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第29話
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一旦解散し昼食を摂ると二人は水浴びをした。暫くお預けなので人目も気にせず存分に乾いた肌に水を吸わせる。
そのあと京哉はドイツのヘッケラー&コッホ社製G3バトルライフルにグレネードランチャーが付属したものを中型ヘリ内で分解整備した。
隣で霧島も京哉にやり方を訊きながら、某大国製のM16アサルトライフルを分解整備である。命を預ける以上、自分の銃を自分で整備しておくのは鉄則だった。
ちなみに京哉の銃は7.62ミリNATO弾使用で、霧島の銃は5.56ミリNATO弾使用という互換性も統一もない状態だが、これらを集めた経緯を考えると仕方なかった。
だからといって自前のシグでは五十メートル以上離れたらまともに狙えない。借り物は旧い品とはいえライフルで有効射程は両方とも約五百メートルだ。
映画かゲームでしか見たことのなかった本格的兵器を前に霧島は唸る。
「お前、そんなもの撃てるのか?」
「まあ、知識だけはありますから。HK79グレネードランチャーに四十ミリ×四十六グレネード擲弾、最大殺傷範囲は着弾半径約五メートル。仰角射撃の曲射で距離は四百くらい飛びますよ。あのRPGの弾頭やサブマシンガンは有効射程がせいぜい二百メートルですから、前線はもっと敵地近くになるでしょうけどね」
「一斉にぶちかまして一目散に逃げる訳だな」
「そういうことです。でも渡された弾はこれだけ、試射は無理だろうなあ」
大きめのベルトポーチから寸胴の擲弾を出して五つ並べた。紙箱に入ったライフル用の7.62ミリ実弾と曳光弾に九ミリパラもある。霧島は5.56ミリ実弾と九パラだ。砂が付着しないようにそれぞれ気を付けながら組み上げると、今度は自前のハンドガンを整備する。
フィールドストリッピングなる簡易分解をしてみると、やはり内部に細かい砂が入り込んでいて二人は顔をしかめた。この環境下で仕方なく霧島は黙って整備した。
一方でガンヲタ・京哉が珍しく毒づいている。ともあれ減った九ミリパラも補充をして予備弾も確保できた。
「それで忍さん。本当に貴方は今度の作戦に参加するんですか?」
ここにきて真正面から訊かれ、霧島も京哉に対して真っ直ぐに答える。
「私も腹を括った。中途半端な真似をして皆を惑わすようなことはしないとな」
「本当にそれでいいんですね? 人を助けるために警察官になった貴方が人を殺す。それがこの先どれだけ重たくなるのか、ご自分で分かっているんですね?」
「分かっているつもりだ。だが私は決めた、だからもう言ってくれるな」
「そうですか。なら僕も忍さんと共に全てを背負ってゆくだけです」
二人は黙って暫し見つめ合った。
霧島は京哉が泣くかと思ったが、意外にも黒い瞳には力強い光が宿っている。京哉が見返した霧島の灰色の目はこの上なく静かで湖水のように澄んでいた。互いに頷き、そして固く抱き締め合ってから離れる。
準備万端で迎えた夜、夕食を摂ってから皆に見送られて中型ヘリに乗り込んだ。乗った人員の中にジョセの他にユーリンもいて二人は少々驚く。
訊けば初陣ながら射撃の腕が良く、もう一組のグレネードのガードに選ばれたという。ジョセはRPG組のガードだ。
殆どが男の中で何かと不自由だろうに見上げた根性である。
小型ヘリと中型ヘリは対地高度十メートルで三時間近く並走飛行し、砂漠のド真ん中にランディングした。布を被って霧島と京哉はジョセたちと降りてみる。すると機内からは分からなかった小さな井戸と給油所がポツリと佇んでいた。
冷たい空気の中に取って付けたような携帯用のレピータアンテナが設置してあって、霧島と京哉は何となく笑う。
井戸にジョセがつるべ式の桶を落としてみたが、引き上げた桶は乾いていた。
