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第13話
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エレベーターは危険を感知し止まっていて、二人は延々と八階まで階段を上る。最上階じゃなくて良かったと京哉は思いながら、八階の廊下を霧島に続いて駆け抜けた。
そうして焦げ臭さを頼りに爆発のあった柾木議員の個人事務所まで辿り着く。
ドアが歪んで外れた隙間から二人は事務所内を覗き込んだ。
「わあ、スプリンクラーで土砂降り……でも火災にならなくて良かったですよね」
「左右の部屋は無事か。ここだけが綺麗にやられているな」
「廊下にも外にも、大して爆風は抜けなかったみたいですね」
「プロの犯行というところか」
「じゃないでしょうか。この部屋だけが木っ端微塵ですし」
「誰もいなかったのは幸いだったな」
霧島の言う通り死者が出なかったのは本当に幸いだったと京哉は思った。万が一、死人が出ていたなら、霧島が昨日しくじった自分を内心激しく責めるだろうことが予測できたからである。
それでも飛散物で血を流した多数の怪我人のことを考えているのか、霧島は眉間に不機嫌を色濃く溜めていた。
室内にマル害がいないと知れた以上、鑑識や爆発物専門官が来るまで立ち入るべきではない。部屋に背を向けて二人は大きく溜息をつく。
捜一に白藤署刑事課強行犯係と鑑識、更に爆発物処理課程修了者を中心とした特別チームが派遣されてお祭り騒ぎになった頃、霧島と京哉は白藤署で一通りの事情聴取を受けたのち、県警本部までパトカーで送って貰い、機捜の詰め所で幕の内弁当を食っていた。
「たまたまホテルでの会合が長引いた柾木議員が無事で良かったですよね」
ホテルでの会合のあと柾木議員は爆破された事務所に寄る予定だったという。それに合わせて事務員たちも出勤する筈で、あわや大惨事になるところだったのだ。
「爆破魔はさぞかしがっかりしただろう」
「でも飛散物で十六名負傷っていうのは、議員にダメージの効果アリですかね?」
「ああいう人種はメディアを引き連れて見舞いの花を持って行くものだ」
「何がそこまで最近の貴方を辛辣にしたんでしょう?」
「身内に二枚舌のスナイパーがいてな……」
「へえ、誰ですか、それ? それより今から本当に医務室ですからね」
「医務室の主は西中先生だぞ。私はまだ生きていたい。お前の手当てで充分だ」
「西中先生は腕もいいじゃないですか、サドなだけに。どうせ報告書に診断書が必要ですから、あとでちゃんと……あ、三係長だ」
一時帰宅したらしく、捜一の三係長はシワのないドレスシャツに破れていないスーツを着用していた。顔のアブラも取れてヒゲも剃っている。詰め所に入ってくると隊長のデスクの前にパイプ椅子を置いて腰掛けた。すかさず京哉が濃い目の茶を淹れてきて手渡す。
「ありがとさん。爆破現場に居合わせたそうで、ご苦労さんですなあ。怪我は?」
「処置済みだ、問題ない」
「そうですか。新たな一件で帳場も色めき立ってましてな。でも砂宮仁朗についての柾木議員の口が重いのが難なんですわ。物証が出ても繋がりが分からん」
「123でも出てこなかったんですよね?」
123とはA号照会のことで、照会センターの警電番号からきた通称だ。つまり前科を問い合わせることである。何となく放った京哉の言葉に三係長は頷いたが、霧島は切れ長の目を煌めかせた。とっくに食い終えていた幕の内の弁当箱を退け、京哉が綺麗に食し終えるのを待つ。
その間に三係長は雑談し終えて出て行った。
「それで霧島警視は何を嗅ぎつけたんですか?」
「自衛隊だ。あれだけ特別任務で恩を売っているんだ、本部長に探りを入れて貰う」
「柾木議員は元自衛官、その線から砂宮仁朗が手繰れないか探って貰うんですね?」
コネの使い時である。
