アムネジアの刻印~Barter.14~

志賀雅基

文字の大きさ
40 / 41

第40話(BL特有シーン・回避可)

しおりを挟む
 歯の裏までねぶられ舌を思い切り吸い上げられて、甘い痛みに呆然とする。ずっと連続して変わらない霧島なのに激しくも酷く優しいキスが懐かしかった。

「んんっ……ぅうん、んっ……はぁん」

 やっと口を解放されて肩で息をついたものの頭上で縫い止められた両手はまだ自由にさせては貰えない。超至近距離にある端正な顔と敵同士のように睨み合う。
 ここで流されてしまっては拙い。京哉は真顔で見上げて強い口調で本気の拒否をした。

「忍さん、離して下さい」
「嫌だ……京哉……私の京哉!」

 京哉の本気の拒否などまるで聞き入れて貰えず、そのまま霧島に片手で器用にドレスシャツのボタンを外され、前をはだけられて肩口に顔を埋められてしまう。
 すると京哉の方が今度は霧島の黒髪を抱きたくて切なく暴れた。だが霧島の腕一本で縛められた両手は頑として緩まない。悔しいくらいに力の差を思い知らされる。

 仰け反らせた喉にまで濃厚に舌が這い、衣服でも隠すことができない処まで赤く霧島の証を刻まれて、幾度も甘い痛みが走り、堪らず高く喘ぎを洩らした。

「あっ、ああっ……忍さん、あぅん!」

 ようやく両手の自由を得た時にはベルトを緩められ下衣を引き剥がされて躰の変化も露わにされていた。熱く濡れそぼったものを霧島に掴まれ、扱かれて腰が淫らに浮く。
 
 羞恥だけでなく期待に呼吸を速めた京哉の細い片脚を持ち上げた。容赦なく何もかも露わにさせてから、そこをじっと見つめる。

「や、あっ、それ、やあん……忍さん、はぅん」

 片脚をソファの背に載せた、敏感な処まで晒した姿態を取らされ、じっくり観察されているだけでも酷く羞恥を煽るのに、舐められ身を跳ねさせた次には体内に濡れた指が侵入してきた。だが指は浅い処までで抜かれ、また僅かに挿し込まれる。

 京哉は恥ずかしくて堪らない思いをしながらも己の腰がわなないて悶え、霧島の指を欲してうねるのを止められない。
 そこはきつく閉じている筈のそこはひくついて指を咥え込もうとしている。全身が羞恥に染まったが、もう抑えられなかった。浮かされた細い腰を蠢かせて咥え込もうとするが、そのたびに逸らされる。

「忍さん、お願い……ああんっ、奥まで、頂戴!」
「奥まで……こんな風にか?」

 途端に指がするすると侵入し、奥深くを優しく掻かれていた。眩暈のような快感が湧いて京哉は息を呑む。

 喘ぐことさえ忘れて霧島の長い指を一本ならず咥え込んでゆく我が身を見下ろしていた。勝手に腰が波打ってしまうのを抑えきれない。
 そんな躰から指が抜かれたと思うと霧島が再び口をつけた。舌を捩じ込まれる。

「あっ、忍さん、そんな……あぅんっ!」

 舌を受け入れる間、高く甘い喘ぎを絶え間なく放っていた。お蔭で霧島が攻めを休めた時は本当に眩暈がしていた。粘膜をぬるまされて溢れそうに滲んでいるのが分かる。
 
 羞恥と快感で喘ぎすぎた京哉の顔色を読んだのか、霧島は乱れて顔に掛かった長めの髪を優しく梳いてくれた。そうして頬に、額に、唇にキスの雨を降らされる。

「大丈夫か、京哉?」
「大丈夫なんかじゃないですよ、貴方の躰……なのに貴方が欲しくて死にそうです」

 普段の何でもないような顔を崩してこの上なく嬉しそうに笑う年上の愛し人に抱かれ、京哉は寝室のベッドに運ばれ横たえられた。霧島も衣服を脱ぎベッドに上がる。

 京哉は逞しく鍛えられた躰に刺された傷と手術痕を探した。だが医師も驚く回復力のお蔭で痕は本当に僅かだった。時間さえ経てばもっと目立たなくなるに違いない。

 それでも象牙色の彫像の如く美しい躰が傷つき、京哉は悔しさで涙が滲む。

「そんな顔をするな、大したことはない」
「だって、前にも言いましたけど忍さんが痛い思いをするなら、僕が痛い方がいい」
「私も以前に言ったが、お前が痛い思いをするなら私が痛い方が百倍マシだ」

