零れたミルクをすくい取れ~Barter.18~

志賀雅基

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第47話(BL特有シーン・回避可)

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 さっさと機捜を早退して二人は帰路に就いた。
 マンションの部屋に帰り着くと霧島はコーヒー一杯を消費しただけで、早々にシャワーを浴びる。現金なようだが本当に京哉を切望していたのだ。
 バスルームを出るなり京哉をせっついてシャワーを使わせる。

 キッチンの椅子に腰掛けてウィスキーを飲みつつ京哉が出てくるのを待った。
 物音を合図に霧島は寝室に向かう。互いにパジャマ姿でベッドに上がった。パジャマはお揃いの黒いシルクサテンで滑らかだ。だが本物の肌に触れたくて霧島は手を伸ばす。霧島は親指で京哉の下唇に触れ、黒い瞳を見つめる。口を開く前に訊かれた。

「本当に僕のこと、嫌じゃないんですか?」
「嫌がってるように見えるのか?」
「だって……僕が目茶苦茶にヤラれてたのも全部見たんでしょう?」
「正直に言えば、確かに見た。だが、だからどうした?」
「貴方が見た、それよりもっと……僕は――」

 苦しげに京哉は唇を噛んで俯く。そんな薄い肩を霧島は抱き寄せた。

「言いたければ聞いてやる。だがお前を迎えに行った、それが私の答えだからな」

 躰を伝わってくる低く甘い声に京哉は無言で小さく頷く。

「けれど本当に躰の方は大丈夫なんだろうな?」
「はい。もう随分経ってますから」
「そうか。つらかったら言ってくれ」

 ベッドのヘッドボードの棚から霧島はブレナムブーケの瓶を取り、ボタンをふたつ開けて自分の胸元にトワレを一吹きした。苦みのある柑橘系の香りが控えめに香る。

 二人は唇を重ね合わせた。霧島はその弾力を確かめるように優しく何度か押しつける。やがて捩るように京哉の唇を開かせると、歯列の間に熱い舌を差し入れた。
 受け入れた舌の動きに応じて京哉も自らの舌を差し出し、霧島に吸わせる。

 さらりとした髪の後頭部に手をやり、薄い肩も引き寄せた霧島は、より深くまで舌を伸ばして京哉の口内の届く限り全てを蹂躙し、唾液をすくい取り飲み干した。
 互いの息が上がるほどに濃厚なキスのあと、京哉の唇から頬へ、頬から耳朶へと移動した霧島の唇はそれを挟み込み、そっと甘噛みする。

「大丈夫か? 声、出してもいいんだぞ」

 低く甘く囁かれずとも細い首筋を舌が這いくつろげた上衣の襟元をずらされ、鎖骨を舐められると、京哉は熱い吐息と共に声が洩れるのを抑えられなくなる。

「んっ……はぁん」

 上衣の上から躰をまさぐられ、布越しに右胸の小さな尖りを軽く摘み上げられた。指先で固くなった尖りを転がされるともう京哉の吐息が浅くせわしなくなる。
 見上げると視界に映る灰色の目は真剣だが、明らかな情欲を湛えて端正な顔は酷く色っぽい。それに薄い下衣はもう霧島の変化を露わにしていた。

「あぅん……あっ、ふ――」

 甘い痛みに小さく喘ぎながら京哉は霧島の目に誘われて手を伸ばす。霧島の上衣の裾を捲ると、そっと素肌に触れてみた。
 最初は本当にそうっと、そしてブレナムブーケの匂いと手に心地よい体温とを確かめて霧島の引き締まった腹から逞しい胸までを撫でてみる。

 美術彫刻のように美しい霧島の躰からは男の色気が立ち上っているようだ。京哉は霧島のことも気持ち良くしてやりたくて、覚えたポイントを指先で擦り始めた。

「あっ、く……京哉、そんなにするな。保たなくなる」

 保たないというよりも理性を保ち続けられなくなりそうで霧島は京哉を留める。自分を抑えに抑えて霧島は京哉の上衣のボタンをゆっくりと外し始めた。
 袖を抜かせると眩いような白い肌を霧島はゆるゆると愛撫する。赤く凝った方とは逆の胸の尖りを口に含んだ。

「んっ、あ、はぁん……あぅん」

 小さく呟くようだが確かに甘い京哉の声に、堪らない愛おしさを感じて霧島は我慢できなくなり、思い切り良く全ての衣服を脱ぐ。象牙色の肌を余す処なく晒した。その躰はもう京哉を恋しがり蜜を溢れさせている。

「すごい、忍さん……こんなにしてる」
「ああ、お前が欲しくて泣いてしまっているんだ」
「そっか。いいですよ、して」

 そう言って京哉はシーツに自ら身を横たえた。だが細い細い躰に霧島は己の身を重ねようとして僅かにためらう。しかし見上げてくる黒い瞳が頷いているのを見取ってそっと躰を倒した。白い胸に、腹に、華奢な首筋にキスの雨を降らせる。

「はあっ、忍さん……忍さん!」

 幾度も名を呼びながら京哉は全身で霧島を受け止めた。慣れた肌の感触が深い安堵をもたらすようで抵抗なく霧島に下衣を取り去られる。互いを身体中で感じ合った。

「こんなに痩せてしまったのだな、京哉」
「すぐ、元に、戻りますから」

 まるで儀式のように二人はひとつひとつの行為をなぞり確かめてゆく。互いの肌を手と舌で愛撫しては唇を押し当て、吸い上げて自分の所有印を赤く濃く刻み込んだ。
 やがて京哉は白い指で霧島を握ると手を動かし始めた。霧島は与えられる快感に頭の芯が熱くなるのを感じる。

