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第21話(BL特有シーン・回避可)
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やがて二人はゆっくりと互いの衣服を脱がせ合った。
丁寧にボタンをひとつずつ外し袖を抜かせる。ベルトを緩めて下衣を脱がせ合うときは少しハイファは恥ずかしげに身を捩った。だが勃ち上がったものさえも堂々と晒したシドの何ひとつ恥じない姿に、ハイファも思い切って変化した全てを晒す。
手を繋いでバスルームに向かい、ふたつ設置されていたリフレッシャで並んで全身を洗った。バスタブに先に身を沈めたシドの胸に、薄い背を押し付けるようにしてハイファも湯に浸かる。シドは背後からハイファのうなじに舌を這わせた。
「俺はお前とこうしてるのが一番の慰安だ」
「部屋、ツインに替えなくて良かったでしょ」
「ああ。これだけ広いとこんなこともできるもんな」
うなじを甘噛みしながらシドはハイファのものを緩やかに扱き始めている。細い腰をうねらせてハイファは逸らそうとするが、シドの巧みな攻めから逃れられない。
「あっふ……シド、そんなにしたら――」
「いきたければ、いってもいいんだぜ?」
「んんっ、や、あっ……シドが欲しい……ねえ、お願い」
振り向き斜めに見上げてくる若草色の瞳が切実な色を帯びていて、シドは立ち上がるとバスタブのふちに腰を下ろした。軽く脚を広げると、濡れて背に張りついた長い金髪に触れる。
「好きにしていい、お前のものだ」
「ん、嬉しい……愛してる、シド」
もう成長しきって張り裂けんばかりになっているシドのものをハイファが掴んだ。湯の中に跪き、愛しげに太いものを白い頬に擦りつける。
先端から溢れ出た明らかに湯とは違う液体でハイファが自ら汚している様子は酷く淫ら、シドに痛いくらいの疼きを溜めさせた。先端に口をつけハイファは舌先で蜜を舐めねぶり始める。
「んっ、く……ハイファ、ああっ……くうっ!」
「シド、最近すごく感じやすいね……んっ」
「お前だけが、俺にこんな……思いをさせる……あっ、ふ」
シドは自分でもおかしいくらいに感じてしまっていた。見下ろすと自分の脚の間でハイファがチラリと見上げてくる。
そして見せつけるように口を開け、太く硬いシドを赤い唇で挟み込んだ。顔立ちがノーブルなだけにその取り合わせはエロティックでシドはそれだけで達してしまいそうになるのを堪える。
深々と咥え込み、ハイファはシドの理性をも思い切り扱き始めた。
「くっ、うっ……ハイファ、あっ、く――」
驚くほど甘い自分の声をシドは遠くで聞く。耳に真綿を詰められたように何もかもハイファの攻め以外の全てが遠ざかっていた。喉元いっぱいまでハイファは咥え込んで擦り立て唇で扱き上げているのに、その奥まで突き立ててしまいそうになる。
我慢するだけでシドは精一杯、肩で何度も息をしバスタブのふちを掴んで堪えた。
「んんっ……ハイファ、もう……だめだ、ハイファ!」
「んっ……んんぅ……んっ、ん――」
愛し人のものを口で攻めるという行為に酔ってハイファもいつしか喉の奥で鼻に掛かった喘ぎを洩らしている。シドは視覚と甘い声にまで追い詰められた。
「っく、ハイファ……もう、あっ、あうっ!」
堪えきれずにシドはハイファの口の中で弾けさせてしまう。何度も身を震わせて放った。ハイファは喉を鳴らしてシドの溢れさせた熱く濃いものを嚥下する。シドが落ち着くのを待ってから扱き、滲んだものまでピンクの舌で舐め取った。
「でもシド、まだこんなにしてる」
「お前と一緒にいきたいからさ……な、ハイファ?」
促されて立ち上がったハイファとバスタブから出た。しっとりと桜色に染まった温かな躰をシドは抱き締める。もう一秒も待てない思いで自分の右手指を口に含み、たっぷりの唾液で濡らすとハイファの背後を探った。
しがみついてくる細い躰をしっかりと胸に抱き、探り当てた硬い蕾に指を挿し入れる。最初から深く擦り上げた。
「ああっ、はぁん……シド、そんな……ああん!」
「ハイファ……俺、お前のことがいつでも欲しくてさ」