さっそく警電を取ると県警本部長の秘書室にコールし、本部長に繋いで貰った。幸いすぐに本部長は捕まり、自衛隊への資料提供の件を依頼して待つ。京哉が煙草を霧島が二杯目の茶を味わっている間にFAXで資料が届いた。
「どれ……まずは柾木将道議員からだな」
「防衛大学校を首席で卒業したのち、指揮幕僚課程を経て短期間に異例の出世、最終階級が二等陸佐。バルドール国での第九次リグロ紛争にPKO部隊長として抜擢・派遣され、帰国後すぐに退官。現在は柾木損害保険会社の社長ですって。ふうん」
「その紛争直後に父親が死んで議員の基盤と会社をそのまま受け継いだのか」
「らしいですね。それにしても第九次リグロ紛争って……生き残りですか」
京哉の呟きに霧島は灰色の目を瞬かせた。
こういう評し方も何だが、どうして自衛隊が派遣される程度のPKO活動への参加各国部隊、いわゆるPKFで京哉が『生き残り』などと物騒な物言いをしたのか分からなかったからである。隠すつもりもなく京哉は小声で説明した。
「ここだけの話として聞いて下さい。第九次リグロ紛争に投入されたPKFは、PKOの実行部隊としての本分を越えた働きをしたことで、知る人ぞ知る部隊なんです」
「どういうことだ?」
訊かれて肩を竦めながら京哉は更に声を潜めた。
「僕がスナイパーをしていた時にサッチョウの『上』から伝わってきた話なんですけど、あのPKFは国連平和維持活動という枠を超えて、実戦投入されたらしいんです。そもそもバルドールに過去PKFが派遣されたこと自体が殆ど表沙汰になってない筈ですし。霧島警視もご存じなかったんじゃありませんか?」
「そう言われれば私も聞いたことがないな」
「でしょう? それはともかく柾木二等陸佐のことだったんですね、第九次リグロ紛争において『静かなる闘将』という綽名のついた名指揮官っていうのは」
「ほう、二つ名を持つ自衛官か」
「ええ。実戦投入は勿論、予想外で第九次リグロ紛争に偶々名を連ねた自衛官が多数、生きて日本の地を踏めなかった。現地での事故や伝染病、酷い場合は自殺ということにされ、皆が戦死扱いされなかった気の毒な、我が国の軍隊です」
「そうか……様々な情報を知り得る立場にいたのだな、お前は」
言いつつ霧島は異国に送られ、治安維持部隊の筈が現地の紛争に巻き込まれ、戦って死を遂げても日本では政治家たちの保身のために戦死扱いすらされない、勲なき軍隊というものに束の間、思いを馳せた。
自分が守りたい人々が暮らす日本という国が、そこまで冷たい国家だとは思いたくない。そう思う人間がいるからこそ柾木議員のような人物が生まれたのかとも思う。
そもそも柾木議員の名を聞いても京哉はピンとこなかったのだ。元々第九次リグロ紛争への自衛隊を含むPKF派遣自体が極秘であり、京哉にも情報が断片的にしか入ってこなかったからだろう。そんなPKFから帰国後すぐに柾木議員は自衛官を辞して議員となった。
柾木議員の目指したものが何なのかは分からない。ただ一自衛官では成せないことでも議員なら成せるのではないか。そう考えたとしてもおかしくない気がした。
おそらく柾木将道二等陸佐は部下が次々と死んでゆく地獄を部隊長として己が目で見た。そして部下たちが死んでまで正当な扱いを受けられない現実を知ったのだ。
「なるほどな。そのPKFに根がありそうな気はするが、今はともかく砂宮だ。そういう戦場なら柾木二佐と戦闘のプロらしい砂宮仁朗が出会うこともあるかも知れん」
「ですよね。でも砂宮仁朗については『元テロリスト』としか載ってない。一度は記録に載ったけど全て抹消された形になっていますね。どういうことでしょうか?」
首を傾げた京哉に霧島はFAX用紙を指先で弾いた。
「テロリストとして名を馳せ、一度は国際手配が掛かっているな。だがその後、傭兵として国連の利に与したために晴れて除外された……そんなところだろう」
「うーん、結局殆ど手掛かりはナシですか。もっと何か出ると思ったのに、残念賞」
