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第44話
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漁船を観察し、魚釣りをしている人々に釣果を見せて貰いながら魚市場に辿り着く。
魚市場は巨大な倉庫のような建物の中だが、大扉が全て開放されていて雰囲気としては屋外だ。外にも中にも景気づけなのか大漁旗が何枚も掲げられ、色鮮やかなそれが人々の購買意欲に一役買っているようである。
街の人々らしい客で盛況の店々を主夫ハイファはシドと一軒一軒見て回った。
大小の魚だけではなく海草や貝類にエビやカニまで売り物は多彩で、ハイファは夢中で検分してゆく。ときには人より大きな魚が吊ってあったりして驚いた。培養魚肉とは違う生臭さにシドは閉口しているらしく、ポーカーフェイスながら眉間にシワが寄っていた。
魚市場を出るとすぐ右側に小規模ながら魚介類の輸出専用宙港があり、忙しくリフトコイルがコンテナを貨物艦へと運び込んでいる。その動きを見ながら二人は更に先を目指した。
すると宙港施設の裏にはシュレーダー・ディー・バンク社のロゴ、SDBの文字がデフォルメして描かれた大きな円形の建物と、十階建てくらいのビルが建っていた。ビルは低いがかなり大きく、円形の建物と並んで建つ様子は前方後円墳のようだ。
素早くマップを確かめてハイファが指差す。
「これ、シュレーダー・ディー・バンク社の海洋利用医薬品の研究所なんだって」
「ふうん。あっちにも何かあるぞ」
その辺りはシュレーダー・ディー・バンク社だけでなく傘下の工場なども建ち並び、これはこれで小さな街を形成しているようだった。工場は巨大なパイプで海と繋がっている。海水を引き込んでいるらしい。
「おっ、この建物はTVで視たぞ。セス素子の製造工場だ」
「へえ、これが」
鈍い銀色の工場には何のロゴも入ってはいない。それが形や大きさを変え、何棟も並んでいる。各社のセス素子工場が集中して建てられているようだ。
「この中でダリア素子も作られてるのかも知れねぇな」
「そっか。でも覗いたって違いは分からないよね、きっと」
「チクショウ、目の前にあるってのによ」
「仕方ないよ、行こ」
紺色の作業服の人々が工場を行き交うのを横目に、二人は少々残念かつ恨めしい思いでその場を離れる。そしてケンダルの街へと転進した。
市場での買い物から帰る人々で、歩道は割と賑やかだった。
ファイバではない石畳の道を歩くこと十五分ほどで、気付くともう街に入っている。それくらい街の建物は控えめな造りなのだ。街中も放射状の道は広くても片側二車線がせいぜい、落ち着いた佇まいといった雰囲気だ。
それでも街の中心に近づいてゆくと、昨日ホテルのレストランから見た五、六階建ての建物が増えてくる。一階にはそれぞれ店が構えられていて、見るものにも不自由しなくなった。上階にはバルコニーがしつらえられた建物が多い。
一軒のオープンカフェで二人は大きな紙コップのアイスティーを手に入れる。冷たい飲み物で喉を潤しながら、ハイファはパン屋や香辛料の店、雑貨屋や干物などが軒先にぶら下がっている店舗などを愉しく見て回った。
「あっ、昨日見たあの建物だ」
「ふうん、尖塔に鐘か。教会みたいだな」
「行ってみようよ」
そう言った途端に鐘が鳴り出す。それはかなりの大音量で頭に響いた。顔をしかめつつハイファが反射的にリモータを見ると十五時だ。鐘は三度鳴り響いて沈黙する。
まだ空気がビリビリ震えているような中、尖塔の建物に近づいてみた。オートではない大きな観音開きの扉は片側だけが細く開いていて、どうやら出入りは自由らしい。
