28 / 49
第28話
しおりを挟む
コ・パイ席のキャラハンの背を京哉がつつく。
「あのう、『デポ』って何のことですか?」
「あんたらは知らなかったか。砂漠のド真ん中に放棄された軍の基地跡があるんだ。今はガラクタだらけのそこに先陣たちの溜め込んだ武器を隠してあるのさ。アタックをかける時にはどのグループでもそこの武器を利用していいことになってる」
霧島の通訳を聞いて、それでグループの武装が軽装だったのかと京哉は納得した。
「こいつのチェーンガンにも三十ミリを積んで……腕が鳴るぜ」
ニヤリと笑ったキャラハンは中身の知れぬ水筒からグビリとやった。
キャンプに戻った二人は今晩のうちにデポに行くという中型ヘリに乗り換えた。シートのない床でウトウトしながら運ばれること三時間、デポと呼ばれる基地跡に到着する。
「わあ、目茶苦茶ですね」
寒さで一気に覚醒した京哉は曇る眼鏡に難儀しながら、ゲリラによる再利用を阻むため完膚なきまでに破壊してから放棄された基地をヘリの前照灯で見た。破壊されているだけでなく、長く放置されたそこは殆ど砂に埋もれている。
ここでも霧島と京哉はスコップを持たされ五名ばかりの男たちと共に穴掘りだ。レズリーに指示された場所をほじくり返す。暫くして出てきたのはスチールロッカーだった。重くて持ち上がらないロッカーにワイアを着け、ヘリに繋いで引き出す。
「中は……うわあ、八十四ミリ無反動砲にRPG7、アサルトライフルにカービンの追加が大量、それにサブマシンガンはH&KのMP5シリーズ。大した装備ですよ」
「確かにこれはすごいな、武器の見本市のようだぞ」
「全体的に旧いけれど綺麗ですね」
アーサー=クーンツ組の他にもグループは存在する。
持ち出し量はそれなりに不文律があるらしく、男たちはヘリのドアから撃つ五十口径の重機関銃を一基、サブマシンガンを一丁、それにRPGと呼ばれる歩兵用対戦車ロケット砲の発射筒と、グレネードランチャー付きライフルを二丁ずつ中型ヘリに載せた。
あとはそれらの弾薬やロケット弾に擲弾なども積み込む。他には普段皆が持つ銃の弾薬である5.56ミリNATO弾に小型ヘリの三十ミリチェーンガンの弾薬、夜間戦闘時に弾道を知るための曳光弾や照明弾も積んだ。
京哉と霧島はMP5用九ミリパラを追加して貰う。自分たちの手持ちの銃の分だ。
だが積んでみれば得物は大した量ではないように思えて霧島は拍子抜けした。
「これだけで軍にカチコミするのか?」
「クーンツたちは『砲』とか言ってましたけどね。一撃離脱の殴り込みなら充分いけるでしょう。制圧する訳じゃなさそうだし、大体ゲリラがこれだけの装備を揃えてる方が吃驚ですよ」
「ふむ、そんなものか」
武器弾薬に関しての知識は京哉の方が上である。スナイパーというだけでなく京哉はミリヲタの気があるのだ。故に日常生活には不要な知識を溜め込んでいて、特別任務などの非日常生活で霧島も頼りにするところ、やはり上手く役割分担ができている。
中型ヘリの後部貨物区画に置かれた武器弾薬を霧島は眺めた。乾燥しているのが幸いして錆は浮かず真鍮の薬莢は煌めいている。これなら装薬も問題ないだろう。
またうたた寝しながらキャンプまで戻った二人は小型天幕に潜り込み本格的に眠った。途中でジョセに起こされて朝食を摂り、再び寝る。更に二時間ほどでようやく起きて池で顔を洗った。
キャンプ中央の焚き火に結構な人数が集まっているのを見てそちらに向かう。男女合わせて十五人ほどで第四駐屯地襲撃のプランを練っていた。どうやら二人が眠っているうちにアーサー=クーンツたちのグループから通信があったらしい。
輪に混ざった霧島と京哉にオグルビーが言った。
「あんたらにもアタック隊に参加して欲しいんだが」
二人の様子を皆が窺う。京哉が小さく頷いて霧島が返答した。
「了解した。全部で何人出るんだ?」
「人員輸送に中型ヘリが一機。攻撃組は小型ヘリのハミッシュとキャラハン。それに積む五十口径ドアガン射手にジョナサンと予備のビジョルド。地上班はレズリーとバイヨルがRPG担当。サブマシンガンがオルコットで、グレネード二丁のうち一丁をエディに任せた。あんたらはグレネードランチャーの経験があるか?」
「じゃあ僕、それで」
精度の良さそうなライフル付きのそれをスナイパーの京哉は確保する。
「グレネードとRPGはそれぞれガードをつける。あんたらはバディで動いてくれ」
「分かった。こっちの攻撃組は小型ヘリ要員入れて十三人か。いつやるんだ?」
「次の砂嵐の晩だ。砂嵐に紛れて近づいて収まると同時に叩く。具体的には今夜から第四駐屯地近くに要員のみ移動して例のグループと合流、機を待つことになる」
「なるほど。敵地の内部構造は分かっているのか?」
「過去のアタックで大まかには。一応作製した地図はこれだ」
渡されたのはこれもA4に鉛筆書きの大雑把な配置図だ。自分たちの立場ならプラーグ政府高官と携帯で話もできる。霧島は上手く駐屯地内部の詳細を相手から引き出し、図面をメールで送らせることくらいやってのける自信があった。
だがそんな図面を出した時点で自分たちが体制側と繋がっているのがバレる。ここは黙っているしかない。
