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第71話(BL特有シーン・回避可)
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「えっ、だって僕は……」
鼻を鳴らして霧島は笑い、婀娜っぽいような目で京哉を見た。あれから初めてそんな目で見られた京哉はぞくりと身を震わせて視線を外す。
しかし霧島は強引に視線を合わせてきた。外せない視線から逃れようとする間に視界が滲みぼやけてくる。
抑えきれず吐息を浅く速くしながらも、京哉は眩しすぎる霧島の笑顔に酷く哀しい想いを抱いて泣きそうになっていた。がっかりされたくない、諦められたくない。
それなのに我が身は反応する気配も見せなくて、どうしていいか分からない。
愛しい年上の男の切れ長の目は溢れそうに情欲を湛えている。その逞しい躰は男の色気が匂い立つようだった。灰色の目は情欲が溢れそうだ。そう思うのに、欲しいのに、何故反応しないんだろう。
茫洋とベッドに座り込んでいると傍に霧島も腰を落とす。思わず離れようと膝立ちになった。霧島が京哉の右手首を握って留める。互いにお揃いの黒いシルクサテンのパジャマを着ていて、妙なシチュエーションに京哉は笑い出していた。
涙が出るほど無意味に笑いベッドに横になる。背を向けた京哉に霧島の低く甘い声が投げられた。
「おやすみ、ゆっくり寝ろ」
「忍さんは何処に行くんですか?」
「私はリビングのソファで寝てくる」
「少し離れても一緒に寝てたじゃないですか。それとも僕と寝るのは嫌ですか?」
「そうじゃないが、やはり今日は我慢しておく」
毛布を跳ね除けて身を起こすなり京哉はあぐらをかいたままの霧島を睨みつける。
「そんな……答えを逸らさないで下さい! できない僕が嫌ならそう言えばいいでしょう! 一緒に寝ても無駄ってはっきり言ったらどうですか!」
「京哉、それは違う。私の側の問題なんだ」
「嘘つかないで! やれないから一緒に寝られないんでしょう? やれたら別に寝る必要なんかない筈です! そんな目で僕を見て口で言うよりやりたいって物語ってるじゃないですか! 僕だって抱かれたくて、貴方に思い切り抱かれたくて、でも心どころか躰まで壊れて……こんな僕は要らないって言えばいいじゃないですかっ!」
そんな酷いことを霧島は思っていない、思う訳がないと知っていた。
何よりも大切に思い愛してくれている。一度ならず命懸けで護ってくれてこの自分のために霧島が流した血の色も忘れはしない。互いに互いを同じく愛し合っていた。
でも京哉は暴発を止められなかった。分からないのは霧島でなく自分だった。
叫んだ理由も自分が霧島にどうして欲しいのかも分からない。分からないが胸一杯に溜め込んでしまったものを今、吐き出してしまわなければ、もう二度と霧島を受け入れることができなくなりそうで怖かったのだ。
だからといって吐き出せば受け入れられるのかといえば、それも分からない。
何も分からない、あらゆるものが壊れて治るのかどうかも知れない。一生このままということもあり得た。だがそんな恐怖をぶつけても霧島も困るだろう。事実として霧島も今の京哉を丸ごと受け入れることはできないのだから。
そう、まさにあの立川拓真が投げた呪詛の如き言葉の通りに。
肩で息をする京哉を霧島は黙って見つめていた。どうすることもできない問題を突きつけられ困惑しているのだろう。やはり自分には霧島にも抜けないトゲが刺さっているのだ。どうしようもないのなら、破綻するまでずっとこのままだ。
抱きたいけれど抱けない。抱かれたいけれど抱かれることはできない。
それなのに自分は霧島に対して、これ以上ない愛情の他に何を求めているのか。