「残念ね。持ってきただけでやり繰りしなきゃ」
最初から期待はしていなかったらしく、言葉ほど落胆はしていないようだった。単に別グループと落ち合う地点の目印としてこの井戸と給油所が選ばれたのだろう。
ランディングして一時間くらい経った頃、クーンツたちの中型ヘリが到着した。
皆が揃ったので何はともあれ作戦会議をし、今回の報復アタックのプラン確認だ。
ここから約三十キロ離れた第四駐屯地へ砂嵐中に移動、砂嵐が止むと同時に小型ヘリの五十口径ドアガンと三十ミリチェーンガンによる攻撃に入り地上組も速やかに展開。
クーンツたちが持ち出した八十一ミリ迫撃砲を背後からの援護に、左右二班に分かれてありったけの砲弾や弾丸を撃ち込みながら後退し撤収するというのが大まかな流れだった。
興味本位で霧島は京哉と共にクーンツたちの中型ヘリを覗き、迫撃砲という兵器を見せて貰う。運びやすいよう砲身と支持架、底盤に分けられたそれは総重量三十キロを超える代物で最大射程が約六キロメートルの、まさに本格的兵器だった。
並べられた砲弾は今回五発だったがデポにはまだストックされているという。これを軍から奪った先人の執念を感じた似非ゲリラは純粋に不思議に思って口にした。
「おい、これだけ兵器があるのに何故敵の本拠地を叩かないんだ?」
訊かれたクーンツは目を瞬かせて霧島を見返す。
「知らない訳ではないだろう、大統領官邸は第一駐屯地が鉄壁の護りで固めている。そこに周囲の第二・第三・第四駐屯地からの挟撃を受けてみろ、一網打尽で全滅だ」
「他のグループとも連携を取ればいいだろう。各駐屯地をそれぞれ引き付けておいて中央を落とす。大統領と軍司令官の身柄さえ押さえればこっちのものだろうが」
「簡単に言ってくれるなあ。だが隣国ユベルとの交渉に持ち込むために何れはダニロ=ブレッヒ大統領とセドリック=フランセ軍司令官の首をとるのが悲願ではある」
「願ってばかりでは叶わん、その間に国民は減っていくばかりだぞ」
「それはそうだが……ちょっと待て。風が変わった、砂嵐がくるぞ!」
いきなりの戦闘態勢への移行だった。
そのあと京哉はドイツのヘッケラー&コッホ社製G3バトルライフルにグレネードランチャーが付属したものを中型ヘリ内で分解整備した。
隣で霧島も京哉にやり方を訊きながら、某大国製のM16アサルトライフルを分解整備である。命を預ける以上、自分の銃を自分で整備しておくのは鉄則だった。
ちなみに京哉の銃は7.62ミリNATO弾使用で、霧島の銃は5.56ミリNATO弾使用という互換性も統一もない状態だが、これらを集めた経緯を考えると仕方なかった。
だからといって自前のシグでは五十メートル以上離れたらまともに狙えない。借り物は旧い品とはいえライフルで有効射程は両方とも約五百メートルだ。
映画かゲームでしか見たことのなかった本格的兵器を前に霧島は唸る。
「お前、そんなもの撃てるのか?」
「まあ、知識だけはありますから。HK79グレネードランチャーに四十ミリ×四十六グレネード擲弾、最大殺傷範囲は着弾半径約五メートル。仰角射撃の曲射で距離は四百くらい飛びますよ。あのRPGの弾頭やサブマシンガンは有効射程がせいぜい二百メートルですから、前線はもっと敵地近くになるでしょうけどね」
「一斉にぶちかまして一目散に逃げる訳だな」
「そういうことです。でも渡された弾はこれだけ、試射は無理だろうなあ」
大きめのベルトポーチから寸胴の擲弾を出して五つ並べた。紙箱に入ったライフル用の7.62ミリ実弾と曳光弾に九ミリパラもある。霧島は5.56ミリ実弾と九パラだ。砂が付着しないようにそれぞれ気を付けながら組み上げると、今度は自前のハンドガンを整備する。
フィールドストリッピングなる簡易分解をしてみると、やはり内部に細かい砂が入り込んでいて二人は顔をしかめた。この環境下で仕方なく霧島は黙って整備した。
