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第2話
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一介の警察官には怖くて値段も訊けないような高級シャンパンを容赦なく注がれ、京哉は溢れる寸前で危うくグラスに口をつけた。
もう何杯目か分からない。
酔いは自覚しているが自分が主役ときては断れず、笑顔で促されてはグラスを差し出すループに陥っている。いつもなら割って入る霧島も今日は微笑むばかりだ。
「ほれ、若いもんがもっと飲まんか!」
「御前、栓を開けたってこれ以上は飲めませんよ」
「飲めんなら浴びようぞ。これは鳴海京哉の祝い酒じゃ。飲め、歌え、踊れ!」
「そんな無茶な……忍さん、助けて下さい!」
幾ら高級品でもアルコールに弱い京哉はとうとう霧島に助けを求めた。霧島はソファから腰を上げると誰よりも大切な年下の恋人の背後に回り、小柄な躰に両腕を巻きつける。それを見ていた若いメイドたちが「きゃあっ!」と黄色い声を上げて囃し立てた。
彼女らの上司たる今枝執事も咎めない。今夜は無礼講だ。
ここは首都圏の県内、海沿いに位置する貝崎市で霧島カンパニーが持つ保養所である。霧島カンパニーは世界各国にあまたの支社を展開する巨大総合商社だが、この保養所はさほどの規模ではない。利用するのは会長の身内に限られているからだ。
その保養所で何の祝いかといえば本日行われたスモールボアライフル、略してSB競技の大会に初出場した京哉が大会レコードを叩き出しての優勝を飾ったのだ。
大層喜んだのが京哉のSB競技におけるスポンサーを買って出た霧島カンパニー会長だった。霧島会長は霧島忍の父であり、他の近しい者からは御前と呼ばれる。
ともかく祭り好きの御前が音頭を取って祝勝会が開催されたという訳だ。
SB競技大会会場の公営射場からそれほど遠くない海際に建つ保養所の大食堂は、既に祝勝会が始まって三時間が経過し、混沌のどんちゃん騒ぎに突入しつつある。
だが水を差す要素は何処にもない。皆が溢れる笑顔で京哉を祝ってくれていた。
しかし京哉は無意識にSBの標的紙を思い浮かべては過去を重ねることを繰り返している。重ねる過去は全てスコープ越しに見てきた凄惨な光景だった。
映像記憶はあまりにクリアで時々今現在の現実と間違えそうになるくらいだ。トリガを引いた日は、より多くこの現象が起こる。幻覚レヴェルで襲ってくる過去に溺れてしまわないよう、そして誰にも気付かれないよう自分をコントロールするのにも慣れてはいた。
けれど夢まで侵食する記憶に一生耐えても罰としては軽すぎる。
当然だ、本来なら自分は吊るされてしかるべき人間なのだから。強要されたとはいえ、かつて鳴海京哉は複数の人々を狙撃し暗殺した。
そう、SBを始めたのも元々自分がスナイパーだったからだ。
勿論この日本で暗殺スナイパーなど合法ではない。警察学校で抜きんでた射撃の腕を見込まれてしまい政府与党重鎮に警察庁上層部の一部、更に霧島カンパニーが手を組み、のちに『暗殺肯定派』と呼ばれる組織に陥れられたのである。
それ以来五年間も産業スパイや政敵を暗殺する実行部隊の実行役として嵌められていた。並行しての本業は警察官なのだから笑えもしない。
結局は京哉も霧島と出会ったことがきっかけでスナイパー引退宣言をした。知りすぎた男として京哉自身も暗殺されかけたが、同じく警察官の霧島忍が部下たちを率いて踏み込んだため間一髪で京哉は命を存えた。
それらの事実の一部はメディアに洩れ、霧島カンパニーは一時的に企業体としての存続も危ぶまれたほどだったが、数ヶ月間の株価の下落に耐えて何とか踏み止まり、現在は落ち着いて御前も息子の忍とパートナーの京哉を見守ってくれている。
暗殺肯定派のサッチョウ上層部や議員らも、のちに警視庁が一掃した。
それなのに京哉が今こうしていられるのは警察が総力を以て京哉に関する事実を隠蔽したからである。現職警察官がスナイパーで大量殺人者などとメディアに洩れたらただでは済まない。何もかも自分の与り知らぬところで隠されたからこそ死刑台にもならず済んでいるのだ。
「――京哉、どうした、京哉?」
耳元の低い声で我に返る。長身を屈めて囁く霧島を振り返った。