哀れみの目か、宥める言葉か、それとも決定的な拒否か――。
「京哉……覚悟してくれ」
「……何をですか?」
次に聞いた言葉は信じられないものだった。
「私は今からお前を抱く。またお前は壊れるかも知れん」
「って、貴方も知ってる筈です。できるような躰じゃないんですよ、僕は」
「どんなお前でも抱きたい……壊れるくらいに。いや、壊れるなら私が壊してやる」
「……本気で言ってるんですか?」
「もう黙れ……京哉、私の京哉!」
毛布を剥がれ、腕を掴まれて振り回される。逃れられず抱き込まれ、ボタンがちぎれそうな勢いでパジャマを引き剥がされた。素早く霧島も全てを脱いで晒す。
霧島は張り裂けそうに反り返り蜜を零していた。押さえ付けられて身を重ねられ全身で愛撫される。唇を塞がれて歯列を割られ、思い切り舌を吸われて京哉は身を捩った。
渾身の力で押し返そうとしても長身は揺るぎもしない。息が上がるほど求められて思考が真っ白になる。それでも京哉は必死で抵抗した。
「んんぅ……はぁん……やだっ!」
「嫌でも抱く、思い切りな。もう決めた」
なお逃れようとするも、入院生活をしていた京哉はまだ完全には体力が戻っていない。そんな京哉の薄い肩に霧島は顔を埋め、華奢な鎖骨から首筋までを何度も舐めねぶった。
唇で挟んで強く吸い上げ赤く自分の証しを刻みつける。衣服を身に着けても見える処にまで穿たれ、京哉は無我夢中で霧島を押し退けようとした。
だがもう霧島が退けるラインを越えたのは分かっていた。それでも京哉は逃れたい一心で身を捩り、シーツを掴んで這い逃げようとする。軽い京哉はいとも簡単に身を返された。胸に口づけられる。
「京哉、私の京哉……ずっと、ずっと欲しかった……京哉!」
「んっ、あ……忍さん、やめて……いや、あ!」
「止められるか! 京哉、っく……京哉!」
自身の重みで霧島は京哉を押さえ、滑らかな象牙色の肌を擦りつけた。京哉は目茶苦茶に暴れたが力の差を思い知らされるだけ、押し退けられない。
太腿に熱い霧島が当たっていて、もう蜜でとろとろに濡らされている。低く甘い囁きは今や激しい叫びとなって、どれだけ霧島が想いを溜めていたのかを悟らされた。
そのうち暴れすぎた京哉は頭の芯が熱くなり、殆ど躰に力が入らなくなっていた。そんな京哉の下着に霧島は手を掛けようとする。途端に京哉は今度こそリミッタの外れた力で暴れ始めていた。けれど霧島は手を止めない。するりと下着を脱がされる。
「いや、あ……やだ……忍さん、お願い、見ないで下さいっ!!」
絶叫した京哉は目から涙を噴き出させていた。
壊れた自分を誰より霧島に見られたくなかったのだ。壊された直後に見られたのは知っている。だから京哉がどうやって壊されたのか霧島も知っている筈だった。
だがこの酷い有様を目にしてできる訳がない。やれる筈などなかった。決定的に拒否されて可能性を絶対的ゼロにされることこそ京哉は恐れていたのだ。
「京哉……すまん」
やはり想像通りの言葉を耳にして京哉は全身の力を抜いた。分かっていたのだ。
「……もう、いいですから。忍さん、ありがと……あっ、はうっ!」
予想に反して侵入してきた霧島の指が、優しく京哉の中に触れたのだ。ビクリと身を揺らして霧島を見る。脚を開かせ指で京哉を犯しながら霧島は京哉を見返した。
そこには哀れみの目も、宥める言葉も、決定的な拒否もなく、情欲を溜めて溢れそうになっている灰色の目があった。霧島の長い指にとろりと自分が絡むのが分かる。
「忍さん……してくれるんですか?」
「当たり前だ。どれだけ私を我慢させていたのか、証拠を見せてやる」