一方でガンヲタ・京哉が珍しく毒づいている。ともあれ減った九ミリパラも補充をして予備弾も確保できた。
「それで忍さん。本当に貴方は今度の作戦に参加するんですか?」
ここにきて真正面から訊かれ、霧島も京哉に対して真っ直ぐに答える。
「私も腹を括った。中途半端な真似をして皆を惑わすようなことはしないとな」
「本当にそれでいいんですね? 人を助けるために警察官になった貴方が人を殺す。それがこの先どれだけ重たくなるのか、ご自分で分かっているんですね?」
「分かっているつもりだ。だが私は決めた、だからもう言ってくれるな」
「そうですか。なら僕も忍さんと共に全てを背負ってゆくだけです」
二人は黙って暫し見つめ合った。
霧島は京哉が泣くかと思ったが、意外にも黒い瞳には力強い光が宿っている。京哉が見返した霧島の灰色の目はこの上なく静かで湖水のように澄んでいた。互いに頷き、そして固く抱き締め合ってから離れる。
準備万端で迎えた夜、夕食を摂ってから皆に見送られて中型ヘリに乗り込んだ。乗った人員の中にジョセの他にユーリンもいて二人は少々驚く。
訊けば初陣ながら射撃の腕が良く、もう一組のグレネードのガードに選ばれたという。ジョセはRPG組のガードだ。
殆どが男の中で何かと不自由だろうに見上げた根性である。
小型ヘリと中型ヘリは対地高度十メートルで三時間近く並走飛行し、砂漠のド真ん中にランディングした。布を被って霧島と京哉はジョセたちと降りてみる。すると機内からは分からなかった小さな井戸と給油所がポツリと佇んでいた。
冷たい空気の中に取って付けたような携帯用のレピータアンテナが設置してあって、霧島と京哉は何となく笑う。
井戸にジョセがつるべ式の桶を落としてみたが、引き上げた桶は乾いていた。
「残念ね。持ってきただけでやり繰りしなきゃ」
最初から期待はしていなかったらしく、言葉ほど落胆はしていないようだった。単に別グループと落ち合う地点の目印としてこの井戸と給油所が選ばれたのだろう。
ランディングして一時間くらい経った頃、クーンツたちの中型ヘリが到着した。
皆が揃ったので何はともあれ作戦会議をし、今回の報復アタックのプラン確認だ。
ここから約三十キロ離れた第四駐屯地へ砂嵐中に移動、砂嵐が止むと同時に小型ヘリの五十口径ドアガンと三十ミリチェーンガンによる攻撃に入り地上組も速やかに展開。
クーンツたちが持ち出した八十一ミリ迫撃砲を背後からの援護に、左右二班に分かれてありったけの砲弾や弾丸を撃ち込みながら後退し撤収するというのが大まかな流れだった。
興味本位で霧島は京哉と共にクーンツたちの中型ヘリを覗き、迫撃砲という兵器を見せて貰う。運びやすいよう砲身と支持架、底盤に分けられたそれは総重量三十キロを超える代物で最大射程が約六キロメートルの、まさに本格的兵器だった。
並べられた砲弾は今回五発だったがデポにはまだストックされているという。これを軍から奪った先人の執念を感じた似非ゲリラは純粋に不思議に思って口にした。
「おい、これだけ兵器があるのに何故敵の本拠地を叩かないんだ?」
訊かれたクーンツは目を瞬かせて霧島を見返す。
「知らない訳ではないだろう、大統領官邸は第一駐屯地が鉄壁の護りで固めている。そこに周囲の第二・第三・第四駐屯地からの挟撃を受けてみろ、一網打尽で全滅だ」
「他のグループとも連携を取ればいいだろう。各駐屯地をそれぞれ引き付けておいて中央を落とす。大統領と軍司令官の身柄さえ押さえればこっちのものだろうが」
「簡単に言ってくれるなあ。だが隣国ユベルとの交渉に持ち込むために何れはダニロ=ブレッヒ大統領とセドリック=フランセ軍司令官の首をとるのが悲願ではある」
「願ってばかりでは叶わん、その間に国民は減っていくばかりだぞ」
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