「京哉、だめだ……くっ!」
「だめじゃないです……欲しい、頂戴」

 上体を倒した京哉が霧島を口に含んだ。熱い舌でなぞられ蜜を舐め啜られて霧島の思考は一気に白熱した。柔らかな口全体で締めつけられ、巻きつく舌づかいに全ての感覚が支配される。
 咥える京哉は酷く淫らで視覚的にも霧島は追い上げられた。

「あっ、くっ……京哉、だめだ、もう――」
「んんっ、ん、っん……んんぅ!」
「だめだ、京哉……離せ、本当に……京哉!」

 それでも五分ほど耐えただろうか。背筋を疼きが突き上がってきて霧島は身を捩った。京哉から逃れようとするも暴力的なまでに膨れ上がったものを京哉は離さない。
 男たちにさせられたであろう行為を京哉に思い出させたくなくて霧島はまだ抵抗したが、京哉は今や思い詰めたような目をして霧島を攻め立てていた。

「んんぅ……んっ、ん……んんっ!」
「だめだ、京哉……すまん、あっ、くうっ!」

 とうとう霧島は京哉の口内で達してしまう。殆ど痛みのような快感と共に幾度も身を震わせて、京哉の喉にぶつけるように熱く濃いものを絞るように放った。肩で息をする霧島が何か言う前に、霧島のものを全て嚥下した京哉は小さな声で言う。

「いいんです、僕が欲しかったんですから」

 扱いて滲み出たものまで舐め取り、白い指で掴んだ霧島をじっと見つめた。一度弾けさせたとは思えないほど霧島は滾らせたままで圧倒的存在感だった。
 これでは傷つけるのではないか。無理矢理された痛みを思い出させるのではないか。そもそもこれを京哉は受け入れられるのか。

 だがここまできて互いにもう退けない。腹を括って京哉に訊いた。

「今度は、お前の中でいかせてくれるか?」

 黙って京哉は頷き、シーツに仰臥した。細い脚を割って入った霧島は京哉の躰の中心に目をやる。ここまで幾度か京哉も成長させていたが今は治まってしまっていた。
 可哀相な気もしたが心を決めた霧島は自分の右手指を口に含む。たっぷりの唾液で濡らした指先で京哉の後ろにそっと触れた。

「怖くないですから、大丈夫だから、して」

 怖くない、そんなことはないだろう。理性では霧島を受け入れているが、黒い瞳が浮かべる表情は硬いままだった。固く締まった窄まりをなぞるも明らかに京哉は緊張しているのが分かる。だが予想していたことだ。

 あやすように片手で京哉の脚を軽く叩きながら、霧島はこれ以上無理なくらいに深爪した指先を狭いそこに挿入する。ゆっくりと長い指を進め、深い処にまで届かせた。
 だが挿入した指を締めつけているのは霧島を離すまいとする意思ではなく、異物を排除しようと躰が勝手に拒否をしているようである。

「んっ、く……あっ、つっ!」
「痛いか? 本当に無理はするなよ」

 ゆっくりとほぐしながら霧島は苦しげな表情の京哉が心配で堪らない。

 京哉がどんな目に遭ったのか霧島も理解している。バルドールの安ホテルで医者の治療に立ち会ったとき京哉の体内は酷いことになっていたし、監禁されていた部屋に転がっていたワインボトルには血がこびりついていた。
 その血の色を思い出し、霧島は更に京哉を傷つけることを恐れた。

「やはりだめだ。京哉、きつすぎる。これではお前に怪我をさせる」
「だめなんかじゃない。傷つけてもいいですから」
「また熱、でるぞ」
「上書きしてくれるって、言ったじゃないですか」
「……そうだったな」

 長い時間を掛けて指を増やした。白く華奢な躰が数指を咥え込んでいる光景は霧島に痛いほどの疼きを溜めさせている。今すぐにでも捩じ込んでしまいたいのを抑え、霧島は京哉のそこを馴らし続けた。そんな霧島を京哉が留める。

「もういいから、忍さん。お願い、して下さい」

 硬い声で訴えられ、全ての指を抜いた。緊張にこわばった細い脚を撫でる。そして馴らしたばかりの淡い色づきに己をあてがった。黒い瞳は閉じられていて見えない。

 はっきり言って霧島も怖かった。もし拒否されたらそのとき自分は理性を保っていられるのかと。嫌がる京哉を目茶苦茶にしてしまう自分を想像し寒気がした。

 それでも今は京哉が望むようにしてやる、それだけを考えて静かに低い声を出す。

「いいな、私を入れてくれ」
「はい……んっ、あ、ああっ!」
「くうっ、きつ、い……うっ!」

 まるでまっさらな躰をこじ開けるかのようだった。ここでも長い時間を掛けて僅かずつ自分を受け入れさせてゆく。京哉の躰はともかく心は切実に霧島を欲しているのだ。諦められない。最後は捩じ込むようにして京哉に埋める。
 霧島は冷や汗を拭った。固く目を瞑ったままの京哉を見つめる。

「京哉……大丈夫か?」
「ええ。動いて、いいですから」
「なるべくゆっくりするからな、お前も耐えてくれ」
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