低く甘い声が聞けて嬉しかった。霧島はいつも通りに指で馴らしては京哉を甘く高く鳴かせてくれる。堪らなくなった京哉は数指を身に咥え込まされたまま、淫らに腰を浮かせて前後させる。
見上げた霧島は医師も驚く回復力で京哉の入院中に胸の固定帯も外れていた。その逞しい胸からはブレナムブーケの上質な清潔感ある香りが立ち上っている。
「ああん……忍さん、いい、そこ……はぁん!」
「京哉、もうお前に入りたい……いいか?」
「こんな、僕でも……?」
「だから何を言っている。私はお前が、お前だけが欲しいんだ」
愛しい男に熱く囁かれた悦びとは裏腹にまた京哉を恐怖が襲った。あの激痛が再現され、更に霧島の躰に拒否される怖さが身を固く硬直させた。
だが傷つき裂かれて広げられたまま殆ど戻らないそこに熱く太く硬いものが侵入してきたかと思うと、最初から激しく京哉を揺らし始める。内襞を掻き回され深い安堵と共に眩暈のような快感が湧いていた。
「はぅん! あっ、あっ……忍さん、いい、ああんっ!」
「お前も、すごくいいぞ……京哉!」
「……嘘、つかないでいい、です……あぅんっ!」
「嘘な訳がないだろう……私の、躰が、証明して――」
突き上げが更に激しくなる。繰り返し貫かれていると京哉は自分の躰の中心が熱く硬くなり、霧島に扱かれているのを知った。また涙が滲む。
霧島が端正な顔を少し歪めているのが堪らなく色っぽい。淫らな水音を聞いているとふいに疼きが堪えがたくなる。
霧島の手の中に弾けさせながら体内を大量のもので濡らされた。
だがあの恐怖は思い出さなかった。霧島のくれる想いがこもっているようで熱く濃いそれが愛しく嬉しい。
「あっ、ふ……このまま貴方を、っん……閉じ込めておきたいかも」
「もっと、どうしようもなく溢れるくらい、濡らしてやる」
力強い腕に抱き上げられる。向かい合い、跪いた霧島の上に乗せられていた。真下から深く京哉を貫いた霧島は思い切り白い躰を抱き締めたまま揺さぶった。
霧島しか知らない処にまで届いて夢中にさせられた京哉もいつもと変わらぬ甘い声で鳴く。
「ああっ、すごい……太い、硬いよ……忍さん、はぅんっ!」
「本当に、壊して、医者に怒られるかもな」
「いい、壊していい……ああん、もっと――」
京哉も再び熱く硬くしていた。霧島の引き締まった腹で擦られ、堪らなく気持ちいい。思い切って締めつけてみるとポーカーフェイスを崩した霧島は仕返しのように抱き締めていた腕を離し背後に手をついて、それこそ思い切り届かせ揺さぶり始めた。
「京哉……ずっと、ずっとこうしたかった……京哉!」
「はぁんっ! もう、出る、出ちゃうよ……あふっ!」
涙を滲ませながら京哉は、唐突に背筋を突き上がってきた絶頂感のままに自分を解放する。霧島の引き締まった腹に何度もぱたぱたとぶつけた。同時に霧島も京哉の奥深くをずぶ濡れにしている。それでやっと霧島は京哉から己を抜いた。
膝からシーツに着地させられた京哉は、極上の微笑みを浮かべ霧島を見上げる。
「忍さん、本当に有難うございます」
「何を言っているんだ、これからだぞ」
「えっ、って、そんな……ああんっ!」
仰向けにされ、膝を立てた細い脚を思い切り押し広げられ、腰の下に枕を押し込まれた何もかもが露わな格好をさせられて、京哉は羞恥と少しの恐怖を感じる。
「どれだけ我慢したと思っている、本気で今夜は寝かせんからな」
その言葉に安堵した次にはまた指で嬲られる。それでも霧島が萎えさせないのに安堵した。指が奥まで、いつもなら届かない処まで入って体内を嬲る。
普通ならとても直視できない有様の筈だった。自分自身も怖いくらいなのだ、だがそこを霧島は言葉通りに一晩中嬲り、舐めしゃぶっては貫き攻め立てた。
それは京哉が幾度も気を失ったほどの激しさだった。お蔭で霧島の滑らかな象牙色の肌は京哉の爪痕だらけになる。そんなことを繰り返し、朝方になってようやく二人は眠りに就いた。