「頭痛も酷いんでしょう、無理はしないで下さい」
「もうお前を我慢する方が無理だ……京哉、私の京哉!」

 抱き締められて押し倒され素肌同士が触れ合うと、霧島の滑らかな象牙色の肌が信じがたいほどに心地良かった。全身を擦り合う。
 こんなに気持ち良く馴染むものだったのかと改めて思わされるほど、こうして触れ合うだけでも二人はひとつだった。

「くっ……う……京哉、だめだ」
「何がだめなんですか?」
「そんなにすると私が保たない」

 僅かに歪ませた端正な顔が非常に色っぽく、京哉は自分に黙って帰ってきただけでなく気配まで消してリビングに潜んでいたことへのささやかな仕返しとばかりに、甘く痛むほど擦り合わせてやった。

 だが年上の男は長身を上にずらす。本当に保たないのと、やはり人間離れしていても本調子ではないのかと京哉は思い、素直になった。

「僕も貴方が欲しいです。忍さんとひとつになりたい」

 何だか妙に気恥ずかしいけれど、もっと恥ずかしいことがしたい。
 体内に霧島を迎え入れて快感に酔い痴れたかった。

 熱い霧島が押し当てられる。あれだけ緩めても一息に侵入した霧島は、圧倒的な存在感で京哉に悲鳴を上げさせた。

「んんっ……あっ、あっ……ああんっ!」
「……あ、くっ……京哉、きつ、い――」

 半ば息を詰めたまま京哉も躰をコントロールすることなどできない。霧島も急激な昂ぶりに堪えているようだ。そのうち我慢ができなくなったのか霧島が大きく腰を引いて、離れてしまうかと思った瞬間、思い切り突き上げられて叫ぶ。

「ああっ、忍さん……すごい、いい、はぁんっ!」
「京哉、くっ……気持ちいい、最高だぞ!」
「僕も、いい、忍さん……ああん、そこ……もっと!」

 夢中で躰をぶつけ合った。腰が蕩けて霧島と混じり合ってしまったかのように思う一方で、充血した粘膜は霧島の形までくっきりと伝えてくる。
 じっくりと馴らされた躰は霧島の激しい攻めに早くも音を上げた。

「もう、忍さん……んっ、だめ――」
「私も、京哉……一緒に、いかせてくれ!」

 叩きつけるような腰の律動を霧島が速くする。蕩けた場所を抉られ、抑えられず淫らに叫んだ。これ以上ないと思っていた快感が大きく膨れ上がる。破裂寸前で奥の奥まで突かれ反り返った先で擦られ気が遠くなった。

「ああ、ああ、あああんっ! いくいく……だ、め、はぁん!」
「くっ……あ、京哉……京哉!」

 奥深くを熱く濃く濡らされながら京哉も自身の喉元にまで迸らせる。幾度も身を震わせて二人は放った。だがそうしてなお霧島は京哉の中から去ろうとはしない。

 京哉が『本調子ではない』と霧島を思いやったのは、これに限っては甘かった。次には先程より激しく揺らされている。力技で様々な姿態を取らされ攻められて目眩がした。

「京哉……私の、京哉! ここまでさせて……堪らん! もっとくれ!」
「忍さん、僕の、んっ……はぁんっ! いい、から、何でもするから!」

「すまん、京哉……あまりに良すぎて、止められない!」
「いいから、好きなだけいって! 忍さん……あぅんっ!」

 記憶のない霧島が己を京哉に刻み込もうとしたのと似たような心理なのか、霧島は京哉に思いつく限りのあらゆる姿態を取らせては欲望を吐き出した。
 そうしないとまるで他人に京哉を盗られたような気がしているのかと想像し、京哉は少し可笑しくなったが笑っていられる状況ではない。

 このままだとどちらかがまた意識を飛ばしそうである。だからといって京哉の口から洩れるのは甘くも高い喘ぎで、それも徐々に嗄れつつあった。

 さんざん躰の中も外も弄られ、存分に快感を注ぎ込まれては全身を熱い欲望で濡らされる。またも京哉は粘膜が裂けてしまいそうな思いをしながら、霧島に応えて細い腰を上下させた。こうなったら愛しい男の心が蕩けるほど悦くさせてやりたかった。