空の紙コップを傍のダストボックスに捨て、ハイファはシドを振り返る。
「入ってみる?」
「ああ。涼しそうだしな」
そっと二人は扉の隙間から滑り込んだ。中には予想を裏切らないベンチの列があり、ずっと先の中央の壇上には聖母の像が立っていて、背後はステンドグラスになっている。
「わあ、結構綺麗かも」
「しっ、誰かいるぞ、邪魔しちゃ悪い」
聖母の像の足元には白っぽい服を着た誰かが座っていて、だが邪魔は悪いと言いつつシドはすたすたと近づいて行ってしまう。静かにハイファも続くと白地に淡いチェックのプルオーバーが見えた。間違いない、エベリナだ。
ベンチにも腰掛けずに床に直接腰を落とし、体育座りでエベリナは聖母像を見上げていた。
「貴方たちは人を撃ったことあるわよね」
振り向きもせず唐突に言われてハイファは僅かに戸惑う。シドが答えた。
「ああ、あるな」
「それって忘れられる?」
「正直、忘れる前に覚えてねぇのもある」
「ふうん……撃つものは撃たれる。殺すものは殺される。違う?」
「違うな。撃たれて殺される前に撃つ。そうして俺は生きてきた。これからもそうしていく」
「そう……そういうのもあるのね」
ゆっくりとエベリナはその場で立ち上がりシドとハイファを見上げる。濃い灰色の瞳は先程まで露を含んでいたようで、目の縁が赤かった。ふいにまた口を開く。
「ここの尖塔からの眺めはちょっとしたものよ。ご一緒しない?」
「いいね。行こうよ」
「但し、延々階段よ。覚悟して」
聖母像のある壇の左脇から螺旋階段が伸びていた。シド、エベリナ、ハイファの順でゆっくりと狭い螺旋階段を上ってゆく。各階層に行く階段とは別らしく、途中に踊り場もないので、いったい何階分を上ったのかまるで分からない。とにかく眩暈がしてくるような階段を三人は黙ってグルグルと上った。
七、八分もかけて上りきると小さな扉に行き着いた。シドがノブを握って引くと簡単に開く。そこは遠目に見た印象より広かった。十メートル四方はある。中央に鐘楼があり巨大な金属の鐘がぶら下がっていた。人気はなく遠隔操作かオートで鳴るらしい。
落下防止の石の壁が腰の高さでぐるりと張り巡らされていた。そこにハイファは近寄ってみた。風は生暖かいものの、階段登りで汗ばんだ肌を冷まされて気持ちいい。
「うわあ、本当に絶景かも」
「こいつはいいな」
放射状の道が延びる街から波頭の輝く海までが一望できた。そして遠くにはくっきりと水平線が拝めたのだ。空の青と海の碧のコントラストが美しく胸がすくような光景だった。
「すっごい綺麗。ねえ、エベリナは見ないの?」
背後のエベリナは鐘楼寄りに立って縁の石壁に近づこうとはしない。
「じつは、ちょっとだけ高所恐怖症気味なの」
「えっ、そうなんだ?」
自分から誘っておいて珍しいことを言うものだ。いや、それよりもバランスの取りづらい躰でここまで上ってきて疲れたのかも知れない。そう思ってハイファはそれ以上の詮索をやめる。だがそう思い始めるとエベリナは少し顔色が悪いように感じられた。
「じゃあ、一緒にホテルに戻る?」
「……ええ、そうね。そうして貰っていいかしら」
低くそう言ってエベリナは先に踵を返した。ハイファはシドと共に急ぎ足でエベリナに追い付く。またシド、エベリナ、ハイファの順で早々に螺旋階段を降り始めた。
だが何階分かを降りたとき、エベリナが一段分の階段を踏み外す。ハイファがエベリナのリモータの嵌った右腕を掴んで転げ落ちるのは免れた。酷く青い顔でエベリナが謝る。
「ごめんなさい」
「荷物だけでも持ってあげるよ」
と、ハイファが手を出すと、エベリナは暫し迷ってから肩に掛けていた黒いザックを降ろした。ハイファに差し出す。意外に重たいそれを受け取ると今度はシドが動いた。
「危ねぇな、こっちの方が早い」
