた多数の武装集団と、彼らに供されたのであろう武器を持った鉱区民たちによって、降りる片端からメンバーは両手を後頭部で組まされる。
 それらの様子をシドとハイファは後部座席の更に後ろ、乗員の手荷物などを入れておく狭い貨物庫に半ば身をねじ込んだ姿勢で窓から覗いていた。

 クリティカルな日常に慣れた二人は不時着時には既にここで身を寄せ合い頭を下げて、監視の目を逃れることに成功していた。
 予測不能の事態、イコール、凶事と心得ている。

「来たよ、来た来た! イヴェント到来、もうこの言葉は解禁だよね?」
「このまま革命に突っ走らなきゃいいけどな。RPGだかミサイルだか知らねぇが、んな物騒なモンまで持ち出して、今度こそはって意気込み感じるぜ」

 外では武装テロリスト集団の首領らしき迷彩服を着た大男が、二人にとって既に馴染みとなった科白で以て演説を一席ぶっていた。

「我々は共同革命戦線・紅い虹だっ! テラ本星の、各星系政府への干渉を――」

 うんうんと頷きながらハイファは妙に嬉しそうに目を輝かせている。

「なんかサ、ここまで来ると応援したくなったりしない?」
「お前、結構余裕な。それに何だって嬉しいんだ?」
「だって今度こそシドと刑事のバディに戻れるかもって気がして。テロリスト、早くやっつけようよ……って、まあ冗談だけど。先にプランを練らないとね」
「テメェで言うのも何だが俺よりお前が常識的であって欲しいからな、助かったぜ」

 二人して特攻精神を発揮するのは無謀というものだ。

「任せてって言いたいけど、たぶん他の人から見たら僕も貴方と常識度は変わらないと思うよ。バディである以上やることは同じなんだから。それよりさっさとスプラッタは終わらせて早く帰りたいな。僕の用事は殆ど済んだから」
「済んだって……そうか」

 テロリストから与えられた持ち慣れぬ武器で支社長以下六名を脅している鉱夫らの髪は赤毛、それも所々に本物の真紅が束で混ざった赤毛だった。

 見覚えあるそれはハイファを『坊ちゃん』と呼び、子供の頃から愛情を注いでくれてきたエレア=カシス、その人と全く同じものだった。
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