オーダーメイドスーツに身を包んだ霧島は京哉と三歳違いの二十七歳で京哉の上司でもある。県警本部で機動捜査隊・通称機捜の隊長を拝命していた。
京哉が巡査部長であるのに対し霧島が地方の所轄署なら署長でもおかしくない警視という階級にあるのは、最難関の国家公務員総合職試験を突破したキャリアで警察庁採用の国家公務員だからだ。
都道府県警採用なら警視より一階級上の警視正からやっと国家公務員になる。それ以下である京哉は地方公務員だ。
とにかく霧島忍は同期の中でもトップの成績で入庁した。そうでなくてもキャリアは全国の警察官約二十六万人の一パーセントにも満たないスーパーエリートである。
だが霧島カンパニー会長御曹司である以上、警察を辞めた日には普通なら望んでも手に入らない霧島カンパニー本社社長の椅子という玉座が待っているのだが、本人は現場の警察官であることにこだわり辞める気は毛頭ないらしい。
キャリアで御曹司。
充分恵まれた人物だが見た目も見事で百九十センチ近い長身で四肢は長く体型はスリム、顔立ちはすっきり通った鼻梁に切れ長の目が涼しく、怜悧さを感じさせるほどに整っていた。
様々な武道の全国大会で優勝を飾っている猛者でもある、まさに眉目秀麗・文武両道で非の打ち所がない男だ。
それでも付き合いの深さから京哉はこの男にもそれなりに葛藤があるのは知っている。
例えば祝勝会故に表には出さないが、自分の父である霧島光緒会長が目的のためなら手段を選ばない腹黒狸なのが許せず、水面下で熾烈な戦いを繰り広げていることなどだ。
証拠さえ挙がれば逮捕も辞さないと明言している。
表立っては『クソ親父』『悪魔』呼ばわりする辺り、子供並みではあるが。
ともかく霧島は京哉の傍から離れようとしない。御前の愛人だった生みの母がハーフという霧島の瞳は灰色で、その目には僅かな心配の色が浮かんでいる。
「大丈夫か、京哉。気分が悪いなら部屋に上がっていいんだぞ」
「いえ、平気です。せっかく忍さんと一緒に明日まで休暇を取ったんですから、もう少し愉しみますよ。一応は主賓ですしね」
「そうか。ならいいが昼間の大会で疲れている筈だぞ。それに私と愉しむための時間も忘れず取っておいてくれ……なあ、今晩、いいだろう?」
「何がいいのか分かりません」
照れを隠して京哉は棒読み口調で返しながらも酔いでなく頬を赤くしつつ、昼間の射撃大会で標的紙を狙っていた時より鋭く辺りを見回した。
もう何杯目か分からない。
酔いは自覚しているが自分が主役ときては断れず、笑顔で促されてはグラスを差し出すループに陥っている。いつもなら割って入る霧島も今日は微笑むばかりだ。
「ほれ、若いもんがもっと飲まんか!」
「御前、栓を開けたってこれ以上は飲めませんよ」
「飲めんなら浴びようぞ。これは鳴海京哉の祝い酒じゃ。飲め、歌え、踊れ!」
「そんな無茶な……忍さん、助けて下さい!」
幾ら高級品でもアルコールに弱い京哉はとうとう霧島に助けを求めた。霧島はソファから腰を上げると誰よりも大切な年下の恋人の背後に回り、小柄な躰に両腕を巻きつける。それを見ていた若いメイドたちが「きゃあっ!」と黄色い声を上げて囃し立てた。
彼女らの上司たる今枝執事も咎めない。今夜は無礼講だ。
ここは首都圏の県内、海沿いに位置する貝崎市で霧島カンパニーが持つ保養所である。霧島カンパニーは世界各国にあまたの支社を展開する巨大総合商社だが、この保養所はさほどの規模ではない。利用するのは会長の身内に限られているからだ。
その保養所で何の祝いかといえば本日行われたスモールボアライフル、略してSB競技の大会に初出場した京哉が大会レコードを叩き出しての優勝を飾ったのだ。
大層喜んだのが京哉のSB競技におけるスポンサーを買って出た霧島カンパニー会長だった。霧島会長は霧島忍の父であり、他の近しい者からは御前と呼ばれる。
ともかく祭り好きの御前が音頭を取って祝勝会が開催されたという訳だ。
SB競技大会会場の公営射場からそれほど遠くない海際に建つ保養所の大食堂は、既に祝勝会が始まって三時間が経過し、混沌のどんちゃん騒ぎに突入しつつある。
だが水を差す要素は何処にもない。皆が溢れる笑顔で京哉を祝ってくれていた。
しかし京哉は無意識にSBの標的紙を思い浮かべては過去を重ねることを繰り返している。重ねる過去は全てスコープ越しに見てきた凄惨な光景だった。