「そっか……あっん、僕も、いつでも応えてあげたいよ……はうん!」
本当にどうしようもなくシドはハイファが恋しくて堪らなくなっていた。こうして腕の中にいるというのにハイファとひとつになれて初めて安堵できる気がするのだ。
もどかしい思いでシドはハイファの狭い窄まりをほぐしてゆく。
「シド、もういいから……んっ、入れて……埋めてよ」
「まだだ、煽るな……傷つけたくねぇからさ」
「僕は傷つけられたい……消せないくらいシドに刻み込まれたい――」
もう我慢の限界だった。シドは性急に増やした指を全て抜く。ハイファがバスルームの壁に手をついて振り向き潤んだ若草色の瞳で誘った。
シドは細い腰に片腕を回して抱くと馴らしたばかりのそこに己をあてがう。塗り込めるように動かした。
「ハイファ、入るぞ」
「うん……あっ、あ、ああっ……あうっ!」
傷つけたくなどないのに、シドは思わずひと息でハイファを貫いてしまっていた。悲鳴のような声で我に返り、何より大事なものを両腕で抱き締める。
細い身は呼吸も浅く不規則だ。しなやかに反った背を腕に抱いてハイファの耳許に低く囁く。
「すまん、ハイファ……こんな、苦しいよな」
「苦し……けど、すぐに、良くなる……から」
こんなものを体内に受け入れて苦しくない訳がないだろう。だがシドも我慢ができず、腰を引いては突き上げ始めた。まだきつくシドにも時折、甘く痛みが走る。
それでもゆっくりと繰り返し突いているうちにハイファの躰が追い付いてきて、柔らかくも温かな内襞がシドに絡みつきだした。淫らな水音がし始める。
いつしか共有していた甘い痛みも融け去って、二人を快感が押し包んでいた。
「あっふ……いや、っん……ああ――」
「嫌じゃねぇんだろ? 俺だけしか知らねぇんだ、素直になれよ」
「素直に、なっていいの?」
切れ長の黒い目が優しく頷き、ハイファは暫し目を瞑ると小声で囁いた。
「ん、じゃあ……もっと、思い切り激しくして。それでいっぱい僕の中でいって」
「分かった、覚悟してろよ」
自分から求めたとはいえハイファはこれ以上ない奥まで切っ先に貫かれて息を呑んだ。激しく力強い律動でシドは容赦なく揺らし粘膜を掻き回す。
情動を叩き付けるような激しさに思わずハイファは我を忘れて甘くも高い声で叫ぶように喘いでいた。
「ああっ、すごい……いい、シド、そこ……ああんっ!」
「いい、最高にいいぜ……ハイファ、俺のハイファ!」
オーダー通りの激しい行為でシドは抜かないまま二度も放ち、同時にハイファも熱く迸らせた。それでもシドは許さずに攻め続けた。抽挿入するたびにシド自身が放った欲望が溢れ出てハイファの白い内腿を伝う。
どのくらいの時間が経ったものか、ハイファがとうとう音を上げて訴えた。
「シド、シド、もうだめ――」
「ハイファ、俺も一緒に、いくからな」
シドの更なる変化をハイファは体内にくっきりと感じ取る。一際張り詰めたものに思い切り突かれ、悦びの涙が滲んだ。やがて閾値を超えるような快感が二人を襲う。
「お願い、シド……早く……いく、いっちゃう、はうっ!」
「俺も、ハイファ……あっ、くっ!」
体内をずぶ濡れにされるのを感じながら、ハイファも殆ど痛みのような快感と共に弾けさせた。だがさすがに薄いものが僅かな量、零れただけだった。
そしてすうっと気が遠くなり、そのまま頽れそうになったのを危うくシドが抱き留める。
「ハイファ、大丈夫か? ハイファ!」
「……」
完全にハイファは意識を飛ばしていて、シドはまたもやらかしてしまった己の所業に溜息をついた。愛しすぎて溺れてしまう。いつか壊してしまいそうで怖かった。
ともあれバイタルサインが正常なのを確かめてから、まずはリフレッシャの湯で躰を綺麗に流し、冷えてしまったハイファを抱いてバスタブの湯に再び浸かる。細く薄い躰を充分温めてから、バスルームをドライモードに切り替えた。
苦労して力の抜けきった躰を膝の上で乾かしてやり、長い毛先まで温風を通してからバスルームを出る。横抱きにした身を運んでベッドに横たえると、畳んだ毛布の上で寝ていたタマが金色の目を開き、ちょっと迷惑そうな顔をしてからハイファの脇腹辺りに移動してまた丸くなった。
