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第13話
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「――京哉……京哉!」
「んっ……忍さん、どうして?」
出した声は嗄れていて自分でも笑えるくらいだった。そんな自分を霧島が約二十センチの超至近距離から覗き込んでいて、驚いて身を起こそうとしたが躰も言うことを聞かない。口移しで水を飲ませて貰い、潤った喉からやっと声が出せるようになる。
「もしかして僕、また?」
「すまん。病人相手に例の如く失神させてしまった」
「はあ、そうでしたか。でも……忍さんは?」
一応状況を把握するべく慎ましくも控えめな声でナニの結末を訊いた訳だが、霧島は堂々としたもので機嫌良く報告した。
「私も久しぶりに一滴も出ん状態になった。少々足腰にきたのも久しぶりで――」
「はいはい、分かりましたから。それで僕はどのくらい寝てたんでしょうか?」
「そうだな。一時間半くらいか」
言われて窓外がもう薄明るいのに気付く。腕時計を見ると五時半だった。
「なら忍さんは眠っていないんですね。どうせ休みですし、今からでも寝て下さい」
「その前に私もお前もシャワーだ。汗もかいたし、お前も全身カピカピだぞ」
「カピカピ……」
「シーツもバリバリに糊付けされて――」
「わああ~っ、分かりましたから! 上品な顔してそれ以上は言わないで下さい!」
だが京哉は足腰が立たない。
仕方なく霧島に抱き運ばれてシャワーを浴びる。上がって下着とパジャマを身に着けさせて貰い、霧島がシーツを交換するのを眺めた。
再びベッドに着地させられると体温計を口に突っ込まれる。電子音で引き抜いてみると三十七度五分だった。汗だのアレだのと一緒に熱も随分と排出されたらしい。
「よし、かなり下がったな。食欲があるなら何か作るが、どうする?」
「今週の食事当番は僕ですよ?」
「足腰も立たん奴が何を言っている。いいから私に任せろ」
「すみません、じゃあお願いします」
あれだけ運動をしてラーメンと餃子などとっくに消化してしまい、二人とも腹が減っていた。そこで霧島がキッチンに消え、十五分ほどでトレイを持って戻ってくる。
「わあ、美味しそうな匂いですね。何を作ってくれたんですか?」
「冷凍の鍋焼きうどんを土鍋に移して鶏肉と卵を増量した。我ながら出来がいいぞ」
ナイトテーブルに置かれたトレイの上には小さめの土鍋が鎮座していた。ふたを開けて見せて貰う。するとまだうどんはくつくつと煮立っていた。
それを霧島はレンゲに載せて少し冷ましながら、京哉に「あーん」してくれる。自分の口にも運びつつ、甲斐甲斐しく京哉の面倒をみる霧島は非常に愉しそうだった。
熱いうどんを男二人であっという間に食い尽くし、霧島が後片付けをする傍でキッチンまで運んで貰った京哉は至福の煙草タイムだ。二本吸って満足すると寝室に戻って霧島とベッドに横になった。大事件でも起こらない限り今日明日は休みだ。
「忍さん、おやすみなさい。忍さん?」
京哉に腕枕を寄越し、足も絡めた霧島は既に寝息を立てていた。
「んっ……忍さん、どうして?」
出した声は嗄れていて自分でも笑えるくらいだった。そんな自分を霧島が約二十センチの超至近距離から覗き込んでいて、驚いて身を起こそうとしたが躰も言うことを聞かない。口移しで水を飲ませて貰い、潤った喉からやっと声が出せるようになる。
「もしかして僕、また?」
「すまん。病人相手に例の如く失神させてしまった」
「はあ、そうでしたか。でも……忍さんは?」
一応状況を把握するべく慎ましくも控えめな声でナニの結末を訊いた訳だが、霧島は堂々としたもので機嫌良く報告した。
「私も久しぶりに一滴も出ん状態になった。少々足腰にきたのも久しぶりで――」
「はいはい、分かりましたから。それで僕はどのくらい寝てたんでしょうか?」
「そうだな。一時間半くらいか」
言われて窓外がもう薄明るいのに気付く。腕時計を見ると五時半だった。
「なら忍さんは眠っていないんですね。どうせ休みですし、今からでも寝て下さい」
「その前に私もお前もシャワーだ。汗もかいたし、お前も全身カピカピだぞ」
「カピカピ……」
「シーツもバリバリに糊付けされて――」
「わああ~っ、分かりましたから! 上品な顔してそれ以上は言わないで下さい!」
だが京哉は足腰が立たない。
仕方なく霧島に抱き運ばれてシャワーを浴びる。上がって下着とパジャマを身に着けさせて貰い、霧島がシーツを交換するのを眺めた。
再びベッドに着地させられると体温計を口に突っ込まれる。電子音で引き抜いてみると三十七度五分だった。汗だのアレだのと一緒に熱も随分と排出されたらしい。
「よし、かなり下がったな。食欲があるなら何か作るが、どうする?」
「今週の食事当番は僕ですよ?」
「足腰も立たん奴が何を言っている。いいから私に任せろ」
「すみません、じゃあお願いします」
あれだけ運動をしてラーメンと餃子などとっくに消化してしまい、二人とも腹が減っていた。そこで霧島がキッチンに消え、十五分ほどでトレイを持って戻ってくる。
「わあ、美味しそうな匂いですね。何を作ってくれたんですか?」
「冷凍の鍋焼きうどんを土鍋に移して鶏肉と卵を増量した。我ながら出来がいいぞ」
ナイトテーブルに置かれたトレイの上には小さめの土鍋が鎮座していた。ふたを開けて見せて貰う。するとまだうどんはくつくつと煮立っていた。
それを霧島はレンゲに載せて少し冷ましながら、京哉に「あーん」してくれる。自分の口にも運びつつ、甲斐甲斐しく京哉の面倒をみる霧島は非常に愉しそうだった。
熱いうどんを男二人であっという間に食い尽くし、霧島が後片付けをする傍でキッチンまで運んで貰った京哉は至福の煙草タイムだ。二本吸って満足すると寝室に戻って霧島とベッドに横になった。大事件でも起こらない限り今日明日は休みだ。
「忍さん、おやすみなさい。忍さん?」
京哉に腕枕を寄越し、足も絡めた霧島は既に寝息を立てていた。
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