抱き締め合い、ひとつになったままで。
鼻を鳴らして霧島は笑い、婀娜っぽいような目で京哉を見た。あれから初めてそんな目で見られた京哉はぞくりと身を震わせて視線を外す。
しかし霧島は強引に視線を合わせてきた。外せない視線から逃れようとする間に視界が滲みぼやけてくる。
抑えきれず吐息を浅く速くしながらも、京哉は眩しすぎる霧島の笑顔に酷く哀しい想いを抱いて泣きそうになっていた。がっかりされたくない、諦められたくない。
それなのに我が身は反応する気配も見せなくて、どうしていいか分からない。
愛しい年上の男の切れ長の目は溢れそうに情欲を湛えている。その逞しい躰は男の色気が匂い立つようだった。灰色の目は情欲が溢れそうだ。そう思うのに、欲しいのに、何故反応しないんだろう。
茫洋とベッドに座り込んでいると傍に霧島も腰を落とす。思わず離れようと膝立ちになった。霧島が京哉の右手首を握って留める。互いにお揃いの黒いシルクサテンのパジャマを着ていて、妙なシチュエーションに京哉は笑い出していた。
涙が出るほど無意味に笑いベッドに横になる。背を向けた京哉に霧島の低く甘い声が投げられた。
「おやすみ、ゆっくり寝ろ」
「忍さんは何処に行くんですか?」
「私はリビングのソファで寝てくる」
「少し離れても一緒に寝てたじゃないですか。それとも僕と寝るのは嫌ですか?」
「そうじゃないが、やはり今日は我慢しておく」
毛布を跳ね除けて身を起こすなり京哉はあぐらをかいたままの霧島を睨みつける。
「そんな……答えを逸らさないで下さい! できない僕が嫌ならそう言えばいいでしょう! 一緒に寝ても無駄ってはっきり言ったらどうですか!」
「京哉、それは違う。私の側の問題なんだ」
「嘘つかないで! やれないから一緒に寝られないんでしょう? やれたら別に寝る必要なんかない筈です! そんな目で僕を見て口で言うよりやりたいって物語ってるじゃないですか! 僕だって抱かれたくて、貴方に思い切り抱かれたくて、でも心どころか躰まで壊れて……こんな僕は要らないって言えばいいじゃないですかっ!」
そんな酷いことを霧島は思っていない、思う訳がないと知っていた。
何よりも大切に思い愛してくれている。一度ならず命懸けで護ってくれてこの自分のために霧島が流した血の色も忘れはしない。互いに互いを同じく愛し合っていた。
でも京哉は暴発を止められなかった。分からないのは霧島でなく自分だった。
叫んだ理由も自分が霧島にどうして欲しいのかも分からない。分からないが胸一杯に溜め込んでしまったものを今、吐き出してしまわなければ、もう二度と霧島を受け入れることができなくなりそうで怖かったのだ。
だからといって吐き出せば受け入れられるのかといえば、それも分からない。
何も分からない、あらゆるものが壊れて治るのかどうかも知れない。一生このままということもあり得た。だがそんな恐怖をぶつけても霧島も困るだろう。事実として霧島も今の京哉を丸ごと受け入れることはできないのだから。
そう、まさにあの立川拓真が投げた呪詛の如き言葉の通りに。
肩で息をする京哉を霧島は黙って見つめていた。どうすることもできない問題を突きつけられ困惑しているのだろう。やはり自分には霧島にも抜けないトゲが刺さっているのだ。どうしようもないのなら、破綻するまでずっとこのままだ。
抱きたいけれど抱けない。抱かれたいけれど抱かれることはできない。
それなのに自分は霧島に対して、これ以上ない愛情の他に何を求めているのか。
哀れみの目か、宥める言葉か、それとも決定的な拒否か――。
「京哉……覚悟してくれ」
「……何をですか?」
次に聞いた言葉は信じられないものだった。