「あのう、『デポ』って何のことですか?」
「あんたらは知らなかったか。砂漠のド真ん中に放棄された軍の基地跡があるんだ。今はガラクタだらけのそこに先陣たちの溜め込んだ武器を隠してあるのさ。アタックをかける時にはどのグループでもそこの武器を利用していいことになってる」
霧島の通訳を聞いて、それでグループの武装が軽装だったのかと京哉は納得した。
「こいつのチェーンガンにも三十ミリを積んで……腕が鳴るぜ」
ニヤリと笑ったキャラハンは中身の知れぬ水筒からグビリとやった。
キャンプに戻った二人は今晩のうちにデポに行くという中型ヘリに乗り換えた。シートのない床でウトウトしながら運ばれること三時間、デポと呼ばれる基地跡に到着する。
「わあ、目茶苦茶ですね」
寒さで一気に覚醒した京哉は曇る眼鏡に難儀しながら、ゲリラによる再利用を阻むため完膚なきまでに破壊してから放棄された基地をヘリの前照灯で見た。破壊されているだけでなく、長く放置されたそこは殆ど砂に埋もれている。
ここでも霧島と京哉はスコップを持たされ五名ばかりの男たちと共に穴掘りだ。レズリーに指示された場所をほじくり返す。暫くして出てきたのはスチールロッカーだった。重くて持ち上がらないロッカーにワイアを着け、ヘリに繋いで引き出す。
「中は……うわあ、八十四ミリ無反動砲にRPG7、アサルトライフルにカービンの追加が大量、それにサブマシンガンはH&KのMP5シリーズ。大した装備ですよ」
「確かにこれはすごいな、武器の見本市のようだぞ」
「全体的に旧いけれど綺麗ですね」
アーサー=クーンツ組の他にもグループは存在する。
持ち出し量はそれなりに不文律があるらしく、男たちはヘリのドアから撃つ五十口径の重機関銃を一基、サブマシンガンを一丁、それにRPGと呼ばれる歩兵用対戦車ロケット砲の発射筒と、グレネードランチャー付きライフルを二丁ずつ中型ヘリに載せた。
あとはそれらの弾薬やロケット弾に擲弾なども積み込む。他には普段皆が持つ銃の弾薬である5.56ミリNATO弾に小型ヘリの三十ミリチェーンガンの弾薬、夜間戦闘時に弾道を知るための曳光弾や照明弾も積んだ。
京哉と霧島はMP5用九ミリパラを追加して貰う。自分たちの手持ちの銃の分だ。
だが積んでみれば得物は大した量ではないように思えて霧島は拍子抜けした。
「これだけで軍にカチコミするのか?」
「クーンツたちは『砲』とか言ってましたけどね。一撃離脱の殴り込みなら充分いけるでしょう。制圧する訳じゃなさそうだし、大体ゲリラがこれだけの装備を揃えてる方が吃驚ですよ」
「ふむ、そんなものか」
武器弾薬に関しての知識は京哉の方が上である。スナイパーというだけでなく京哉はミリヲタの気があるのだ。故に日常生活には不要な知識を溜め込んでいて、特別任務などの非日常生活で霧島も頼りにするところ、やはり上手く役割分担ができている。
中型ヘリの後部貨物区画に置かれた武器弾薬を霧島は眺めた。乾燥しているのが幸いして錆は浮かず真鍮の薬莢は煌めいている。これなら装薬も問題ないだろう。
またうたた寝しながらキャンプまで戻った二人は小型天幕に潜り込み本格的に眠った。途中でジョセに起こされて朝食を摂り、再び寝る。更に二時間ほどでようやく起きて池で顔を洗った。
キャンプ中央の焚き火に結構な人数が集まっているのを見てそちらに向かう。男女合わせて十五人ほどで第四駐屯地襲撃のプランを練っていた。どうやら二人が眠っているうちにアーサー=クーンツたちのグループから通信があったらしい。
輪に混ざった霧島と京哉にオグルビーが言った。
「あんたらにもアタック隊に参加して欲しいんだが」
二人の様子を皆が窺う。京哉が小さく頷いて霧島が返答した。
「了解した。全部で何人出るんだ?」
「人員輸送に中型ヘリが一機。攻撃組は小型ヘリのハミッシュとキャラハン。それに積む五十口径ドアガン射手にジョナサンと予備のビジョルド。地上班はレズリーとバイヨルがRPG担当。サブマシンガンがオルコットで、グレネード二丁のうち一丁をエディに任せた。あんたらはグレネードランチャーの経験があるか?」
「じゃあ僕、それで」
精度の良さそうなライフル付きのそれをスナイパーの京哉は確保する。
「グレネードとRPGはそれぞれガードをつける。あんたらはバディで動いてくれ」
「分かった。こっちの攻撃組は小型ヘリ要員入れて十三人か。いつやるんだ?」
「次の砂嵐の晩だ。砂嵐に紛れて近づいて収まると同時に叩く。具体的には今夜から第四駐屯地近くに要員のみ移動して例のグループと合流、機を待つことになる」
「なるほど。敵地の内部構造は分かっているのか?」
「過去のアタックで大まかには。一応作製した地図はこれだ」
渡されたのはこれもA4に鉛筆書きの大雑把な配置図だ。自分たちの立場ならプラーグ政府高官と携帯で話もできる。霧島は上手く駐屯地内部の詳細を相手から引き出し、図面をメールで送らせることくらいやってのける自信があった。
だがそんな図面を出した時点で自分たちが体制側と繋がっているのがバレる。ここは黙っているしかない。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる