砂中で咲く石Ⅰ~Barter.11~

志賀雅基

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第28話

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 コ・パイ席のキャラハンの背を京哉がつつく。

「あのう、『デポ』って何のことですか?」
「あんたらは知らなかったか。砂漠のド真ん中に放棄された軍の基地跡があるんだ。今はガラクタだらけのそこに先陣たちの溜め込んだ武器を隠してあるのさ。アタックをかける時にはどのグループでもそこの武器を利用していいことになってる」

 霧島の通訳を聞いて、それでグループの武装が軽装だったのかと京哉は納得した。

「こいつのチェーンガンにも三十ミリを積んで……腕が鳴るぜ」

 ニヤリと笑ったキャラハンは中身の知れぬ水筒からグビリとやった。


 キャンプに戻った二人は今晩のうちにデポに行くという中型ヘリに乗り換えた。シートのない床でウトウトしながら運ばれること三時間、デポと呼ばれる基地跡に到着する。

「わあ、目茶苦茶ですね」

 寒さで一気に覚醒した京哉は曇る眼鏡に難儀しながら、ゲリラによる再利用を阻むため完膚なきまでに破壊してから放棄された基地をヘリの前照灯で見た。破壊されているだけでなく、長く放置されたそこは殆ど砂に埋もれている。

 ここでも霧島と京哉はスコップを持たされ五名ばかりの男たちと共に穴掘りだ。レズリーに指示された場所をほじくり返す。暫くして出てきたのはスチールロッカーだった。重くて持ち上がらないロッカーにワイアを着け、ヘリに繋いで引き出す。

「中は……うわあ、八十四ミリ無反動砲にRPG7、アサルトライフルにカービンの追加が大量、それにサブマシンガンはH&KのMP5シリーズ。大した装備ですよ」
「確かにこれはすごいな、武器の見本市のようだぞ」
「全体的に旧いけれど綺麗ですね」

 アーサー=クーンツ組の他にもグループは存在する。
 
 持ち出し量はそれなりに不文律があるらしく、男たちはヘリのドアから撃つ五十口径の重機関銃を一基、サブマシンガンを一丁、それにRPGと呼ばれる歩兵用対戦車ロケット砲の発射筒と、グレネードランチャー付きライフルを二丁ずつ中型ヘリに載せた。

 あとはそれらの弾薬やロケット弾にてき弾なども積み込む。他には普段皆が持つ銃の弾薬である5.56ミリNATO弾に小型ヘリの三十ミリチェーンガンの弾薬、夜間戦闘時に弾道を知るための曳光弾や照明弾も積んだ。
 京哉と霧島はMP5用九ミリパラを追加して貰う。自分たちの手持ちの銃の分だ。

 だが積んでみれば得物は大した量ではないように思えて霧島は拍子抜けした。

「これだけで軍にカチコミするのか?」
「クーンツたちは『砲』とか言ってましたけどね。一撃離脱の殴り込みなら充分いけるでしょう。制圧する訳じゃなさそうだし、大体ゲリラがこれだけの装備を揃えてる方が吃驚ですよ」
「ふむ、そんなものか」

 武器弾薬に関しての知識は京哉の方が上である。スナイパーというだけでなく京哉はミリヲタの気があるのだ。故に日常生活には不要な知識を溜め込んでいて、特別任務などの非日常生活で霧島も頼りにするところ、やはり上手く役割分担ができている。

 中型ヘリの後部貨物区画に置かれた武器弾薬を霧島は眺めた。乾燥しているのが幸いして錆は浮かず真鍮の薬莢は煌めいている。これなら装薬も問題ないだろう。

 またうたた寝しながらキャンプまで戻った二人は小型天幕に潜り込み本格的に眠った。途中でジョセに起こされて朝食を摂り、再び寝る。更に二時間ほどでようやく起きて池で顔を洗った。

 キャンプ中央の焚き火に結構な人数が集まっているのを見てそちらに向かう。男女合わせて十五人ほどで第四駐屯地襲撃のプランを練っていた。どうやら二人が眠っているうちにアーサー=クーンツたちのグループから通信があったらしい。

 輪に混ざった霧島と京哉にオグルビーが言った。

「あんたらにもアタック隊に参加して欲しいんだが」

 二人の様子を皆が窺う。京哉が小さく頷いて霧島が返答した。

「了解した。全部で何人出るんだ?」
「人員輸送に中型ヘリが一機。攻撃組は小型ヘリのハミッシュとキャラハン。それに積む五十口径ドアガン射手にジョナサンと予備のビジョルド。地上班はレズリーとバイヨルがRPG担当。サブマシンガンがオルコットで、グレネード二丁のうち一丁をエディに任せた。あんたらはグレネードランチャーの経験があるか?」
「じゃあ僕、それで」

 精度の良さそうなライフル付きのそれをスナイパーの京哉は確保する。

「グレネードとRPGはそれぞれガードをつける。あんたらはバディで動いてくれ」
「分かった。こっちの攻撃組は小型ヘリ要員入れて十三人か。いつやるんだ?」
「次の砂嵐の晩だ。砂嵐に紛れて近づいて収まると同時に叩く。具体的には今夜から第四駐屯地近くに要員のみ移動して例のグループと合流、機を待つことになる」

「なるほど。敵地の内部構造は分かっているのか?」
「過去のアタックで大まかには。一応作製した地図はこれだ」

 渡されたのはこれもA4に鉛筆書きの大雑把な配置図だ。自分たちの立場ならプラーグ政府高官と携帯で話もできる。霧島は上手く駐屯地内部の詳細を相手から引き出し、図面をメールで送らせることくらいやってのける自信があった。

 だがそんな図面を出した時点で自分たちが体制側と繋がっているのがバレる。ここは黙っているしかない。
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