やんごとなき依頼人~Barter.20~

志賀雅基

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第49話

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 瞼の裏に赤い幻惑斑を見て、霧島は自分が明かりのある場所にいることを知り、薄く目を開けてみた。だがミルク色の霧が掛かっていて視界は非常に悪い。

 オレンジ色の何かが踊るようにチラチラしている。

 朦朧としたまま、踊るオレンジ色の輪郭をぼんやり捉えた。丸いそれは自分に向けて投げられたライトだと思われた。そのライトが揺れ、自分を捉えては外れる。

 不安定に揺れるそれは遠いらしい。船から投げかけられているとすれば、自分はまだ海中にいるのだろうか。そう考えると確かに酷く寒かった。全身が凍り付きそうに冷たい。

 水を掻いて浮上しなければと焦るが躰は重たく、どんどん深みに引き込まれてゆくように感じる。冷たさが芯まで染み込んでいた。泳ぎには自信があったのに凍ったような手足は痺れて動かせない。尋常でない躰の重みに自分は既に溺れ死んでしまったのかと思う。

 遠くで人の声が聞こえたような気がして耳を澄ますが、低い耳鳴りが邪魔をして、よく聞き取れない。深みに沈んで意識が途切れ、また浮上することを繰り返す。
 そして何度目かに浮上した時、京哉のことを思い出した。

 自己防衛本能だろうか、恐怖は感じなかった。ただ淋しいような想いが浮かぶ。
 あんなにしっかりと胸に抱いていたのに、いつ手放してしまったのだろうか。いや、手放さなければ共に溺れてしまうだろう。

 だが本当は最期まで抱いていたかった。喩え一緒に沈んでも……。
 こんな我が儘な男を京哉はこの先も思い出してくれるだろうか。

「きょう、や……京哉――」

 ふいに手を握られた。温かな手が左手を掴んでいる。その温度に縋るようにきつく握り返そうとするが手に力が入らない。もどかしく思っていると頬をさらりとした感触が撫で胸を撫でた。今度は両手を掴まれる。指を絡めて顔の横で縫い止められた状態だ。

 ここにきて霧島は下腹に重みがあるのに気付く。
 つまりは跨られた格好らしい。それも触れているのは素肌同士だ。

 熱い息づかいをごく近くに感じ、ミルク色の霧がゆるゆると渦巻く。それがなまめかしい腰の動きだと気付いた途端に、湧いた疼きが止めようもなく下半身に流れ込んでいた。血流が集中して熱く敏感になる。自分の中の何処にこんなに熱い血があったのかと驚くほどだった。

 きめ細かな肌でそれを刺激される。またさらりとした感触が腹から胸を撫で、首筋に熱いものが這った。衣服を身に着けても見えてしまう処まで吸い上げられる。そうして霧島は甘やかな痛みを覚えた。繰り返されるそれは霧島に期待を抱かせる。

 やがて霧島はきつくも柔らかで温かなものに包まれた。
 細い躰に無理をさせた心配と、眩暈がするほどの心地良さが同時に押し寄せる。

 ミルク色の霧がまた渦巻き出すと、あまりの快感に躰が勝手に反応し始めた。何度も腰を突き上げる。熱く太く硬いもので狭いそこを貫き突き立てた。

「うっく……京哉……ああ――」

 思わず声を洩らす。すると更に締めつけが強くなった。柔らかく絡みつくそこを堪らず強引に掻き回す。引き裂くように埋め、切っ先で何度も抉っては、今はもう目を瞑ったまま細い躰を激しく揺さぶった。無理をさせたのに、こんなにしてしまっては傷つけてしまうと思ったが、もはや躰が勝手に反応してしまい止められない。

 掴まれた手に爪が食い込む。目の裏に赤い幻惑斑が踊る。
 押し返せない本能の本流に身を任せて――。

「あっ……ふ、ああっ……あうっ!」

 喉元にまで温かい液体をかけられるのを感じると同時に、思い切り欲望を解き放っていた。どくどくと溢れさせた直後、霧島の意識は完全に暗転した。
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