映像記憶はあまりにクリアで時々今現在の現実と間違えそうになるくらいだ。トリガを引いた日は、より多くこの現象が起こる。幻覚レヴェルで襲ってくる過去に溺れてしまわないよう、そして誰にも気付かれないよう自分をコントロールするのにも慣れてはいた。
けれど夢まで侵食する記憶に一生耐えても罰としては軽すぎる。
当然だ、本来なら自分は吊るされてしかるべき人間なのだから。強要されたとはいえ、かつて鳴海京哉は複数の人々を狙撃し暗殺した。
そう、SBを始めたのも元々自分がスナイパーだったからだ。
勿論この日本で暗殺スナイパーなど合法ではない。警察学校で抜きんでた射撃の腕を見込まれてしまい政府与党重鎮に警察庁上層部の一部、更に霧島カンパニーが手を組み、のちに『暗殺肯定派』と呼ばれる組織に陥れられたのである。
それ以来五年間も産業スパイや政敵を暗殺する実行部隊の実行役として嵌められていた。並行しての本業は警察官なのだから笑えもしない。
結局は京哉も霧島と出会ったことがきっかけでスナイパー引退宣言をした。知りすぎた男として京哉自身も暗殺されかけたが、同じく警察官の霧島忍が部下たちを率いて踏み込んだため間一髪で京哉は命を存えた。
それらの事実の一部はメディアに洩れ、霧島カンパニーは一時的に企業体としての存続も危ぶまれたほどだったが、数ヶ月間の株価の下落に耐えて何とか踏み止まり、現在は落ち着いて御前も息子の忍とパートナーの京哉を見守ってくれている。
暗殺肯定派のサッチョウ上層部や議員らも、のちに警視庁が一掃した。
それなのに京哉が今こうしていられるのは警察が総力を以て京哉に関する事実を隠蔽したからである。現職警察官がスナイパーで大量殺人者などとメディアに洩れたらただでは済まない。何もかも自分の与り知らぬところで隠されたからこそ死刑台にもならず済んでいるのだ。
「――京哉、どうした、京哉?」
耳元の低い声で我に返る。長身を屈めて囁く霧島を振り返った。
オーダーメイドスーツに身を包んだ霧島は京哉と三歳違いの二十七歳で京哉の上司でもある。県警本部で機動捜査隊・通称機捜の隊長を拝命していた。
京哉が巡査部長であるのに対し霧島が地方の所轄署なら署長でもおかしくない警視という階級にあるのは、最難関の国家公務員総合職試験を突破したキャリアで警察庁採用の国家公務員だからだ。
都道府県警採用なら警視より一階級上の警視正からやっと国家公務員になる。それ以下である京哉は地方公務員だ。
とにかく霧島忍は同期の中でもトップの成績で入庁した。そうでなくてもキャリアは全国の警察官約二十六万人の一パーセントにも満たないスーパーエリートである。
だが霧島カンパニー会長御曹司である以上、警察を辞めた日には普通なら望んでも手に入らない霧島カンパニー本社社長の椅子という玉座が待っているのだが、本人は現場の警察官であることにこだわり辞める気は毛頭ないらしい。
キャリアで御曹司。
充分恵まれた人物だが見た目も見事で百九十センチ近い長身で四肢は長く体型はスリム、顔立ちはすっきり通った鼻梁に切れ長の目が涼しく、怜悧さを感じさせるほどに整っていた。
様々な武道の全国大会で優勝を飾っている猛者でもある、まさに眉目秀麗・文武両道で非の打ち所がない男だ。
それでも付き合いの深さから京哉はこの男にもそれなりに葛藤があるのは知っている。
例えば祝勝会故に表には出さないが、自分の父である霧島光緒会長が目的のためなら手段を選ばない腹黒狸なのが許せず、水面下で熾烈な戦いを繰り広げていることなどだ。
証拠さえ挙がれば逮捕も辞さないと明言している。
表立っては『クソ親父』『悪魔』呼ばわりする辺り、子供並みではあるが。
ともかく霧島は京哉の傍から離れようとしない。御前の愛人だった生みの母がハーフという霧島の瞳は灰色で、その目には僅かな心配の色が浮かんでいる。
「大丈夫か、京哉。気分が悪いなら部屋に上がっていいんだぞ」
「いえ、平気です。せっかく忍さんと一緒に明日まで休暇を取ったんですから、もう少し愉しみますよ。一応は主賓ですしね」
「そうか。ならいいが昼間の大会で疲れている筈だぞ。それに私と愉しむための時間も忘れず取っておいてくれ……なあ、今晩、いいだろう?」
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