言うなりシドがエベリナをすくい上げた。横抱きにして階段を降り始める。エベリナは驚いたのか声も出さなかった。身を固くして濃い灰色の目を瞠り、シドを見上げている。
たった二分ほどで元の聖母像のあるフロアに辿り着きシドはエベリナを降ろした。
教会の前から三人はタクシーに乗り込んだ。ミリアムホテルに着くまで誰もが寡黙だった。
フロントに戻ったことを告げると、ようやくエベリナが声を発する。
「わたし、ここの一七〇五号室なの」
「俺たちは一二〇七号室だ」
「今日のお礼に夕食をごちそうさせて貰えないかしら」
「ごちそうされはしねぇが一緒にメシを食うのはいいぞ。一人飯は淋しいだろ」
「ええ。じゃあ、十九時半でどう?」
二人は頷き、エレベーターまでは一緒に乗らずロビーで別れた。白い背がエレベーターホールに消えると、ハイファは溜息を洩らす。
「幾ら何でも、あれは失礼じゃない?」
「あれ? ああ、アレか。具合が悪そうだったじゃねぇか」
「それにしたって抱き上げるなんて、博愛主義者なんだから、もう!」
「まあ、そう怒るなよな。大体エベリナも怒ってなかったぜ?」
「そういう問題じゃないの! 全くもう、いいから部屋に帰るよ!」
バディの機嫌の悪さに閉口し、シドは黙ってハイファと部屋に戻った。戻ってオートロックが掛かるなりハイファはシドに抱きついて口づける。
「んっ、んっ……んんぅ――」
喉の奥でシドが呻くのにも構わず、思い切り舌を絡ませ吸い上げた。そうしながら対衝撃ジャケットを肩から滑り落とさせ、綿のシャツに包まれた躰をまさぐる。
「んんっ、ん……はあっ、ハイファ。ンなことすると……」
「構わないからしてよ、シド。僕だけを抱いてよ」
「お前、いい加減に壊れちまうぞ」
「いい、壊されたい――」
もどかしくハイファはシドのシャツのボタンを外し、前を開けると引き締まった腹から逞しい胸に手を這わせた。シドは撫でられる我が身を見下ろし、ハイファを抱き上げる――。
魚市場は巨大な倉庫のような建物の中だが、大扉が全て開放されていて雰囲気としては屋外だ。外にも中にも景気づけなのか大漁旗が何枚も掲げられ、色鮮やかなそれが人々の購買意欲に一役買っているようである。
街の人々らしい客で盛況の店々を主夫ハイファはシドと一軒一軒見て回った。
大小の魚だけではなく海草や貝類にエビやカニまで売り物は多彩で、ハイファは夢中で検分してゆく。ときには人より大きな魚が吊ってあったりして驚いた。培養魚肉とは違う生臭さにシドは閉口しているらしく、ポーカーフェイスながら眉間にシワが寄っていた。
魚市場を出るとすぐ右側に小規模ながら魚介類の輸出専用宙港があり、忙しくリフトコイルがコンテナを貨物艦へと運び込んでいる。その動きを見ながら二人は更に先を目指した。
すると宙港施設の裏にはシュレーダー・ディー・バンク社のロゴ、SDBの文字がデフォルメして描かれた大きな円形の建物と、十階建てくらいのビルが建っていた。ビルは低いがかなり大きく、円形の建物と並んで建つ様子は前方後円墳のようだ。
素早くマップを確かめてハイファが指差す。
「これ、シュレーダー・ディー・バンク社の海洋利用医薬品の研究所なんだって」
「ふうん。あっちにも何かあるぞ」
その辺りはシュレーダー・ディー・バンク社だけでなく傘下の工場なども建ち並び、これはこれで小さな街を形成しているようだった。工場は巨大なパイプで海と繋がっている。海水を引き込んでいるらしい。
「おっ、この建物はTVで視たぞ。セス素子の製造工場だ」
「へえ、これが」
鈍い銀色の工場には何のロゴも入ってはいない。それが形や大きさを変え、何棟も並んでいる。各社のセス素子工場が集中して建てられているようだ。
「この中でダリア素子も作られてるのかも知れねぇな」
「そっか。でも覗いたって違いは分からないよね、きっと」
「チクショウ、目の前にあるってのによ」
「仕方ないよ、行こ」
紺色の作業服の人々が工場を行き交うのを横目に、二人は少々残念かつ恨めしい思いでその場を離れる。そしてケンダルの街へと転進した。
市場での買い物から帰る人々で、歩道は割と賑やかだった。
ファイバではない石畳の道を歩くこと十五分ほどで、気付くともう街に入っている。それくらい街の建物は控えめな造りなのだ。街中も放射状の道は広くても片側二車線がせいぜい、落ち着いた佇まいといった雰囲気だ。
それでも街の中心に近づいてゆくと、昨日ホテルのレストランから見た五、六階建ての建物が増えてくる。一階にはそれぞれ店が構えられていて、見るものにも不自由しなくなった。上階にはバルコニーがしつらえられた建物が多い。
一軒のオープンカフェで二人は大きな紙コップのアイスティーを手に入れる。冷たい飲み物で喉を潤しながら、ハイファはパン屋や香辛料の店、雑貨屋や干物などが軒先にぶら下がっている店舗などを愉しく見て回った。
「あっ、昨日見たあの建物だ」
「ふうん、尖塔に鐘か。教会みたいだな」
「行ってみようよ」
そう言った途端に鐘が鳴り出す。それはかなりの大音量で頭に響いた。顔をしかめつつハイファが反射的にリモータを見ると十五時だ。鐘は三度鳴り響いて沈黙する。
まだ空気がビリビリ震えているような中、尖塔の建物に近づいてみた。オートではない大きな観音開きの扉は片側だけが細く開いていて、どうやら出入りは自由らしい。
空の紙コップを傍のダストボックスに捨て、ハイファはシドを振り返る。
「入ってみる?」
「ああ。涼しそうだしな」
そっと二人は扉の隙間から滑り込んだ。中には予想を裏切らないベンチの列があり、ずっと先の中央の壇上には聖母の像が立っていて、背後はステンドグラスになっている。
「わあ、結構綺麗かも」
「しっ、誰かいるぞ、邪魔しちゃ悪い」
聖母の像の足元には白っぽい服を着た誰かが座っていて、だが邪魔は悪いと言いつつシドはすたすたと近づいて行ってしまう。静かにハイファも続くと白地に淡いチェックのプルオーバーが見えた。間違いない、エベリナだ。
ベンチにも腰掛けずに床に直接腰を落とし、体育座りでエベリナは聖母像を見上げていた。
「貴方たちは人を撃ったことあるわよね」
振り向きもせず唐突に言われてハイファは僅かに戸惑う。シドが答えた。
「ああ、あるな」
「それって忘れられる?」
「正直、忘れる前に覚えてねぇのもある」
「ふうん……撃つものは撃たれる。殺すものは殺される。違う?」
「違うな。撃たれて殺される前に撃つ。そうして俺は生きてきた。これからもそうしていく」
「そう……そういうのもあるのね」
ゆっくりとエベリナはその場で立ち上がりシドとハイファを見上げる。濃い灰色の瞳は先程まで露を含んでいたようで、目の縁が赤かった。ふいにまた口を開く。
「ここの尖塔からの眺めはちょっとしたものよ。ご一緒しない?」
「いいね。行こうよ」
「但し、延々階段よ。覚悟して」
聖母像のある壇の左脇から螺旋階段が伸びていた。シド、エベリナ、ハイファの順でゆっくりと狭い螺旋階段を上ってゆく。各階層に行く階段とは別らしく、途中に踊り場もないので、いったい何階分を上ったのかまるで分からない。とにかく眩暈がしてくるような階段を三人は黙ってグルグルと上った。
七、八分もかけて上りきると小さな扉に行き着いた。シドがノブを握って引くと簡単に開く。そこは遠目に見た印象より広かった。十メートル四方はある。中央に鐘楼があり巨大な金属の鐘がぶら下がっていた。人気はなく遠隔操作かオートで鳴るらしい。