その刺激のせいか、うっすらと若草色の瞳が覗く。
「ハイファ、目が覚めたか?」
「ん……大丈夫、だから」
「声、嗄れてるぞ。ちょっと待ってろ」
飲料ディスペンサーからグラスにアイスティーを注いで持ってきたシドは、何度も口移しでハイファに冷たい液体を飲ませた。グラス一杯を飲み干してハイファは溜息をつく。
「おかわり、要るか?」
「ううん、ありがと。今はいいよ」
「そうか……あのさ、何処も出血してねぇし、でも痛ければちゃんと言えよな」
「うん。それより貴方、先に服を着て。風邪引いちゃうよ」
健康優良児に見えてシドは案外風邪を引きやすく、高熱を出しやすい。それでいて薬もロクに効かない特異体質なので、結局ハイファが難儀することになるのだ。
一方のハイファは宇宙を駆け巡っていたスパイ時代に免疫チップを躰に埋めているので風邪は引かない。
「分かってるって、今、着ますよっと」
ショルダーバッグから出した下着とホテル備え付けの夜着を身に着けたシドは、ハイファにも甲斐甲斐しく着せかけてやっと納得する。
何にしろことのあとでハイファの世話を焼きたがるのはシドの趣味のようなもの、ハイファも分かっていて半ば好きにさせているのだ。
毛布を被せたハイファを思い切り抱き締めておいてシドは離れ、ロウテーブルに投げ出してあった煙草を振り出し、咥えてオイルライターで火を点ける。
「ねえ、それ吸ったらもう寝ない?」
「時間は……もう一時、日付が変わってるじゃねぇか」
「僕に言われてもね。明日は散歩にでも出ようよ、タマも一緒にサ」
「そうだな、せっかくつれてきたんだもんな」
一本を灰にするとシドはハイファの隣に横になった。毛布を二人で被ると、いつもの左腕の腕枕をしてやる。二人同時にベッドのヘッドボードの棚に置いた銃を確かめたのに笑い、ハイファがリモータで同期させた明かりを常夜灯モードにした。
「シド、おやすみ」
「ああ、おやすみ」
すぐにハイファは寝息を立て始め、寝返りを打ってシドの躰に抱きつく。互いに互いを抱き枕にして、シドは意識の続く限りさらさらの長い髪を指で梳き続けた。
いつの間にか二人の足許に移動していたタマも大欠伸をすると金色の目を瞑る。
丁寧にボタンをひとつずつ外し袖を抜かせる。ベルトを緩めて下衣を脱がせ合うときは少しハイファは恥ずかしげに身を捩った。だが勃ち上がったものさえも堂々と晒したシドの何ひとつ恥じない姿に、ハイファも思い切って変化した全てを晒す。
手を繋いでバスルームに向かい、ふたつ設置されていたリフレッシャで並んで全身を洗った。バスタブに先に身を沈めたシドの胸に、薄い背を押し付けるようにしてハイファも湯に浸かる。シドは背後からハイファのうなじに舌を這わせた。
「俺はお前とこうしてるのが一番の慰安だ」
「部屋、ツインに替えなくて良かったでしょ」
「ああ。これだけ広いとこんなこともできるもんな」
うなじを甘噛みしながらシドはハイファのものを緩やかに扱き始めている。細い腰をうねらせてハイファは逸らそうとするが、シドの巧みな攻めから逃れられない。
「あっふ……シド、そんなにしたら――」
「いきたければ、いってもいいんだぜ?」
「んんっ、や、あっ……シドが欲しい……ねえ、お願い」
振り向き斜めに見上げてくる若草色の瞳が切実な色を帯びていて、シドは立ち上がるとバスタブのふちに腰を下ろした。軽く脚を広げると、濡れて背に張りついた長い金髪に触れる。
「好きにしていい、お前のものだ」
「ん、嬉しい……愛してる、シド」
もう成長しきって張り裂けんばかりになっているシドのものをハイファが掴んだ。湯の中に跪き、愛しげに太いものを白い頬に擦りつける。
先端から溢れ出た明らかに湯とは違う液体でハイファが自ら汚している様子は酷く淫ら、シドに痛いくらいの疼きを溜めさせた。先端に口をつけハイファは舌先で蜜を舐めねぶり始める。
「んっ、く……ハイファ、ああっ……くうっ!」
「シド、最近すごく感じやすいね……んっ」
「お前だけが、俺にこんな……思いをさせる……あっ、ふ」
シドは自分でもおかしいくらいに感じてしまっていた。見下ろすと自分の脚の間でハイファがチラリと見上げてくる。