「私は今からお前を抱く。またお前は壊れるかも知れん」
「って、貴方も知ってる筈です。できるような躰じゃないんですよ、僕は」
「どんなお前でも抱きたい……壊れるくらいに。いや、壊れるなら私が壊してやる」
「……本気で言ってるんですか?」
「もう黙れ……京哉、私の京哉!」
毛布を剥がれ、腕を掴まれて振り回される。逃れられず抱き込まれ、ボタンがちぎれそうな勢いでパジャマを引き剥がされた。素早く霧島も全てを脱いで晒す。
霧島は張り裂けそうに反り返り蜜を零していた。押さえ付けられて身を重ねられ全身で愛撫される。唇を塞がれて歯列を割られ、思い切り舌を吸われて京哉は身を捩った。
渾身の力で押し返そうとしても長身は揺るぎもしない。息が上がるほど求められて思考が真っ白になる。それでも京哉は必死で抵抗した。
「んんぅ……はぁん……やだっ!」
「嫌でも抱く、思い切りな。もう決めた」
なお逃れようとするも、入院生活をしていた京哉はまだ完全には体力が戻っていない。そんな京哉の薄い肩に霧島は顔を埋め、華奢な鎖骨から首筋までを何度も舐めねぶった。
唇で挟んで強く吸い上げ赤く自分の証しを刻みつける。衣服を身に着けても見える処にまで穿たれ、京哉は無我夢中で霧島を押し退けようとした。
だがもう霧島が退けるラインを越えたのは分かっていた。それでも京哉は逃れたい一心で身を捩り、シーツを掴んで這い逃げようとする。軽い京哉はいとも簡単に身を返された。胸に口づけられる。
「京哉、私の京哉……ずっと、ずっと欲しかった……京哉!」
「んっ、あ……忍さん、やめて……いや、あ!」
「止められるか! 京哉、っく……京哉!」
自身の重みで霧島は京哉を押さえ、滑らかな象牙色の肌を擦りつけた。京哉は目茶苦茶に暴れたが力の差を思い知らされるだけ、押し退けられない。
太腿に熱い霧島が当たっていて、もう蜜でとろとろに濡らされている。低く甘い囁きは今や激しい叫びとなって、どれだけ霧島が想いを溜めていたのかを悟らされた。
そのうち暴れすぎた京哉は頭の芯が熱くなり、殆ど躰に力が入らなくなっていた。そんな京哉の下着に霧島は手を掛けようとする。途端に京哉は今度こそリミッタの外れた力で暴れ始めていた。けれど霧島は手を止めない。するりと下着を脱がされる。
「いや、あ……やだ……忍さん、お願い、見ないで下さいっ!!」
絶叫した京哉は目から涙を噴き出させていた。
壊れた自分を誰より霧島に見られたくなかったのだ。壊された直後に見られたのは知っている。だから京哉がどうやって壊されたのか霧島も知っている筈だった。
だがこの酷い有様を目にしてできる訳がない。やれる筈などなかった。決定的に拒否されて可能性を絶対的ゼロにされることこそ京哉は恐れていたのだ。
「京哉……すまん」
やはり想像通りの言葉を耳にして京哉は全身の力を抜いた。分かっていたのだ。
「……もう、いいですから。忍さん、ありがと……あっ、はうっ!」
予想に反して侵入してきた霧島の指が、優しく京哉の中に触れたのだ。ビクリと身を揺らして霧島を見る。脚を開かせ指で京哉を犯しながら霧島は京哉を見返した。
そこには哀れみの目も、宥める言葉も、決定的な拒否もなく、情欲を溜めて溢れそうになっている灰色の目があった。霧島の長い指にとろりと自分が絡むのが分かる。
「忍さん……してくれるんですか?」
「当たり前だ。どれだけ私を我慢させていたのか、証拠を見せてやる」
低く甘い声が聞けて嬉しかった。霧島はいつも通りに指で馴らしては京哉を甘く高く鳴かせてくれる。堪らなくなった京哉は数指を身に咥え込まされたまま、淫らに腰を浮かせて前後させる。
見上げた霧島は医師も驚く回復力で京哉の入院中に胸の固定帯も外れていた。その逞しい胸からはブレナムブーケの上質な清潔感ある香りが立ち上っている。