余計な推測は思い込みを生んで危険、目配せし合って二人はそれ以上の想像を止める。そこで箸を片手にノートパソコンを操作していた小田切が話に参入してきた。
「スコットシネマで発射した七発は四十五ACP弾。ライフルマークに前科ナシだ」
「まあ、基本ですよね。でもプロが七発ってことは、フルで八発の銃ってことかも」
「ふむ、タックリロードか」
元スナイパーの京哉は結構なガンヲタだ。だがガンヲタでない霧島にも理由は分かる。セミ・オートの銃は全弾発射してしまうとスライドが後退しきってホールドオープンという状態になる。一発たりとも撃てない状況だ。
これを専門用語で『エマが掛かる』とも表現する。エマはエマージェンシーの略だ。
こうなるとマガジンチェンジをしてからスライドを戻す余計な一手間が掛かるのだ。この一連の流れをエマージェンシーリロードと呼ぶ。
プロは当然エマに陥るのを嫌う。おまけに残弾数を敵に悟られるのも拙い。故にプロは全弾発射せず一発以上を残すタクティカル・リロードを心がけるのである。
「しかし捜査員に死人が出なかったのは奇跡だぜ」
「二酸化炭素消火装置でしたっけ」
一時は危なかった者もいたが皆が病院で回復していた。大捕り物の現場にいた小田切を交えて喋っていると三班の隊員らが仮眠室から出てくる。
全員ではなく今朝から半数交代にしたので八名ほどだ。京哉は給湯室で濃い茶を淹れてきて皆に配る。するともう十四時過ぎで、霧島と京哉は皆に先駆けて帳場会議の行われる白藤署に向かうことにした。
左手の負傷を鑑みてメタリックグリーンの覆面を運転するのは京哉だ。
「剛田警視殿が血圧を上げているのが目に浮かぶようだな」
「捜一課長も会議に勿論参加でしょうね。また怒らせないで下さいよ」
「何も怒らせたい訳ではない。向こうが勝手に怒るだけだ」
「それでも貴方は人を怒らせやすい顔してますから」
「どんな顔だ、夫で上司の私に向かって失礼な。だが覚悟が要るぞ、この流れでは」
「分かってますって」
「ならいいが、挑発されても相手にいきなり鉛玉をぶち込むんじゃないぞ」
「はいはい。僕だって撃ちはしませんよ、見えるような近距離ではね」
そうして焦げ臭さを頼りに爆発のあった柾木議員の個人事務所まで辿り着く。
ドアが歪んで外れた隙間から二人は事務所内を覗き込んだ。
「わあ、スプリンクラーで土砂降り……でも火災にならなくて良かったですよね」
「左右の部屋は無事か。ここだけが綺麗にやられているな」
「廊下にも外にも、大して爆風は抜けなかったみたいですね」
「プロの犯行というところか」
「じゃないでしょうか。この部屋だけが木っ端微塵ですし」
「誰もいなかったのは幸いだったな」
霧島の言う通り死者が出なかったのは本当に幸いだったと京哉は思った。万が一、死人が出ていたなら、霧島が昨日しくじった自分を内心激しく責めるだろうことが予測できたからである。
それでも飛散物で血を流した多数の怪我人のことを考えているのか、霧島は眉間に不機嫌を色濃く溜めていた。
室内にマル害がいないと知れた以上、鑑識や爆発物専門官が来るまで立ち入るべきではない。部屋に背を向けて二人は大きく溜息をつく。
捜一に白藤署刑事課強行犯係と鑑識、更に爆発物処理課程修了者を中心とした特別チームが派遣されてお祭り騒ぎになった頃、霧島と京哉は白藤署で一通りの事情聴取を受けたのち、県警本部までパトカーで送って貰い、機捜の詰め所で幕の内弁当を食っていた。
「たまたまホテルでの会合が長引いた柾木議員が無事で良かったですよね」
ホテルでの会合のあと柾木議員は爆破された事務所に寄る予定だったという。それに合わせて事務員たちも出勤する筈で、あわや大惨事になるところだったのだ。
「爆破魔はさぞかしがっかりしただろう」
「でも飛散物で十六名負傷っていうのは、議員にダメージの効果アリですかね?」
「ああいう人種はメディアを引き連れて見舞いの花を持って行くものだ」
「何がそこまで最近の貴方を辛辣にしたんでしょう?」
「身内に二枚舌のスナイパーがいてな……」
「へえ、誰ですか、それ? それより今から本当に医務室ですからね」
「医務室の主は西中先生だぞ。私はまだ生きていたい。お前の手当てで充分だ」
「西中先生は腕もいいじゃないですか、サドなだけに。どうせ報告書に診断書が必要ですから、あとでちゃんと……あ、三係長だ」
一時帰宅したらしく、捜一の三係長はシワのないドレスシャツに破れていないスーツを着用していた。顔のアブラも取れてヒゲも剃っている。詰め所に入ってくると隊長のデスクの前にパイプ椅子を置いて腰掛けた。すかさず京哉が濃い目の茶を淹れてきて手渡す。
「ありがとさん。爆破現場に居合わせたそうで、ご苦労さんですなあ。怪我は?」
「処置済みだ、問題ない」
「そうですか。新たな一件で帳場も色めき立ってましてな。でも砂宮仁朗についての柾木議員の口が重いのが難なんですわ。物証が出ても繋がりが分からん」
「123でも出てこなかったんですよね?」
123とはA号照会のことで、照会センターの警電番号からきた通称だ。つまり前科を問い合わせることである。何となく放った京哉の言葉に三係長は頷いたが、霧島は切れ長の目を煌めかせた。とっくに食い終えていた幕の内の弁当箱を退け、京哉が綺麗に食し終えるのを待つ。
その間に三係長は雑談し終えて出て行った。
「それで霧島警視は何を嗅ぎつけたんですか?」
「自衛隊だ。あれだけ特別任務で恩を売っているんだ、本部長に探りを入れて貰う」
「柾木議員は元自衛官、その線から砂宮仁朗が手繰れないか探って貰うんですね?」
コネの使い時である。
さっそく警電を取ると県警本部長の秘書室にコールし、本部長に繋いで貰った。幸いすぐに本部長は捕まり、自衛隊への資料提供の件を依頼して待つ。京哉が煙草を霧島が二杯目の茶を味わっている間にFAXで資料が届いた。
「どれ……まずは柾木将道議員からだな」
「防衛大学校を首席で卒業したのち、指揮幕僚課程を経て短期間に異例の出世、最終階級が二等陸佐。バルドール国での第九次リグロ紛争にPKO部隊長として抜擢・派遣され、帰国後すぐに退官。現在は柾木損害保険会社の社長ですって。ふうん」
「その紛争直後に父親が死んで議員の基盤と会社をそのまま受け継いだのか」
「らしいですね。それにしても第九次リグロ紛争って……生き残りですか」
京哉の呟きに霧島は灰色の目を瞬かせた。
こういう評し方も何だが、どうして自衛隊が派遣される程度のPKO活動への参加各国部隊、いわゆるPKFで京哉が『生き残り』などと物騒な物言いをしたのか分からなかったからである。隠すつもりもなく京哉は小声で説明した。
「ここだけの話として聞いて下さい。第九次リグロ紛争に投入されたPKFは、PKOの実行部隊としての本分を越えた働きをしたことで、知る人ぞ知る部隊なんです」
「どういうことだ?」
訊かれて肩を竦めながら京哉は更に声を潜めた。
「僕がスナイパーをしていた時にサッチョウの『上』から伝わってきた話なんですけど、あのPKFは国連平和維持活動という枠を超えて、実戦投入されたらしいんです。そもそもバルドールに過去PKFが派遣されたこと自体が殆ど表沙汰になってない筈ですし。霧島警視もご存じなかったんじゃありませんか?」
「そう言われれば私も聞いたことがないな」
「でしょう? それはともかく柾木二等陸佐のことだったんですね、第九次リグロ紛争において『静かなる闘将』という綽名のついた名指揮官っていうのは」
「ほう、二つ名を持つ自衛官か」
「ええ。実戦投入は勿論、予想外で第九次リグロ紛争に偶々名を連ねた自衛官が多数、生きて日本の地を踏めなかった。現地での事故や伝染病、酷い場合は自殺ということにされ、皆が戦死扱いされなかった気の毒な、我が国の軍隊です」