そして見せつけるように口を開け、太く硬いシドを赤い唇で挟み込んだ。顔立ちがノーブルなだけにその取り合わせはエロティックでシドはそれだけで達してしまいそうになるのを堪える。
深々と咥え込み、ハイファはシドの理性をも思い切り扱き始めた。
「くっ、うっ……ハイファ、あっ、く――」
驚くほど甘い自分の声をシドは遠くで聞く。耳に真綿を詰められたように何もかもハイファの攻め以外の全てが遠ざかっていた。喉元いっぱいまでハイファは咥え込んで擦り立て唇で扱き上げているのに、その奥まで突き立ててしまいそうになる。
我慢するだけでシドは精一杯、肩で何度も息をしバスタブのふちを掴んで堪えた。
「んんっ……ハイファ、もう……だめだ、ハイファ!」
「んっ……んんぅ……んっ、ん――」
愛し人のものを口で攻めるという行為に酔ってハイファもいつしか喉の奥で鼻に掛かった喘ぎを洩らしている。シドは視覚と甘い声にまで追い詰められた。
「っく、ハイファ……もう、あっ、あうっ!」
堪えきれずにシドはハイファの口の中で弾けさせてしまう。何度も身を震わせて放った。ハイファは喉を鳴らしてシドの溢れさせた熱く濃いものを嚥下する。シドが落ち着くのを待ってから扱き、滲んだものまでピンクの舌で舐め取った。
「でもシド、まだこんなにしてる」
「お前と一緒にいきたいからさ……な、ハイファ?」
促されて立ち上がったハイファとバスタブから出た。しっとりと桜色に染まった温かな躰をシドは抱き締める。もう一秒も待てない思いで自分の右手指を口に含み、たっぷりの唾液で濡らすとハイファの背後を探った。
しがみついてくる細い躰をしっかりと胸に抱き、探り当てた硬い蕾に指を挿し入れる。最初から深く擦り上げた。
「ああっ、はぁん……シド、そんな……ああん!」
「ハイファ……俺、お前のことがいつでも欲しくてさ」
「そっか……あっん、僕も、いつでも応えてあげたいよ……はうん!」
本当にどうしようもなくシドはハイファが恋しくて堪らなくなっていた。こうして腕の中にいるというのにハイファとひとつになれて初めて安堵できる気がするのだ。
もどかしい思いでシドはハイファの狭い窄まりをほぐしてゆく。
「シド、もういいから……んっ、入れて……埋めてよ」
「まだだ、煽るな……傷つけたくねぇからさ」
「僕は傷つけられたい……消せないくらいシドに刻み込まれたい――」
もう我慢の限界だった。シドは性急に増やした指を全て抜く。ハイファがバスルームの壁に手をついて振り向き潤んだ若草色の瞳で誘った。
シドは細い腰に片腕を回して抱くと馴らしたばかりのそこに己をあてがう。塗り込めるように動かした。
「ハイファ、入るぞ」
「うん……あっ、あ、ああっ……あうっ!」
傷つけたくなどないのに、シドは思わずひと息でハイファを貫いてしまっていた。悲鳴のような声で我に返り、何より大事なものを両腕で抱き締める。
細い身は呼吸も浅く不規則だ。しなやかに反った背を腕に抱いてハイファの耳許に低く囁く。
「すまん、ハイファ……こんな、苦しいよな」
「苦し……けど、すぐに、良くなる……から」
こんなものを体内に受け入れて苦しくない訳がないだろう。だがシドも我慢ができず、腰を引いては突き上げ始めた。まだきつくシドにも時折、甘く痛みが走る。
それでもゆっくりと繰り返し突いているうちにハイファの躰が追い付いてきて、柔らかくも温かな内襞がシドに絡みつきだした。淫らな水音がし始める。
いつしか共有していた甘い痛みも融け去って、二人を快感が押し包んでいた。
「あっふ……いや、っん……ああ――」
「嫌じゃねぇんだろ? 俺だけしか知らねぇんだ、素直になれよ」
「素直に、なっていいの?」
切れ長の黒い目が優しく頷き、ハイファは暫し目を瞑ると小声で囁いた。
「ん、じゃあ……もっと、思い切り激しくして。それでいっぱい僕の中でいって」
「分かった、覚悟してろよ」
自分から求めたとはいえハイファはこれ以上ない奥まで切っ先に貫かれて息を呑んだ。激しく力強い律動でシドは容赦なく揺らし粘膜を掻き回す。
情動を叩き付けるような激しさに思わずハイファは我を忘れて甘くも高い声で叫ぶように喘いでいた。