「くうっ、ああっ……京哉、目茶苦茶いいぞ! 腰が蕩けそうだ!」
「僕も、忍さんがまだ……あっ、あっ!」

 もう京哉は殆ど何も零せない。そんな躰を熱く濡らされ溢れさせながら京哉は霧島に強く抱き締められた。半ば朦朧としながらも京哉は満足させたい一心である。

「忍さん……もっとして。好きなだけ、僕の中でいって」

 耳許で囁くと霧島は切れ長の目を眇めて京哉を見返した。
 艶やかな前髪を乱れさせた霧島の顔色は少し白かったが切れ長の目に溜めた情欲と、逞しい躰のラインが堪らない男の色気を立ち上らせている。

 そんな霧島は京哉が無理しすぎているのに気付いたらしかった。あまりの激しい行為でシーツに点々と鮮やかな赤が散っていた。

「こんなに……すまん」
「いいえ、貴方のものですから。もう、僕も、中途半端にできません」
「そうか。ならば思い切りする。あとで治療はするから許してくれ」

 腰を掴まれ、引き寄せられて背後から攻められた。堪らない快感に京哉は溺れきっていた。霧島が力強く腰をスライドさせるたびに溢れた熱いものが内腿を伝う。

「あふっ、忍さん、もっと……ああんっ、すごい!」
「お前、京哉は、変わらんな。くっ! 狭くて、きつい!」

 巧みに攻められ京哉は叫ぶように甘く鳴きながら、霧島の手の中で達した。包んだ霧島も身を震わせる。まだ霧島は京哉を離そうとしなかった。仰向けに身を返され、しなやかに反る躰に霧島は蹂躙を重ねた。

「私の京哉……私のものだ、くっ!」
「そうですよ、忍さんの……あっふ、貴方の……ああんっ!」

 もう霧島が理性をとばしているのは分かっている。熱い霧島をこれ以上なく感じて京哉はまた涙を滲ませる。澄んだ黒い瞳を潤ませ、ぶつけられる霧島の情欲に応えると、淫ら極まりない水音が高くなり寝室の空気が震える。

「京哉、愛している! どれだけ言っても言い足りない!」
「僕も、愛して……はぁんっ……忍さん、はぅんっ!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

明治かんなぎ少女の冥契 五百年の時を超えて、あなたに愛を

花籠しずく
キャラ文芸
 ――ですが、わたくしは生まれました。あなたに会うために。  月のものが来るようになってから、琥珀は不思議な夢を見る。誰かに探されている夢。きっと大切な人だったことは分かるのに、目が覚めると朧気で何も思い出せない。婚約者である志貴の言いなりの人形になる生活をし、生家とは会うと脅され、心が疲弊していたある日、家からひとり抜け出すと、妖魔のようなものに出会う。呪術師である志貴に、一時祓ってもらいはしたが、不思議と心が痛む。夢に美しい男が現れ、声に導かれるようにして、ある山のふもとの、廃れた神社の中に入ると、そこには苦しそうに蹲るあの妖魔がいた。琥珀はそれが夢に現れた、蘿月という男だと直感する。全身が黒い靄で包まれた彼の、靄を払う方法を、どうしてか琥珀は知っていた。口づけをし、息を吹き込むように、生きて、と願った。  帰ってすぐに志貴に殴られ、月のものがはじまっていたことが志貴にばれる。琥珀を穢そうとする志貴の様子に恐ろしさを覚えて、助けてと叫んだその瞬間、闇を裂くようにして、蘿月が現れた。 「琥珀は、俺が五百年待ち望んだ花嫁だ」  これは、時を超えて紡がれる愛の物語。そして虐げられた少女が、愛を知り、愛のために生きる自由を選ぶ物語。 ※R-15っぽいゆるい性描写があります。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

あやかし帝都の婚姻譚 〜浄癒の花嫁が祓魔の軍人に溺愛されるまで〜

鳴猫ツミキ
キャラ文芸
【完結】【第一章までで一区切り】時は大正。天羽家に生まれた桜子は、特異な体質から、家族に虐げられた生活を送っていた。すると女学院から帰ったある日、見合いをするよう命じられる。相手は冷酷だと評判の帝国陸軍あやかし対策部隊の四峰礼人だった。※和風シンデレラ風のお話です。恋愛要素が多いですが、あやかし要素が主体です。第9回キャラ文芸大賞に応募しているので、応援して頂けましたら嬉しいです。【第一章で一区切りで単体で読めますので、そこまででもご覧頂けると嬉しいです】。

【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...