「そうか……様々な情報を知り得る立場にいたのだな、お前は」
言いつつ霧島は異国に送られ、治安維持部隊の筈が現地の紛争に巻き込まれ、戦って死を遂げても日本では政治家たちの保身のために戦死扱いすらされない、勲なき軍隊というものに束の間、思いを馳せた。
自分が守りたい人々が暮らす日本という国が、そこまで冷たい国家だとは思いたくない。そう思う人間がいるからこそ柾木議員のような人物が生まれたのかとも思う。
そもそも柾木議員の名を聞いても京哉はピンとこなかったのだ。元々第九次リグロ紛争への自衛隊を含むPKF派遣自体が極秘であり、京哉にも情報が断片的にしか入ってこなかったからだろう。そんなPKFから帰国後すぐに柾木議員は自衛官を辞して議員となった。
柾木議員の目指したものが何なのかは分からない。ただ一自衛官では成せないことでも議員なら成せるのではないか。そう考えたとしてもおかしくない気がした。
おそらく柾木将道二等陸佐は部下が次々と死んでゆく地獄を部隊長として己が目で見た。そして部下たちが死んでまで正当な扱いを受けられない現実を知ったのだ。
「なるほどな。そのPKFに根がありそうな気はするが、今はともかく砂宮だ。そういう戦場なら柾木二佐と戦闘のプロらしい砂宮仁朗が出会うこともあるかも知れん」
「ですよね。でも砂宮仁朗については『元テロリスト』としか載ってない。一度は記録に載ったけど全て抹消された形になっていますね。どういうことでしょうか?」
首を傾げた京哉に霧島はFAX用紙を指先で弾いた。
「テロリストとして名を馳せ、一度は国際手配が掛かっているな。だがその後、傭兵として国連の利に与したために晴れて除外された……そんなところだろう」
「うーん、結局殆ど手掛かりはナシですか。もっと何か出ると思ったのに、残念賞」
余計な推測は思い込みを生んで危険、目配せし合って二人はそれ以上の想像を止める。そこで箸を片手にノートパソコンを操作していた小田切が話に参入してきた。
「スコットシネマで発射した七発は四十五ACP弾。ライフルマークに前科ナシだ」
「まあ、基本ですよね。でもプロが七発ってことは、フルで八発の銃ってことかも」
「ふむ、タックリロードか」
元スナイパーの京哉は結構なガンヲタだ。だがガンヲタでない霧島にも理由は分かる。セミ・オートの銃は全弾発射してしまうとスライドが後退しきってホールドオープンという状態になる。一発たりとも撃てない状況だ。
これを専門用語で『エマが掛かる』とも表現する。エマはエマージェンシーの略だ。
こうなるとマガジンチェンジをしてからスライドを戻す余計な一手間が掛かるのだ。この一連の流れをエマージェンシーリロードと呼ぶ。
プロは当然エマに陥るのを嫌う。おまけに残弾数を敵に悟られるのも拙い。故にプロは全弾発射せず一発以上を残すタクティカル・リロードを心がけるのである。
「しかし捜査員に死人が出なかったのは奇跡だぜ」
「二酸化炭素消火装置でしたっけ」
一時は危なかった者もいたが皆が病院で回復していた。大捕り物の現場にいた小田切を交えて喋っていると三班の隊員らが仮眠室から出てくる。
全員ではなく今朝から半数交代にしたので八名ほどだ。京哉は給湯室で濃い茶を淹れてきて皆に配る。するともう十四時過ぎで、霧島と京哉は皆に先駆けて帳場会議の行われる白藤署に向かうことにした。
左手の負傷を鑑みてメタリックグリーンの覆面を運転するのは京哉だ。
「剛田警視殿が血圧を上げているのが目に浮かぶようだな」
「捜一課長も会議に勿論参加でしょうね。また怒らせないで下さいよ」
「何も怒らせたい訳ではない。向こうが勝手に怒るだけだ」
「それでも貴方は人を怒らせやすい顔してますから」
「どんな顔だ、夫で上司の私に向かって失礼な。だが覚悟が要るぞ、この流れでは」
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