落下防止の石の壁が腰の高さでぐるりと張り巡らされていた。そこにハイファは近寄ってみた。風は生暖かいものの、階段登りで汗ばんだ肌を冷まされて気持ちいい。
「うわあ、本当に絶景かも」
「こいつはいいな」
放射状の道が延びる街から波頭の輝く海までが一望できた。そして遠くにはくっきりと水平線が拝めたのだ。空の青と海の碧のコントラストが美しく胸がすくような光景だった。
「すっごい綺麗。ねえ、エベリナは見ないの?」
背後のエベリナは鐘楼寄りに立って縁の石壁に近づこうとはしない。
「じつは、ちょっとだけ高所恐怖症気味なの」
「えっ、そうなんだ?」
自分から誘っておいて珍しいことを言うものだ。いや、それよりもバランスの取りづらい躰でここまで上ってきて疲れたのかも知れない。そう思ってハイファはそれ以上の詮索をやめる。だがそう思い始めるとエベリナは少し顔色が悪いように感じられた。
「じゃあ、一緒にホテルに戻る?」
「……ええ、そうね。そうして貰っていいかしら」
低くそう言ってエベリナは先に踵を返した。ハイファはシドと共に急ぎ足でエベリナに追い付く。またシド、エベリナ、ハイファの順で早々に螺旋階段を降り始めた。
だが何階分かを降りたとき、エベリナが一段分の階段を踏み外す。ハイファがエベリナのリモータの嵌った右腕を掴んで転げ落ちるのは免れた。酷く青い顔でエベリナが謝る。
「ごめんなさい」
「荷物だけでも持ってあげるよ」
と、ハイファが手を出すと、エベリナは暫し迷ってから肩に掛けていた黒いザックを降ろした。ハイファに差し出す。意外に重たいそれを受け取ると今度はシドが動いた。
「危ねぇな、こっちの方が早い」
言うなりシドがエベリナをすくい上げた。横抱きにして階段を降り始める。エベリナは驚いたのか声も出さなかった。身を固くして濃い灰色の目を瞠り、シドを見上げている。
たった二分ほどで元の聖母像のあるフロアに辿り着きシドはエベリナを降ろした。
教会の前から三人はタクシーに乗り込んだ。ミリアムホテルに着くまで誰もが寡黙だった。
フロントに戻ったことを告げると、ようやくエベリナが声を発する。
「わたし、ここの一七〇五号室なの」
「俺たちは一二〇七号室だ」
「今日のお礼に夕食をごちそうさせて貰えないかしら」
「ごちそうされはしねぇが一緒にメシを食うのはいいぞ。一人飯は淋しいだろ」
「ええ。じゃあ、十九時半でどう?」
二人は頷き、エレベーターまでは一緒に乗らずロビーで別れた。白い背がエレベーターホールに消えると、ハイファは溜息を洩らす。
「幾ら何でも、あれは失礼じゃない?」
「あれ? ああ、アレか。具合が悪そうだったじゃねぇか」
「それにしたって抱き上げるなんて、博愛主義者なんだから、もう!」
「まあ、そう怒るなよな。大体エベリナも怒ってなかったぜ?」
「そういう問題じゃないの! 全くもう、いいから部屋に帰るよ!」
バディの機嫌の悪さに閉口し、シドは黙ってハイファと部屋に戻った。戻ってオートロックが掛かるなりハイファはシドに抱きついて口づける。
「んっ、んっ……んんぅ――」
喉の奥でシドが呻くのにも構わず、思い切り舌を絡ませ吸い上げた。そうしながら対衝撃ジャケットを肩から滑り落とさせ、綿のシャツに包まれた躰をまさぐる。
「んんっ、ん……はあっ、ハイファ。ンなことすると……」
「構わないからしてよ、シド。僕だけを抱いてよ」
「お前、いい加減に壊れちまうぞ」
「いい、壊されたい――」
もどかしくハイファはシドのシャツのボタンを外し、前を開けると引き締まった腹から逞しい胸に手を這わせた。シドは撫でられる我が身を見下ろし、ハイファを抱き上げる――。
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