「ああん……忍さん、いい、そこ……はぁん!」
「京哉、もうお前に入りたい……いいか?」
「こんな、僕でも……?」
「だから何を言っている。私はお前が、お前だけが欲しいんだ」
愛しい男に熱く囁かれた悦びとは裏腹にまた京哉を恐怖が襲った。あの激痛が再現され、更に霧島の躰に拒否される怖さが身を固く硬直させた。
だが傷つき裂かれて広げられたまま殆ど戻らないそこに熱く太く硬いものが侵入してきたかと思うと、最初から激しく京哉を揺らし始める。内襞を掻き回され深い安堵と共に眩暈のような快感が湧いていた。
「はぅん! あっ、あっ……忍さん、いい、ああんっ!」
「お前も、すごくいいぞ……京哉!」
「……嘘、つかないでいい、です……あぅんっ!」
「嘘な訳がないだろう……私の、躰が、証明して――」
突き上げが更に激しくなる。繰り返し貫かれていると京哉は自分の躰の中心が熱く硬くなり、霧島に扱かれているのを知った。また涙が滲む。
霧島が端正な顔を少し歪めているのが堪らなく色っぽい。淫らな水音を聞いているとふいに疼きが堪えがたくなる。
霧島の手の中に弾けさせながら体内を大量のもので濡らされた。
だがあの恐怖は思い出さなかった。霧島のくれる想いがこもっているようで熱く濃いそれが愛しく嬉しい。
「あっ、ふ……このまま貴方を、っん……閉じ込めておきたいかも」
「もっと、どうしようもなく溢れるくらい、濡らしてやる」
力強い腕に抱き上げられる。向かい合い、跪いた霧島の上に乗せられていた。真下から深く京哉を貫いた霧島は思い切り白い躰を抱き締めたまま揺さぶった。
霧島しか知らない処にまで届いて夢中にさせられた京哉もいつもと変わらぬ甘い声で鳴く。
「ああっ、すごい……太い、硬いよ……忍さん、はぅんっ!」
「本当に、壊して、医者に怒られるかもな」
「いい、壊していい……ああん、もっと――」
京哉も再び熱く硬くしていた。霧島の引き締まった腹で擦られ、堪らなく気持ちいい。思い切って締めつけてみるとポーカーフェイスを崩した霧島は仕返しのように抱き締めていた腕を離し背後に手をついて、それこそ思い切り届かせ揺さぶり始めた。
「京哉……ずっと、ずっとこうしたかった……京哉!」
「はぁんっ! もう、出る、出ちゃうよ……あふっ!」
涙を滲ませながら京哉は、唐突に背筋を突き上がってきた絶頂感のままに自分を解放する。霧島の引き締まった腹に何度もぱたぱたとぶつけた。同時に霧島も京哉の奥深くをずぶ濡れにしている。それでやっと霧島は京哉から己を抜いた。
膝からシーツに着地させられた京哉は、極上の微笑みを浮かべ霧島を見上げる。
「忍さん、本当に有難うございます」
「何を言っているんだ、これからだぞ」
「えっ、って、そんな……ああんっ!」
仰向けにされ、膝を立てた細い脚を思い切り押し広げられ、腰の下に枕を押し込まれた何もかもが露わな格好をさせられて、京哉は羞恥と少しの恐怖を感じる。
「どれだけ我慢したと思っている、本気で今夜は寝かせんからな」
その言葉に安堵した次にはまた指で嬲られる。それでも霧島が萎えさせないのに安堵した。指が奥まで、いつもなら届かない処まで入って体内を嬲る。
普通ならとても直視できない有様の筈だった。自分自身も怖いくらいなのだ、だがそこを霧島は言葉通りに一晩中嬲り、舐めしゃぶっては貫き攻め立てた。
それは京哉が幾度も気を失ったほどの激しさだった。お蔭で霧島の滑らかな象牙色の肌は京哉の爪痕だらけになる。そんなことを繰り返し、朝方になってようやく二人は眠りに就いた。
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