「ああっ、すごい……いい、シド、そこ……ああんっ!」
「いい、最高にいいぜ……ハイファ、俺のハイファ!」
オーダー通りの激しい行為でシドは抜かないまま二度も放ち、同時にハイファも熱く迸らせた。それでもシドは許さずに攻め続けた。抽挿入するたびにシド自身が放った欲望が溢れ出てハイファの白い内腿を伝う。
どのくらいの時間が経ったものか、ハイファがとうとう音を上げて訴えた。
「シド、シド、もうだめ――」
「ハイファ、俺も一緒に、いくからな」
シドの更なる変化をハイファは体内にくっきりと感じ取る。一際張り詰めたものに思い切り突かれ、悦びの涙が滲んだ。やがて閾値を超えるような快感が二人を襲う。
「お願い、シド……早く……いく、いっちゃう、はうっ!」
「俺も、ハイファ……あっ、くっ!」
体内をずぶ濡れにされるのを感じながら、ハイファも殆ど痛みのような快感と共に弾けさせた。だがさすがに薄いものが僅かな量、零れただけだった。
そしてすうっと気が遠くなり、そのまま頽れそうになったのを危うくシドが抱き留める。
「ハイファ、大丈夫か? ハイファ!」
「……」
完全にハイファは意識を飛ばしていて、シドはまたもやらかしてしまった己の所業に溜息をついた。愛しすぎて溺れてしまう。いつか壊してしまいそうで怖かった。
ともあれバイタルサインが正常なのを確かめてから、まずはリフレッシャの湯で躰を綺麗に流し、冷えてしまったハイファを抱いてバスタブの湯に再び浸かる。細く薄い躰を充分温めてから、バスルームをドライモードに切り替えた。
苦労して力の抜けきった躰を膝の上で乾かしてやり、長い毛先まで温風を通してからバスルームを出る。横抱きにした身を運んでベッドに横たえると、畳んだ毛布の上で寝ていたタマが金色の目を開き、ちょっと迷惑そうな顔をしてからハイファの脇腹辺りに移動してまた丸くなった。
その刺激のせいか、うっすらと若草色の瞳が覗く。
「ハイファ、目が覚めたか?」
「ん……大丈夫、だから」
「声、嗄れてるぞ。ちょっと待ってろ」
飲料ディスペンサーからグラスにアイスティーを注いで持ってきたシドは、何度も口移しでハイファに冷たい液体を飲ませた。グラス一杯を飲み干してハイファは溜息をつく。
「おかわり、要るか?」
「ううん、ありがと。今はいいよ」
「そうか……あのさ、何処も出血してねぇし、でも痛ければちゃんと言えよな」
「うん。それより貴方、先に服を着て。風邪引いちゃうよ」
健康優良児に見えてシドは案外風邪を引きやすく、高熱を出しやすい。それでいて薬もロクに効かない特異体質なので、結局ハイファが難儀することになるのだ。
一方のハイファは宇宙を駆け巡っていたスパイ時代に免疫チップを躰に埋めているので風邪は引かない。
「分かってるって、今、着ますよっと」
ショルダーバッグから出した下着とホテル備え付けの夜着を身に着けたシドは、ハイファにも甲斐甲斐しく着せかけてやっと納得する。
何にしろことのあとでハイファの世話を焼きたがるのはシドの趣味のようなもの、ハイファも分かっていて半ば好きにさせているのだ。
毛布を被せたハイファを思い切り抱き締めておいてシドは離れ、ロウテーブルに投げ出してあった煙草を振り出し、咥えてオイルライターで火を点ける。
「ねえ、それ吸ったらもう寝ない?」
「時間は……もう一時、日付が変わってるじゃねぇか」
「僕に言われてもね。明日は散歩にでも出ようよ、タマも一緒にサ」
「そうだな、せっかくつれてきたんだもんな」
一本を灰にするとシドはハイファの隣に横になった。毛布を二人で被ると、いつもの左腕の腕枕をしてやる。二人同時にベッドのヘッドボードの棚に置いた銃を確かめたのに笑い、ハイファがリモータで同期させた明かりを常夜灯モードにした。
「シド、おやすみ」
「ああ、おやすみ」
すぐにハイファは寝息を立て始め、寝返りを打ってシドの躰に抱きつく。互いに互いを抱き枕にして、シドは意識の続く限りさらさらの長い髪を指で梳き続けた。
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